失語症 国試対策ガイド
この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。
失語症は言語聴覚士国家試験で毎回出題される最重要科目の一つです。分類・評価・訓練の体系を整理することが合格への近道です。
1. 失語症とは
失語症とは、後天的な脳損傷(脳梗塞・脳出血・脳腫瘍など)により言語機能が障害された状態です。話す・聞く・読む・書くという4つの言語モダリティすべてに影響が出ます。失語症は言語そのものの障害であり、構音障害(運動機能の障害)や認知症(全般的な認知機能の低下)とは区別されます。
2. 古典的失語症候群の分類
国試では失語のタイプごとの特徴を問う問題が頻出です。以下の表で整理してください。
| タイプ | 病巣 | 流暢性 | 聴理解 | 復唱 | 主な特徴 |
| ブローカ失語 | 左前頭葉(ブローカ野) | 非流暢 | 比較的良好 | 障害 | 発語量少ない、電文体、失書あり |
| ウェルニッケ失語 | 左側頭葉(ウェルニッケ野) | 流暢 | 著明障害 | 障害 | ジャルゴン、錯語、語の理解困難 |
| 全失語 | シルビウス裂周囲広範 | 非流暢 | 著明障害 | 障害 | 4モダリティ全般的に重症 |
| 伝導失語 | 弓状束(頭頂葉) | 流暢 | 比較的良好 | 著明障害 | 復唱のみ選択的に障害 |
| 超皮質性運動失語 | 前頭葉前部・補足運動野 | 非流暢 | 比較的良好 | 良好 | 発語少ないが復唱は保たれる |
| 超皮質性感覚失語 | 頭頂後頭移行部 | 流暢 | 障害 | 良好 | 聴理解障害あるが復唱は保たれる |
| 健忘失語 | 側頭頭頂後頭移行部 | 流暢 | 比較的良好 | 比較的良好 | 喚語困難が主症状 |
国試頻出ポイント
「復唱が保たれる」のは超皮質性運動失語・超皮質性感覚失語・超皮質性混合失語。「シルビウス裂周囲失語症候群」と呼ばれ、ブローカ・ウェルニッケ・伝導失語は復唱が障害される。
3. 主な評価法
| 検査名 | 特徴 |
| WAB失語症検査(日本語版) | 流暢性・聴理解・復唱・呼称の4領域を評価。失語指数(AQ)算出可能。最も広く使用される標準的失語症検査。 |
| 標準失語症検査(SLTA) | 国内で広く使用。話す・聞く・読む・書く・計算の26項目を評価。プロフィール図で視覚的把握が可能。 |
| 失語症鑑別診断検査 | 失語のタイプ分類に特化した簡便な検査。スクリーニングに有用。 |
| トークンテスト | 聴理解の精密評価。色・形・大きさの異なるトークンを操作する。軽度の聴理解障害の検出に有用。 |
4. 主な訓練法
- 刺激促進法(Schuell法):強く・繰り返し・多様な感覚刺激を用いて言語反応を促す古典的訓練法。
- PACE(Promoting Aphasics Communicative Effectiveness):絵カードを使い患者とセラピスト間で情報伝達を行う実用的コミュニケーション訓練。
- メロディックイントネーションセラピー(MIT):音楽のメロディを使って発話を促す。非流暢性失語(特にブローカ失語)に有効。右半球を活用。
- CILT(Constraint-Induced Language Therapy):口話コミュニケーションのみに制約し集中的に訓練。
- AAC(拡大代替コミュニケーション):重度失語症者に対し文字盤・コミュニケーションノートなどを活用。
5. 関連する概念・用語
- 錯語:音素性錯語(音を入れ替え)、語性錯語(別の語で代替)、新造語(意味不明な語)
- 喚語困難:言いたい語が出てこない症状。健忘失語の主症状でもある。
- 保続:前の反応が繰り返し現れる現象。
- ジャルゴン:意味のない言葉が流暢に産出される症状。ウェルニッケ失語で頻出。
💡 臨床メモ: ブローカ失語の患者さんは、言葉が出ないもどかしさから抑うつや不安が強くなりやすいです。「伝わった」という成功体験を積み重ねることが訓練のモチベーションにつながります。
⚠️ よくある誤解
- 「伝導失語は聴理解も悪い」→ 伝導失語の聴理解は比較的良好。選択的に復唱のみが著明に障害される。
- 「全失語は回復しない」→ 急性期の全失語がブローカ失語に移行するケースは珍しくない。
- 「流暢性失語=軽症」→ ウェルニッケ失語は流暢だが聴理解が著明に障害されており、日常会話は困難。
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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月