高齢者の機能低下を表す用語は似ているが、何が落ちているかと何で測るかで切り分ける。
| 用語 | 中身 | 代表的な評価 |
|---|---|---|
| フレイル(虚弱) | 加齢で心身の予備能力が落ち、ストレスに弱くなった状態。身体・精神心理・社会の多面的な概念。可逆性がある | Fried の基準(CHS 基準)、日本版の改訂 J-CHS 基準、基本チェックリスト |
| サルコペニア | 加齢による骨格筋量の減少+筋力低下または身体機能低下 | AWGS 2019(筋量・握力・歩行速度など)、指輪っかテスト・下腿周囲長・SARC-F(拾い上げ) |
| ダイナペニア | 筋量の減少を伴わない筋力低下 | 握力・膝伸展筋力(周径では分からない) |
| ロコモティブシンドローム(ロコモティブ症候群・ロコモ) | 運動器の障害で移動機能が低下した状態 | ロコモ度テスト=立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25 |
| 指標 | フレイルでの変化 |
|---|---|
| 筋量 | 減少 |
| TUG(Timed Up and Go) | 延長(時間が長くなる=遅い) |
| FBS(Functional Balance Scale/Berg Balance Scale、0〜56点) | 低値(低いほど転倒リスクが高い) |
| 同じ運動負荷での Borg 指数 | 高値(同じ負荷でもきつく感じる) |
| 体重・歩行速度・握力 | 低下 |
TUG は「時間」なので機能が落ちるほど長くなる。「短くなる」はひっかけ。FBS・握力・歩行速度は「値」なので低くなる。向きを取り違えない。
診断の柱は筋量低下+(筋力低下 または 身体機能低下)。
| 柱 | 測り方 | 低下の目安 |
|---|---|---|
| 筋量(必須) | DXA・BIAで四肢骨格筋量を測る | ― |
| 筋力 | 握力 | 男性28kg未満・女性18kg未満 |
| 身体機能 | 歩行速度、5回椅子立ち上がりテスト など | 歩行速度1.0m/秒未満、5回立ち上がり12秒以上 |
骨密度は骨粗鬆症の指標で、サルコペニアの評価項目ではない。また周径(指輪っか)から分かるのは筋量であり、筋力(ダイナペニア)や多面的なフレイルの判定はできない。
図で「大股2歩」が出たらロコモ、「下腿を指の輪で囲む」が出たらサルコペニア。メタボリックシンドローム(腹囲・血圧・血糖・脂質)やコンパートメント症候群(外傷後の筋区画内圧上昇)は介護予防の運動器テストでは扱わない。
基本チェックリストは、生活機能が低下するおそれのある高齢者を拾い上げる25項目の質問紙。「はい/いいえ」で答える自記式で、本人記入や郵送・電話でも実施でき、対象者に対面せず評価できる。
| 領域 | 項目の例 |
|---|---|
| 暮らしぶり(手段的ADL・社会) | バスや電車で外出、日用品の買い物、預貯金の出し入れ、友人宅の訪問 など |
| 運動器(5項目) | 階段を手すりや壁をつたわらずに昇る/椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がる/15分くらい続けて歩く/この1年間に転んだ/転倒に対する不安は大きい |
| 栄養(2項目) | 6か月間で2〜3kg以上の体重減少/BMI 18.5未満 |
| 口腔(3項目) | 固いものが食べにくい/お茶や汁物でむせる/口の渇きが気になる |
| 閉じこもり(2項目) | 週1回以上の外出/昨年より外出回数が減った |
| 認知(3項目) | 物忘れの指摘/電話番号を調べてかける/今日の日付が分からない |
| 抑うつ気分(うつ・5項目) | 毎日の生活に充実感がない/以前楽しめたことが楽しめない など |
栄養の判断基準はBMI 18.5未満(身長と体重から計算)。
基本チェックリストは質問だけで完結する。実際に測る検査(指輪っかテスト・反復唾液嚥下テスト〈RSST〉・握力など)は含まれない。口腔機能も「固いものが食べにくいか」等の質問で聞く。経済状況の項目も無い。
運動器の立ち上がり項目は「椅子から」であって「床から」ではない。
一貫して「安定を優先し、つまずきやすい」歩き方になる。
| 項目 | 高齢者 |
|---|---|
| 歩幅 | 小さくなる |
| 歩隔 | 広くなる(左右の安定のため) |
| 歩行速度 | 遅くなる |
| 両脚支持期 | 長くなる(遊脚相の割合が減る) |
| 腕の振り | 減少(体幹回旋の減少に伴う) |
| 遊脚相の足尖と床の距離(足尖クリアランス) | 小さくなる→つまずきの原因 |
「歩隔は狭くなる」「両脚支持期は短くなる」「足尖と床の距離は大きくなる」はすべて逆向き。増える(広く・長くなる)のは歩隔と両脚支持期、減る(小さく・遅くなる)のは歩幅・歩行速度・腕の振り・足尖クリアランス、と2つに分けて覚えると取り違えにくい。
| 分類 | 代表例 |
|---|---|
| 内的因子(本人側) | 転倒既往(複数回)/下肢筋力低下/バランス障害/視力障害/認知機能低下(注意・遂行機能・二重課題能力の低下)/多剤併用 など |
| 外的因子(環境側) | 段差/滑りやすい床/照明不足/床の障害物・めくれた敷物 など |
基本は「滑る・つまずく・見えない」を減らすこと。
| 場面 | 適切な対応 | 不適切な例(ひっかけ) |
|---|---|---|
| 滑り | 階段・浴室・玄関に滑り止め | ワックスのかけすぎ |
| 段差 | 段差解消(すりつけ板など)。残る段差には床とコントラストのはっきりした色のテープ | 同系色のテープ(段差が見えない) |
| 夜間の照明 | 足元灯・フットライト・センサーライトで低い位置から足元を照らす | 視線の高さの光源(まぶしさ〈グレア〉で足元が見えにくい) |
| 建具 | 開き戸より引き戸、レバーハンドル | カーテン(体を預けられず、つかまると転倒する) |
| 物の置き場所 | 立位で手の届く高さの棚など | 床上に置く(つまずきの原因+床からの立ち上がり動作が増える) |
| 手すり | 立ち座りには縦手すり、移動には横手すり | ― |
事例問題では、本人が実際に転倒した動作(例:床からの立ち上がり)を生活から減らす方向の助言を選ぶ。
| 原則 | 内容 | 誤りの形 |
|---|---|---|
| 対象とする筋 | 抗重力筋の筋力トレーニング | TypeⅠ線維を優先(萎縮しやすいのはTypeⅡ) |
| 強度 | 低強度から開始し、中等度(最大負荷の60〜80%程度)へ | 最大負荷の90%(高すぎて危険) |
| 期間 | 長期的・継続的に行う | 短期間で集中的(過負荷による障害の危険) |
| 集団運動 | 併存疾患があっても、状態に応じたリスク管理のもとで取り入れられる | 併存疾患のない者に限る |
| 栄養 | レジスタンス運動と十分なたんぱく質摂取が両輪 | ― |
臥床中にとりやすい肢位のまま固まる。代表例は次のとおり。
「膝の伸展拘縮」「足関節の背屈拘縮」「肩の外転拘縮」は臥床でできやすい向きと逆。良肢位保持と早期からの関節可動域運動で予防する。
原則は本人の尊厳と安心を守る=否定しない・急がせない・強制しない。
| 適切 | 不適切 |
|---|---|
| 肯定的な言葉で、短く具体的に指示する | 否定・叱責 |
| 本人のペースに合わせる | 急がせる |
| 同じ動作を反復する(手続き記憶を活かす) | ― |
| 日常で慣れ親しんだ動作を利用する | ― |
| 拒否したら、いったん中断する・誘い方を変える | 拒否を説得して押し切る(不安・混乱・BPSD の悪化を招く) |