関節リウマチ(RA)は多関節の滑膜炎が寛解と増悪(再燃)を繰り返し、関節破壊・変形が進む疾患。中年女性に多い。理学療法の方針は「いま炎症が強い時期か」「関節破壊がどこまで進んだか」「生活がどこまでできるか」で決まる。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| ステージⅠ | エックス線上の骨破壊なし(骨粗鬆症はあってよい) |
| ステージⅡ | 軽度の関節裂隙狭小化。関節変形なし |
| ステージⅢ | 骨・軟骨の破壊と関節変形あり。強直はない |
| ステージⅣ | 線維性または骨性の強直 |
| クラス1 | 不自由なく普通の仕事がすべてできる |
| クラス2 | 1か所以上の関節に苦痛・運動制限はあるが、普通の活動はなんとかできる |
| クラス3 | 普通の仕事や身の回りのことが、ごくわずかしかできない・ほとんどできない |
| クラス4 | 寝たきり・車椅子で、身の回りのこともほとんど・まったくできない |
クラスには、Steinbrocker の原分類(上の表)とは別にACR改訂機能分類(1991)がある。改訂分類は「身の回り・職業・趣味(余暇)」のどこまでできるかで分け、クラスⅢ=身の回りはできるが、職業と趣味が制限される。同じ「クラス3」でも原分類と改訂分類で文言が違うので、混同しない。
ステージ=エックス線(関節の壊れ方)、クラス=生活(何ができるか)。ステージⅢは「変形はあるが強直はない」段階で、残っている機能を守る関節保護を軸にしたADL指導の対象になる。
| 部位 | 変形 | 理学療法での注意 |
|---|---|---|
| 手指 | 尺側偏位・スワンネック変形・ボタン穴変形 | 尺側へ力がかかる動作(ひねる・絞る・強く握る)を避ける |
| 母指 | 母指Z変形 | 母指Z変形用スプリント |
| 手指など | ムチランス変形(骨吸収による高度の不安定性) | 強い他動運動は変形・損傷を助長する |
| 足部 | 外反母趾・開張足・槌趾(槌指) | 中足骨頭部に荷重が集中し痛む→足底板・中足骨パッド |
| 膝 | 屈曲拘縮 | 痛みで屈曲位をとりやすい→夜間の伸展位保持装具 |
| 頸椎 | 環軸椎亜脱臼 | 脊髄圧迫(四肢麻痺・呼吸障害)の危険。頸部の前屈・回旋・抵抗運動を避ける |
RAで環軸椎亜脱臼は頻度が高く、生命に関わる。頸椎の可動域運動・頸椎の抵抗運動(等張性を含む)・頸部を前屈させる代償動作はいずれも避ける。寛解して安定している時期でも同じ。頸部は固定・愛護的に扱い、移乗や介助でも急な前屈・回旋をさせない。
大原則は関節保護。活動期(急性炎症期・再燃時)は安静と寒冷、炎症が落ち着いた時期は等尺性運動で筋力を保ち、可動域を維持する。
| 時期・状態 | 行う | 避ける |
|---|---|---|
| 活動期(急性炎症期・再燃) | 安静・寒冷療法。可動域練習は痛みのない範囲の自動運動を中心にし(必要なら愛護的な自動介助・他動運動で拘縮を防ぐ)、筋力は等尺性運動で保つ | 温熱療法、無理な伸張などの強い他動運動・抵抗運動、強い運動 |
| 寛解・慢性期 | 等尺性運動で筋力維持、可動域の維持、ADLに直結する肩・肘などの可動域練習 | 関節に大きな負担がかかる高負荷の運動 |
| 関節強直(ステージⅣ) | 周囲の関節・筋の機能維持 | 強直した関節の可動域運動(動かないので無効、無理に行えば有害) |
| ムチランス変形 | 愛護的な扱い、装具での保護 | 強い他動運動 |
| 環軸椎亜脱臼 | 頸部の固定・愛護的管理 | 頸椎の可動域運動・抵抗運動 |
等尺性運動(関節を動かさずに筋を収縮させる)は関節への負担が小さく、RAの筋力維持の基本。等張性の抵抗運動は関節面への負荷・関節運動を伴うので、炎症関節や頸椎には向かない。
| 方法 | 向く部位 | RAの手指に使わない理由 |
|---|---|---|
| パラフィン浴 | 手指・足趾など凹凸の多い部位 | —(変形した手指にも密着して均一に加温でき、保湿にもなる。RAの手指温熱の第一選択) |
| ホットパック | 広く平らな部位 | 変形した手指の細部に密着しにくい |
| 遠赤外線 | 平面的な照射 | 凹凸全体を均一に加温しにくい |
| 超音波 | 限局した深部組織 | 手指全体の加温には不向き |
| 極超短波(マイクロ波) | 深部加温 | 手指の複雑な形に不向き。体内金属(人工関節など)は禁忌 |
「痛みがあるから温める」は活動期には誤り。炎症の強い活動期は冷やす。パラフィン浴などの温熱は、長期経過で炎症が落ち着き変形・痛みが残る手指に使う。
| 場面 | 適切(関節保護になる) | 不適切 |
|---|---|---|
| 蛇口 | レバー式を手掌・前腕で操作 | 丸ハンドルを指でつまんでひねる |
| 食器を持つ | 両手の手掌で茶碗を支える | 片手の指先に力を集中 |
| 車椅子のブレーキ | 手掌で押す | 指でつまんで操作(母指・MP関節に負担) |
| 食事のリーチ | 長柄スプーン・テーブルの高さ調整で食器を口に近づける | 頸部を前屈させて口を食器に近づける |
| 椅子からの立ち上がり | 高めの椅子・補高マット(膝・股関節の負担が減る) | 低い座面 |
| ベッドからの起き上がり | 電動ベッドの背上げ、前腕全体で柵を押す | ひもを握って引っ張る(手指・手関節の小関節に負荷が集中し変形を助長) |
| 上肢のリーチ | 食事・更衣のための肩・肘の可動域維持 | — |
「ひもを引いて起き上がる」は自分で起きられるので一見よさそうだが、RAでは握る+引く=小関節に強い力で誤り。「頸部前屈で食べる」も楽そうに見えるが環軸椎亜脱臼の危険で誤り。どちらも誤り選択肢として狙われる。
自助具・補助具は「握らずに使える」「大きい関節・広い面で使える」もの(太柄・長柄のスプーン、レバー式ハンドル、前腕で支える杖など)を選ぶ。
| 補助具 | 手関節の痛み・腫脹が強いRA | 理由 |
|---|---|---|
| プラットホーム杖(前腕支持型杖) | 適 | 前腕を受け台に載せて肘〜前腕全体で支持。手関節・手指に荷重がかからない |
| 四輪式歩行器(前腕支持型を含む) | 適 | 押して進み、片手あたりの荷重が小さい。前腕支持型なら手関節を保護できる。支持基底面が広く安定 |
| T字杖 | 不適 | グリップを握って体重を支える=手関節・手指に強い負荷 |
| ロフストランド杖 | 不適 | 前腕カフはあるが荷重の大部分はグリップを握る手にかかる |
| 松葉杖 | 不適 | 握りで手関節に荷重がかかる。腋窩圧迫による神経麻痺の危険もある |
RAは多関節に病変があるので、下肢(膝など)の手術前後でも上肢に強い荷重を求める補助具は避ける。「握る杖」ではなく「前腕で支える杖・歩行器」。
踵補高・フレアヒール・Thomasヒール類は踵部や後足部のアライメントを扱う靴の補正で、中足骨頭部の除圧を目的とするものではない。「痛い所を直接除圧する」装具を選ぶ。
| 装具 | 目的・対象 |
|---|---|
| 変形防止用スプリント(手指・手関節) | 尺側偏位などの変形の進行防止。関節保護の基本 |
| 母指Z変形用スプリント | RAの母指Z変形 |
| 膝の夜間装具(伸展位保持) | 膝の屈曲拘縮の予防 |
手の装具は変形・麻痺の型と対応させる。RAの変形用スプリントと、末梢神経麻痺の装具を混同しない。
| 末梢神経麻痺 | 手の形 | 装具 |
|---|---|---|
| 尺骨神経麻痺 | 鷲手(かぎ爪手):MP過伸展+PIP・DIP屈曲(手内在筋麻痺) | ナックルベンダー(MP関節を屈曲方向へ補助) |
| 正中神経麻痺 | 猿手(母指対立不能) | 対立装具(母指対立位保持)。低位の麻痺は短対立装具、手関節の支持も要るなら長対立装具 |
| 橈骨神経麻痺 | 下垂手 | コックアップ・スプリント(手関節背屈位保持) |
変形が「過伸展」なら「屈曲を補助する」装具で矯正する、と矯正方向で考えると選びやすい。