AAC(拡大代替コミュニケーション)

この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。

AACは重度コミュニケーション障害を持つ人が「伝える力」を取り戻すための手段の総称。ALS・脳性麻痺・重度失語症・知的障害など幅広い疾患で活用され、STが中心的役割を担う領域だ。

1. AACとは

AAC(Augmentative and Alternative Communication:拡大代替コミュニケーション)とは、話し言葉だけでは十分にコミュニケーションが取れない人が、音声言語を補助(Augmentative)または代替(Alternative)するために用いる手段・機器・方略の総称。

重要なのは「AACは最後の手段ではない」という点。早期に導入することで、本人の意思表示の機会を確保し、QOLの向上や言語発達の促進につながることが示されている。

2. AACの種類と分類

分類具体例特徴
非補助型AAC(Unaided)手話・ジェスチャー・表情・身体動作機器を必要としない。意思疎通相手が理解できる必要がある。
ローテクAAC文字盤・絵カード・コミュニケーションノート・PECS電源不要・安価・耐久性が高い。習得のハードルが低い。
ミドルテクAAC録音型VOCA(BIGmackなど)単純なメッセージを録音・再生。操作が簡単で身体障害が重い方にも使いやすい。
ハイテクAAC多機能VOCA・視線入力装置・スイッチ操作タブレット多くの語彙・カスタマイズ性が高い。専門家によるフィッティングが必要。
国試頻出ポイント 「PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)」は自閉スペクトラム症の支援でよく出る。絵カードを渡すことで要求を表現するシステムで、発語を促す効果もある。

3. 主なAAC機器・手段の詳細

3-1. VOCA(Voice Output Communication Aids)

音声を出力するコミュニケーション機器の総称。ボタンを押すと録音した音声が再生される単純なものから、多数のボタンにシンボル・テキストを組み合わせた複雑なものまである。重度失語症・ALS・脳性麻痺などで広く用いられる。

3-2. 視線入力装置(Eye Tracking)

カメラで視線の動きを追跡し、画面上のシンボルや文字を選択する。ALSの進行末期など、指の動きすら困難な場合でも使用できる。近年はiPadとの組み合わせで低コスト化が進んでいる。

3-3. スイッチアクセス

身体のわずかな動き(指・頭・呼気など)でスイッチを操作し、スキャン(自動的に移動するカーソル)で選択する。視線入力よりも習得しやすいケースがある。

3-4. 文字盤・コミュニケーションノート

透明な文字盤(ETRAN)は視線だけでアルファベット・ひらがなを指し示せる。電源不要で壊れにくく、緊急時のバックアップとしても有用。

4. AACの適応と選定の考え方

「この疾患にはこのAAC」という単純な答えはない。以下の要素を総合的に評価して選定する。

5. AACが有効な主な対象者

疾患・状態AACの活用場面
ALS(筋萎縮性側索硬化症)発話困難になる前から段階的に導入。視線入力・スイッチが多い。
重度失語症VOCA・コミュニケーションノートで意思伝達を補う。
脳性麻痺(重度)スイッチアクセスや視線入力でコミュニケーション参加を支援。
自閉スペクトラム症PECS・絵カード・タブレットアプリで言語発達を促す。
喉頭摘出後電気式人工喉頭・食道発声・シャント発声(専用のAACと重なる部分)。
💡 臨床メモ: AACを導入するとき、本人より先に家族が「もう話せないのか」と落ち込むケースがある。「AACは諦めではなく、伝える手段を広げること」という視点を家族と共有することが、導入を成功させる鍵になる。

⚠️ よくある誤解

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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月