第1章|研究・統計・倫理・医療安全

管理・地域・制度 第1章

1-1 データ・倫理・安全・法規

統計手法の選択

条件パラメトリック(正規分布する連続変数)ノンパラメトリック
対応のない2群Studentのt検定Mann-WhitneyのU検定
対応のある2群対応のあるt検定Wilcoxonの符号付順位検定
3群以上一元配置分散分析(ANOVA)Kruskal-Wallis検定
  • カテゴリ(質的)データの度数・割合=カイ二乗検定/少数例はFisherの正確確率検定
  • 生存曲線の比較=log-rank検定/2変数の関連=相関分析/複数の説明変数から予測=重回帰分析
  • 等分散が仮定できない2群の平均値の差=Welch検定。Welchも2群専用で、3群以上には使えない
  • 外れ値の影響を受ける=平均値・分散・標準偏差・最大値/最小値。受けにくい=中央値・最頻値
  • 極端に小さい外れ値を除くと、平均値は上がり、分散・標準偏差は下がる。最大値・最頻値は変わらない

「3群に分けたグループ間で平均値に差があるか」と来たら分散分析(ANOVA)一択。誤答肢はこう切る → t検定・Welch検定=2群の平均差(3群以上に繰り返し当てると第一種の過誤が増えるので不適)/相関分析=2変数の関連の強さを見るもので差の検定ではない/重回帰分析=複数の説明変数から従属変数を予測・説明するもので、群間の平均差の検定ではない。

インフォームドコンセントと研究倫理

  • 目的は患者が自己決定する機会を保障すること(患者の自律性・自己決定権の保障)。医療者が同意を取り付けるための手続きではない
  • 専門用語ではなく患者が理解できる平易な言葉で説明する
  • 患者の要求を待たず、治療者から積極的に説明する
  • 同意内容は文書で記録・保存する
  • 患者は理由を問わずいつでも同意を撤回できる。判断能力が不十分なら代理人の同意など適切な手続きが必要
  • 終末期の患者も対象。本人の意思尊重がいっそう重要になる場面で、「終末期は対象外」は誤り
  • 医療法(第1条の4第2項)は「適切な説明を行い、理解を得るよう努めなければならない」=努力義務の規定で、医療法による罰則はない。問われるとすれば民事責任(損害賠償)や職業倫理の側面
  • 研究データは匿名化し、共有フォルダでの保管は不適切(アクセス制限・暗号化が必要)。ポスターによる被験者募集や書面+口頭の説明は適切

医療安全・リスク管理

  • Heinrichの法則=1:29:300。1件の重大事故の背後に29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットがある。段階が6つあるわけではない。「2割の努力で8割」はパレートの法則で別物
  • 褥瘡予防=30度側臥位/体位変換は2〜4時間ごと(6時間は長すぎる)/円座は禁忌(周囲に圧が集中)/好発部位のマッサージは禁忌/ベッドアップは高角度で剪断力が増すため30度程度
  • 成人BLS=胸骨圧迫の深さ約5cm(6cmを超えない)・テンポ100〜120回/分・圧迫と換気は30:2・人工呼吸は胸が上がる程度を約1秒で送気。呼吸数の測定に時間をかけない
  • 認知症のある患者の訴えは否定・説得・叱責をしない。まず感情を受け止める(受容・共感)。痛みの訴えを我慢させるのも不適切

法規・ガイドライン

  • 理学療法士の守秘義務=理学療法士及び作業療法士法(資格喪失後も継続)。医師・薬剤師は刑法、保健師・看護師は保健師助産師看護師法
  • 医療法=医療提供の理念・医療従事者の責務・病院開設者の資格・都道府県の医療計画など医療提供体制を規定。診療報酬は健康保険法に基づき医療法の規定事項ではない
  • 理学療法診療ガイドライン第1版の推奨グレード=A行うよう強く勧められる/B行うよう勧められる/C1行うことを考慮してもよいが根拠は十分でない/C2科学的根拠がないので勧められない/D行わないよう勧められる(無効・有害の根拠あり)

照射強度の計算(物理療法と共通)。強度は距離の2乗に反比例(逆2乗の法則)し、入射角の余弦(cos)に比例する。距離が半分なら4倍、2倍なら1/4。cos45°≒0.7、皮膚面に対し30°の斜入射=法線から60°でcos60°=0.5。例:距離20cm垂直→距離10cm・45°なら 4×0.7≒2.8倍/距離10cm垂直→距離20cm・皮膚面に30°なら 1/4×1/2=1/8。

研究・エビデンスの用語

用語意味
第1種の過誤(α過誤)本当は差がない(帰無仮説が正しい)のに棄却して「差がある」とする誤り=偽陽性。許容水準が有意水準
第2種の過誤(β過誤)本当は差がある(棄却すべき帰無仮説)のに棄却しない誤り=偽陰性。検出力=1−β
オッズ比事象の起こりやすさ(起こる確率/起こらない確率)を2群で比べた比。症例対照研究で使う
メタアナリシス複数の研究のデータを統計的に統合して結論を出す方法
無作為化比較試験(RCT)ランダムに割り付けた群間で前向きに効果を比較。交絡因子を均等化できる
バイアス曝露とアウトカムの関係を誤って評価させる研究デザインの不備(選択バイアス・情報バイアスなど)
  • 診療ガイドライン:その時点のエビデンスを系統的にまとめた臨床判断の支援材料。作成手法・推奨の表記は国や学会で異なり、世界で統一された方法ではない。法的拘束力はなく、推奨グレードに従う義務はない。理学療法のガイドラインも存在する。
  • エビデンスレベルは統計計算で出す数値ではなく研究デザインで決まる(システマティックレビュー・メタアナリシス>RCT>コホート研究>症例対照研究>症例報告>専門家の意見)。ガイドラインの中心は治療・介入の推奨。

精神症状・認知症への対応

  • てんかんに伴う精神症状の代表例:発作間欠期の性格変化(粘着性・迂遠・爆発性)、てんかん性不機嫌症(不機嫌状態)、発作後のもうろう状態。疾病利得は心因性(変換症・解離症など)で使う概念で、てんかんの症状ではない。
  • 認知症の人への応答は、否定・叱責・説得をせず感情を受け止める(受容・共感、バリデーション)。
    • 同じ質問の繰り返し → 責めずに何度でも穏やかに答える。
    • 「帰りたい」の訴え → 「帰りたいのですね」と気持ちを受け止める。
    • 物盗られ妄想 → 正論で否定せず、気持ちに寄り添い一緒に探す。
    • 拒否 → 「やらないと歩けなくなる」のような脅す説得は逆効果。痛みの訴えは我慢させず、評価して内容・量を調整する。

1-2 評価データの統計処理

検定法は①対応の有無 ②群数 ③正規分布かの3つだけで決まる。表を丸暗記すれば取りこぼさない。

条件2群3群以上
正規分布・対応なし対応のないt検定一元配置分散分析(ANOVA)
正規分布・対応ありPaired-t検定反復測定分散分析
非正規・対応なしMann-WhitneyのU検定Kruskal-Wallis検定
非正規・対応ありWilcoxon符号付順位検定Friedman検定
  • 「対応あり」=同一対象の前後比較(介入前後の歩行速度など)。同一の30名を1週後と比べて正規分布ならPaired-t検定
  • 相関分析は2変数の関連の強さをみる手法で、群間差の検定ではない
  • 分散分析は3群以上の比較だが正規分布が前提。非正規なら3群以上はKruskal-Wallis検定に置き換える

四分表から感度・特異度を計算する

縦=実際の状態(例:転倒経験の有無)、横=検査結果で表を作り、感度・特異度は縦の合計で割る。

指標式まちがえやすい相手
感度(真陽性率)真陽性÷(真陽性+偽陰性)=あり群のうち陽性特異度と入れ替えた値
特異度(真陰性率)真陰性÷(真陰性+偽陽性)=なし群のうち陰性偽陽性率=1−特異度
陽性的中率/陰性的中率横(検査陽性者・検査陰性者)で割る感度・特異度
有病率あり群÷全体—

数値例(自作):あり群40人のうち検査陽性30人、なし群60人のうち検査陰性48人(偽陽性12人)。
感度=30/40=0.75、特異度=48/60=0.8、偽陽性率=12/60=0.2、有病率=40/100=0.4。
選択肢には感度・偽陽性率・有病率が並ぶので、どの列の合計で割ったかを確かめる。尤度比はリハビリテーション医学 第4章(4-10)。

尺度水準 — 名義・順序・間隔・比率

尺度性質代表例(網羅ではない)
名義尺度分類だけ。大小なし性別・血液型・麻痺側・疾患名
順序尺度順序はあるが間隔が等しくないMMT・Brunnstrom stage・Barthel Index・FIM・Borg Scale・Modified Ashworth Scale
間隔尺度間隔は等しいが0は任意摂氏温度・西暦・IQ
比率尺度(比尺度・比例尺度)絶対的な原点0があり、2倍・半分に意味がある握力(kg)・歩行速度・TUG(秒)・Functional Reach Test(cm)・体重
  • 判定の問い=「0がその性質の完全な不在か」「2倍と言えるか」。時間・距離・重さなどの物理量で測るものは比率尺度になりやすい
  • 点数で合計できてもBarthel Indexの40点は20点の「2倍の能力」ではない=順序尺度
  • MASの「1+」のように段階の間隔がそろわないものも順序尺度
  • 順序尺度は本来、中央値・ノンパラメトリック検定で扱う

有意差が出やすくなる条件

2群の平均の差の検定(t検定)では、検定統計量はおおまかに「平均値の差 ÷ 標準誤差」。標準誤差は標準偏差÷√サンプル数なので、ばらつきが小さく数が多いほど統計量が大きくなる。

要因有意差が出やすい方向
2群の平均値の差大きいほど
群内の標準偏差(ばらつき)小さいほど
サンプル数多いほど(少ないと出にくい)
有意水準α大きいほど出やすいが、第一種の過誤が増える
  • 「検出力の設定が大きい」は研究計画で必要サンプル数を見積もる条件。高く設定すると必要な人数が増えるだけで、集めたデータの有意差が出やすくなるわけではない
  • 「データの妥当性が高い」は測りたいものを測れているかという測定の質の話で、有意差の出やすさとは別
  • 順序尺度のデータはノンパラメトリック検定になり、一般にパラメトリック検定より検出力が低い
  • 第一種の過誤(α)=差がないのに差ありとする/第二種の過誤(β)=差があるのに差なしとする。検出力=1−β

95%信頼区間と有意性 — 比の指標は「1」、差の指標は「0」

指標の種類例「効果なし」の値有意と判断する条件
比の指標オッズ比・相対危険度(リスク比)・ハザード比195%信頼区間が1をまたがない
差の指標平均値の差・回帰係数095%信頼区間が0をまたがない

例(自作):オッズ比の95%信頼区間が 0.52〜0.81 → 上限が1未満で有意/1.20〜3.40 → 下限が1超で有意/0.70〜1.60 → 1を含み有意でない。
1より下側で有意でも「有意」に変わりはない(発生が有意に少ない方向)。

  • 区間の幅が狭いほど推定の精度が高い(対象者数が多い)。幅が極端に広く1を含む区間は結論が出せない
  • 有意水準5%で有意(p<0.05)=95%信頼区間が基準値(比なら1、差なら0)を含まない、と同じ意味