脳性麻痺(cerebral palsy:CP)は、受胎から新生児期までに生じた脳の非進行性病変による運動と姿勢の異常。症状は成長とともに変化するため、病型ごとの特徴と成人期の二次障害を押さえる。
| 病型 | 病変・主症状 | 所見・合併しやすいもの |
|---|---|---|
| 痙直型(四肢麻痺・両麻痺・片麻痺) | 錐体路(上位運動ニューロン)障害による痙縮(spasticity) | 深部腱反射亢進・クローヌス陽性・病的反射・折りたたみナイフ現象。知的障害・てんかんの合併は痙直型(特に四肢麻痺)に多い |
| アテトーゼ型(ジスキネティック型) | 錐体外路(大脳基底核)障害による不随意運動・筋緊張の動揺 | 原始反射(ATNR・STNR)の残存が目立つ。知的水準は比較的保たれやすい。成人期に頸椎症性脊髄症 |
鉛管様の固縮は錐体外路障害の所見で、痙直型の所見ではない。痙直型で出るのは折りたたみナイフ現象。膝蓋腱反射は亢進(減弱ではない)。
アテトーゼ型CP → 頸椎症性脊髄症。頸部の不随意運動による屈伸・回旋の反復負荷で頸椎が変性し、成人期(30〜40歳代が多い)に四肢のしびれ・筋力低下・歩行能力の低下として現れる。歩けていた人が歩けなくなり、車椅子・電動車椅子の導入が必要になることがある。
頸椎症性脊髄症を起こしやすいのは痙直型ではなくアテトーゼ型。先天性多発性関節拘縮症(拘縮)・骨形成不全症(易骨折性)・分娩麻痺(腕神経叢損傷)は別の問題が主体。
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| ボツリヌス療法 | ボツリヌス毒素の筋注で神経筋接合部の伝達を遮断し、局所の痙縮を軽減 |
| フェノールブロック | 神経(運動点)を化学的に変性させ、局所の痙縮を軽減 |
| バクロフェン髄腔内投与療法(ITB療法) | 重度の全身性痙縮に対し、ポンプで脊髄腔内にバクロフェンを持続投与 |
| 筋緊張抑制ギプス(シリアルキャスティング) | 持続伸張で筋緊張と拘縮を軽減 |
| その他 | 経口抗痙縮薬、整形外科手術(筋解離・腱延長)、選択的脊髄後根切断術 など |
ステロイド薬の経口投与は痙縮の治療ではない。ステロイドは炎症・免疫疾患の薬で、中枢性の痙縮には使わない。
GMFCS(gross motor function classification system)/GMFCS-E&R(Expanded and Revised)は、脳性麻痺児の日常の移動能力(粗大運動)をレベルⅠ〜Ⅴの5段階に分類する。年齢帯ごとに記述があり、レベルは年齢が上がっても原則として大きく変わらない(将来の移動能力の予測に使える)。
| レベル | 6〜12歳の目安(要点) | 見分けの決め手 |
|---|---|---|
| Ⅰ | 屋内外を制限なく歩行。手すりなしで階段昇降。走る・跳ぶも可能(速度・バランス・協調性に制限) | 手すり不要 |
| Ⅱ | 多くの場面で補助具なしで歩行。長距離・不整地・坂・人混み・狭い場所で制限(介助や補助具が要ることがある)。階段は手すりを使う。走る・跳ぶはごくわずか | 手すりで階段・長距離や狭所で制限 |
| Ⅲ | 屋内は手で持つ歩行補助具(歩行器・クラッチ等)を使って歩行。長距離は車椅子。座位は手の支えなしで可能なことが多い | 歩行補助具が要る |
| Ⅳ | 歩行は実用的でない。移動は介助か電動車椅子。座位には骨盤・体幹のサポートが要る(通常の椅子での座位保持は難しい) | 自力の移動は寝返り程度+電動車椅子 |
| Ⅴ | すべての場面で車椅子で移送される。頭部・体幹の抗重力姿勢の保持が困難 | 頭部保持も難しい |
「手すりを使って階段」はⅠではなくⅡ。「不整地の歩行」ができるのはⅠ〜Ⅱで、Ⅲではない。「通常の椅子で座位保持」はⅣではできない。Ⅴは寝返りでの移動も難しい。
| 尺度 | 何を見るか | 形式 |
|---|---|---|
| GMFM(Gross Motor Function Measure) | 粗大運動能力(臥位・寝返り/座位/四つ這い・膝立ち/立位/歩行・走行・跳躍) | 観察評価で点数化(88項目版・66項目版)。変化の測定に使う |
| GMFCS | 粗大運動(移動)能力 | Ⅰ〜Ⅴの分類 |
| MACS(Manual Ability Classification System) | 日常生活における手指操作能力(物の扱いやすさ・必要な援助量) | Ⅰ〜Ⅴの分類。ADLの評価ではない |
| PEDI(リハビリテーションのための子どもの能力低下評価法/小児能力障害評価表) | ADL:セルフケア・移動・社会的機能の3領域の能力と介助量 | 対象は6か月〜7歳6か月が基本 |
| WeeFIM | FIMの小児版。ADLの介助量 | 18項目・7段階 |
| K-ABC | 認知処理能力・習得度(知能検査) | 運動の評価ではない |
| JASPER | 小児リハビリテーションの総合評価セット | 手指操作に特化したものではない |
| MAS(修正Ashworth尺度) | 痙縮(筋緊張) | ADLの評価ではない |
| SCSIT(南カリフォルニア感覚統合検査) | 感覚統合機能 | ADLの評価ではない |
問われている対象で選ぶ。粗大運動を「測る」=GMFM、移動能力を「分類」=GMFCS、手の使い方を「分類」=MACS、幼児のADLの能力と介助量=PEDI。
痙直型四肢麻痺で手の支えが要る座位の児では、外からの支持が多い姿勢ほど上肢を使いやすい。
| 姿勢 | 上肢操作の難易度 | 理由 |
|---|---|---|
| 座位保持装置の座位・車椅子で体幹ベルトを使った座位 | 易しい | 骨盤・体幹が外から固定され、上肢の操作に集中できる |
| 立位台での立位・身体前面を支えた膝立ち位 | 比較的易しい | 体幹・骨盤・下肢が支持具で支えられる |
| 床上の割り座 | やや難しい | 支持基底面が広く比較的安定するが、外からの支持はない |
| 床上の長座位 | 最も難しい | 股屈曲・膝伸展でハムストリングスが伸張され骨盤後傾。体幹が後方に倒れやすく、体幹を保つために手が使えない(机に肘をついても同じ) |
この表は手の支えが要る痙直型四肢麻痺の児が机上で両手を使う場合の話。その児にとって長座位は「床に座るだけの楽な姿勢」ではない。ハムストリングスの短縮で骨盤が後傾し、後ろに倒れまいとする努力で全身の筋緊張が高まり、連合反応も出る。割り座は安定しやすい半面、股関節の内転・内旋を強めるので常用は避ける。
腹臥位の抗重力伸展の発達順(遅れても順序は保たれる):股・膝屈曲で骨盤が高い姿勢 → 骨盤が下がり全身接地 → 頭部をわずかに挙上 → 肘支持(on elbows) → 手支持(on hands)。
四肢の強い筋緊張・重度の側弯・経管栄養・言語での意思表示困難といった重症心身障害児では、まず座位ポジショニングで安全で安定した姿勢をつくる。異常筋緊張の軽減、変形・拘縮の予防、覚醒の向上、周囲を見て関わる(コミュニケーション)・感覚入力の基盤になる。
姿勢が安定しないうちの飲水訓練は誤嚥の危険が高い。重度の児に複雑な課題を自力でさせる、言語訓練中心にする、は優先順位が違う。
介助者が頭部を支えつつ、指で下顎・口唇を支える摂食介助の手技。アテトーゼ型など頭部・口腔周囲の不随意運動が強い児に用いる。
| 目的に含まれる | 目的に含まれない |
|---|---|
| 頭部コントロールの援助(頭部の安定)・口唇閉鎖の援助・舌突出の防止・口周辺の過敏の脱感作 | 咀嚼運動の促通(この手技の直接の目的ではない) |
| 反射 | 出かた | 食事での影響と対応 |
|---|---|---|
| ATNR(非対称性緊張性頸反射) | 顔を向けた側の上肢が伸展、後頭側の上肢が屈曲 | 顔を利き手側に向けると利き手が伸びて口に運べない → 食器は正中に置く(顔が向きやすい側に皿を置かない) |
| STNR(対称性緊張性頸反射) | 頸部伸展 → 上肢伸展・下肢屈曲/頸部屈曲 → 上肢屈曲・下肢伸展 | スプーンを口に近づけたとき頸部が伸展して上肢が伸びる → 頭部をやや前屈に保つ |
反射の中枢(参考):Galant反射=脊髄、ATNR・陽性支持反射・Moro反射=脳幹、Landau反応=中脳。
BFO(ball-bearing feeder/バランス型前腕補助具)は、筋力低下で上肢を重力に抗して挙げられない人(頸髄損傷・筋ジストロフィーなど)のための装具。不随意運動が問題のアテトーゼ型には適応が違う。
不随意運動のある上肢は、体幹の近く・低い力・近位を安定させた状態での操作から段階づける。代表例は貼り絵(体の近くで手を安定させて行え、難易度を段階づけやすい)。
鋸・彫刻刀などの刃物や強い力を要する作業は不随意運動で危険。ドミノ並べのような精密な位置決めと静止保持を要する作業は難易度が高すぎる。
小児の作業療法で脳性麻痺と並んで問われる先天性の疾患。
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 好発部位 | 腰仙椎部(胸椎部ではない) |
| 病型 | 脊髄髄膜瘤=脊髄・神経が脱出し神経症状あり(下肢の麻痺・感覚障害・膀胱直腸障害)。髄膜瘤(脊髄を含まない)は通常神経障害を伴わない |
| 合併 | 脊髄髄膜瘤ではChiari奇形Ⅱ型と水頭症を高率に合併 |
| 上肢 | 上肢障害の合併は多くない(Chiari奇形・水頭症による症状は別) |
| 脊髄係留症候群 | 成長に伴い症状が出る。好発は学童期〜青年期(2〜3歳ではない)。下肢・膀胱直腸の症状が主 |
| 移動能力の評価 | Hofferの分類(CA:地域内歩行/HA:屋内歩行/NFA:訓練時のみの歩行/NA:非歩行) |
| 麻痺レベルの分類 | Sharrardの分類(残存する筋・髄節で群分け) |
Sharrard分類Ⅲ群=L3〜L4レベル(大腿四頭筋が働く)は、Hoffer分類のCA(杖などを使った地域内歩行)に概ね対応する。麻痺レベルが高い(上位)ほど歩行能力は低い。