嚥下障害 国試対策ガイド
この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。
嚥下障害は近年の国試で出題数が増加している重要科目です。解剖・生理の基礎から評価・訓練まで体系的に整理しましょう。
1. 嚥下の解剖と生理
嚥下に関わる主な筋肉・神経を理解することが国試対策の第一歩です。嚥下は舌・口唇・軟口蓋・咽頭・食道の協調運動で成立し、舌咽神経(IX)・迷走神経(X)・舌下神経(XII)・三叉神経(V)・顔面神経(VII)が関与します。
2. 嚥下5期モデル(摂食嚥下の段階)
| 期 | 内容 | 関与する主な動き |
| 先行期(認知期) | 食物を認識し、食べる準備をする段階 | 視覚・嗅覚による食物認識、唾液分泌 |
| 準備期 | 食物を口腔内で咀嚼・唾液と混合し食塊を形成する | 口唇閉鎖、咀嚼、舌の操作 |
| 口腔期 | 食塊を咽頭へ送り込む(随意的) | 舌が食塊を後方へ押し込む(1秒以内) |
| 咽頭期 | 嚥下反射が起き食塊が咽頭〜食道入口部を通過(不随意) | 軟口蓋挙上、舌骨・喉頭の前上方移動、食道入口部開大 |
| 食道期 | 食塊が食道蠕動運動で胃へ送られる(不随意) | 食道蠕動(8〜20秒) |
国試頻出ポイント
咽頭期は「不随意」。誤嚥が起きやすいのは咽頭期(嚥下反射の遅延・喉頭閉鎖不全)。喉頭蓋は咽頭期に後転して気道を保護する。
3. 誤嚥の種類
- 顕性誤嚥:むせを伴う誤嚥。気道に入った際に咳反射が起きる。
- 不顕性誤嚥(サイレントアスピレーション):むせを伴わない誤嚥。感覚障害があると起きやすい。誤嚥性肺炎のリスクが高い。
- 嚥下前誤嚥:嚥下反射が起きる前に食塊が咽頭に落ち込む。
- 嚥下中誤嚥:嚥下反射中に喉頭閉鎖が不十分で誤嚥。
- 嚥下後誤嚥:嚥下後に咽頭残留物が気道に流れ込む。
4. 主な評価法
| 評価法 | 概要 |
| VF(嚥下造影検査) | X線透視下でバリウム入り食物を摂取し、嚥下動態を動画で観察。誤嚥の確認・食形態選択の根拠に。 |
| VE(嚥下内視鏡検査) | 鼻腔から内視鏡を挿入して咽頭を観察。VFより簡便でベッドサイド可能。ホワイトアウトにより嚥下瞬間は観察できない。 |
| 反復唾液嚥下テスト(RSST) | 30秒間に唾液嚥下が3回以上できるかを確認。スクリーニング。 |
| 改訂水飲みテスト(MWST) | 3mLの冷水を嚥下させ評価。むせ・呼吸変化・嗄声を確認。 |
| フードテスト(FT) | ゼリーを使用したスクリーニング検査。MWSTで誤嚥リスクが高い場合に実施。 |
5. 訓練法(間接訓練・直接訓練)
間接訓練(食物を使わない機能訓練)
- アイスマッサージ:氷を巻いた綿棒で前口蓋弓を刺激し嚥下反射を促進。
- 口腔ケア:口腔内を清潔に保ち誤嚥性肺炎を予防。
- 頸部ROM訓練:頸部の柔軟性を高め嚥下時の喉頭運動を改善。
- Shaker exercise:仰臥位で頭部を挙上保持し舌骨上筋群を強化。食道入口部の開大改善。
- バルーン拡張法:食道入口部の弛緩不全に対し、バルーンカテーテルで開大する。
直接訓練(食物を使った嚥下訓練)
- 頸部前屈位:喉頭の気道保護を高め誤嚥リスクを低減。
- 一口量の調整・食形態の調整:嚥下調整食(学会分類2021)に基づく食形態選択。
- 声門上嚥下法:嚥下前に息を止め嚥下後すぐ咳払い。気道保護。
- 努力嚥下:意識的に強い力で嚥下し咽頭残留を減少させる。
💡 臨床メモ: 「食べたい」という意欲は嚥下リハビリの大きな原動力です。VFやVEで誤嚥リスクを確認しながら、患者さんの希望する食形態を目指してアプローチすることが実際の臨床では重要です。
⚠️ よくある誤解
- 「誤嚥=肺炎」→ 誤嚥が起きても不顕性誤嚥でなければ喀出できる場合あり。免疫力・口腔衛生が誤嚥性肺炎の発症に大きく関わる。
- 「きざみ食は安全」→ バラつきやすく口腔内でまとまりにくいため、誤嚥リスクが高い場合がある。とろみの付与が必要なことも多い。
- 「嚥下訓練は食事が食べられないとできない」→ 間接訓練(食物を使わない訓練)は絶食中でも実施可能。
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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月