第1章|関節リウマチの評価と理学療法

関節リウマチ 第1章

1-1 病期・機能障害の評価と特徴的な変形

関節リウマチ(RA)は多関節の滑膜炎が寛解と増悪(再燃)を繰り返し、関節破壊・変形が進む疾患。中年女性に多い。理学療法の方針は「いま炎症が強い時期か」「関節破壊がどこまで進んだか」「生活がどこまでできるか」で決まる。

Steinbrocker のステージ(関節破壊の進行度)とクラス(機能障害度)

区分内容
ステージⅠエックス線上の骨破壊なし(骨粗鬆症はあってよい)
ステージⅡ軽度の関節裂隙狭小化。関節変形なし
ステージⅢ骨・軟骨の破壊と関節変形あり。強直はない
ステージⅣ線維性または骨性の強直
クラス1不自由なく普通の仕事がすべてできる
クラス21か所以上の関節に苦痛・運動制限はあるが、普通の活動はなんとかできる
クラス3普通の仕事や身の回りのことが、ごくわずかしかできない・ほとんどできない
クラス4寝たきり・車椅子で、身の回りのこともほとんど・まったくできない

クラスには、Steinbrocker の原分類(上の表)とは別にACR改訂機能分類(1991)がある。改訂分類は「身の回り・職業・趣味(余暇)」のどこまでできるかで分け、クラスⅢ=身の回りはできるが、職業と趣味が制限される。同じ「クラス3」でも原分類と改訂分類で文言が違うので、混同しない。

ステージ=エックス線(関節の壊れ方)、クラス=生活(何ができるか)。ステージⅢは「変形はあるが強直はない」段階で、残っている機能を守る関節保護を軸にしたADL指導の対象になる。

代表的な変形

部位変形理学療法での注意
手指尺側偏位・スワンネック変形・ボタン穴変形尺側へ力がかかる動作(ひねる・絞る・強く握る)を避ける
母指母指Z変形母指Z変形用スプリント
手指などムチランス変形(骨吸収による高度の不安定性)強い他動運動は変形・損傷を助長する
足部外反母趾・開張足・槌趾(槌指)中足骨頭部に荷重が集中し痛む→足底板・中足骨パッド
膝屈曲拘縮痛みで屈曲位をとりやすい→夜間の伸展位保持装具
頸椎環軸椎亜脱臼脊髄圧迫(四肢麻痺・呼吸障害)の危険。頸部の前屈・回旋・抵抗運動を避ける

RAで環軸椎亜脱臼は頻度が高く、生命に関わる。頸椎の可動域運動・頸椎の抵抗運動(等張性を含む)・頸部を前屈させる代償動作はいずれも避ける。寛解して安定している時期でも同じ。頸部は固定・愛護的に扱い、移乗や介助でも急な前屈・回旋をさせない。

1-2 時期別の運動療法と物理療法

大原則は関節保護。活動期(急性炎症期・再燃時)は安静と寒冷、炎症が落ち着いた時期は等尺性運動で筋力を保ち、可動域を維持する。

時期・状態行う避ける
活動期(急性炎症期・再燃)安静・寒冷療法。可動域練習は痛みのない範囲の自動運動を中心にし(必要なら愛護的な自動介助・他動運動で拘縮を防ぐ)、筋力は等尺性運動で保つ温熱療法、無理な伸張などの強い他動運動・抵抗運動、強い運動
寛解・慢性期等尺性運動で筋力維持、可動域の維持、ADLに直結する肩・肘などの可動域練習関節に大きな負担がかかる高負荷の運動
関節強直(ステージⅣ)周囲の関節・筋の機能維持強直した関節の可動域運動(動かないので無効、無理に行えば有害)
ムチランス変形愛護的な扱い、装具での保護強い他動運動
環軸椎亜脱臼頸部の固定・愛護的管理頸椎の可動域運動・抵抗運動

筋力維持は等尺性運動

等尺性運動(関節を動かさずに筋を収縮させる)は関節への負担が小さく、RAの筋力維持の基本。等張性の抵抗運動は関節面への負荷・関節運動を伴うので、炎症関節や頸椎には向かない。

物理療法:手指の温熱はパラフィン浴

方法向く部位RAの手指に使わない理由
パラフィン浴手指・足趾など凹凸の多い部位—(変形した手指にも密着して均一に加温でき、保湿にもなる。RAの手指温熱の第一選択)
ホットパック広く平らな部位変形した手指の細部に密着しにくい
遠赤外線平面的な照射凹凸全体を均一に加温しにくい
超音波限局した深部組織手指全体の加温には不向き
極超短波(マイクロ波)深部加温手指の複雑な形に不向き。体内金属(人工関節など)は禁忌

「痛みがあるから温める」は活動期には誤り。炎症の強い活動期は冷やす。パラフィン浴などの温熱は、長期経過で炎症が落ち着き変形・痛みが残る手指に使う。

1-3 関節保護とADL指導

関節保護の原則(代表的なもの)

  • 痛みを生じる動作を避ける(動作後の痛みが長く続くなら過負荷)
  • 小さい関節より大きい関節・強い関節を使う
  • 力を広い面・複数の関節に分散する(片手より両手、指より手掌・前腕)
  • 変形を助長する方向の力を避ける(尺側偏位を進めるひねる・絞る動作など)
  • 関節を安定した肢位・正しいアライメントで使う
  • 同じ姿勢・持続的な把持を長く続けない。活動と休息のバランス(エネルギー節約)
  • 頸部の前屈・回旋を伴う代償動作をしない(環軸椎亜脱臼)

動作ごとの適否(代表例)

場面適切(関節保護になる)不適切
蛇口レバー式を手掌・前腕で操作丸ハンドルを指でつまんでひねる
食器を持つ両手の手掌で茶碗を支える片手の指先に力を集中
車椅子のブレーキ手掌で押す指でつまんで操作(母指・MP関節に負担)
食事のリーチ長柄スプーン・テーブルの高さ調整で食器を口に近づける頸部を前屈させて口を食器に近づける
椅子からの立ち上がり高めの椅子・補高マット(膝・股関節の負担が減る)低い座面
ベッドからの起き上がり電動ベッドの背上げ、前腕全体で柵を押すひもを握って引っ張る(手指・手関節の小関節に負荷が集中し変形を助長)
上肢のリーチ食事・更衣のための肩・肘の可動域維持—

「ひもを引いて起き上がる」は自分で起きられるので一見よさそうだが、RAでは握る+引く=小関節に強い力で誤り。「頸部前屈で食べる」も楽そうに見えるが環軸椎亜脱臼の危険で誤り。どちらも誤り選択肢として狙われる。

自助具・補助具は「握らずに使える」「大きい関節・広い面で使える」もの(太柄・長柄のスプーン、レバー式ハンドル、前腕で支える杖など)を選ぶ。

1-4 装具・歩行補助具

歩行補助具:手関節・手指に体重をかけない

補助具手関節の痛み・腫脹が強いRA理由
プラットホーム杖(前腕支持型杖)適前腕を受け台に載せて肘〜前腕全体で支持。手関節・手指に荷重がかからない
四輪式歩行器(前腕支持型を含む)適押して進み、片手あたりの荷重が小さい。前腕支持型なら手関節を保護できる。支持基底面が広く安定
T字杖不適グリップを握って体重を支える=手関節・手指に強い負荷
ロフストランド杖不適前腕カフはあるが荷重の大部分はグリップを握る手にかかる
松葉杖不適握りで手関節に荷重がかかる。腋窩圧迫による神経麻痺の危険もある

RAは多関節に病変があるので、下肢(膝など)の手術前後でも上肢に強い荷重を求める補助具は避ける。「握る杖」ではなく「前腕で支える杖・歩行器」。

足部:中足骨頭部の痛みは直接除圧する

  • RAでは外反母趾・開張足・槌趾(槌指)が多く、中足骨頭部に荷重が集中して痛む
  • 中足骨頭部の痛みには、その手前(近位)に当てて骨頭部の荷重を減らすメタタルザルパッド(中足骨パッド)が第一。足底板(インソール)として靴に組み込み、歩容に合わせて調整する

踵補高・フレアヒール・Thomasヒール類は踵部や後足部のアライメントを扱う靴の補正で、中足骨頭部の除圧を目的とするものではない。「痛い所を直接除圧する」装具を選ぶ。

上肢・下肢の装具(代表例)

装具目的・対象
変形防止用スプリント(手指・手関節)尺側偏位などの変形の進行防止。関節保護の基本
母指Z変形用スプリントRAの母指Z変形
膝の夜間装具(伸展位保持)膝の屈曲拘縮の予防

手の装具は変形・麻痺の型と対応させる。RAの変形用スプリントと、末梢神経麻痺の装具を混同しない。

末梢神経麻痺手の形装具
尺骨神経麻痺鷲手(かぎ爪手):MP過伸展+PIP・DIP屈曲(手内在筋麻痺)ナックルベンダー(MP関節を屈曲方向へ補助)
正中神経麻痺猿手(母指対立不能)対立装具(母指対立位保持)。低位の麻痺は短対立装具、手関節の支持も要るなら長対立装具
橈骨神経麻痺下垂手コックアップ・スプリント(手関節背屈位保持)

変形が「過伸展」なら「屈曲を補助する」装具で矯正する、と矯正方向で考えると選びやすい。