言語聴覚士の1日 — 回復期リハビリ病棟STのリアルなスケジュール

この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。

「言語聴覚士って、毎日どんな仕事をしているの?」STを目指している方なら一度は気になったことがあるはずです。でも実際に働いているSTに話を聞く機会はなかなかないものです。この記事では、回復期リハビリ病棟で働く言語聴覚士の1日を、リアルなスケジュールとともに紹介します。教科書には書いていない仕事の手触りが伝わればと思います。

1. 回復期リハビリ病棟STの1日のタイムスケジュール

時間内容
8:30出勤・申し送り・カルテ確認
9:00〜個別訓練(1単位20分を午前中に複数件)
12:00昼休憩(嚥下評価が入ることも)
13:00〜個別訓練再開・カンファレンス
15:30〜記録・翌日の準備・家族説明
17:00〜症例検討・教材作成・翌日の訓練準備
17:30退勤(目安)
💡 現役STから: 17時以降の時間が、実は1日の中で好きな時間帯のひとつです。訓練が終わった後、担当患者さんへのアプローチについて先輩と話し合い、アドバイスをもらいながら翌日の訓練を組み立てています。「ここまでできた、次はここ」と自分で判断できると、翌日の訓練に自信を持って臨めます。負荷の時間ですが、面白い時間でもあります。

2. 「1単位20分」の訓練って何をしているの?

STの訓練は1単位20分が基本単位です。この中でSTは何をしているのでしょうか。対象によって内容はまったく異なります。

失語症の患者さんの場合

言葉を思い出しにくい・理解しにくいといった症状に対して、絵カードや文字を使った言語訓練を行います。「伝えたいのに言葉が出ない」という患者さんの状況に寄り添いながら、コミュニケーション手段を広げていく作業です。

嚥下障害の患者さんの場合

食べること・飲み込むことが難しくなった状態への支援です。口腔体操や姿勢調整、食形態の検討など、安全に食事ができるよう多職種と連携して対応します。

構音障害の患者さんの場合

発音が不明瞭になった状態への訓練です。発声練習や会話練習を通じて、周囲に伝わりやすい話し方を目指します。

💡 現役STから: 担当している患者さんは嚥下障害の方が多いですが、個人的に印象に残っているのは失語症への関わりです。「言いたいのに言葉が出ない」状態に向き合い、少しでも「伝えられた」と感じてもらえるよう取り組む訓練は、他のセラピーにはない独自の面白さがあります。訓練で気をつけているのは、患者さん本人への話しかけ方だけでなく、「家族への説明の仕方」も同じくらい大事にしていることです。

3. カンファレンスという仕事

回復期病棟では、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・MSWなどと定期的にカンファレンスを行います。患者さんの退院先・生活環境・回復目標を多職種で共有する場です。

STはここで「言語・嚥下・認知機能の状態と見通し」を報告します。医療の中で「言葉と食事の専門家」として発言できるのはSTだけです。

💡 現役STから: STは他の職種から見ると、何をしているのかわかりにくい職種です。だからこそ、「今どこまでできていて、次の1か月で何を達成できそうか」を本人にも他職種にも明確に伝えることが、カンファレンスの一番の役割だと思っています。

4. STになってよかったと思う瞬間

STの仕事の面白さを語るとき、私はいつもあるエピソードを思い出します。

失語症の患者さんが、病室で看護師さんに対してイライラしていました。伝えたいのに伝わらないことへの苛立ちでした。絵を描いてもらったり、文字を提示したり、病室の周囲を一緒に見回して手がかりを探したりしました。

1時間かけてわかったのは、「バスの路線変更のお知らせ」でした。退院後に息子さんたちに早く伝えなければ、と気になっていたことでした。その瞬間、患者さんと私は一緒に泣きました。

5. STの活躍の場は病棟だけじゃない

急性期病棟

急な対応や嚥下評価の緊急依頼が入るなど、スピードと判断力が求められる。

回復期リハビリ病棟

同じ患者さんを数週間〜数か月担当し、回復の過程に伴走できる。やりがいが大きい。

老健・デイケア

身体機能の維持が中心。集団プログラムを組む機会が多い。

訪問リハビリ

患者さんの自宅に出向き、生活場面に合わせた実践的な支援ができる。

小児領域

言語発達・構音障害・AACの支援が中心。子どもの成長を長期で見られる。

養成校

次世代のSTを育てる仕事。学生の国試合格・臨床家としての成長を支援する。

6. STを目指す人へ

体力的にきつい?
患者さんを移動させることは多くないですが、記録・カンファレンス・教材作成の時間が思った以上にあります。頭を使う仕事の疲労感があります。

コミュニケーションが苦手でも大丈夫?
むしろ「うまく話せない人の気持ちがわかる」ことの方が強みになることがあります。

STの仕事は、言葉・食べること・聞こえるという人の生活の根幹を支える仕事です。国家試験の勉強は大変ですが、その先の臨床の世界は、それ以上に豊かに満ちています。

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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月