認知症の言語評価とSTの関わり

この記事の執筆者: 現役の言語聴覚士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。

認知症は高次脳機能障害の一つとして国試にも登場するが、失語症との鑑別・各型の言語特徴・STが担う評価の役割が問われることが多い。類似した症状の整理が得点のカギになる。

1. 認知症とは何か — STが関わる理由

認知症は記憶・見当識・判断力・言語など複数の認知機能が障害される状態。STが関わる主な場面は「言語・コミュニケーション機能の評価」「嚥下機能の評価と訓練」「失語症との鑑別」の3つだ。

特に軽度認知障害(MCI)から認知症への進行過程での早期スクリーニングは、STの専門性が活かされる場面として国試でも問われやすい。

2. 主な認知症の型と言語特徴

代表的な原因疾患言語・コミュニケーションの特徴
アルツハイマー型認知症(AD)アルツハイマー病初期は喚語困難・迂言が目立つ。進行すると語彙の減少・空語(あれ・それ等)多用・エコラリア。流暢性は比較的保たれる。
前頭側頭型認知症(FTD)ピック病など行動変容型(bvFTD)では社会的行動の障害が先行。意味性認知症(SD)では語義失語(物の名前と概念の対応が失われる)が顕著。進行性非流暢性失語(PNFA)は文法・構音の障害が先行。
レビー小体型認知症(DLB)レビー小体病認知の変動が特徴。幻視を伴うことが多い。言語障害はADより軽めだが、パーキンソン症状があれば構音・発声障害が生じる。
血管性認知症(VaD)脳梗塞・脳出血後病巣部位による。ラクナ梗塞が多ければ構音障害・嚥下障害が前面に出ることも。感情失禁を伴うことが多い。
国試頻出ポイント 意味性認知症(SD)の「語義失語」は頻出。「物の名前は分かるが、その言葉の意味が分からなくなる」という特徴が問われる。ADとFTDの鑑別ポイントも要チェック。

3. STが使用する認知・言語評価ツール

検査名特徴と用途
HDS-R(改訂長谷川式認知症スケール)30点満点。20点以下で認知症の疑い。日本で最も広く使われるスクリーニングツール。
MMSE(Mini-Mental State Examination)30点満点。23点以下で認知症の疑い(目安)。世界標準的な評価。見当識・計算・言語・構成などを含む。
MoCA(Montreal Cognitive Assessment)30点満点。26点未満でMCIの疑い。MMSEより感度が高くMCI検出に優れる。
ADAS-cogアルツハイマー病の重症度評価・薬物臨床試験でも使用。語想起・指示従命・言語課題など複数の課題で構成。
WAB失語症検査失語症との鑑別にも活用される。認知症では流暢性・聴理解が比較的保たれる点が失語症との差となる場合がある。

4. 失語症と認知症の言語障害の鑑別

臨床でも国試でも問われるのが、失語症と認知症の鑑別だ。ポイントを整理しておこう。

項目失語症認知症(AD)
発症様式急性(脳卒中等の後)緩徐進行性
記憶障害目立たない(言語の問題が主)顕著(特にエピソード記憶)
見当識保たれることが多い進行とともに障害される
日常生活の問題コミュニケーション中心生活全般(お金・時間管理など)
音韻系の誤り音素性錯語・語性錯語あり少ない(特に初期)

5. STの役割とアプローチ

💡 臨床メモ: 認知症の方との会話で大切なのは「正しく伝えること」より「安心して話せる空間を作ること」だと実感している。訂正や否定より、共感と肯定が関係構築の基本になる。

⚠️ よくある誤解

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※ 本記事は現役の言語聴覚士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月