失語症の分類と鑑別 完全まとめ
この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。
失語症のタイプ分類は国試最頻出テーマのひとつです。流暢性・復唱・理解・呼称の4軸を基準に8タイプを確実に区別できるようにしましょう。
1. 失語症分類の4つの軸
失語症のタイプを判定する際は以下の4つの側面を評価します。
- 流暢性:発話はスムーズか(文章量・発話努力・プロソディー)
- 聴覚的理解:言葉を理解できるか
- 復唱:聞いた言葉を繰り返せるか
- 呼称:物の名前が言えるか(語想起)
2. 失語症8タイプ 一覧表
| タイプ | 流暢性 | 理解 | 復唱 | 呼称 | 主な病巣 |
| ブローカ失語 | 非流暢 | 比較的良 | 障害 | 障害 | 左前頭葉(ブローカ野) |
| ウェルニッケ失語 | 流暢 | 著明障害 | 障害 | 障害 | 左側頭葉(ウェルニッケ野) |
| 伝導失語 | 流暢 | 比較的良 | 著明障害 | 障害 | 弓状束・縁上回 |
| 全失語 | 非流暢 | 著明障害 | 著明障害 | 著明障害 | 中大脳動脈領域広汎 |
| 超皮質性運動失語 | 非流暢 | 比較的良 | 良好(保持) | 障害 | 左前頭葉(ブローカ野の前方) |
| 超皮質性感覚失語 | 流暢 | 著明障害 | 良好(保持) | 障害 | 頭頂葉・後頭葉の境界域 |
| 混合型超皮質性失語 | 非流暢 | 著明障害 | 良好(保持) | 著明障害 | 言語野周囲の広汎な境界域 |
| 失名詞失語 | 流暢 | 良好 | 良好 | 障害(主症状) | 多様(回復期に多い) |
覚え方のポイント:「復唱が保たれる = 超皮質性」
超皮質性失語(運動性・感覚性・混合型)の共通点は「復唱が保たれる」こと。これは言語野が「孤立」しているためで、反響言語(エコラリア)も特徴的。この特徴を軸に覚えると間違えにくい。
3. よく混同するペアの鑑別
ブローカ失語 vs 超皮質性運動失語
| ブローカ失語 | 超皮質性運動失語 |
| 流暢性 | 非流暢 | 非流暢 |
| 理解 | 比較的良好 | 比較的良好 |
| 復唱 | 障害(×) | 保たれる(○)← ここが違う |
| 病巣 | ブローカ野(44・45野) | ブローカ野の前方・上方 |
ウェルニッケ失語 vs 超皮質性感覚失語
| ウェルニッケ失語 | 超皮質性感覚失語 |
| 流暢性 | 流暢(錯語多い) | 流暢 |
| 理解 | 著明障害 | 著明障害 |
| 復唱 | 障害(×) | 保たれる(○)← ここが違う |
| 病巣 | ウェルニッケ野(22野) | ウェルニッケ野より後方・下方 |
4. 純粋型の失語(局在型)
| タイプ | 特徴 | 病巣 |
| 純粋失読 | 読めないが書ける(失書はない) | 左後頭葉・脳梁膨大部 |
| 純粋失書 | 書けないが読める(失読はない) | 左頭頂葉(角回付近) |
| 失読失書 | 読み書き両方の障害 | 左角回 |
| 純粋語唖 | 自発話障害・復唱障害だが文字言語は保たれる | ブローカ野周辺 |
| 純粋語聾 | 語音の聴覚的理解のみ障害(読み書き・自発話は正常) | 左側頭葉(ウェルニッケ野)両側性 |
5. 失語症の訓練法と適応
| 訓練法 | 内容・適応 |
| 刺激法(Schuell法) | 反復した刺激で言語機能の促通。ブローカ失語・中等度失語に適応。 |
| PACE(Picture-Aided Communication Enhancement) | 絵カードを使った実用的コミュニケーション訓練。重度失語にも適応。 |
| MIT(メロディーイントネーション療法) | 節をつけて発話を促す。非流暢性失語(ブローカ失語)に適応。 |
| 促進法(竹内法) | 文脈・情動を利用して発話を促す。 |
| AAC(拡大代替コミュニケーション) | 文字板・VOCA・ジェスチャー。重度失語・発声困難例に適応。 |
💡 臨床メモ: 実際の臨床では教科書通りの「型」に当てはまらない混合像が多く見られます。国試では典型例を押さえつつ、臨床では個々の症状プロフィールを丁寧に評価することが大切です。
⚠️ よくある誤解
- 「失語タイプは変わらない」→ 急性期から回復期にかけてタイプが移行することは多い(例:全失語→ブローカ失語)。
- 「流暢性失語は軽い」→ ウェルニッケ失語は語の理解が著明に障害されており、日常会話の成立が困難なケースも多い。
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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月