第1章|関節リウマチの評価と作業療法

関節リウマチ 第1章

1-1 病態と手指の変形(作業療法に要る範囲)

項目要点
本態滑膜炎。滑膜細胞が増殖してパンヌスを作り、軟骨・骨を侵食して関節を壊す自己免疫疾患
好発女性に多い(男性の3〜4倍程度)。中年期の発症が多い
初発部位手指・足趾などの小関節から対称性に始まる。大関節初発・非対称性は典型ではない
症状朝のこわばり、腫脹・熱感・圧痛。疲労感・微熱などの全身症状
関節外症状間質性肺炎(予後に関わる重要な合併症)、リウマトイド結節(一部の患者にみられる。半数以上ではない)、血管炎、続発性骨粗鬆症(ステロイド・炎症・不動が重なる)
頸椎環軸椎亜脱臼。後頸部痛・歩きにくさ・上肢のしびれが新たに出たら疑う(1-4)
薬メトトレキサート(MTX)が中心となる抗リウマチ薬(DMARDs)。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は疼痛を軽減する

手指・手関節の変形

変形形備考
尺側偏位MP関節で指が尺側へ傾くRAの代表的変形。強い握り・ひねり・指を屈曲したまま押す動作で進む
スワンネック変形PIP過伸展・DIP屈曲リングスプリントの適応になりうる
ボタン穴変形(Boutonnière変形)PIP屈曲・DIP過伸展スワンネックと逆の形
母指Z変形母指 MP屈曲・IP過伸展RAの母指に特徴的
ダックネック変形母指 MP過伸展・IP屈曲Z変形と逆の形
槌指(マレット指)DIP屈曲(自動伸展不能)RAでは手指にも足趾にもみられる
オペラグラス変形(ムチランス変形)骨吸収で指が短縮し、皮膚がたるんで引くと伸びる重症RA

RAの変形ではないもの:Heberden結節(DIP)・Bouchard結節(PIP)=変形性関節症の骨性隆起。フォーク状変形(銀フォーク変形)=Colles骨折後。Charcot関節=神経障害性関節症。

スワンネックとボタン穴は「PIPがどちらに曲がるか」で覚える。PIPが反る=スワンネック、PIPが曲がる=ボタン穴。

1-2 病期と機能の評価:Steinbrocker分類と評価指標

Steinbrockerの分類は2本立て。ステージ(stage)=X線像などでみた関節破壊の進行度、クラス(class)=日常生活の機能的能力。事例問題では「ステージⅢ、クラス2」のように両方が示される。

ステージ(病期・解剖学的進行度)

ステージ主な所見
Ⅰ(初期)X線上の骨破壊はない(骨萎縮はあってよい)
Ⅱ(中等期)骨萎縮(骨粗鬆症)。軽度の軟骨・軟骨下骨の破壊はあってよいが関節変形はない。関節周囲の筋萎縮。腱鞘炎・結節などの関節外軟部組織の病変はあってよい
Ⅲ(高度進行期)軟骨・軟骨下骨の破壊、亜脱臼・尺側偏位などの関節変形
Ⅳ(末期)線維性または骨性の関節強直

クラス(機能分類)

クラス日常生活の状態
1身体機能は完全で、普通の仕事は不自由なくできる
21か所以上の関節に苦痛や運動制限があっても、普通の活動ならなんとかできる
3普通の仕事や身の回りのことがわずかしかできない、またはほとんどできない
4寝たきりまたは車椅子に座ったきりで、身の回りのこともほとんど・まったくできない

RAの評価指標の使い分け

指標何を測るか
Steinbrockerのクラス分類(class分類)日常生活の機能的能力(ADL)
Steinbrockerのステージ分類関節破壊の進行度
DAS28(disease activity score 28)疾患活動性。28関節の腫脹・圧痛、赤沈またはCRP、患者の全般評価から算出
Lansbury指数(Lansbury活動性指数)炎症の活動性
Larsen分類X線像による関節破壊の程度
AIMS(Arthritis Impact Measurement Scale)身体機能・痛み・心理状態などを含む健康状態・QOLの包括的評価(自己記入式)

「日常生活の評価」を問われたらSteinbrockerのクラス分類。DAS28・Lansbury指数は活動性、Larsen分類はX線。ステージとクラスを取り違えない。

1-3 関節保護の原則と動作指導

RAの作業療法の中心は関節保護(joint protection)とエネルギー節約(エネルギー保存)。患者が「手をしっかり使わないと変形が進む」と思い込んでいる場合、過用が関節破壊を進めるので、関節保護指導を最優先する(スプリント製作や筋力訓練より先に、誤った認識を正す)。

関節保護の原則

  • 小さい関節より大きい関節・強い関節を使う(指でなく手掌・前腕・肘・肩で支える)
  • 物は両手で持ち、荷重を分散する
  • 指先でつまむ・握り込むより手掌全体に載せる
  • 強い握り・ひねり(瓶の蓋を回す、雑巾を絞る、はさみの反復開閉)を避ける
  • 尺側偏位を助長する肢位(MPを屈曲・尺屈させて力を入れる)を避ける
  • 同じ肢位を長く続けない。疼痛を作業継続の目安にする
  • 軽い道具・太い柄・レバー式のものに替える(1-5)

場面ごとの指導

場面指導が必要な動作望ましい方法
椅子からの立ち上がり手指を屈曲したまま(握りこぶし・指の背)で体重を支える手掌全体または前腕・肘掛けで支える。座面を高くする
鍋・フライパン片手で柄を握って持つ両手で持つ、下から前腕・手掌で支える、軽量のものにする
ポット・やかん片手で取っ手を握って傾ける両手で支える、置いたまま注げるものを使う
カップ・茶碗・椀指でつまんで持つ両手で包む、手掌に載せて支える
荷物指に掛けて提げる前腕・肘に掛ける、肩掛け・リュック、カートを使う
テーブル拭き・かき混ぜ指先で押し付ける手掌全体・前腕を使う
瓶の蓋・雑巾手指で強く握ってひねる・絞るオープナーを使う、雑巾は絞らず押して水を切る

図や写真の動作を選ぶ問題は「指の小関節に体重や重さが集中しているか」「強い握り・ひねりがあるか」で判断する。両手で包む・手掌に載せる・前腕に掛ける動作は保護的。

エネルギー節約

  • 家事は一度にまとめず分散し、途中で休息を入れる
  • 立ち仕事は座って行う(調理用の椅子)
  • 朝のこわばりが強い時間帯を避ける。「家事は午前中が良い」は誤り

1-4 生活指導・運動療法とリスク管理

寝具・椅子・姿勢

項目勧める避ける
マットレス硬め(沈み込まず寝返り・起き上がりがしやすい)柔らかいマットレス(沈み込みで肢位が崩れ、起き上がりが困難)
枕低め(頸椎を屈曲させない)高い枕(頸椎屈曲を強め、環軸椎亜脱臼を悪化させうる)
椅子・便座座面の高い椅子、補高便座(股・膝関節の屈曲を減らし立ち上がりを楽にする)低い椅子・床座
読書・作業本や作業面を眼の高さに近づける(頸部の持続屈曲を避ける)下を向き続ける姿勢
手関節の肢位軽度背屈(機能肢位)掌屈位で力を入れる

意欲の高い趣味活動(料理・手芸・絵画など)は中止させず、関節保護の方法や道具を工夫して続けられるよう支援する。

運動療法・物理療法

  • 筋力の維持・強化は等尺性収縮を中心にする(関節運動を伴わず関節面に負担をかけにくい)。等張性の抵抗運動は関節負担が大きく慎重に
  • 関節可動域訓練は愛護的に行い、最終域を越えて伸ばさない
  • 急性炎症期(熱感・腫脹が強い時期)は局所の安静を優先し、温熱を避ける
  • 渦流浴は禁忌ではない。炎症の落ち着いた時期の疼痛緩和・可動域改善に使える
  • 装具は疼痛に対して使う(「疼痛に装具は使わない」は誤り)

リスク管理

後頸部痛・歩きにくさ・上肢のしびれが新たに出たら環軸椎亜脱臼を疑う。頸部の可動域運動は行わない(脊髄圧迫を招く)。高い枕を避け、転倒予防を指導する。

  • 骨粗鬆症を合併しやすい→転倒・骨折に注意
  • 間質性肺炎の合併→息切れ・活動時の呼吸状態に注意
  • 活動後の疼痛が長く残る、翌日に疲労が持ち越すなら活動量が過大と考えて調整する

1-5 スプリント・装具と自助具

スプリントの目的

目的になる目的にならない
疼痛の軽減・炎症の改善(局所の安静)/変形の予防・関節アライメントの矯正/動作の補助(関節の支持)筋力増強(スプリントは関節を固定・支持するもの。筋力は運動療法で)
装具用途
安静用スプリント炎症のある手関節・手指を良肢位で保持(夜間など)
手関節軟性装具(PEライトなど)手関節を支持して疼痛を軽くし、作業中も使える。変形・不安定性の強い重症例にも使いやすい
尺側偏位防止スプリントMP関節の尺側偏位の進行予防
リングスプリントスワンネック変形・ボタン穴変形の指に使う指装具

Oppenheimer型装具は橈骨神経麻痺用。ナックルベンダーのような動的に矯正する装具は関節への負荷が大きく、RAの重症例には選ばない。

自助具・福祉用具

動作RAに合う用具(代表例)
ドアの開閉ドアノブレバー(レバーハンドル):握って回さず、前腕・肘で押し下げて開けられる
瓶の蓋オープナー(蓋開け)
靴下をはくソックスエイド(はくための道具。脱ぐためではない)
床の物を拾う・遠くの物を取るリーチャー(マジックハンド)
整髪・洗体長柄ブラシ(肩・肘の可動域制限を補う)
爪切り台付き爪切り(把持力が要らない)
調理・食事グリップ包丁(握りやすい柄の包丁)、太柄スプーン・フォーク
歩行プラットフォーム杖(前腕で体重を受け、手関節・手指に荷重しない)

他の障害向けの用具と取り違えない:ループ付きタオル=片麻痺の片手動作用、キーボードカバー=不随意運動・失調で隣のキーを押してしまう人用、マウススティック=頸髄損傷など上肢が使えない人用(口にくわえる)。