認知症は高次脳機能障害の一つとして国試にも登場するが、失語症との鑑別・各型の言語特徴・STが担う評価の役割が問われることが多い。類似した症状の整理が得点のカギになる。
認知症は記憶・見当識・判断力・言語など複数の認知機能が障害される状態。STが関わる主な場面は「言語・コミュニケーション機能の評価」「嚥下機能の評価と訓練」「失語症との鑑別」の3つだ。
特に軽度認知障害(MCI)から認知症への進行過程での早期スクリーニングは、STの専門性が活かされる場面として国試でも問われやすい。
| 型 | 代表的な原因疾患 | 言語・コミュニケーションの特徴 |
|---|---|---|
| アルツハイマー型認知症(AD) | アルツハイマー病 | 初期は喚語困難・迂言が目立つ。進行すると語彙の減少・空語(あれ・それ等)多用・エコラリア。流暢性は比較的保たれる。 |
| 前頭側頭型認知症(FTD) | ピック病など | 行動変容型(bvFTD)では社会的行動の障害が先行。意味性認知症(SD)では語義失語(物の名前と概念の対応が失われる)が顕著。進行性非流暢性失語(PNFA)は文法・構音の障害が先行。 |
| レビー小体型認知症(DLB) | レビー小体病 | 認知の変動が特徴。幻視を伴うことが多い。言語障害はADより軽めだが、パーキンソン症状があれば構音・発声障害が生じる。 |
| 血管性認知症(VaD) | 脳梗塞・脳出血後 | 病巣部位による。ラクナ梗塞が多ければ構音障害・嚥下障害が前面に出ることも。感情失禁を伴うことが多い。 |
| 検査名 | 特徴と用途 |
|---|---|
| HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール) | 30点満点。20点以下で認知症の疑い。日本で最も広く使われるスクリーニングツール。 |
| MMSE(Mini-Mental State Examination) | 30点満点。23点以下で認知症の疑い(目安)。世界標準的な評価。見当識・計算・言語・構成などを含む。 |
| MoCA(Montreal Cognitive Assessment) | 30点満点。26点未満でMCIの疑い。MMSEより感度が高くMCI検出に優れる。 |
| ADAS-cog | アルツハイマー病の重症度評価・薬物臨床試験でも使用。語想起・指示従命・言語課題など複数の課題で構成。 |
| WAB失語症検査 | 失語症との鑑別にも活用される。認知症では流暢性・聴理解が比較的保たれる点が失語症との差となる場合がある。 |
臨床でも国試でも問われるのが、失語症と認知症の鑑別だ。ポイントを整理しておこう。
| 項目 | 失語症 | 認知症(AD) |
|---|---|---|
| 発症様式 | 急性(脳卒中等の後) | 緩徐進行性 |
| 記憶障害 | 目立たない(言語の問題が主) | 顕著(特にエピソード記憶) |
| 見当識 | 保たれることが多い | 進行とともに障害される |
| 日常生活の問題 | コミュニケーション中心 | 生活全般(お金・時間管理など) |
| 音韻系の誤り | 音素性錯語・語性錯語あり | 少ない(特に初期) |