肺の働き(ガス交換と換気)を外から助ける装置の章。出題がいちばん多いのは高気圧酸素治療で、次が加温加湿器と人工鼻、換気の設定と計算、VAPと気管吸引、在宅呼吸管理。同じ趣旨の問題が形を変えて何度も出るので、各節の表と「切る肢」を押さえれば点になる。
分け目は装置が送るガスの量が、患者の吸気流量を上回るかどうか。低流量系は足りない分を室内気で補うので、吸入酸素濃度(FiO2)が患者の呼吸のしかたで変わる。高流量系は吸気流量より多いガスを流すので、設定した酸素濃度がそのまま吸われる。
| 分類 | 器具(国試の語形) | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 低流量システム | 鼻カニューレ | 低流量でも高CO2の患者ではCO2ナルコーシスが起こりうる。会話・食事ができる |
| 簡易酸素マスク | 酸素濃度は一定にならない。流量が少ないとマスク内の呼気を再呼吸する | |
| 開放式マスク(オープンマスク) | 顔の前が大きく開いた形で、酸素を口と鼻に向けて吹き付ける。呼気がこもりにくく、CO2の再呼吸が少ない。会話しやすい。低流量系なので濃度は一定にならない | |
| リザーバ付き酸素マスク(リザーバーバッグ付き) | マスクとリザーバの間などに一方弁がある。簡易マスクで酸素化が保てないときに使う高濃度用 | |
| 高流量システム | ベンチュリーマスク(ベンチュリマスク) | ベンチュリ効果で空気を取り込み、酸素濃度を設定できる |
| ネブライザ付酸素吸入装置(ネブライザー付き酸素吸入器) | 酸素濃度を設定でき、同時に加湿できる | |
| 高流量鼻カニューレ酸素療法(ハイフロー/HFNC/ネーザルハイフロー) | 下の表を参照 |
流量の目安(代表的な値):鼻カニューレは1〜6 L/min程度、簡易酸素マスクは5〜10 L/min程度、リザーバ付き酸素マスクは6〜15 L/min程度。簡易マスクを5 L/min未満で使うとマスク内の呼気CO2を再呼吸しやすい。鼻カニューレで流量を上げすぎると鼻粘膜が乾き、濃度もそれほど上がらない。どの低流量器具でも、患者の一回換気量や呼吸数が変われば吸っている酸素濃度も変わるので、「簡易マスクは酸素濃度が一定」は誤り。
高流量系(ベンチュリーマスク・ネブライザ付酸素吸入装置・HFNC)が正解側。鼻カニューレ・簡易マスク・リザーバ付きマスクは濃度が一定にならない。「一方弁があるのは」と聞かれたらリザーバ付き酸素マスク。
使い分けの肢も切れるように:ベンチュリーマスクは一定の酸素濃度を正確に送るために使う(「加湿が必要なときに使う」は誤り)。ネブライザ付酸素吸入装置は濃度の設定と加湿・去痰のために使う(「肺水腫の治療に使う」は誤り)。
酸素(100%)に空気(21%)を混ぜて目標濃度FiO2にする。空気の取込比(空気:酸素)は次の式で出る。
空気/酸素 =(100 − FiO2)÷(FiO2 − 21)、総流量 = 酸素流量 ×(1 + 空気/酸素)
| 設定濃度 | 空気:酸素(おおよそ) | 総流量45 L/minに要る酸素流量 |
|---|---|---|
| 24% | 約25:1 | 約1.7 L/min |
| 28% | 約10:1 | 約4 L/min |
| 35% | 約5:1 | 約8 L/min |
| 40% | 約3:1 | 約11 L/min |
| 50% | 約1.7:1 | 約17 L/min |
例題:28%で酸素4 L/minのとき総流量は? → 取込比 =(100−28)÷(28−21)=72÷7≒10.3。総流量 = 4 ×(1+10.3)≒ 45 L/min。濃度を上げるほど取込比は小さくなり、同じ酸素流量なら総流量は減る。
| 正しい記述として出るもの | 誤りとして出るもの(切る) |
|---|---|
| FiO2は21〜100%の範囲で設定できる | FiO2の上限は60%まで |
| 流量は最大約60 L/min(成人) | 最大10 L/min程度 |
| 鼻咽頭の死腔を洗い出す(死腔は減る) | 死腔が増える |
| 呼気に抵抗がかかり、軽いPEEP効果がある | PEEP効果はない |
| 加温加湿器で十分に加湿する(加湿は必須) | 加湿は不要/人工鼻で加湿する |
| 会話や経口摂取(食事)ができる | 食事はできない |
| ブレンダ型(酸素空気ミキサー)とベンチュリー型がある。専用カニューレを使う | 感染が増える |
| COPDの在宅で使われることもある |
しくみで覚えると肢を切りやすい。吸気流量を上回る大流量を流すので、室内気が混ざらず設定FiO2がそのまま吸われる。大流量が鼻咽頭にたまった呼気を押し流すので、死腔が減り、CO2の再呼吸が減る。大流量が呼気の出口をふさぐ形になるので、呼気に抵抗がかかり軽い陽圧(PEEP効果)が生じる。乾いたガスを大量に流すと気道が傷むので、加温加湿器が必須になる(人工鼻は使わない)。
酸素療法の目的は低酸素血症の改善と、それによる組織低酸素の防止。開始の目安はPaO2 60 Torr未満(Torr=mmHg。数値は同じで、国試ではmmHgで出ることが多い)(SpO2 90%未満)。周辺機器として、流量は酸素流量計、濃度は酸素濃度計(ガルバニ電池式・ポーラログラフ式)で確認する。保育器では温度・湿度とともに酸素濃度を管理し、新生児では高濃度の酸素を避ける。酸素空気ミキサー(ブレンダ)は酸素と空気を混ぜて、任意の濃度のガスを高い流量で送る装置で、HFNCや人工呼吸器の酸素濃度調節にも使われる。酸素濃度計のセンサは消耗するので、定期的に空気(21%)や酸素(100%)で校正する。
| 合併症 | 中身 |
|---|---|
| CO2ナルコーシス | 慢性の高CO2血症(COPD急性増悪など)に高濃度酸素を与えると、呼吸が抑えられ低換気になり、CO2がたまって意識障害を起こす(過換気ではない) |
| 酸素中毒 | 高濃度酸素で活性酸素が増え、肺や中枢神経を傷害する |
| 新生児の肺傷害・未熟児網膜症 | 未熟な新生児では高濃度酸素で肺や網膜の血管が傷害される |
| 装置 | しくみ | 覚える点 |
|---|---|---|
| ジェットネブライザ(マイクロポンプ式を含む) | 圧縮ガスの噴流でベンチュリ効果を起こし、薬液を吸い上げて霧にする | バッフルに当てて大きな粒子を落とす。振動子は使わない |
| 超音波ネブライザ | 振動子(圧電素子)の超音波振動で薬液を霧にする | 粒子が細かく量が多い |
| メッシュネブライザ | 振動でメッシュの微細な孔から薬液を押し出す | 小型・静か・残液が少ない |
| pMDI(加圧噴霧式定量吸入器) | ボンベから一定量を噴霧 | 噴霧と吸気のタイミングを合わせる必要がある(スペーサで補う) |
| DPI(ドライパウダー吸入器) | 粉末を自分の吸気で吸う | 十分に強い吸気が必要 |
粒子の大きさで届く場所が変わり、細かい粒子ほど末梢の気道まで届く。ジェット式は圧縮ガス(酸素や空気)が要るが、構造が簡単で多くの薬剤に使える。超音波式は振動の熱で薬液の温度が上がるので、熱に弱い薬には向かない。人工呼吸中に回路でネブライザを使うときは、人工鼻を外す(薬液で目詰まりする)。
「振動子を使う」はジェットネブライザの誤りの肢として出る。振動子は超音波式(メッシュ式も振動を使う)。
NOは吸入すると換気のある肺胞の周りの肺血管を拡張させ、肺動脈圧を下げる。血流が換気のある肺胞へ向かうので換気血流比は改善し、酸素化がよくなる。血中ではヘモグロビンと結合してすぐ失活するので、全身の血管は拡張しにくく、全身血圧は下がりにくい。対象の代表例は新生児遷延性肺高血圧症と心臓手術の周術期の肺高血圧。
| 有害事象・注意点(正しい) | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| NOが酸素と反応して二酸化窒素(NO2)ができ、NO2は有害 | 換気血流比が悪化する |
| メトヘモグロビン血症(メトヘモグロビンが増える) | メトヘモグロビンが減少する |
| 肺血流が増えるので、左心不全が悪化しうる | 体血管が拡張して血圧が下がる |
| 急に中止すると肺動脈圧がはね上がる(リバウンド) | 死腔(換気のない部分)の血管を拡張する |
| NO2の生成を減らすため、NOは患者の近く(吸気回路)で混入する | あらかじめ酸素ガスに混ぜておく |
| VCV(量規定換気/従量式) | PCV(圧規定換気/従圧式) | |
|---|---|---|
| 設定して保証されるもの | 一回換気量 | 吸気圧 |
| 肺の状態で変わるもの | 気道内圧(肺が硬い・痰があると上がる) | 一回換気量(肺が硬いと減る) |
| 吸気流量の波形 | 一定流量(矩形波)が代表 | 吸気早期に設定圧に達し、流量は漸減する |
| 不均等換気 | 不均等換気が起きやすい | 不均等換気が少ない |
VCVの「誤りはどれか」で出る肢=「不均等換気が少ない」「吸気早期に設定圧に達する」。どちらもPCVの性質。
| モード | 中身 | 切る肢 |
|---|---|---|
| CMV(調節換気) | 設定どおりの強制換気だけ | |
| A/C(補助/調節換気) | 患者のトリガにも設定回数にも、毎回同じ強制換気を送る。設定回数が保証されるので無呼吸にならない。PEEPを併用できる | 2種類の波形が見える(それはSIMV) |
| SIMV(同期式間欠的強制換気) | 設定回数の強制換気と、その間の自発呼吸が混ざる(波形が2種類) | |
| PSV(圧支持換気/プレッシャーサポート) | 自発呼吸の吸気を設定圧で支える。回数や吸気時間は患者が決める。設定するのは吸気圧(サポート圧)とPEEP(とトリガ感度) | 一回換気量・吸気時間・換気回数を設定する |
| CPAP(持続気道陽圧) | 自発呼吸に一定の陽圧をかけ続ける。気道内圧は一定 | I:E・分時換気量が一定/筋弛緩薬が必要/高CO2血症に適応 |
CPAPは自発呼吸が前提で、換気を肩代わりしない。だから筋弛緩薬で自発呼吸を止めた患者には使えず、高CO2血症の治療にもならない。
トリガ(吸気の始まりを検出するしくみ)は圧トリガとフロートリガ。圧トリガの感度は−1〜−2 cmH2O程度が目安。感度を鈍くしすぎると患者が吸おうとしても送気が始まらず(ミストリガ)、敏感にしすぎると回路の揺れや水で勝手に送気する(オートトリガ)。
圧と流量の測り方:気道内圧は回路内の圧を圧力センサで測る。流量は差圧式(抵抗の前後の圧差)や熱線式(熱線が冷やされる程度)などで測り、流量を時間で積分して換気量を出す。
ICU用人工呼吸器の構成要素の代表例:吸気弁(流量制御)・呼気弁・酸素濃度調節装置(ブレンダ)・気道内圧モニタ・流量センサ。CO2吸収装置は麻酔器の部品、ピンインデックスはボンベと減圧弁の接続の誤接続防止で、ICU用人工呼吸器の構成要素としては出ない。
換気の方式は気道内陽圧方式(気管挿管・気管切開でつなぐIPPV、マスクでつなぐNPPV)と、胸の外から陰圧をかける胸郭外陰圧方式(鉄の肺・胸当て式)がある。NPPVは挿管しないので会話や食事ができ、VAPが少ないが、マスクのリークや皮膚の圧迫が起きやすく、意識が悪い・痰が多い患者には向かない。胸郭外陰圧方式は自発呼吸と同じ向きに胸腔を陰圧にするので、静脈還流を妨げにくい。
吸気の陽圧で回路内のガスが圧縮され、回路が膨らむ分だけ設定一回換気量の一部が患者に届かない。
回路から外して手で換気するときは、Yピースと気管チューブの間(カテーテルマウントとYピースの接続部)か、気管チューブコネクタ(患者側)につなぐ。吸気回路・呼気回路の途中にはつながない。気管チューブコネクタそのものにつなぐのは正しいが、気管チューブとコネクタの接続部を外してつなぐのは誤り(チューブ本体からコネクタを抜かない)。気管チューブ・気管切開チューブのサイズは内径(mm)で表す。
A/Cは送り方の規定を量規定(VCV)にも圧規定(PCV)にも設定でき、フロー波形はその設定で決まる(量規定なら矩形波や漸減波、圧規定なら漸減波)。「A/Cのフローの基本波形は圧規定換気」は誤り。量規定と圧規定の長所を組み合わせる(目標の換気量を保つよう吸気圧を自動調整する)のはPRVCなどのデュアルコントロール方式で、A/Cそのものの特徴ではない。
PaCO2は肺胞換気量に反比例するので、直接動かすのは換気回数と一回換気量(分時換気量=一回換気量×換気回数)。FiO2・PEEP・吸気終末休止(EIP)は主に酸素化の側に効き、PaCO2を直接は動かさない。
手順:①1呼吸の時間=60 ÷ 換気回数(秒) ②吸気時間=1呼吸の時間 × I ÷(I+E) ③一回換気量=吸気流量 × 吸気時間(単位をmL/sにそろえる。1 L/min=1000÷60 mL/s)。
例題1:一回換気量500 mL、換気回数10回/分、I:E=1:2、矩形波のVCV。吸気流量は? → 1呼吸6秒、吸気時間2秒。500÷2=250 mL/s=15 L/min。(5 L/minは分時換気量なので取り違えない)
例題2:吸気流量30 L/min、換気回数15回/分、I:E=1:3。一回換気量は? → 1呼吸4秒、吸気時間1秒。30 L/min=500 mL/s なので 500 mL。
例題3(PaCO2の見積もり):換気回数10回/分でPaCO2 60 Torr。死腔などが変わらないとして、PaCO2を40 Torrにしたい。 → PaCO2 × 肺胞換気量 = 一定なので、換気量は60÷40=1.5倍が要る。一回換気量を変えないなら換気回数を15回/分にする。FiO2やPEEPを変えても、この計算の答えは動かない。
| 項目 | 目安(体重50 kgの成人の例) |
|---|---|
| 一回換気量 | 6〜10 mL/kg(例:500 mL) |
| 換気回数 | 10〜15回/分(例:12回/分) |
| I:E比 | 1:2前後(2:1は吸気が長すぎて不適切) |
| PEEP | 3〜5 cmH2O |
| トリガ感度(圧) | −1〜−2 cmH2O |
I:Eを2:1にすると呼気の時間が足りず、吐き切れないうちに次の吸気が来て、肺に空気がたまる(内因性PEEP)。呼気の時間を長めにとる1:2前後が基本。FiO2は高めで始め、SpO2や血液ガスを見て下げていく。
| アラーム | 意義 | 適切とされる値の例 |
|---|---|---|
| 気道内圧上限 | 閉塞・ファイティング・咳込みで圧が上がりすぎるのを知らせる | 40 cmH2O |
| 気道内圧下限 | 回路の外れ・大きなリークを知らせる | PEEP程度より上 |
| 分時換気量下限 | 換気量の低下を知らせる | 2 L/分 |
| 無呼吸 | 自発呼吸が止まったことを知らせる(PSVでは特に重要) | 15〜20秒 |
| 呼吸数上限 | 頻呼吸を知らせる | 30回/分前後 |
| 気道内圧が上がる(代表例) | 気道内圧が下がる(代表例) |
|---|---|
| 片肺挿管(チューブが片方の主気管支へ移動) 分泌物の貯留・チューブの閉塞や屈曲 ファイティング・咳込み 気胸・気管支攣縮 | カフの虚脱(カフ漏れ) 回路のリーク・接続の外れ 無気肺の改善(コンプライアンスが上がる) 気管支攣縮の軽快(気道抵抗が下がる) |
リークがあると患者に届く換気量が減るので、低換気になり高CO2血症になる。「リークで低CO2血症」は誤りの肢として繰り返し出る。「片肺への移動で気道内圧が下がる」も誤り(上がる)。
| 異常 | 起こること |
|---|---|
| 呼吸回路のリーク・回路の外れ | 換気量が減る→低換気で高二酸化炭素血症・低酸素(低二酸化炭素血症ではない) |
| 呼吸流路(回路・チューブ)の屈曲・閉塞 | 換気の異常(換気量低下・気道内圧上昇) |
| 呼気弁の開放不全(呼気弁が開かない) | 吐き出せず気道内圧が上がり続け、気胸などの圧損傷(圧外傷) |
| 加温加湿器の停止 | 乾いたガスで分泌物が乾き、喀痰の硬化→気管チューブの閉塞 |
| 吸入気酸素濃度の異常上昇(高濃度酸素の持続) | 酸素中毒(活性酸素による肺の傷害) |
自発呼吸の吸気では胸腔内圧が陰圧に深まり、静脈血が胸へ戻りやすい。陽圧換気の吸気では気道内圧も胸腔内圧も上がる。この胸腔内圧の上昇から、次の変化が順につながる。
| 陽圧換気・PEEPで起こること | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 静脈還流が減り、心拍出量が減り、血圧が下がる | 心拍出量が増加する |
| 中心静脈圧(CVP)は上昇する | |
| 頭蓋内圧は上昇する(頭からの静脈還流が妨げられる) | 頭蓋内圧が低下する |
| 腎血流が減り、ADH(抗利尿ホルモン)が増え、尿量は減る |
PEEPは呼気の終わりにも陽圧を残し、肺胞の虚脱を防ぐ。
肺を傷めない換気(肺保護換気)の考え方:大きすぎる一回換気量や高すぎる気道内圧は肺胞を過伸展させ、圧外傷や人工呼吸器関連肺傷害を起こす。そのため一回換気量は6〜8 mL/kg程度に抑え、プラトー圧は30 cmH2O以下を目安にする。適度なPEEPで肺胞が開いたり閉じたりをくり返すのを防ぐ。
「上昇で起こりうるのは」と聞かれたら気胸。シャントは減る、FRCは増える、心拍出量は減る。
挿管すると上気道の加温加湿が使えないので、吸気を加温加湿してから送る。目標は口元でおよそ体温・相対湿度100%に近い状態。
加温加湿器の弱点は人工鼻の長所の裏返し。温度設定やセンサの外れで熱傷や過剰加湿が起こりうる。回路内の結露水が患者側へ流れ込んだり、誤ってトリガしたり、細菌が増えたりする。給水忘れでは乾いたガスが送られ、痰が固まって気管チューブが詰まる。
人工鼻は患者の呼気に含まれる熱と水分をため、次の吸気に返す。電源も水も使わない。
| 長所(人工鼻が加温加湿器より優れる点) | 短所 |
|---|---|
| 回路がシンプルになる(チャンバ・ヒータワイヤ・ウォータトラップが不要) 過剰加湿にならない・結露がない 熱傷のリスクが少ない 細菌汚染が少ない(フィルタ付きもある) 温度・湿度の調節は不要 | 死腔が大きくなる 呼吸抵抗が増える 分泌物や水分で目詰まりすると抵抗がさらに上がる 加湿の性能は加温加湿器に及ばない |
人工鼻と加温加湿器の併用は禁忌(水分で目詰まりする)。人工鼻でVAPが増えるわけではない。「死腔が小さくなる」「抵抗が減る」「過剰加湿になる」「うつ熱(熱がこもる)が起こる」「調節が必要」は誤り。
ガスを加温加湿するのは加温加湿器(チャンバ)。ヒータワイヤは温まったガスの温度を回路内で保ち、結露を防ぐだけで、室温のガスを体温まで温める・殺菌する・回路の強度を保つ・患者の体温を調節する役目はない。人工鼻はネブライザと併用しない(薬液・水分でフィルタが目詰まりし抵抗が上がる。吸入するときは人工鼻を外す)。「人工鼻ではネブライザの併用が有用」は誤り。
| 項目 | 基準値 |
|---|---|
| pH | 7.40(7.35〜7.45) |
| PaCO2 | 35〜45 Torr |
| PaO2 | 80〜100 Torr。PaO2は年齢とともに低下する |
| HCO3− | 24±2 mEq/L |
| BE(ベースエクセス) | 0±2 mEq/L |
酸素化の指標はP/F比(PaO2÷FiO2)。ARDSでは300以下が軽症、200以下が中等症、100以下が重症。動脈ラインのカテーテルから採血するときは、ライン内の液を十分に引いてから採る。
| モニタ | 原理 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| パルスオキシメータ(SpO2) | 赤色光と赤外光の吸光度の、拍動による変化 | COHbがあると高めに表示される。体動・末梢循環不全で不正確 |
| カプノメータ(EtCO2) | CO2が赤外線を吸収することを使う | メインストリーム式は回路に付けるアダプタの分だけ死腔が増える。サイドストリーム式は吸引して測るので表示が遅れる |
| 経皮ガスモニタ(PtcO2・PtcCO2) | センサで皮膚を42〜44℃に温め、皮膚から拡散してくるO2とCO2を測る | PtcO2はPaO2と同等か低め、PtcCO2はPaCO2より高め。安定まで10〜15分かかる(3分ではない)。低温熱傷に注意して貼り替える |
酸素解離曲線の目安:SpO2 90%はおよそPaO2 60 Torrに当たる。曲線の平らな部分ではPaO2が大きく変わってもSpO2はほとんど変わらないので、高濃度酸素の下での酸素過剰はSpO2では見えにくい。EtCO2は正常ではPaCO2より数Torr低い。
肺胞死腔が増える(肺塞栓・心拍出量の低下など)とEtCO2は低下する(上昇は誤り)。波形が急に低くなる・消えるのはリークや回路の外れを疑う。
循環動態は、動脈圧(観血的動脈圧)・中心静脈圧(CVP)・肺動脈カテーテル(肺動脈楔入圧・心拍出量)などで見る。陽圧換気やPEEPを上げた直後に血圧が下がったら、静脈還流の減少による心拍出量の低下を疑う(1-5)。
呼吸器のグラフィック(気道内圧・流量・換気量の波形)も患者の状態を映す。呼気の流量が基線に戻らないうちに次の吸気が始まれば、吐き切れていない。VCVで最高気道内圧だけが上がりプラトー圧が変わらなければ、気道抵抗の増加(痰・屈曲など)を考える。
| 所見 | 原因の代表例 |
|---|---|
| 胸郭運動に左右差がある | 片肺挿管・気胸・主気管支の痰づまり |
| 両側とも動かない | 回路の外れ・食道挿管(左右差にはならない) |
| ファイティング(呼吸器と患者の呼吸が合わない) | 低酸素・高CO2、トリガや流量の設定不良、痛み・鎮静不足、分泌物、気胸。血圧低下はファイティングの原因として考えにくい |
患者アセスメントでは、鎮痛を先に行い、鎮静は目標の深さを決めて評価する(評価法の代表例はRASS)。過鎮静は離脱を遅らせ、VAPも増やす。
| バッグバルブマスク(BVM/自己膨張式) | ジャクソンリース回路(流量膨張式) | |
|---|---|---|
| ガス供給 | 酸素がなくてもバッグは膨らみ、空気で換気できる | ガスを流さないとバッグが膨らまず使えない。高い流量が要る |
| 弁 | 一方向弁がある | 弁がない |
| 再呼吸 | 再呼吸しない | 呼気の一部がバッグに戻り、再吸入する |
| 手に伝わる感覚 | 伝わりにくい | 肺の硬さ(コンプライアンス)や自発呼吸を手で感じやすい |
| 自発呼吸 | 自発呼吸下でも使える |
どちらも感染対策のフィルタを付けて使う。気管挿管には喉頭鏡・ビデオ喉頭鏡・スタイレット・カフ圧計を使い、カフ圧は20〜30 cmH2Oが目安。カフ圧が低いとカフの上の分泌物が気管へ流れ込み(VAPの原因)、高すぎると気管粘膜が虚血で傷む。挿管後はカプノメータでCO2が出ること、胸の上がりと呼吸音の左右差、胸部X線でチューブ先端の位置を確かめる(食道挿管ならCO2は出ない)。
VAPは気管挿管・人工呼吸の開始から48時間以降に起こる肺炎(48時間以内ではない)。主な経路はカフの上にたまった分泌物が気管へ流れ込むこと。
| 予防策(正しい) | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 回路は頻回に交換しない(汚れたときに交換) | 回路を毎日交換する |
| 仰臥位にしない(頭側を上げる) | |
| 過鎮静を避け、毎日鎮静を評価する | 深い鎮静を保つ |
| 毎日、人工呼吸器から離脱できるか評価する | 48時間ごとに評価する |
| 口腔ケアは約8時間ごとなど頻回に行う | 口腔ケアは24時間ごと |
| 手指衛生・カフ上部吸引付きチューブ |
| 項目 | 正しい | 誤りとして出るもの |
|---|---|---|
| いつ行う | 必要なとき(痰の音・換気量の低下・気道内圧の上昇など)に行う | 定時に行う |
| 時間 | 陰圧は1回10秒程度以内、挿入から終了まで15秒以内 | 陰圧を10秒以上かける |
| 吸引圧 | 20 kPa(約150 mmHg)以下。80〜120 mmHgの範囲も正しい選択肢として出る | 30 kPa以上 |
| カテーテルの太さ | 外径は気管チューブ内径の1/2(50%)以下 | |
| 効果の評価 | 換気量・気道内圧(とSpO2・呼吸音)で見る | |
| 禁忌 | 重篤な低酸素血症は絶対的な禁忌ではない | 重篤な低酸素は絶対禁忌 |
| 実施者・手袋 | 臨床工学技士も喀痰吸引を実施できる。滅菌手袋が必須とはされない | 臨床工学技士は実施できない |
吸引器は周辺医用機器の一つ。閉鎖式吸引は回路を開けずに吸引できるので、PEEPが保たれ、低酸素や周りへの汚染が少ない。開放式は回路を外して吸引する。
手順の要点:吸引の前後に患者の状態(SpO2・心拍・呼吸音・気道内圧や換気量)を確かめる。カテーテルは陰圧をかけずに入れ、陰圧をかけながら引き抜く。吸引で肺の空気も吸い出されるので、低酸素・無気肺・徐脈などの不整脈が起こりうる。手指衛生と手袋・マスクなどの感染対策を守る。
流れ:SAT(自発覚醒トライアル:鎮静を止めて覚醒をみる)→ SBT(自発呼吸トライアル:低いPSやCPAP、Tピースで自発呼吸をみる)→ 抜管。浅く速い呼吸の指標RSBI(呼吸数÷一回換気量[L])は105未満が目安。
| 離脱できる側の所見 | 離脱を妨げる所見(代表例) |
|---|---|
| PaCO2 45 Torr程度、pHが正常範囲、十分な酸素化、一回換気量が保たれる、呼吸数が多すぎない、自分で痰を出せる | pH 7.20(アシドーシス)、PaO2 40 Torr、一回換気量4 mL/kg、呼吸数40回/分、室内気でPaCO2 70 Torr、自力で痰を出せない |
大気圧より高い圧(およそ2〜3気圧)の中で酸素を吸う。ヘンリーの法則で血漿に溶ける酸素(溶解酸素)が増え、ボイルの法則で体内の気泡が小さくなる。
| 作用・効果(正しい) | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 溶解酸素が増え、末梢組織の酸素化が改善する | 心拍出量が増える |
| 気体が圧縮され、気泡が小さくなる | 含気組織(気体の入った部分)が膨張する |
| 活性酸素が増える・好中球の殺菌能(活性)が上がる | 自然気胸が改善する |
| 創傷治癒を促す | |
| COHbの解離を早める・体内の窒素の排出を促す | 活性窒素の排出を促す/二酸化炭素(CO2)の排出を促す(どちらもHBOの作用ではない) |
効果をしくみでつなぐ:CO中毒ではCOHbからCOが早く離れ、溶解酸素で組織に酸素が届く。減圧症・動脈ガス塞栓では気泡が圧縮されて小さくなり、高い酸素分圧で気泡の中の窒素の排出が進む。難治性潰瘍や骨髄炎では組織の酸素化と好中球の殺菌能の上昇で治りが早まる。高い酸素分圧で血管が収縮するので、むくみ(浮腫)が減る。合併症の代表は気圧外傷と酸素中毒(けいれんなど)。
| 適応(代表例) | 禁忌・適応でないもの(代表例) |
|---|---|
| 一酸化炭素中毒(CO中毒) 減圧症・動脈ガス塞栓症 ガス壊疽などの重症軟部組織感染 難治性皮膚潰瘍・慢性骨髄炎 突発性難聴・網膜動脈閉塞症 コンパートメント症候群・腸閉塞・放射線障害 | 未処置の気胸は禁忌(自然気胸・緊張性気胸) 肺気腫(ブラ)・気管支喘息発作 酸素中毒は適応ではなく合併症 |
禁忌の理由もしくみで覚える。気胸があると減圧のときに胸腔内の空気が膨らみ、緊張性気胸へ悪化する。肺気腫のブラや喘息発作では空気が抜けにくく、減圧時に肺が破れやすい。だから「HBOで気胸が改善する」は誤り。
| 加圧時(スクイーズ:閉じた空間がつぶれる) | 減圧時(閉じた空間の気体が膨らむ) |
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| 鼓膜損傷・中耳の障害(滲出性中耳炎) 副鼻腔障害(副鼻腔スクイーズ) 歯の痛み | 肺の過膨張・気胸・皮下気腫 動脈ガス塞栓 腸管破裂(消化管のガスが膨張) |
溶血は気圧外傷ではない。患者への指導として、加圧中は耳抜き(嚥下やあくび)で中耳と外の圧をそろえる。減圧中は息を止めない(肺の空気が膨らんで肺が傷つく)。
減圧症は、体に溶けていた窒素など不活性ガスが減圧で気泡になって起こる(「酸素が気泡化」は誤り)。減圧症の標準的な治療は、治療表に沿った約5時間の高気圧酸素治療。これは減圧症専用の長い治療で、ふつうのHBO 1回(60〜120分程度)とは別。
| 第1種装置 | 第2種装置 |
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| 1人用(単室)。酸素で加圧するものと空気で加圧するものがある(酸素加圧に限らない) | 多人数用で空気で加圧し、患者はマスクなどで酸素を吸う |
高い酸素分圧の中では物が燃えやすく、酸素で加圧する第1種装置ではわずかな火花や静電気でも火災になる。だから持ち込み物の確認と静電気対策が装置の安全の中心になる。
中耳炎・急性副鼻腔炎は適応ではない。耳管や副鼻腔の出口がふさがると加圧・減圧で圧差が生じ、閉じた含気腔の圧外傷を起こしやすい注意側(相対的禁忌)。開放性骨折そのものは適応ではなく、外傷では圧挫症候群・コンパートメント症候群・ガス壊疽などを伴うときが適応。急性心筋梗塞も適応ではない(治療の中心は再灌流療法)。
代表例:高度慢性呼吸不全(COPDなど)、肺高血圧症、慢性心不全、チアノーゼ型先天性心疾患。
| 吸着型(吸着分離型/PSA) | 膜型(膜分離型) | |
|---|---|---|
| しくみ | コンプレッサで加圧した空気を送り、ゼオライトに窒素を吸着させて酸素を濃縮する。濃縮した酸素は製品タンク(貯蔵タンク)にためる | 高分子膜を酸素が通りやすいことを使う |
| 酸素濃度 | 90%以上 | 約40%(低流量向け) |
| 注意 | 発熱や騒音が問題になる。出てくるガスは乾燥している |
「膜型で90%、吸着型で40%」は数値が逆の誤り肢。「吸着型の上限は50%程度」も誤り。濃縮器の安全性はJISで規定されている。停電に備えてバッテリ内蔵が望ましく、予備の酸素ボンベも用意する。家庭用の自家発電機は、指定品以外では動作が保証されない。
液体酸素は約−183℃で、気化すると体積が約800倍(厳密には約860倍)になる。液体酸素は触れると凍傷を起こす。HOTでは液体酸素(液化酸素)を使う方式もある。
| NPPV(非侵襲的陽圧換気) | TPPV(気管切開下陽圧換気) | |
|---|---|---|
| つなぎ方 | マスク | 気管切開孔に接続する |
| 在宅の主な対象 | COPDが最も多い。拘束性胸郭疾患・神経筋疾患、重度の睡眠時無呼吸の一部にも使う | NPPVで管理できない例、喀痰の多い例 |
| 規模 | 在宅NPPVはTPPVより症例が多い(1万例以上) |
NPPVとCPAPの違い:NPPVは吸気と呼気で圧を変えて換気そのものを助けるので、CO2のたまるCOPDや神経筋疾患に使う。CPAPは一定の圧で気道を開いておくだけで、換気を助けない。在宅では停電・回路の外れ・マスクのずれに備え、家族にも用手換気や連絡先を指導しておく。
誤接続を防ぐしくみ:小型ボンベと減圧弁はピンインデックス方式、配管の壁の取り出し口はガスごとに形の違う方式で、ほかのガスにつながらない。酸素の識別色はボンベが黒、配管・取り出し口が緑。ボンベの残量は圧力に比例するので、圧力計から残りの量と使える時間を見積もる。
アラームは止めたまま・音量を下げたままにしない。鳴ったらまず患者を見て換気を確保し(必要なら用手換気に切り替え)、それから装置の原因を探す。
| 正しい対応 | 誤りとして出るもの |
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| 人工呼吸器は非常電源のコンセントにつなぐ 用手換気器具をすぐ使えるように準備する 医療ガス安全管理委員会が医療ガスの安全を管理する 復電時のサージ(過電流)に備える | 内部バッテリを優先して使う(内部バッテリは非常電源が使えないときの最後の手段) |
停電には、非常電源・無停電電源装置(UPS)・装置の内蔵バッテリの順に備える。酸素の供給が止まったときは、酸素ボンベと用手換気器具で換気を続ける。