AACは重度コミュニケーション障害を持つ人が「伝える力」を取り戻すための手段の総称。ALS・脳性麻痺・重度失語症・知的障害など幅広い疾患で活用され、STが中心的役割を担う領域だ。
AAC(Augmentative and Alternative Communication:拡大代替コミュニケーション)とは、話し言葉だけでは十分にコミュニケーションが取れない人が、音声言語を補助(Augmentative)または代替(Alternative)するために用いる手段・機器・方略の総称。
重要なのは「AACは最後の手段ではない」という点。早期に導入することで、本人の意思表示の機会を確保し、QOLの向上や言語発達の促進につながることが示されている。
| 分類 | 具体例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 非補助型AAC(Unaided) | 手話・ジェスチャー・表情・身体動作 | 機器を必要としない。意思疎通相手が理解できる必要がある。 |
| ローテクAAC | 文字盤・絵カード・コミュニケーションノート・PECS | 電源不要・安価・耐久性が高い。習得のハードルが低い。 |
| ミドルテクAAC | 録音型VOCA(BIGmackなど) | 単純なメッセージを録音・再生。操作が簡単で身体障害が重い方にも使いやすい。 |
| ハイテクAAC | 多機能VOCA・視線入力装置・スイッチ操作タブレット | 多くの語彙・カスタマイズ性が高い。専門家によるフィッティングが必要。 |
音声を出力するコミュニケーション機器の総称。ボタンを押すと録音した音声が再生される単純なものから、多数のボタンにシンボル・テキストを組み合わせた複雑なものまである。重度失語症・ALS・脳性麻痺などで広く用いられる。
カメラで視線の動きを追跡し、画面上のシンボルや文字を選択する。ALSの進行末期など、指の動きすら困難な場合でも使用できる。近年はiPadとの組み合わせで低コスト化が進んでいる。
身体のわずかな動き(指・頭・呼気など)でスイッチを操作し、スキャン(自動的に移動するカーソル)で選択する。視線入力よりも習得しやすいケースがある。
透明な文字盤(ETRAN)は視線だけでアルファベット・ひらがなを指し示せる。電源不要で壊れにくく、緊急時のバックアップとしても有用。
「この疾患にはこのAAC」という単純な答えはない。以下の要素を総合的に評価して選定する。
| 疾患・状態 | AACの活用場面 |
|---|---|
| ALS(筋萎縮性側索硬化症) | 発話困難になる前から段階的に導入。視線入力・スイッチが多い。 |
| 重度失語症 | VOCA・コミュニケーションノートで意思伝達を補う。 |
| 脳性麻痺(重度) | スイッチアクセスや視線入力でコミュニケーション参加を支援。 |
| 自閉スペクトラム症 | PECS・絵カード・タブレットアプリで言語発達を促す。 |
| 喉頭摘出後 | 電気式人工喉頭・食道発声・シャント発声(専用のAACと重なる部分)。 |