第2章|体外循環・補助循環

生体機能代行装置学 第2章
収録 98問(第31〜39回)ローラ/遠心ポンプ・膜型人工肺・回路構成・血液への影響・希釈・ACT・適正灌流・心筋保護・IABP・PCPS/ECMO・VAD・トラブル

体外循環装置(人工心肺)は、手術中に心臓と肺の働きを体の外で代わりに行う。補助循環(IABP・PCPS/ECMO・補助人工心臓)は、弱った心臓や肺を手術室の外でも支える。出題はポンプの性質・人工肺の膜と灌流方式・体外循環中の電解質とホルモンの増減・管理の目標値・心筋保護液・補助循環の負荷のかかり方に集中する。数値と「上がるか下がるか」を表で固める。

2-1 血液ポンプ(ローラポンプ・遠心ポンプ・拍動流と定常流)

ローラポンプと遠心ポンプの対比

分け目は容積型か非容積型か。ローラポンプはチューブをローラでしごいて押し出す容積型なので、流量は回転数に比例する。遠心ポンプは羽根車(インペラ・コーン)の回転で圧を作る非容積型(ターボ型)なので、同じ回転数でも後負荷と血液粘度で流量が変わる。ほぼ全部の肢がこの1点から出る。

項目ローラポンプ遠心ポンプ
原理容積型(しごき)非容積型(遠心力・ターボ型)
流量の決まり方回転数に比例する。回転数で流量制御が容易後負荷(回路抵抗・血圧)と粘度で変わる
流量計なくても流量が分かる(必須でない)流量計は必須(電磁式・超音波式などで実測)
出口側が閉塞したとき圧が上がり続け、回路破裂の危険がある圧が一定以上に上がらず、回路破裂の心配がない
溶血(血液損傷)溶血が多い(圧閉で赤血球をつぶす)溶血が少ない
停止・低回転のとき停止しても逆流しない停止・低回転で逆流が起こりうる→鉗子で回路を遮断
吸引ポンプ・ベント吸引・ベントに使える吸引・ベントには使えない
空気空気もそのまま送り出す遠心ポンプは空気を送りにくい(ただし「送らない」は誤り)
向く用途人工心肺の送血・吸引・ベント・心筋保護長期補助循環(PCPS・ECMO)に適する

流量の式:ローラポンプは流量 = 1回転あたりの拍出量 × 回転数(チューブ内径とローラの軌道で1回転量が決まる)。圧閉度(オクルージョン)が強すぎると溶血が増え、弱すぎると逆流して流量が表示より減る。溶血が目立つときは圧閉度を調整する。

遠心ポンプの運転で問われること

  • 復温で粘度が下がると同じ回転数でも流量が増える。逆に冷却時は粘度が上がるので、流量を保つには回転数を上げる。
  • 離脱前の低流量域では回転数による流量制御が難しい(少し回転を落とすと急に流量が減り、逆流に移る)。
  • 人工心肺停止時は送血回路を鉗子で遮断して血液の逆流を防ぐ。運転中に送血回路を遮断しても回路は破裂しないので、遮断は「禁忌」ではない。
  • ポンプ内に空気が入ると羽根車が空回りして送り出せなくなる(気泡を回路に入れない)。なお国試で問うエアブロックは脱血回路に空気が入って落差脱血が止まる現象(2-3)。
  • 抗凝固は必要(異物表面に血液が触れるため)。「抗凝固療法は不要」は切る。

拍動流と定常流

拍動流型(代表例)定常流(連続流・無拍動流)型(代表例)
サック型・ダイアフラム型・大動脈内バルーンポンプ(IABP)・空気圧駆動式補助人工心臓ローラポンプ・遠心ポンプ(コーン型)・軸流ポンプ・直線流路型

人工心肺には定常流ポンプ(ローラ・遠心)を使い、拍動流ポンプは必須でない。遠心ポンプは図で問われる:中心から吸い込み、回転する羽根車やコーンの遠心力で外周の出口へ送り出す渦巻き形のハウジングが目印。チューブをローラでしごく形はローラポンプ。

運転中の流量操作

  • 大動脈遮断の瞬間と遮断解除の瞬間は、流量を一時的に下げる(大動脈に急な圧がかかり、解離や損傷の原因になる)。「遮断時・解除時に流量を一時的に上げる」は誤り。
  • ローラポンプの吸い込み口(貯血槽からポンプまでの回路)を運転中に塞がない。吸い込み口を塞ぐと強い陰圧がかかり、溶血や気泡の発生、回路の破損を招く。脱血回路は患者から貯血槽へ落差で血液を落とすだけで、ポンプの吸い込み口ではない。脱血量の調整や離脱のときに脱血回路を鉗子で絞るのはふつうの操作。人工心肺停止時に逆流を防ぐために遮断するのは送血回路(「停止時は脱血側回路をクランプしてから回転を止める」は切る)。
切る肢

「遠心ポンプは流量計不要」「遠心ポンプは容積型」「遠心ポンプのほうが溶血が多い」「ローラポンプは回路破裂の危険が少ない」「ローラポンプは溶血の原因にならない」「遠心ポンプは粘度の影響を受けにくい」「遠心ポンプは停止時に逆流しない」「遠心ポンプを吸引に使う」「遠心ポンプは拍動流」――いずれも逆。

流量が変わる理由で解く

遠心ポンプの肢は「回転数が同じでも流量が動くか」で判定する。送血側の抵抗が上がる(回路の屈曲・血圧の上昇)と、同じ回転数でも流量が減る。抵抗が下がる(血管拡張・粘度の低下)と、流量が増える。ローラポンプはこの影響をほぼ受けないかわりに、出口を塞ぐと圧が逃げずに上がり続ける。

ひっかけ・混同注意

開始時のカニューレは送血カニューレが先、脱血カニューレが後(「まず脱血、続いて送血」は誤り。詳しくは2-7)。停止時に鉗子で遮断するのは送血側回路で、「脱血側回路をクランプしてから回転を止める」は誤り。

2-2 人工肺(膜型・気泡型、膜の材質、灌流方式)

気泡型と膜型

気泡型肺は血液に酸素の泡を直接吹き込むので、血液と気泡の界面で溶血や蛋白変性が多い。膜型肺は膜を隔ててガス交換するので血液損傷が少なく、現在の主流。溶血は「気泡型>膜型」。

膜の種類と材質

多孔質膜(主流)均質膜
材質(国試の語形)ポリプロピレン(PP)シリコーン
構造微細な孔があり、血液とガスが孔の部分で直接接する均質膜は貫通孔をもたない(気体は膜に溶けて拡散する)。血液は膜を通過しない
性質疎水性なので孔から血漿が入りにくい。強度はシリコーンより高い気体透過係数はポリプロピレンより大きい。シリコーン膜は酸素より二酸化炭素を通しやすい

主に使われるのは中空糸膜の多孔質膜で、膜は疎水性のポリプロピレン。「親水性の膜」「ポリエチレン製」「シリコーンの多孔質膜」「均質膜が最も多い」は切る。膜表面には血液適合性を上げるコーティング(ヘパリンコーティングなど)を施したものがある。

外部灌流型と内部灌流型

外部灌流型(主流)内部灌流型
血液の通り道中空糸の外側を血液が流れ、内側をガスが流れる中空糸の内側を血液が流れる
流れ血液は乱流になりやすい(ガス交換効率が良い)層流になりやすい
圧力損失圧力損失が小さい大きい
使い方落差脱血の回路に向く

否定設問で「外部灌流型の血液は層流になる」が誤りとして出る(外部灌流型は乱流)。

ガス交換の調整と人工肺の不具合

人工肺は血液ポンプの出口側(送血側)に置く(入口側ではない)。吹送ガスの流量を増やすと二酸化炭素の除去量が増える。酸素化は吹送ガスの酸素濃度(FiO2)で決まる(2-7で詳しく)。

現象中身対応
血漿漏出(プラズマリーク)多孔質膜の孔から血漿がガス側へ漏れ、ガス交換能が落ちる人工肺を交換する
ウェットラング(wet lung)ガス側に水蒸気が結露し、ガス交換能が落ちる。多孔質膜でも起こるまず酸素フラッシュ(高流量ガスで吹き飛ばす)。すぐ交換とは限らない
人工肺内の血栓人工肺の抵抗が上がり、人工肺の手前(入口側)の圧が上がる。前後の圧較差が開く交換する(ヘパリン追加で溶けるものではない)
血漿漏出と結露を取り違えない

血漿が漏れるのは血漿漏出、水滴がたまるのはウェットラング(結露)。「ウェットラングは微小孔からの血漿漏出で生じる」は誤りとして出ている。

O2とCO2で動かすつまみが違う

二酸化炭素は拡散しやすいので、吹送ガスで洗い流す量(ガス流量)で除去量が決まる。酸素は膜の両側の分圧差で移るので、吹送ガスの酸素濃度で決まる。「ガス流量を増やすとPaCO2が上がる」「酸素濃度を上げるとCO2がよく抜ける」は取り違え。

2-3 人工心肺の回路構成と装置内の安全装置

回路の流れ

基本の流れ=脱血カニューレ(右房・上下大静脈)→ 脱血回路 → 静脈貯血槽(リザーバ) → 送血ポンプ → 人工肺(熱交換器一体型が多い)→ 動脈フィルタ → 送血カニューレ(上行大動脈)。脱血は主に落差(重力)で行う。ほかに吸引回路・ベント回路・心筋保護回路・血液濃縮器をつなぐ。

構成機器目的(正しい組合せ)
血液吸引ポンプ(吸引回路)術野の出血を回収して貯血槽へ戻す
ベント回路心腔内(左心系)にたまる血液を抜いて減圧する(余剰水分の除去ではない)
人工肺静脈血の酸素加と二酸化炭素の除去
血液ポンプ(送血ポンプ)体循環を維持する。肺循環は人工心肺中は止まっている
熱交換器と冷温水槽血液の冷却と復温。多管構造の管の外側を血液が流れ、管の中を水が流れる
動脈フィルタ送血する血液の微小気泡・微小塞栓を取る(貯血槽の泡取りではない)
血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)余剰水分の除去・希釈血の濃縮
冠灌流回路(心筋保護回路)心筋保護液を冠動脈へ入れる(2-8)

多管構造の外側を血液が流れる装置は熱交換器。血漿分離器・限外濾過器・血液濃縮器・ダイアライザは中空糸の内側を血液が流れる。ポンプチューブはローラポンプでしごかれる部分で、弾性と耐久性のある材質(シリコーンや塩化ビニル)を使い、圧閉度の調整が要る。

動脈フィルタ

  • メッシュの目は約20〜40 µm(200〜400 µmは誤り)。
  • 血液は上から入って下から出る。上部のパージラインから気泡を抜く。
  • 回路の最後(患者に最も近い位置)に付ける。
  • 目はバブルトラップより細かい。スクリーンメッシュをもつ点でエアトラップとは構造が違う。

貯血槽と開放回路

人工心肺は貯血槽で大気に開いた開放回路が主流。ECMO・PCPSは貯血槽をもたない閉鎖回路なので、回路を構成する装置は人工心肺と同じではない。人工心肺は心臓と肺の両方を代行する装置で、左心補助の装置ではない。「使用限界は3時間」のような上限は無い。

血液濃縮器(ヘモコンセントレータ)

正しい記述誤りとして出るもの
メインの回路と別の並列回路(側路)に付ける直列に組み込む
除水量を決める第一の因子は膜間圧力差(TMP)第一の因子は血液流量
限外濾過膜で水と小分子を除き、アルブミンなどの血漿蛋白は残る血漿蛋白も除去される/遠心力で分離する
濾過が主体なので、カリウムを下げる力は透析より弱いカリウム低下効果は透析と同等

装置内モニタリングと安全装置

装置付ける所・しくみ
レベルセンサ貯血槽に付けて液面の低下を検知し、ポンプを止める。方式は静電容量式・超音波式(磁気式ではない)。エアトラップには付けない
気泡検出器送血回路の気泡を検知してポンプを止める
送血圧力計送血ポンプと人工肺の間に置き、閉塞・屈曲による圧上昇を見る
手動装置(ハンドクランク)停電や駆動不良でも手で回して送血を続けるために常備する
送血フィルタまたはエアトラップ送血回路に置いて空気塞栓を防ぐ

ローラポンプ送血では回転数から流量が分かるので、流量計は必須でない(遠心ポンプでは必須)。閉鎖回路でも接続部や薬液注入から気泡が入りうる。

臨床工学技士が行う人工心肺業務

線引きは回路側の操作は行える/術野と患者の体への侵襲は行わない。

行える(代表例)行わない
回路の充填(プライミング)・回路からの薬剤注入・留置されたカニューレや回路からの採血・体外循環の操作術野(清潔野)でカニューレを回路に接続する・開始前に患者の静脈から採血する
ひっかけ・混同注意

エアブロックは脱血回路に空気が入り、落差(サイフォン)による脱血が途切れて止まる現象。「送血回路が空気で満たされ送血が止まる」は誤り(送血側ではなく脱血側)。

人工心肺はローラポンプや遠心ポンプによる定常流で行うのが一般的で、拍動流ポンプは必須でない(2-1)。

2-4 体外循環が血液と生体に及ぼす影響

カリウム:上げる因子と下げる因子

カリウムは細胞の内外を出入りする。体外循環中は希釈・利尿・インスリン・低体温などで低カリウムに傾く(「人工心肺中は高カリウム血症になる」は誤り)。ただし入ってくる高K源があれば上がる。

カリウムを上げる(代表例)カリウムを下げる(代表例)
溶血(赤血球内のKが出る)
心筋保護液の注入(高K液)
赤血球液(保存血)の充填
代謝性アシドーシス
復温期の細胞外への移動
インスリン投与(Kを細胞内へ移す)
低体温(Kが細胞内へ)
アルカローシス
血液希釈
利尿(フロセミドなど)

低カリウム血症では不整脈が出やすい。心停止を得る心筋保護液は高カリウム液(低カリウム液ではない)。溶血では高カリウムになる。カルシウム投与はカリウムを上げない。

ナトリウム・カルシウム

  • ナトリウムは無血充填の希釈で低下しやすい。
  • カルシウムは低下する。保存血(赤血球液)には抗凝固のクエン酸が入っていて、カルシウムと結合するので低カルシウムになる(赤血球液で上昇、は誤り)。

内分泌系・免疫系:上がるか下がるか

体外循環は大きな侵襲なので、ストレスホルモンと炎症物質はほぼ上がる。下がる側は数が少ないので、そちらを覚える。

上昇・活性化する(代表例)低下・減少する(代表例)
血糖(インスリンが効きにくく高血糖)
レニン‐アンジオテンシン‐アルドステロン系
アドレナリン(カテコラミン)
バソプレシン(抗利尿ホルモン・ADH)
グルカゴン
心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)
炎症性サイトカイン・プロスタグランジン・ブラジキニン
補体(活性化)
カルシウム・ナトリウム・カリウム(上の条件)
血小板数(約30〜50%減る・機能も落ちる)
リンパ球数、T細胞・NK細胞の活性
ハプトグロビン(溶血で消費される)

導入直後は血中カテコラミンが充填液で薄まり、末梢血管抵抗も下がるので血圧が下がる。「インスリンが過剰に出て低血糖」「アドレナリン分泌は低下」「バソプレシンは低下」「グルカゴンは低下」「ブラジキニンは減少」「血小板は増加」「血小板は70〜80%減る」「顆粒球数は開始直後に一過性に増える」は切る。

低体温が血液に与える影響

項目低体温での変化
酸素消費量酸素消費量は低下する(臓器保護の理由)
血液粘稠度粘稠度は上昇する
酸素の溶解度(血中の溶存酸素)溶解度は上昇する(気体は冷えると溶けやすい)
ヘモグロビンの酸素解離曲線左方に移動する=ヘモグロビンが酸素を離しにくくなる(酸素結合力が上がる)
カリウム細胞内へ移り低カリウムになりやすい
そのほか出血傾向(血小板・凝固因子の働きが落ちる)、心房細動などの不整脈、動脈圧の低下。脳血流は自動調節能(autoregulation)で保たれる

溶血(血液損傷)

原因は陰圧・乱流・剪断応力・気泡との接触。

溶血が多い側少ない側
気泡型肺・ローラポンプ(圧閉しすぎ)・細い送血カニューレ(流速が上がる)・強い吸引の陰圧・長い体外循環時間膜型肺・遠心ポンプ・太いカニューレ

溶血の目印は血漿遊離ヘモグロビンの上昇・血中カリウムの上昇・ハプトグロビンの低下・ヘモグロビン尿。遊離ヘモグロビンは体外循環時間が長いほど上がる。ハプトグロビン製剤は遊離ヘモグロビンと結合して溶血による腎障害を防ぐために使う(出血予防ではない)。高度の溶血にヘパリン追加は効かない。

体外循環で使う薬剤目的
マンニトール浸透圧の調整(浸透圧利尿・浮腫の軽減)
アドレナリン心収縮力の増強
ハプトグロビン製剤溶血対策(遊離ヘモグロビンの処理)
乳酸加リンゲル液細胞外液の補正(充填・補液)
アルブミン製剤膠質浸透圧の調整
増減の問題の解き方

ホルモン・炎症物質は「侵襲で上がる」を基本にし、下がる側(カルシウム・血小板・リンパ球・免疫細胞の活性・ハプトグロビン)を例外として覚える。カリウムだけは両方向があるので、肢の条件が細胞の外へ出す要因か、細胞の中へ入れる要因かで判定する。溶血・アシドーシス・高K液は上げる側、インスリン・低体温・アルカローシス・希釈・利尿は下げる側。

2-5 血液希釈と充填液

充填液と希釈のしくみ

回路は使う前に液で満たす(充填・プライミング)。乳酸加リンゲル液などの晶質液に、必要に応じてアルブミン・マンニトール・ヘパリンなどを加える。輸血を使わない無血充填では、患者の血液が充填液で薄まる(血液希釈)。

計算の考え方:希釈後のHt = 患者のHt × 患者の循環血液量 ÷(患者の循環血液量+充填量)。充填量が大きいほど、また体の小さい人ほど希釈率は高くなる。

例題:体重60 kg(循環血液量はおよそ体重の7%=約4,200 mL)、Ht 40%の成人を充填量1,400 mLで無血充填すると、希釈後のHt = 40 × 4,200 ÷(4,200+1,400)= 30%。同じ1,400 mLを循環血液量の小さい乳児に使えば希釈ははるかに強くなる。

血液希釈の利点と欠点

利点(正しい)欠点・誤りとして出るもの
血液粘性が下がり、末梢血管抵抗が下がる
溶血の軽減
輸血量の減少
脂肪塞栓の軽減・微小循環の改善
酸素運搬能が下がる(「酸素運搬能が高まる」は誤り)
膠質浸透圧が下がり、組織浮腫の原因になる(「浮腫が軽減」は誤り)
「粘性の増加」「膠質浸透圧の上昇」「代謝性アルカローシスの軽減」「解離曲線の右方移動」は利点ではない

希釈の下限の目安はヘマトクリット約20%・ヘモグロビン約7 g/dL。「Ht 10%」「Ht 30%」「Hb 10 g/dL」を下限とする肢は切る。管理中はHt 20〜25%程度で保つ。Htが下がったら、まず水分バランスを確かめ、必要なら赤血球輸血や血液濃縮器を使う。

乳児・小児の体外循環(成人との比較)

項目乳児・小児(成人と比べて)
無血充填の希釈率乳児では希釈率が高くなる(循環血液量に比べて回路が大きい)
体表面積・体重あたりの至適灌流量乳児では灌流量が多い
至適灌流圧(目標の灌流圧)乳児では灌流圧が低い
無輸血体外循環乳児では無輸血が難しい
水分バランスの管理乳児では水分バランスの管理が難しい
血液ポンプ乳児の人工心肺ではローラポンプが多い(充填量が小さく、低流量でも回転数から流量が正確に決まるため。「乳児は遠心ポンプの使用率が成人より高い」は誤り)
チアノーゼ性心疾患灌流量を非チアノーゼ性より多めに設定する(側副血行で肺へ流れる分がある)

維持透析患者の人工心肺

  • 動脈硬化や高血圧を伴うことが多く、灌流圧は高めになる場合が多い。
  • 貧血があるので無輸血は難しい。カリウムは高くなりやすいので低めに保つ(高めに補正、は誤り)。
  • 自尿は期待できないので、除水は血液濃縮器や術中透析で行う。利尿薬の大量投与で自尿を確保する、は切る。術中透析の回路は貯血槽などから取り出して人工心肺回路の中に戻す並列回路なので、患者への送血量は変わらない。そのため透析の流量分を灌流量に上乗せする管理はしない(「術中透析中はその流量分だけ灌流量を増やす」は切る)。

2-6 抗凝固(ヘパリン・ACT・プロタミン・HIT)

ヘパリンとACTの数値

項目値・やり方
患者へのヘパリン初回投与量200〜300単位/kg(約2〜3 mg/kg)。「5,000単位(一律)」「1.0〜1.5 mg/kg」「5.0〜6.0 mg/kg」「400〜500単位/kg」は切る
投与のタイミングカニュレーション(送血管・脱血管の挿入)の前に投与し、ACTの延長を確かめてから挿入する
人工心肺中のACT(活性化凝固時間)400秒以上(150〜250秒・200秒以下は誤り)
ヘパリンコーティング回路コーティング回路でもACTは400秒以上を保つ(充填時のヘパリンを半減できる、は誤り)
ACTが延長しないときヘパリンを追加する。アンチトロンビンⅢ(ATⅢ)欠損症ではヘパリンが効きにくいので、減量しない(ATⅢ製剤の補充などで対応)
ACTが長すぎるとき(600秒、1,000秒など)体外循環中はプロタミンを投与しない(回路内が固まる)

抗血小板薬やワルファリンを飲んでいる患者でも、体外循環のヘパリン量は減らさず、開始前のヘパリン投与は省かない。参考:補助循環ではACTを低めにする(IABP・ECMOで150〜200秒程度。2-9・2-10)。

プロタミンによる中和と離脱後の流れ

  1. プロタミンは人工心肺から離脱した後に投与する(灌流量を下げる前ではない)。
  2. 投与時は心機能が良くても血圧低下(アナフィラキシー様反応)に注意する。「血圧が上昇する」は誤り。
  3. プロタミン自体に軽い抗凝固作用があるので、過量投与は避ける。
  4. 中和を始めたら、吸引ポンプでの回収をやめる(回収血が回路内で固まる)。
  5. 送血カニューレは中和後に抜く(中和後もしばらく残し、必要なら送血できるようにする)。

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)

正しい記述誤りとして出るもの
関わるのは血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体に対する抗体血小板第X因子が関与
血小板が活性化されてトロンビンが増え、血栓症が主になる出血性合併症を起こしやすい
典型的にはヘパリン投与後5〜10日で発症する投与直後に発症することが多い
微量のヘパリンでも起こるので、ヘパリンコーティング回路でも回避できない。代わりの抗凝固薬(アルガトロバンなど)を使うコーティング回路で回避できる
ACTの数値を場面で分ける

人工心肺=400秒以上(回路が大きく開放回路で、血液が空気や異物に広く触れる)。IABP・PCPS・ECMO=150〜200秒程度(閉鎖回路で長期間使うので、出血を避けて低めにする)。ACTの測定はヘパリン投与の後と体外循環中に繰り返し行い、記録する。測り忘れはインシデントとして扱う(2-12)。

2-7 適正灌流・モニタリング・開始と離脱

管理の目標値(成人)

項目目標(代表的な値)切る数値
灌流量(中等度低体温)60〜80 mL/kg/分、体表面積あたり約2.2〜2.4 L/分/m²10〜20、30〜40、120〜140 mL/kg/分
平均動脈圧(灌流圧)60〜80 mmHg程度(50〜80とする本もある)100 mmHg以上
中心静脈圧(CVP)CVPは低く保つ(脱血が良好なら0〜数mmHg)15 mmHg以上、20 mmHg
混合静脈血酸素飽和度(SvO2)70%以上(正常は70〜75%)50%
ヘマトクリット20〜25%
ACT400秒以上200秒

体外循環中は生体の正常心拍出量(約3 L/分/m²)と同量までは要らない。常温体外循環では酸素消費が多いので、灌流量を高めに設定する。腎機能低下例でも灌流量を下げない。体重あたりの適正灌流量は小児のほうが成人より多い。CVPが高いのは脱血不良や上大静脈の閉塞を疑う所見(脳浮腫・うっ血の原因)。

灌流量の計算(手順と例題)

手順:①体表面積(m²)×灌流係数(L/分/m²)、または体重(kg)×mL/kg/分で灌流量を出す。②L/分をmL/秒に直す(×1,000÷60)。③「容量÷1秒あたりの流量」で時間を出す。

例題1:体表面積0.5 m²の乳児、完全体外循環中に貯血槽に400 mL。脱血が完全に止まったら、貯血槽が空になるまで何秒か(灌流係数2.4 L/分/m²)。
→ 灌流量 = 0.5 × 2.4 = 1.2 L/分 = 1,200 mL ÷ 60秒 = 20 mL/秒。400 ÷ 20 = 20秒。脱血が止まっても送血は続くので、貯血槽は数十秒で空になり空気を送る危険がある。

例題2:体重60 kg、70 mL/kg/分 → 60 × 70 = 4,200 mL/分(4.2 L/分)。体表面積1.6 m²なら1.6 × 2.4 ≒ 3.8 L/分。

臓器の循環

  • 脳血流は自動調節能(autoregulation)で一定の灌流圧の範囲なら保たれる。
  • 骨格筋や腹部臓器の血流は増えず、むしろ低下しやすい。
  • 急性腎不全(急性腎障害)は体外循環時間が長いほど起こりやすい。腎の自動調節能が保たれる灌流圧の下限は60〜80 mmHg付近で、30 mmHgでは保たれない。

体温コントロール

体温を下げると酸素消費量が下がり、臓器を虚血から守れる(心筋では10℃下げると約1/2)。復温では送血温と脱血温の差を10℃以内にする(急に温めると溶けていたガスが気泡になる)。最高送血温は37℃程度まで。体温は膀胱温・直腸温・鼻咽頭温・食道温などで測る。

ガス交換のコントロール

目標からずれたもの動かすつまみ
PaO2吹送ガスの酸素濃度(FiO2)で調整する(流量ではない)
PaCO2吹送ガスの流量で調整する。高ければ流量を上げる
SvO2低ければ、灌流量を上げる
心停止中の動脈圧が高い(100 mmHgなど)高すぎる。血管収縮薬は使わない(下げる側の対応)

低体温中の酸塩基管理:αスタットは37℃に補正した値で管理し、pHスタットは実際の体温の値でpH 7.4を保つ。低体温ではCO2がよく溶けて見かけのPaCO2が下がるので、pHスタットではCO2を付加する。

SvO2は酸素の需要と供給のバランスを見る指標。過度の血液希釈や加温(酸素消費の増加)で低下する。50%では組織が酸素不足になり嫌気性代謝(乳酸の産生)が進む。80%のような高値は低心拍出を意味しない(低心拍出では下がる)。SvO2はパルスオキシメータでは測れない(パルスオキシメータは動脈血のSpO2)。

モニタリング

モニタ見るもの
動脈圧(観血的)灌流圧。高すぎ・低すぎを見る
中心静脈圧脱血の良し悪し。高いと脱血不良
心電図心停止の確認、再開後の不整脈
体温冷却・復温の管理
左房圧離脱時の左心の負荷(15 mmHg以下が目安)
血液ガス分析PaO2・PaCO2・pH・電解質・Ht
尿量腎の灌流が足りているか

スワン・ガンツ(Swan-Ganz)カテーテル(肺動脈カテーテル)で測れるのは心拍出量(熱希釈法)と混合静脈血酸素飽和度、肺動脈圧・肺動脈楔入圧・右房圧など。左室駆出率・左室圧・収縮期動脈圧はスワン・ガンツカテーテルでは測らない。

開始から離脱までの順番

  1. ヘパリンはカニュレーションの前。
  2. カニューレは送血カニューレを先に入れ、続いて脱血カニューレ(脱血から先に入れる、は誤り)。
  3. 完全体外循環=静脈血を全部脱血し、心臓・肺を通る血流が無い状態(目標灌流量に達した状態のことではない)。部分体外循環は一部の血液が心臓・肺を通る状態。
  4. 離脱の目安:SvO2 60%以上、左房圧15 mmHg以下、十分な復温と心拍の再開。CVPを15 mmHg以上に上げる必要はない。
  5. 人工呼吸器での肺の換気は離脱の前から再開する(完全離脱まで使わない、は誤り)。ベントは離脱時には止める。
  6. 離脱後にプロタミン→カニューレは脱血カニューレを先に抜き、送血カニューレは最後(入れた順の逆)。
低体温・血液希釈で起こる変化の向き
  • 体表面積あたりの至適灌流量も、乳幼児のほうが成人より大きい(代謝が盛ん)。「成人のほうが乳幼児より大きい」は逆。
  • 低体温では気体(酸素・CO2)の溶解度は上昇する(「血中酸素溶解度は低下する」は誤り)。
  • 低体温ではヘモグロビンの酸素親和性(酸素結合力)が高くなる(解離曲線の左方移動=組織で酸素を離しにくい)。
  • 低体温では血液粘稠度が上昇する。血液希釈でヘマトクリットを下げると粘稠度が下がり、末梢血管抵抗は低下する(希釈は低体温の粘稠度上昇を打ち消す)。
  • 血液希釈の限界はヘマトクリット20%前後(ヘモグロビン約7 g/dL)。「希釈限界はヘモグロビン10 g/dL」は誤り。

2-8 心筋保護

目的と心筋保護液の種類

大動脈を遮断すると冠動脈に血が流れず、心筋は虚血になる。心筋保護は心臓を拡張期で止め(高カリウムで心停止)、冷やして酸素消費を下げ、虚血に耐えさせるために行う。

細胞内液型細胞外液型
ナトリウム細胞内液型はナトリウムが低い(低Na・低Caで細胞内の組成に近い)細胞外液型はナトリウムが高い(血漿に近い組成)
  • 心停止は高カリウム液で得る(高カルシウム液・低カリウム液ではない)。
  • 晶質液性心筋保護液と血液併用心筋保護液がある。血液の添加は必須ではない。
  • 血液併用は膠質浸透圧が保たれ酸素も運ぶので、心筋浮腫を軽減する。
  • 血液を混ぜるときは超低温にしない(粘度が上がり、酸素を離しにくくなる)。血液併用液の注入温度を晶質液より低くする、は誤り。

温度と虚血の許容時間

心筋温を10℃下げると酸素消費量は約1/2になる(1/10ではない)。常温では代謝が高く、虚血の許容時間は十数分程度と短い。「常温虚血の安全限界は60分」も「5分未満」も切る。

注入の経路と方法

経路入れる所押さえる点
順行性大動脈基部(遮断の中枢側)高度の大動脈弁閉鎖不全では液が左室へ逆流するので、基部からは入れない
選択的冠灌流冠動脈口に直接大動脈を切開する手術(大動脈弁手術・高度ARなど)で使う。僧帽弁手術で必須ではない
逆行性冠静脈洞にカニューレを入れる注入圧は40 mmHg以下(高圧は冠静脈洞を傷つける)。右室には液が届きにくい

心筋保護液は専用の回路(心筋保護回路・冠灌流回路)とポンプで入れる。送血回路から側枝を出して送血ポンプの圧で入れる、は誤り。初回注入量の目安は約10〜20 mL/kg(80 mL/kgは多すぎる)。遮断が続く間は一定の間隔で追加注入する。

心筋保護で取り違えやすい対

高カリウム(止める)と高カルシウム(止まらない・拘縮)/細胞内液型=低ナトリウムと細胞外液型=高ナトリウム/順行性=大動脈基部と逆行性=冠静脈洞/専用回路と送血回路の側枝。心筋保護液を入れると回路内のカリウムが上がるので、注入後は血中カリウムを確かめる(2-4)。

ひっかけ・混同注意

逆行性注入の圧は上限(約40 mmHg以下)で管理する。冠静脈は壁が薄く、高圧で損傷・浮腫を起こすため。「注入圧は30 mmHg以上とする」のような下限を決める記述は誤り。

2-9 大動脈内バルーンパンピング(IABP)

しくみと効果

バルーン付きカテーテルを下行大動脈(左鎖骨下動脈の分岐の少し下〜腎動脈の上)に置く。上行大動脈・弓部大動脈ではない。駆動ガスはヘリウム(軽くて素早く出入りできる)で、酸素は使わない。

タイミング効果(国試の語形)
拡張期にバルーンを膨らませるダイアストリック・オーグメンテーション:拡張期圧が上がり、冠動脈灌流圧と冠血流量が増える。脳血流は保たれる(減らない)
収縮期の直前にしぼませるシストリック・アンローディング:収縮期圧が下がり、左室の後負荷・心仕事量・心筋酸素消費量が減る

IABPは圧補助で、流量を作る装置(流量補助)ではない。効果は自己心拍に依存する。同期は心電図(R波)や動脈圧波形で取る(トリガ)。動脈圧の図で「拡張期にもう1つ山がある」波形がIABP。抗凝固はACT150〜200秒程度(400秒以上は人工心肺)。心内に置くポンプカテーテル(IMPELLA)とは別の装置。

適応と禁忌

適応(代表例)禁忌(代表例)
心原性ショック・開心術後の低心拍出量症候群(LOS)・人工心肺離脱困難・切迫心筋梗塞・難治性狭心症・急性心筋梗塞後の心室中隔穿孔に伴う心原性ショック大動脈弁閉鎖不全症(中等度以上)(拡張期の膨張で逆流が増える)・大動脈解離・大動脈瘤・重い末梢動脈疾患

冠動脈ステントの再狭窄・血栓閉塞の予防やバイパスグラフトの閉塞予防は適応ではない。大動脈弁狭窄症・僧帽弁の病気・三尖弁閉鎖不全症は禁忌ではない(禁忌の弁膜症は大動脈弁閉鎖不全)。

始業点検

始業点検(使う前の点検)の代表例=バッテリの充電状態・ヘリウムガスのボンベ残量・トリガ信号の確認・アラームの作動。バルーン内圧の測定と接触電流の測定は始業点検の項目ではない(内圧は運転中の監視、接触電流は定期点検の電気的安全性試験)。

IABPとPCPSの違い

IABPは自己心拍がないと効かない圧補助で、補助できる量は心拍出量の1〜2割程度にとどまる。PCPSは心停止でも流量を作れる流量補助。IABPで足りないときにPCPSを加え、PCPSで増えた後負荷をIABPで減らす、という組み合わせで使う。

2-10 PCPS・ECMO(VA-ECMOとVV-ECMO)

構成

ECMO(体外式膜型人工肺)は遠心ポンプ+膜型人工肺の閉鎖回路(貯血槽なし)。PCPS(経皮的心肺補助)は静脈‐動脈(VA)ECMOと同じ回路構成。成人でも血液ポンプは遠心ポンプが主(ローラポンプではない)、定常流で拍動流ポンプは使わない。

  • カニューレ:PCPSは大腿静脈から脱血し、大腿動脈へ送血する(腕頭動脈ではない)。
  • 経皮的に入れるので、全身麻酔は要らず局所麻酔でベッドサイドでも導入できる。
  • 抗凝固はヘパリン(ワルファリンではない)。ACTは150〜200秒程度(400秒以上ではない)。
  • ECMOは新生児にも使われる。

VAとVVの違い

VA-ECMO(=PCPS)VV-ECMO
目的呼吸と循環の両方を補助する呼吸だけを補助する(循環補助はしない)
脱血→送血静脈→動脈(大腿動脈など)静脈→静脈(内頸静脈・大腿静脈)
適応(代表例)心原性ショック・心停止・心肺蘇生・ショックを伴う急性肺血栓塞栓症・心筋梗塞後の心破裂によるショック重症呼吸不全(ARDSなど)で心機能は保たれている
左室後負荷動脈に逆行性に送血するので、流量を上げるほど増えるVVでは後負荷は増えない
特有の問題左室が開かず膨らむ(過伸展)・肺うっ血送血した血がすぐ脱血される再循環が起こりうる

心機能の低下が高度なら、VAを選ぶ(VVでは心臓を助けられない)。動脈から静脈へ流す方式(AV)は主流ではない。VA-ECMOは静脈から抜くので前負荷は減り、後負荷が増える。後負荷を減らす目的でIABPやIMPELLAとの併用はよく行われ、禁忌ではない。

禁忌(代表例):頭蓋内出血・くも膜下出血など出血性の病気(ヘパリン化が要る)、大動脈解離、高度の大動脈弁閉鎖不全(逆行性送血で左室が過伸展する)。

運転中の圧とトラブル

  • 脱血回路は陰圧で、脱血不良になると陰圧がさらに強くなる(内圧は上昇しない)。
  • 人工肺に血栓がつくと人工肺の手前(入口側)の回路内圧が上がる。前後の圧較差が開いたら交換を考える。
  • 遠心ポンプが止まったら、鉗子で回路を遮断して逆流を防ぐ。
  • 膜の結露(ウェットラング)はまず酸素フラッシュ。血漿漏出なら交換(2-2)。

離脱(ウィーニング)は流量を少しずつ下げ、自己心拍出・血圧・乳酸値を見ながら進める。VA-ECMO中に自己心の拍出が戻ると、上半身へは自己心の血、下半身へはECMOの血が届き、混ざり合う位置が動く。右手で動脈血を採って上半身の酸素化を確かめる。

2-11 補助人工心臓(VAD)・IMPELLA・心臓移植

補助人工心臓の基本

  • 補助人工心臓は左心補助(LVAD)が多い(右心補助が多い、は誤り)。
  • 脱血は左房脱血より左室(心尖部)脱血が多い。送血は上行大動脈へ。
  • 体外設置型(空気圧駆動の拍動流が代表)と体内設置型(植込み型)がある。
植込み型VADの正しい記述誤りとして出るもの
無拍動流(連続流)型が主流拍動流型が主流
左心補助(LVAD)が基本で、両心補助には体外設置型を使うのが一般的植込み型で両心の補助ができる(を基本とする)
退院して在宅で使える在宅では使えない
血栓予防にワルファリンなどの抗凝固薬を使うワルファリンは使わない
心臓移植までの橋渡し(BTT:bridge to transplant)として使うことが多い移植適応の患者には使えない
植え込まれた最多の疾患は拡張型心筋症最多は虚血性心疾患
多い合併症は感染(ドライブライン)・脳血管障害(出血・塞栓)最多の合併症は機器の故障

使う目的の呼び名:BTT(移植までの橋渡し)・BTR(回復までの橋渡し)・DT(長期在宅治療)。日本の心臓移植は近年年100例前後(100例を少し超える年もある)で、500例には遠く及ばない。改正臓器移植法では本人の意思が不明でも家族の承諾で臓器を提供できる。

IMPELLA(循環補助用心内留置型ポンプカテーテル)

正しい記述誤りとして出るもの
大動脈弁をまたいで左室に置き、左室から血を吸って上行大動脈へ送る。左室の負荷が減り、左室仕事量が減る
カテーテルに組み込まれているのは小型の軸流ポンプ小型の遠心ポンプが組み込まれている
大動脈弁が機械弁の患者には禁忌
パージシステムはモータ内に血液が入らないようにする
対象は成人(太いカテーテルが入る体格が要る)乳幼児に使える
補助循環を負荷で並べる

IABPは後負荷を下げる圧補助。PCPS(VA-ECMO)は流量補助だが後負荷を上げる。IMPELLAとLVADは左室から直接抜くので左室の負荷を下げる。VV-ECMOは循環に手を出さない。

VADの運転管理で問われる点:連続流型では脈が触れにくく、通常の血圧計やパルスオキシメータで測りにくいことがある。ドライブライン(皮膚の貫通部)は感染の入口になるので、毎日の消毒と固定を行う。在宅ではバッテリの交換・予備の携帯と、家族や介護者の操作の習得が要る。

IABPのバルーンは下行大動脈に留置する(先端は左鎖骨下動脈の分岐部より下)。弓部大動脈は頸部への分枝があり脳血流を妨げるので弓部に留置する、は誤り。PCPSは大腿動静脈から経皮的に入れるので局所麻酔で導入でき、全身麻酔は必須でない。

2-12 体外循環のトラブル対策と合併症

空気塞栓・空気の誤送

空気の誤送は最も致命的な事故。貯血槽の液面が下がると、完全に空にならなくても渦(ボルテックス)で空気を巻き込んで送ることがある。だからレベルセンサを貯血槽に付ける(2-3)。脱血回路に微小気泡が続けて引けてくるときは接続部やカニューレ周りなど原因を探す(すぐに送血を止める、ではない)。送血側に気泡が入ったら送血を止める。

送血圧異常・脱血不良・回路チューブの脱落

トラブル見え方と対応
送血圧の上昇回路の屈曲・閉塞、送血カニューレの位置異常、人工肺やフィルタの目詰まり、大動脈解離を疑う。ローラポンプでは圧が上がり続け回路破裂の危険がある
脱血不良貯血槽の液面が下がり、CVPが上がる。脱血カニューレの挿入部位(位置)を確かめる。カニューレを深く入れすぎると血管壁に吸い付いて悪化するので、ただ深く入れるのは誤り
回路チューブの脱落大量出血と空気の吸い込み。ポンプを止めて回路を鉗子で遮断し、つなぎ直す
人工肺の故障血栓・血漿漏出は交換。結露はまず酸素フラッシュ
血液ポンプの故障・停電手動装置(ハンドクランク)で送血を続ける

大動脈解離

送血カニューレの先端や大動脈遮断で動脈壁が裂け、送血が偽腔に入る。大腿動脈送血でも解離は起こる。

  • 所見:送血圧の急上昇、患者の動脈圧の低下、上行大動脈の色調の変化(暗紫色)(「上行大動脈が緊満する」は誤答肢として出る)、貯血槽への戻りが減る脱血不良。
  • 対応:大動脈解離では、まずただちに送血を止める(送血圧・流量を上げて続ける、も、灌流圧を下げてそのまま人工心肺を続ける、も誤り)。送血温を下げて臓器を守る。経食道心エコー(TEE)で確かめる。送血カニューレは真腔に入れ直す(送血部位を変える)。
  • IABPは大動脈解離では使えない(禁忌)。ヘパリン追加は対応ではない。

そのほかの事象と対処

事象対処(正しい組合せ)
溶血が目立つポンプチューブの圧閉度を調整する(吸引の陰圧も見直す)
代謝性アシドーシス炭酸水素ナトリウム(重炭酸)で補正し、灌流量を見直す。代謝性アルカローシスに炭酸水素ナトリウムは使わない
Htの低下水分バランスを確かめる
ACTが延長しないヘパリンを追加する
凝固機能異常(離脱後の出血)プロタミンでの中和、血小板・凝固因子の補充。体外循環で血小板の数と機能が落ち、凝固因子も薄まることが原因

インシデントレポート

提出するのは手順の抜けや誤りがあったとき。代表例=ヘパリン投与後にACTを測らなかった、大動脈遮断の後にヘパリン未投与に気づいて投与した。Ht低下に輸血、血圧低下に流量増加、離脱困難にIABP挿入は状態に合わせた通常の対応で、レポートの対象ではない。

トラブルは「止める・遮断する・確かめる」の順

空気が送血側へ行きそうなら止める。遠心ポンプが止まったら逆流を防ぐため遮断する。脱血不良・送血圧上昇は位置・屈曲・閉塞を確かめる。「流量や圧を上げて押し切る」「カニューレを深く入れる」「ヘパリンを足す」は原因を悪化させるか効かない対応として誤答肢に出る。