第4章|医用画像計測

生体計測装置学 第4章
収録 39問(第31〜39回)超音波のモードと走査・ドプラ・X線とCT値・DSA・MRI・PETとSPECT・内視鏡とNBI・光トポグラフィ・サーモグラフ

画像装置の章。問われるのは「何を当てて、何を受けて、何が得意か」の対比で、細かい装置論は少ない。超音波=反射、X線・CT=透過(吸収)、MRI=水素原子核の共鳴、核医学=体内のRIが出すγ線、光トポグラフィ=近赤外光。この5本の軸に、空間分解能・被曝・苦手な臓器を重ねて覚える。

4-1 超音波画像計測:表示モード・走査・ドプラ

→ 正本:医用機械工学ノート 1-10 波動・音波・超音波とドプラ効果(この節は本科目の観点だけ。用語・分類・数字は正本で覚える)

基本の物理

項目値・性質
生体軟部組織の音速約1,500 m/s(約340 m/sは空気中の音速。骨は約3,000〜4,000 m/s)
診断に使う周波数数MHz〜十数MHz(2〜15 MHz程度)。100 kHzでは分解能が出ない
反射が起きる所音響インピーダンス(密度×音速)が異なる界面で反射する。肝臓は脂肪より音響インピーダンスが大きい
周波数と深さ周波数が高い(波長が短い)ほど、分解能は上がるが、減衰が大きく深部は見えにくい
方位(横)分解能ビーム幅が狭いほどよい
造影剤マイクロバブル(微小気泡。強く散乱する)

超音波はガスと骨が苦手で、その奥は影(音響陰影)になる。描出が最も難しいのは内腔にガスを含む小腸(消化管)と肺。肝臓・腎臓・心臓・乳腺・膀胱は得意。

音響インピーダンスの差が大きい界面ほど反射が強い。軟部組織と空気・骨の境ではほとんど反射してしまうので、プローブと皮膚の間の空気をゼリーで除く。分解能は2種類あり、距離分解能(ビームの方向)はパルスが短いほど、方位分解能(ビームと直角の方向)はビームが細いほどよい。

表示モード

モード表示使い道・ひっかけ
Aモード(Amplitude)1本のビーム上の反射を振幅で1次元表示「Aモードで断層像」は誤り
Bモード(Brightness)反射の強さを輝度にした断層像反射が強いほど、明るく(白く)表示する。パルス波(パルスエコー法)で作る
Mモード(Motion)1本のビーム上の動きを時間軸で表示時間分解能が高い。心臓弁の動き・心室壁の厚さ・左室径から駆出率の概算

走査方式

方式視野の形主な用途
リニア長方形(直線に並べた振動子)体表に近い血管・乳腺・甲状腺
コンベックス扇形。深部ほど、視野が広い(プローブに近いほど狭い)腹部
セクタ小さな接触面から扇状肋間の狭い窓から見る心臓
ラジアル全周(360°)超音波内視鏡・血管内超音波(IVUS)

「腹部にはセクタ走査が適する」「超音波内視鏡ではセクタ走査」は誤り。血管内超音波(IVUS)で血管の断面を内側から観察できる。組織ハーモニック(高調波)イメージングは分解能とコントラストを上げ、組織性状の描出に役立つ。

ドプラ法

血流がプローブに近づくと受信周波数は送信周波数より高くなる(遠ざかると低い)。偏移はcosθに比例するので、ビームが血流に垂直(90°)だと測れない。

パルスドプラ連続波ドプラ
位置(深さ)選べる=速度分布が得られる選べない(距離分解能なし)
高速の血流速いほど、折り返し(エイリアシング)が起こりやすい測れる=狭窄部の高速血流はこちら
パルス繰り返し周波数(PRF)PRFを上げると測れる速度は上がるが、測れる深さは浅くなる—

PRFは送信する超音波の周波数(MHz)よりずっと低く、「PRFは振動周波数の2倍以上」は誤り。カラー表示ではカラードプラ=流れの向きと速さ、パワードプラ=血流の強さ。パワードプラは向きを表示できないが、遅い血流に感度が高く毛細血管レベルの血流を見られる。カラードプラでは一般に、プローブに近づく流れを赤、遠ざかる流れを青で表す。

Bモードは1秒間に数十枚の断層像を描けるので、心臓の動きなどをリアルタイムの動画で観察できる(「超音波では動画を撮れない」は誤り)。断層像になるのはBモードで、Aモードは1次元の振幅表示。

4-2 X線画像とX線CT

X線撮影の性質

X線画像は組織を透過して減衰したX線の差(吸収差)を画像にする。「反射率を画像化」は誤り。骨と空気のコントラストは高いが、神経など軟部組織の走行はX線では見にくい(MRIが得意)。透視なら心拍・嚥下・カテーテル操作など臓器の動きも撮れる。一般撮影の空間分解能は0.1 mm前後と高い。

X線は原子番号が大きく密度が高い物質ほどよく吸収されるので、骨(カルシウム)は白く、空気(肺)は黒く写る。脂肪・筋肉・水の差は小さく、ここを補うのが造影剤とCTである。

正しい記述誤りとして出るもの
造影剤はX線の吸収差(濃度コントラスト)を強める造影剤は空間分解能の改善のために使う
ヨード系造影剤は原子番号が大きく、X線をよく吸収する(陽性造影剤)ヨード系造影剤はX線吸収量が小さい
DSAの時間差分法は造影剤を入れる前(マスク像)と後の画像を差し引き、血管だけを残す

DSAの差分には、造影の前後で引く時間差分と、2種類のエネルギーのX線で引くエネルギー差分がある。ディジタルX線画像はDICOM形式で保存・通信する。

X線CTとCT値

X線CTはX線管と検出器を回して多方向から照射し、吸収係数の分布を再構成する(「単一方向から照射」は誤り)。深部も含め全身を撮れ、断層像を重ねると3次元(立体)表示もできる。空間分解能は0.5〜1 mm程度で超音波より高い(5 mmは粗すぎる)。スライス厚は0.5〜10 mm程度(50 μmではない)。

組織CT値(HU)
空気−1000
脂肪約−100
水0(基準)
筋肉約+40〜60(脂肪より高い)
骨約+1000

CT値の基準は水で、骨ではない。「水を0、空気を−1000」はCTの定義で、MRIの輝度の話として出たら誤り。CTは被曝があるので放射線防護が要る。体動で像がぼける。造影剤で血管を強調でき、手術ナビゲーションにも使う。装置の音はMRIの方がずっと大きい(「CTの音はMRIより大きい」は誤り)。

CTの種類:管球と検出器が連続して回りながら寝台が動くヘリカル(らせん)CTと、検出器を体軸方向に何列も並べたマルチスライス(多列検出器)CTで、広い範囲を短時間に撮れる。薄いスライスで連続して撮ると任意の断面や3次元の画像を作り直せる(3次元CT・CTアンギオ)。

4-3 MRI

原理

MRI=核磁気共鳴画像法(磁気共鳴画像)。MRIは強い静磁場の中で水素原子核(プロトン)を電波(RFパルス)で共鳴させ、戻るときの信号を画像にする。炭素・窒素の分布ではない。「磁力線の透過性を画像化」も誤り。

要素役割
静磁場超電導(超伝導)磁石は液体ヘリウムで極低温に冷やす。静磁場が強いほど、SN比が上がり画質がよくなる
傾斜磁場位置ごとに共鳴周波数を変え、位置情報を得る。任意の断面(横断・矢状断・冠状断・斜位)が撮れる
RFパルスと受信コイル共鳴を起こし、信号を受ける

緩和には縦緩和(T1)と横緩和(T2)があり、T1緩和とT2緩和は同時に進む。T1強調像は脂肪が高信号、T2強調像は水・浮腫が高信号。空間分解能は約1 mm(5 mmではない)。

T1は倒れた磁化が静磁場の向きに戻る速さ(縦緩和)、T2は横向きにそろった磁化がばらける速さ(横緩和)を表す時間で、生体ではT2はT1より短い。組織ごとにこの時間が違うことが、MRIの高い軟部組織コントラストの元になる。

得意・不得意と安全

得意(正しい記述)苦手・誤り
被曝がない/軟部組織のコントラストが高い(脳・脊髄・靭帯)/造影剤なしでも血管を描ける(MRA)/心電同期で心臓など動く臓器も撮れる/骨・骨髄も撮れる(皮質骨は低信号なだけ)「撮影に被曝を伴う」「骨の撮像はできない」は誤り。肺と石灰化は苦手でCTが向く(プロトンが少ない)

磁場と安全管理:強い磁場のため、体内金属・心臓ペースメーカ(MRI対応機を除く)は禁忌、磁性体の持ち込みは吸着事故になる。撮影時間が長く、傾斜磁場の切り替えで騒音が大きい。造影剤はガドリニウム。RFパルスで体が温まる(比吸収率SARの管理)、超電導(超伝導)が壊れて液体ヘリウムが一気に気化するクエンチにも注意する。

4-4 ラジオアイソトープ(RI)による画像:PETとSPECT

何を測るか

核医学は体内に投与した放射性医薬品(RI)が出す放射線を体外で検出する。体外から照射するのはX線・CT。測るのはγ線で、α線・β線・中性子線ではない。

SPECT(単光子断層法)PET(陽電子断層法)
核種単光子放出核種(⁹⁹ᵐTc・²⁰¹Tl・¹²³Iなど)陽電子(ポジトロン)放出核種(¹⁸F・¹¹C・¹³N・¹⁵O)
検出するものγ線(単一光子)陽電子が電子と対消滅して反対向きに出す2本の511 keVのγ線を同時計数する
検出器ガンマカメラ(コリメータ+シンチレータ+光電子増倍管)を被検者の周りで回すリング状に並べた検出器で囲んで固定(回さない)
代表的な画像脳血流・心筋血流FDG-PET=糖代謝(腫瘍の検出・がん診断)

どちらも断層像(3次元)が得られる機能画像。空間分解能は数mm〜1 cm程度でCT・MRIより低い(「CTと同程度」「1 mm程度」「0.1 mm程度」は誤り)。PET/CTで解剖の情報を補う。定量のため体内での吸収(減弱)と散乱の補正が要る。「SPECTで組織の線維化を画像化」は誤り。

SPECTのコリメータは決まった方向から来たγ線だけを通し、線源の位置を決める(鉛の穴あき板)。PETは2本のγ線を同時に捉えた検出器の対で方向が決まるので、コリメータが要らず感度が高い。γ線はシンチレータで光に変え、光電子増倍管で電気信号に増幅する。

PET核種の半減期は短い:¹⁸F 約110分、¹¹C 約20分、¹³N 約10分、¹⁵O 約2分(「数日」は誤り)。ポジトロン核種の半減期は数分〜約2時間と短い。

サイクロトロン

サイクロトロンは、陽子などの荷電粒子を磁場の中で円を描かせながら加速し、標的に当てて陽電子放出核種をつくる加速器。半減期の短い核種(¹⁵O・¹³N・¹¹C)は運ぶ間に減ってしまうので、使う施設の中のサイクロトロンで作る。¹⁸F-FDGは半減期が約110分あるので製造所から配送されたものも使えるが、国試では「PETの撮影には施設内にサイクロトロンの設置が必要」を正しい記述として扱う。SPECTの核種(⁹⁹ᵐTcなど)は院内のサイクロトロンを要しない。

4-5 内視鏡画像計測

ファイバスコープと電子内視鏡

ファイバスコープ電子内視鏡
像の伝え方グラスファイバの束(イメージガイド)で光のまま運ぶ先端の撮像素子(CCD・CMOS)で電気信号にして送る
光源どちらも本体側の光源装置(キセノンランプ・ハロゲン・LED)の光をライトガイド(光ファイバ)で先端へ運ぶ。先端に光源は無い
記録接眼部にカメラを付ければ記録できるモニタに出して記録

誤りとして出るもの:「電子内視鏡は光源装置が不要」「電子内視鏡の光源は挿入部先端」「撮像素子は操作部」(正しくは先端部)、「電子内視鏡はグラスファイバで画像を伝える」、「導光用ファイバは炭素繊維製」(ガラス繊維=グラスファイバ。石英ガラスの光ファイバ)、「挿入部の消毒は不要」(使用後は洗浄と高水準消毒)。構成要素は光ファイバ・レンズ・CCDで、光電子増倍管と検出コイルは内視鏡の部品ではない(それぞれ核医学とMRI)。

ファイバスコープはファイバ1本が画像の1画素になるので、ファイバが折れると画面に黒い点が出る。電子内視鏡は画像を電気信号で扱うので、画像処理(強調・記録・ネットワーク送信)がしやすい。

電子内視鏡のカラー化

方式しくみ
同時方式カラーの撮像素子(素子の前の色フィルタ)で一度に撮る
面順次方式白黒の撮像素子に、RGB回転フィルタで赤・緑・青を順に当てて合成する

回転フィルタを使うのは面順次方式で、同時方式ではない。

特殊光・カプセル・超音波内視鏡

名称要点
狭帯域光観察(NBI)青(約415 nm)と緑(約540 nm)の2つの狭帯域光。ヘモグロビンに吸収されやすい光で粘膜表層の毛細血管を強調する。「赤色光を用いる」は誤り
赤外光観察(IRI)赤外光は深く届くので、粘膜深部の血管が見える
カプセル内視鏡飲み込んで撮像。白色LED(ハロゲンランプではない)・撮像素子・電池・無線回路を内蔵し、画像を体外の受信機へ送る。小腸の観察に使う
超音波内視鏡(EUS)ラジアル走査(全周)とコンベックス走査。消化管壁の層構造や膵臓など、組織内部の病変を見る
腹腔鏡腹腔を二酸化炭素で膨らませる(吸収されやすく塞栓になりにくい)

内視鏡は観察と同時に生検・ポリープ切除・止血などの治療ができ、管腔臓器の表在性病変の診断に使う。

4-6 光トポグラフィ・サーモグラフと装置の比較

光トポグラフィ(近赤外分光法)

光トポグラフィは頭皮上から近赤外光(約700〜900 nm)を当て、酸素化・脱酸素化ヘモグロビンの変化から大脳皮質の活動を画像にする。遠赤外光は水に吸収されて届かないので誤り。

正しい記述誤りとして出るもの
多チャンネル(多チャネル)で同時に測れる/言語野・運動野の同定など脳神経外科の術前検査に使う遠赤外光を用いて測定する
拘束が少ないので発声や運動をしながら測れる(磁場も使わない)
時間分解能は0.1 s程度
光が散乱するので空間分解能は数cm(2〜3 cm)と粗い。測れるのは大脳皮質の表層だけ空間分解能は1 mm程度である

サーモグラフ

サーモグラフは体表が放射する赤外線を受けるだけで、赤外線を照射しない(受動・非接触)。体温(約310 K)の放射は約10 μm(8〜14 μmの遠赤外)にピークがある(ウィーンの変位則)。温度はステファン・ボルツマンの法則(放射エネルギーは絶対温度の4乗に比例)から求める。検出器は量子型(光量子型)と熱型。わかるのは体表面の温度分布だけで、深部は測れない。温度分解能は約0.1℃(1℃ではない)。

エネルギーを加えるか、受けるだけか

装置から生体にエネルギーを加える(能動)体から出るものを受けるだけ(受動)
超音波診断装置(超音波)・X線CT(X線)・光トポグラフィ(近赤外光)・MRI(電波と磁場)PET・SPECT(体内のRIが出すγ線)・サーモグラフ(体表の赤外線)・心電図・脳波

核医学は体内の線源を撮るので、エネルギーを加えない側。「物理的エネルギーを加えて計測するのは」で、PET・SPECTを選ばない。

装置の対比(横断の整理)

装置空間分解能被曝得意苦手
一般X線約0.1 mmあり骨・肺・動き(透視)軟部組織
X線CT0.5〜1 mmあり肺・石灰化・骨・全身軟部のコントラスト
MRI約1 mmなし脳・脊髄・軟部組織・MRA肺・石灰化・金属
超音波mm程度(周波数による)なし実質臓器・心臓・リアルタイムガス・骨
PET・SPECT数mm〜1 cmあり(体内)代謝・血流(機能)解剖の細部
光トポグラフィ数cmなし皮質の活動・動きながら深部

空間分解能はCT・MRI>SPECT・PET。「PETはX線CTより解像度が高い」は誤り。

比較問題で一緒に出る正しい記述(詳しくは4-2・4-3)

CT値は水0・空気−1000で、筋肉(約+40)は脂肪(約−100)より高い。ディジタルX線画像はDICOM形式で保存・通信する(医用画像の国際標準規格)。MRIではT1緩和とT2緩和が同時に進む(T2の方が短い)。SPECTはガンマカメラを回転させて断層像を得る。誤りは「PETはX線CTより解像度が高い」の側。