第2章|生体電気・磁気計測

生体計測装置学 第2章
収録 26問(第31〜39回)時定数と周波数特性・電極・標準12誘導と誘導の計算・心電図の時間計算・医用テレメータ・脳波計と誘発電位・神経伝導速度・SQUIDと生体磁気

体が出す電気(心電図・脳波・筋電図)と磁気(心磁図・脳磁図)を測る装置の章。出題の柱は標準12誘導の定義と計算、脳波計と心電計の標準値、SQUIDによる生体磁気計測。数値(感度・紙送り・時定数)は心電計と脳波計を並べて覚えると取り違えない。

2-1 生体電気計測の特性と電極

信号の周波数帯と大きさ

信号周波数のおよその範囲大きさ
筋電図数Hz〜数kHz(いちばん高い)μV〜mV
心音図数十Hz〜1 kHz程度
心電図約0.05〜100 HzmV
脳波約0.5〜数十Hz数十μV
容積脈波数Hz以下

「最も高い周波数成分まで記録する必要があるのは」→筋電図。活動電位の立ち上がりが速いので高い周波数を含む。

時定数(低域遮断周波数)

生体電気の増幅器には、基線のゆっくりした揺れを切るためのハイパスフィルタ(入力のCR結合)が入っている。その強さを時定数τで表し、低域遮断周波数 fc = 1 ÷(2πτ)。

心電計脳波計
時定数3.2 s以上(fc≒0.05 Hz)0.3 s(fc≒0.5 Hz)
標準感度10 mm/mV50 μV/5 mm(10 μV/mm)
標準の紙送り(記録速度)25 mm/s30 mm/s

時定数を小さくするほど遮断周波数が上がり、低い周波数の成分が削られる。心電図でいちばん影響を受けるのは、ゆっくり変化する平らな部分であるST部分(ST部分が下がったり上がったりして見え、虚血と見誤る)。QRSやR波は高い周波数が主なので影響を受けにくい。

感度・CMRR・入力インピーダンス

感度は1 mVや50 μVの入力でペンが何mm振れるかで表す。同相除去比(CMRR)は大きいほどよく、40 dBは低すぎる(解説では60 dB以上が目安)。脳波計の入力インピーダンスは数MΩ以上が要り、1 MΩでは低い。脳波計で時定数0.03 sは誤りの数字(正しくは0.3 s)。

体表面電極

正しい記述誤りとして出るもの
電極は生体内のイオン電流を電子電流へ変換する
接触インピーダンスは接触面積が大きいほど小さい接触面積を広くすると接触インピーダンスが上昇(増加)する
電極と皮膚の境界は容量性なので、周波数が高いほど接触インピーダンスは小さい周波数が高くなると接触インピーダンスは増加する
電極用ペーストは接触インピーダンスを下げる
新しい金属電極はエージング(なじませ)後の電極より基線の変動が大きい
電極電位は使う金属の種類で違う
銀-塩化銀電極は不分極電極(分極が小さく基線が安定)
X線はカーボン電極を透過する

2-2 心電計:標準12誘導・ディジタル心電計・心電図の読み方

標準12誘導の定義

誘導定義(+側−基準)要点
標準肢誘導(双極誘導)Ⅰ=左手−右手、Ⅱ=左足−右手、Ⅲ=左足−左手アイントーベンの三角形でⅡ=Ⅰ+Ⅲ
増大単極肢誘導(aVR・aVL・aVF、ゴールドバーガー)1肢を探査電極にし、残り2肢を抵抗で結んだ点を基準にするaVR+aVL+aVF=0
胸部誘導(V1〜V6)胸の電極を探査電極にし、3肢を結んだウィルソンの結合点(中心電極)を基準にする単極誘導(双極ではない)

例:aVRは右手が探査電極で、左手と左足を結んだ点が基準(ウィルソンの結合点ではない)。aVLは左手が探査電極で、右手と左足を結んだ点が基準。回路図の問題は「基準が1点か・2肢の合成か・3肢の合成か」で見分ける。右足電極は差動増幅器のニュートラル(基準)端子につなぐ(保護接地ではない)。

胸部電極の位置(代表):V1=第4肋間胸骨右縁、V2=第4肋間胸骨左縁、V4=第5肋間と鎖骨中線の交点、V3=V2とV4の中間、V5=V4の高さで前腋窩線、V6=同じ高さで中腋窩線。

ディジタル心電計:誘導の計算

ディジタル心電計はⅠ・Ⅱと胸部6誘導の計8誘導を測り、残りの肢誘導は計算で作る(8誘導心電計)。

誘導Ⅰ・Ⅱからの式
ⅢⅡ−Ⅰ
aVR−(Ⅰ+Ⅱ)/2
aVLⅠ−Ⅱ/2
aVFⅡ−Ⅰ/2

解き方:右手R・左手L・左足Fの電位で書く。Ⅰ=L−R、Ⅱ=F−R。aVL=L−(R+F)/2 を変形すると(L−R)−(F−R)/2=Ⅰ−Ⅱ/2。胸部誘導(V1など)は肢誘導から計算できない。

右手と左手の電極の付け違い

RとLを入れ替えて定義式に入れると機械的に出る。

誘導付け違いの結果
Ⅰ反転する
ⅡとⅢ入れ替わる(Ⅱは反転しない)
aVRとaVL入れ替わる
aVF・胸部誘導(V1〜V6)変化しない(基準のR+Lの組は入れ替えても同じ)

波形の意味

部分意味
P波心房筋の興奮(脱分極)
PQ時間房室伝導の時間。延長は房室ブロック(洞結節の障害ではない)。正常は0.12〜0.20 s
QRS波心室筋の興奮(脱分極)
ST部分下降は心筋虚血の指標
T波心室筋が興奮から回復する時期(再分極)

記録紙からの時間・心拍数(計算の型)

手順:標準の紙送り25 mm/sなので1 mm=0.04 s、5 mm=0.20 s。①長さ(mm)×0.04で時間(s)にする。②心拍数=60÷R-R時間(s)=1500÷R-R間隔(mm)。

例題1:R-R間隔20 mm → 20÷25=0.8 s → 60÷0.8=75回/分。

例題2:PQ間隔5 mm → 5×0.04=0.20 s。

2-3 心電図モニタ・医用テレメータ・ホルター心電計・心内心電計

小電力医用テレメータ(心電図テレメータ)

正しい記述誤りとして出るもの
専用周波数帯は420〜450 MHz帯専用周波数帯は1 GHz帯にある
割り当て周波数はバンド1〜6の6バンド1〜5バンドに分類される
A型送信機の帯域幅(チャネル間隔)は12.5 kHz(B型25 kHz)A型は25 kHz
送信機のチャネル番号は4桁の数字で表示する
ディジタル変調方式にはFSK(周波数偏移変調)がある
ダイバーシティアンテナはフェージングを防ぎ、受信感度を安定させる
アンテナシステムとして漏洩同軸ケーブルが用いられる。受信感度向上にブースタを使う
同じ病棟内では同じ色ラベル(同じバンド)の送信機を使い、隣の病棟とは色を変える(ゾーン配置)

混信の原因になるのは、同じチャネルの送信機を近くで同時に使うこと。チャネル管理と色ラベルで防ぐ。

その他の心電計

装置要点
心電図モニタベッドサイドで心拍数・不整脈を連続監視する。アラームを設定して使う
ホルター心電計日常生活の中で長時間(24時間など)連続記録し、一過性の不整脈や虚血を見つける
心内心電計カテーテル電極で心臓の内側から記録する。電極が心臓に直接触れるのでミクロショックに注意(CF形の機器を使う)

心電図モニタの誘導法

心電図モニタは四肢でなく胸部に電極を貼る簡易な双極誘導を使う。電極は3電極(+・−・アース)が基本で、5電極なら胸部誘導も1つ見られる。胸に貼るので体動で外れにくく、長時間の監視に向く。

誘導電極の位置(−→+)使いどころ
Ⅱ誘導(相当)右鎖骨下→左下胸部P波とQRSが大きく見やすいので、不整脈の監視に最もよく使う
CM5誘導胸骨柄→V5の位置左室側壁のST変化が見やすく、心筋虚血の監視に使う
NASA誘導胸骨柄→剣状突起呼吸や体動・筋電図の影響を受けにくく、P波も見やすい

モニタ用の設定は帯域を狭くして基線の揺れや筋電図を抑えるので、ST変化の診断は標準12誘導で確かめる。

2-4 脳波計と誘発電位

電極と誘導法

電極は国際10/20電極配置法で置く。鼻根と後頭結節、左右の耳介前点を結ぶ線を10%・20%の間隔で区切って位置を決める。奇数番号が左、偶数番号が右、zが正中。誘導法は、耳朶などを基準にする基準電極導出(単極導出)と、2つの頭皮電極の差をとる双極導出。

ディジタル脳波計

ディジタル脳波計はすべての電極を共通の基準(システムレファレンス)に対して記録しておく。そのため記録後に誘導の組み方を変えて表示(リモンタージュ)でき、フィルタもかけ直せる(リフィルタリング)。

標準値と波の種類

標準感度50 μV/5 mm、時定数0.3 s、記録速度30 mm/s(心電計の25 mm/sと取り違えない)。

波周波数出る場面
δ波4 Hz未満深い睡眠・病的状態
θ波4〜8 Hz未満まどろみ・小児
α波8〜13 Hz安静・閉眼・覚醒時に後頭部優位に出る。開眼で抑制される
β波13 Hz超(14 Hz以上と書く本もある)開眼・精神活動・緊張
γ波約30 Hz以上β波よりさらに速い波。1秒あたりの波の数が最も多い

波形図の問題は、30 mm(=1秒)の中に波がいくつあるかを数えて周波数を出す。1秒に約10波ならα波。

誘発電位(誘発脳波)

正しい記述誤りとして出るもの
誘発電位は自発脳波(数十μV)より小さい安静時脳波よりも誘発脳波の電位変動は大きい
刺激から一定の潜時をもって現れる
誘発電位は刺激に同期して加算平均し、SN比を上げて取り出す
聴性誘発電位(聴性脳幹反応・ABR)はクリック音で刺激する
脳手術中の神経機能のモニタリングに使う

刺激の種類:視覚誘発電位(VEP)=光(パターン反転)、体性感覚誘発電位(SEP)=末梢神経の電気刺激、聴性脳幹反応(ABR)=クリック音。大きさは自発脳波>VEP・SEP(数μV)>ABR(1 μV以下)で、電位変化の最も小さいのは聴性脳幹誘発電位。

脳波の応用:BISモニタ

BISモニタは前額部の脳波を処理して、鎮静(麻酔)の深さを0〜100の数値で表示する。100に近いほど覚醒、低いほど深い。全身麻酔中は40〜60程度が目安とされる。

2-5 筋電計と神経伝導速度

筋電計の構成

筋電計は電極(針電極・表面電極)・電気刺激装置・増幅器・加算平均装置・スピーカで構成される。スピーカは筋活動電位を音で確かめるため。音刺激装置は聴性誘発電位用で、筋電計の構成要素ではない。電気刺激はアイソレータ(絶縁)を介して行う。

針筋電図は筋の中に針を刺して個々の運動単位の活動を、表面筋電図は皮膚の上から筋全体の活動を記録する。誘発筋電図は神経を電気刺激して筋の反応(複合筋活動電位(CMAP))を記録する。

運動神経伝導速度(計算の型)

手順:①同じ神経の2か所(近位・遠位)を刺激し、それぞれの潜時を測る。②伝導速度=2つの刺激点の間の距離÷潜時の差(m/s)。

1点だけの潜時には神経筋接合部などの遅れが入るので、2点の差をとって打ち消す。図の問題で、導出電極に近い刺激点の潜時T₁、遠い刺激点の潜時T₂、2つの刺激点の間の距離D₂なら、答えはD₂/(T₂−T₁)。D₁(導出電極〜近い刺激点)は差をとると消える区間なので式に入らない。

正しい記述誤りとして出るもの
計測には複合筋活動電位(CMAP)を用いる刺激電流のパルス幅は5〜10 ms(正しくは0.1〜0.5 ms程度)
神経の2か所を電気刺激する加算平均装置が必要(CMAPは大きいので1回で記録できる)
電気刺激はアイソレータを介して行う

感覚神経の活動電位(SNAP)は小さいので加算平均を使う。運動神経(CMAP)と感覚神経の違いとして押さえる。

筋弛緩モニタ

筋弛緩モニタは末梢神経(尺骨神経など)を電気刺激して筋の反応を測り、筋弛緩薬の効き具合をみる。代表は4回連続刺激(TOF:train-of-four)で、1回目と4回目の反応の比で評価する。

2-6 生体磁気計測:SQUIDと心磁図・脳磁図

SQUID磁束計

SQUID(超伝導量子干渉素子)はジョセフソン効果を利用した、極めて感度の高い磁気センサ。超伝導状態で動くので液体(液化)ヘリウムで冷却する。ホール素子は感度が足りず使わない。

正しい記述と誤りの肢

正しい記述誤りとして出るもの
磁気シールドルーム(磁気シールド室)の中で測る静電シールドルーム内で計測する
生体の磁界は地磁気よりけた違いに小さい生体の磁界は地磁気とほぼ等しい
磁界は向きをもつベクトル量磁界はスカラー量
計測しているのは生体が出す磁界(磁束密度)透磁率を計測している
心臓や頭の周りの組織の透磁率はほぼ一様(真空とほぼ同じ)とみなせる
脳磁図の空間分解能は脳波より高い(電位のように頭蓋骨などで広がらない)
電流ダイポール(電流双極子)の位置を推定できる
頭皮に平行(接線方向)な電流による磁場を検出する頭皮に垂直な電流双極子による磁場を検出している
センサは冷却容器(デュワー)の中にあり、頭皮に密着させなくてよいセンサを頭皮に密着させる必要がある
心磁図は心臓の電気活動に伴う電流が作る磁界を測る

磁場の強さの順

生体磁気の強さは肺磁図>心磁図>脳磁図。肺磁図は吸い込んだ酸化鉄の粉じんが磁化されたもので最も強く、脳磁図が最も弱い。目安として脳磁図は10⁻¹³〜10⁻¹² T程度、心磁図は10⁻¹¹〜10⁻¹⁰ T程度、地磁気は約5×10⁻⁵ T。図の問題は、弱い側から脳磁図→心磁図→肺磁図と当てはめる。