「測る」こと自体の理論の章。出題の柱は誤差(種類・伝搬・正規分布)、雑音の種類と対策、信号処理の手法と用途、トランスデューサと物理量、生体信号増幅器の条件。過去問の計算は主に誤差の伝搬・SN比のdB・加算平均の√Nの3型なので、手順ごと覚える。
| 種類 | 性質 | 減らし方 |
|---|---|---|
| 系統誤差 | 一定方向にずれる偏り。計測器誤差(器差)・理論誤差・個人誤差(読みのくせ)はここに入る | 校正・補正で取り除く。平均しても消えない |
| 偶然誤差 | 原因を特定できないランダムなばらつき | 繰り返し測定して平均すると小さくなる |
| 過失誤差 | 読み違い・記録ミスなど人の誤り | 測り直し・確認で防ぐ |
「繰り返し測定し平均することで影響を小さくできる誤差は」と聞かれたら偶然誤差だけ。個人誤差・理論的誤差・測定器誤差は系統誤差の仲間なので切る。
絶対誤差=測定値−真値、相対誤差(誤差率)=絶対誤差÷真値(%で表す)。
| 語 | 意味 | 対応する誤差 |
|---|---|---|
| 正確度(確度・accuracy) | 分布の中心(平均)が真値に近いこと | 系統誤差が小さい |
| 精密度(精度・precision) | ばらつき(分布の幅)が小さいこと | 偶然誤差が小さい |
2つの分布の図を出す問題では、平均が真値に重なる方が正確度が高く、幅が狭い方が精密度が高い。両者は別もので、正確でも精密とは限らない(的当てで、中心の周りに散らばる=正確だが精密でない)。
| 範囲 | 含まれる確率 |
|---|---|
| M±1σ | 68.3% |
| M±2σ | 95.4% |
| M±3σ | 99.7% |
63.2%は時定数τのときの到達率(1−1/e)、70.7%は1/√2(実効値・遮断周波数の振幅比)。どちらも正規分布の±1σではない。
手順:①求める量が測定値の積・商か、和・差かを見る。②積・商なら各相対誤差(%)を足す。③和・差なら各絶対誤差を足す。④「最大の誤差」は符号をそろえて足した値。
例題1:相対誤差1%の電流計と2%の電圧計で電力を測る。P=VI(積)なので 1+2=3%。
例題2:誤差率2%の抵抗器の両端電圧を誤差率4%の電圧計で測り、電流を出す。I=V/R(商)なので 4+2=6%。
誤答の型:√(1²+2²)=√5は、独立な偶然誤差を確率的に合成するときの値で、最大誤差を聞く問題では使わない。片方だけの誤差(1%や4%)や平均(3%)も切る。
掛け算・割り算の結果は、有効数字の桁数がいちばん少ない測定値に合わせる。足し算・引き算の結果は、末尾の位がいちばん粗い測定値に合わせる。計算の途中は1桁多く持ち、最後に丸める。
SIの基本単位は7つ:m(長さ)・kg(質量)・s(時間)・A(電流)・K(温度)・mol(物質量)・cd(光度)。それ以外は基本単位の組合せでできる組立単位。
| 物理量 | 単位 | 取り違えやすい単位 |
|---|---|---|
| 圧力・応力 | Pa(=N/m²) | |
| コンダクタンス | S(ジーメンス) | C=クーロン(電荷) |
| 磁束密度 | T(テスラ) | H=ヘンリー(インダクタンス)、Wb=磁束 |
| 静電容量 | F(ファラド) | |
| 熱容量 | J/K | K=温度 |
| 吸収線量 | Gy(グレイ) | Sv=等価線量・実効線量、Bq=放射能 |
接頭語:G=10⁹、M=10⁶、k=10³、m=10⁻³、μ=10⁻⁶、n=10⁻⁹、p=10⁻¹²。
トレーサビリティ=現場の計測器が、切れ目のない校正の連鎖で国家標準(計測器の標準)までさかのぼれること。校正の根拠を示す考え方。
波形は時間の流れで見た表し方、スペクトルは周波数ごとの成分の大きさで見た表し方。両者はフーリエ変換で行き来できる。
| 区分 | 雑音 | 出どころ・性質 |
|---|---|---|
| 内部雑音(機器の中で生じる) | 熱雑音(ジョンソン雑音) | 抵抗の中の電子の不規則な熱運動で生じる。抵抗・温度・帯域幅が大きいほど大きい(周波数によらず白色) |
| ショット雑音 | 半導体内部(pn接合)でキャリアがばらばらに流れることで生じる | |
| フリッカ雑音(1/f雑音) | 低周波ほど大きく、周波数に反比例する | |
| クリック雑音・接触雑音 | 回路の接点・部品の接触不良で生じる | |
| 部品間の電磁誘導 | 機器内部の部品どうしの干渉 | |
| 外来雑音(外部雑音・外から入る) | 商用交流(ハム)・落雷・電波 | ハムは商用交流(50/60 Hz)で生じる。接地不良は外来雑音を拾いやすくする |
「内部雑音の発生要因は」には抵抗器の温度上昇・電子部品の接触不良・部品間の電磁誘導を選び、落雷・接地不良は外来として切る。「フリッカ雑音は周波数に比例して大きくなる」は誤り。
手順:①信号と雑音を同じ単位にそろえる。②比を出す。③電圧比・電流比なら20 log₁₀、電力比なら10 log₁₀をかける。
| 電圧比 | 2 | 10 | 20 | 100 | 1000 |
|---|---|---|---|---|---|
| dB | 6 | 20 | 26 | 40 | 60 |
例題:1 mVの信号に50 μVの雑音。1000 μV÷50 μV=20。20×log₁₀20=20×(0.3+1)=26 dB。10 logで計算した13 dBは電力比の式を使った誤り。SN比は大きいほど雑音が相対的に小さく、よい。
直接測定は測りたい量そのものを測る方法、間接測定は別の量を測って関係式から求める方法(例:電圧と抵抗を測って電流を出す)。
| 性能 | 求められる向き | 理由 |
|---|---|---|
| 入力インピーダンス | 大きい | 電極(信号源)インピーダンスとの分圧で信号が減るのを防ぐ |
| 同相除去比(CMRR) | 大きい | 同相で入るハムを除く |
| 入力換算雑音 | 小さい | 微弱信号を雑音から分ける |
| 入力オフセット電圧・ドリフト | 小さい | 直流のずれ・基線の揺れを抑える |
| SN比 | 大きい | 信号を明瞭にする |
| 周波数特性・感度・分解能(量子化精度)・直線性 | 測る信号に見合うこと | 帯域が狭いと波形がひずむ |
増幅器の条件を選ぶ問題は「入力インピーダンスが小さい」「入力換算雑音が大きい」「同相除去比が小さい」を全部切れば残る。
入力インピーダンスは入力電圧÷入力電流で、単位はΩ(dBではない)。入力電圧と出力電圧の比は増幅度(利得)で別物。入力容量を含むので大きさは周波数に依存する。電極ペーストが下げるのは電極と皮膚の接触インピーダンスで、増幅器の入力インピーダンスは変わらない。信号源インピーダンスより十分大きくする(小さくするは誤り)。
差動増幅器は2つの入力の差(生体信号)だけを増幅し、両方に同じように乗る同相成分(商用交流雑音)を打ち消す。だから差動増幅器を使う主な目的は商用交流雑音の除去。入力インピーダンスを上げる・安全性を上げる・増幅度を稼ぐ、は主目的ではない(安全はアイソレーション(絶縁)で確保する)。
CMRR(同相除去比、弁別比)=差動利得÷同相利得をdBで表した値。大きいほど同相雑音をよく除く。「弁別比は40 dB以上あればよい」は低すぎて誤り。
計測器は電極・トランスデューサ(変換器)→増幅器→信号処理部→記録・表示装置の順につながる。
| 正しい記述 | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 電極は生体内のイオンの流れを電子の流れへ変換する | |
| 銀-塩化銀(Ag-AgCl)電極は不分極電極で、電位が安定し基線が揺れにくい | |
| 接触インピーダンスは接触面積に反比例(広いほど小さい) | 接触面積を広くすると接触インピーダンスが増加する |
| 電極ペーストは皮膚との接触インピーダンスを下げる | |
| X線はカーボン電極を透過する(カテーテル検査で写り込まない) |
測定対象への選択性がよい・測定範囲で直線性が保たれる・信号の速さに応答できる・低侵襲・SN比が大きい。「SN比を小さくできること」は誤り。
| 素子(センサ) | 変換する物理量 | 使う機器の例 |
|---|---|---|
| ストレインゲージ | ひずみ・変位・力・圧力 | 観血式血圧計の圧トランスデューサ |
| 差動トランス | 変位 | |
| 圧電素子(PZT) | 圧力・振動・超音波 | 超音波診断装置の探触子 |
| サーミスタ・熱電対 | 温度 | 熱希釈式心拍出量計 |
| CdS(硫化カドミウム)・フォトダイオード | 光 | パルスオキシメータ(受光はフォトダイオード) |
| HgCdTe・赤外線検出素子 | 赤外線 | カプノメータ(CO2の赤外線吸収) |
| ホール素子 | 磁場 |
「パルスオキシメータ―ホール素子」「CdS―温度」「HgCdTe―磁気」「サーミスタ―圧力」は定番の誤り。
増幅・処理した信号を人が読める形にするのが記録・表示装置。今の主流はディジタル表示で、液晶ディスプレイなどのモニタに波形と数値を出し、データはメモリに保存する。紙に残す記録器は、発熱素子を並べたサーマルアレイ記録器(感熱紙に点で描く)が代表で、ペンが無いので応答の遅れが小さく、複数の波形を同時に描ける。
| 読み取りの要点 | 中身 |
|---|---|
| 時間軸 | 記録紙の紙送り速度で決まる(心電図は通常25 mm/s=1 mmが0.04 s)。速くすると波形が横に伸びる |
| 振幅 | 感度で決まる(心電図は通常10 mm/mV)。記録には感度と速度を必ず添える |
| モニタ表示 | 掃引速度と振幅の目盛で読む。表示の帯域・サンプリングが粗いと速い波形がなまる |
心電図モニタの送信機としての使い方は第2章2-3にもある。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| 周波数帯 | 420〜450 MHz、6バンドに分かれる |
| 送信機の型 | 同時に送る信号の数でA〜Eの5つの型がある |
| チャネル間隔 | A型12.5 kHz・B型25 kHz・C型50 kHz・D型100 kHz・E型500 kHz(型が進むほど広い) |
| 混信対策 | バンドを色ラベルで区別し、ゾーン配置で隣の区域と同じバンドを避ける |
「A型のチャネル間隔は25 kHz」は誤り(25 kHzはB型)。
AD変換は標本化(一定間隔で値を取る)と量子化(値を段階に丸める)でできる。標本化周波数は信号の最高周波数の2倍より高くする(標本化定理)。守らないと折り返し雑音(エイリアシング)が出るので、AD変換の前にローパスフィルタを置く。量子化のビット数が多いほど分解能が高い(nビットで2ⁿ段階)。フーリエ変換はAD変換の手段ではなく周波数解析の手段。
DA変換は逆に、ディジタル値をアナログ電圧に戻す変換で、処理した信号をモニタ・記録器・刺激装置などへ出すときに使う。分解能はビット数で決まる(nビットで2ⁿ段階)。出力は階段状になるので、後ろにローパスフィルタを置いて滑らかにする。
| 手法 | 用途 | 取り違えの肢 |
|---|---|---|
| FFT(高速フーリエ変換) | 周波数解析・パワースペクトルの導出 | 誘発電位の検出 |
| 加算平均(同期加算) | 不規則雑音に埋もれた繰り返し信号(誘発電位)の検出 | パワースペクトル・基線ドリフト低減 |
| 自己相関関数 | 周期的成分の抽出 | 折り返し雑音の抑制 |
| ローパスフィルタ・移動平均 | 高周波雑音の除去・平滑化(脳波に混じった筋電図、折り返し防止) | 周期的成分の抽出 |
| ハイパスフィルタ | 基線動揺(低周波ドリフト)の抑制 | |
| 微分演算 | ピーク位置・立ち上がりの検出(傾き0の点がピーク) | 雑音除去(微分は高周波を強める) |
睡眠脳波に筋電図が混じったら、筋電図は脳波より高い周波数なので、ローパスとして働く移動平均で除く。加算平均は自発脳波には使えない。
そのほか、パターン認識は心電図の自動解析などで波形を分類する技術、ディジタルサブトラクションは2枚の画像の差を取って目的の部分だけを残すディジタル処理技術。
信号は毎回同じ位相で重なるので大きさは変わらず、不規則雑音は打ち消し合って1/√Nになる。よってSN比は加算回数Nの√N倍に改善する。
例題:225回加算 → √225=SN比15倍(雑音は1/15)。100回なら10倍、400回なら20倍。「信号成分が15倍」「雑音が1/225」「SN比225倍」はすべて誤り。
ハムは壁や床の電源配線から、患者やリード線に静電容量(容量結合)や電磁誘導で乗ってくる。患者の体に乗ったハムは両方の電極に同じように入る=同相成分なので、差動増幅で消せる。
| 対策(正しい) | 誤りとして出るもの |
|---|---|
| 差動増幅器(CMRRが大きい)で同相雑音を除く | 移動平均処理・加算平均処理でハムを除く |
| ハムフィルタ(ノッチフィルタ)で50/60 Hzだけを落とす | 高周波雑音をハムフィルタで除く(高周波はローパス) |
| 信号線(入力導線)にシールド線を使い、シールドを接地する | 電源回路にラインフィルタ(ACラインフィルタ)を入れる(電源ラインの雑音用で、誘導ハムには効かない) |
| 測定器の接地端子・ベッド・シールドマットを接地極につなぐ | 右足コードを保護接地端子に直接つなぐ |
| 誘導コードはまとめて(より合わせて)ループ面積を小さくする | 誘導コード同士を離してばらばらに置く |
| ベッドを壁(壁内の配線)から離す | 電源コードをベッドと平行に置く |
| 電極の接触インピーダンスを下げる(ペースト・皮膚の処理) |
商用交流ハム→差動増幅+ハムフィルタ(心電図の対策の組合せはこの2つ)。高周波雑音→ローパスフィルタ。基線動揺→ハイパスフィルタ。不規則雑音→加算平均。外来の誘導→シールド・接地・より線。ディジタルフィルタは標本化した信号を演算して雑音を除く。