第1章|呼吸療法装置

生体機能代行装置学 第1章
収録 86問(第31〜39回)換気様式・気道内圧・PEEP・加温加湿・酸素療法・NPPV・在宅酸素

肺の機能を代行する装置群。換気様式(従量・従圧)換気モード気道内圧とグラフィックPEEP/CPAP加温加湿酸素療法とNPPV合併症が毎年の得点源。数字と「どのアラームが効くか」で決まる。

換気様式 — 従量式(VCV)と従圧式(PCV)

最頻出の対比

従量式(VCV)一回換気量を設定。換気量は保証されるが、コンプライアンス低下・気道抵抗上昇で気道内圧が上昇する→気道内圧上限アラームが要。
従圧式(PCV)吸気圧を設定。最高気道内圧は一定だが、肺の状態で換気量が変動する→分時換気量下限アラームが要。圧の立ち上がりが速く、肺保護的。

コンプライアンス=ΔV/ΔP(肺の膨らみやすさ)、気道抵抗=ΔP/流量。従量式で気道内圧が上がったら「抵抗↑か肺が硬いか」を疑う。

換気モードとトリガ

モード内容
CMV / A/C(補助・調節)設定回数の強制換気。自発があればトリガして毎回フル補助
SIMV(同期式間欠的強制換気)強制換気を自発呼吸に同期。間の自発呼吸は妨げない。ウィーニング向き
PSV(プレッシャーサポート)自発呼吸を吸気圧で補助。患者がトリガし、吸気流量が一定割合まで低下すると呼気へ
CPAP自発呼吸下で気道に持続陽圧をかけるのみ(強制換気なし)

トリガ:圧トリガ↔フロートリガ。フロートリガのほうが応答が速く仕事量が小さい。設定が鈍いと非同期(ミストリガ・オートトリガ)を起こす。

気道内圧とグラフィックモニタ

ピーク圧とプラトー圧

最高気道内圧(PIP)=気道抵抗成分+肺胞成分。吸気ポーズ時のプラトー圧=肺胞内圧≒静的コンプライアンスを反映(抵抗の影響を受けない)。
PIP−プラトー圧=気道抵抗成分。プラトー圧だけ上昇=肺が硬い(コンプライアンス低下)、PIPだけ上昇=痰づまり・回路閉塞など抵抗上昇。

グラフィック:圧-換気量ループ(P-Vループ)の下方変曲点(LIP)=肺胞が開き始める圧でPEEPを設定。流量-換気量ループ(F-Vループ)で呼気終末に流量が0に戻らなければエアトラッピング(Auto-PEEP)を疑う。リーク時はループが閉じない。

PEEP・CPAP と Auto-PEEP

PEEP(呼気終末陽圧)=呼気終末に陽圧を残し、機能的残気量(FRC)を増やして肺胞虚脱を防ぎ、シャントを減らして酸素化を改善する。標準は5cmH₂O前後。

PEEPの副作用(毎年のひっかけ)

胸腔内圧上昇→静脈還流減少・心拍出量低下・血圧低下気圧外傷(気胸)頭蓋内圧上昇、尿量減少。
Auto-PEEP(内因性PEEP)=呼気時間不足で呼気終末に肺内へ残る陽圧。COPD・高い呼吸回数・気道閉塞で生じ、トリガ不良・循環抑制の原因になる。

加温加湿と人工鼻(HME)

吸入ガスは乾燥・低温のため加温加湿が必須。目標はY字部で温度37℃前後・相対湿度100%(絶対湿度約33mg/L)。加温加湿器は熱線入り回路で結露(ウォータートラップ)を管理する。

人工鼻の注意点

人工鼻(HME)=呼気の熱・水分を捕集して吸気に戻す受動的加湿。電源・注水不要だが死腔が増える・分泌物過多や喀血では目詰まりする。
人工鼻と加温加湿器・ネブライザの併用は禁忌(吸湿でフィルタが閉塞し気道内圧上昇)。ネブライザ使用時は人工鼻を外す。

酸素療法・NPPV・ネーザルハイフロー

デバイス特徴・FiO₂
鼻カニュラ(低流量)簡便。FiO₂は換気量で変動。1L/min≒24%の目安
ベンチュリマスク(高流量)ベンチュリ効果でFiO₂を一定に供給。COPDの調節に有用
リザーバ付きマスク高濃度(〜60%以上)。一方向弁で再呼吸を防ぐ
ネーザルハイフロー(HFNC)加温加湿した高流量(最大60L/min)。解剖学的死腔のCO₂洗い出し・軽度PEEP様効果

NPPV(非侵襲的陽圧換気)=マスク経由の陽圧換気。IPAP(吸気)>EPAP(呼気)の差が換気量を、EPAPが酸素化を担う。適応=COPD急性増悪・心原性肺水腫禁忌=意識障害・自発呼吸なし・気道確保困難・顔面外傷・嘔吐/誤嚥リスク。ブロワー式でリークを前提に制御する。

在宅酸素療法(HOT)・高気圧酸素治療

HOT の適応と酸素源

適応=安静時PaO₂ 55Torr(mmHg)以下、または60Torr以下で運動時・睡眠時に著しい低下や肺高血圧を伴う例。
酸素源=酸素濃縮器(吸着型=ゼオライトで窒素吸着するPSA方式が主流・90%以上)/液体酸素/酸素ボンベ。火気厳禁(喫煙・ガスコンロ)。

高気圧酸素治療(HBO)2〜3気圧で高濃度酸素を投与。適応=一酸化炭素中毒・減圧症・ガス壊疽・空気塞栓。ヘンリーの法則で血漿溶解酸素を増やす。装置は第1種(1人用)・第2種(多人数用)。可燃物持ち込み禁止・耳抜き(中耳気圧外傷)に注意。

人工呼吸の合併症

  • 圧外傷・気胸(バロトラウマ)/過大換気量によるボリュートラウマ
  • 人工呼吸器関連肺炎(VAP):カフ上部吸引・頭位挙上で予防。カフ圧は20〜30cmH₂Oで管理
  • 酸素中毒(高濃度酸素の長時間投与)/CO₂ナルコーシス(COPDに高濃度酸素→呼吸抑制)
  • 循環抑制(陽圧による静脈還流減少)・無気肺・気道損傷