精神科OT評価ガイド
この記事の執筆者: 現役の作業療法士が、臨床経験と国家試験の出題傾向をもとに執筆・監修しています。
精神科OTの評価は「症状の評価」と「生活機能の評価」の2本柱。どの検査が何を測定するかを整理するだけで、国試の精神科分野のほとんどの問題に対応できるようになる。
1. 精神症状の評価尺度
| 評価名 | 特徴 |
| BPRS(Brief Psychiatric Rating Scale) | 18項目を面接・観察で評価。思考内容・不安・抑うつ・陽性症状・陰性症状など精神症状の全体像を把握する。精神科OTで最もよく使用される評価の一つ。 |
| PANSS(陽性・陰性症状評価尺度) | 統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想)と陰性症状(感情鈍麻・意欲低下)を分けて評価する。薬物療法の効果測定にも使用。 |
| GAF(全体的機能評価尺度) | 1〜100の尺度で全体的な機能水準を評価。DSM-5では削除されたが日本の臨床では現在も広く使用される。 |
| GAS(包括的評価スケール) | 1〜100で机上の症状から社会機能まで幅広く評価。GAFとよく混同される。 |
| SDS(Zung自己評価うつ病尺度) | 患者本人が記入する自己評価式のうつ症状評価。20項目。 |
| STAI(状態・特性不安検査) | 状態不安(今の不安)と特性不安(もともとの不安傾向)を分けて評価する。 |
国試頻出ポイント
「BPRSは観察評価・PANSSは陽性/陰性症状を分けて評価」この違いは頻繁に問われる。GAFの「1〜100」という数値範囲も覚えておくこと。
2. 心理検査の種類と特徴
| 検査名 | 種類 | 特徴 |
| WAIS-IV(知能検査) | 知能検査 | 16〜90歳対象。言語理解・知覚推理・ワーキングメモリ・処理速度の4指標でIQを測定。 |
| WISC-V(小児知能) | 知能検査 | 6〜16歳対象。発達障害・学習困難の評価に多用。 |
| MMPI(ミネソタ多面的人格目録) | 人格検査(質問紙法) | 550項目の質問紙。多くの臨床尺度があり、多面的なパーソナリティ評価が可能。 |
| ロールシャッハテスト | 人格検査(投映法) | インクブロット(しみ)を見せて反応を分析する。深層心理・思考様式を評価する。 |
| SCT(文章完成法) | 人格検査(投映法) | 未完成の文章を補わせる。意識・無意識の側面を評価する。 |
| バウムテスト(樹木画法) | 人格検査(投映法) | 木の絵を描かせて人格・精神状態を評価する。 |
3. 生活機能・ADL評価
| 評価名 | 内容 |
| LSP(生活技能プロフィール) | 精神障害者の日常生活能力を評価。食事・清潔・金銭管理・服薬管理・対人関係など生活全般を評価する。 |
| Life Skills Profile(LSP) | 地域生活での自己管理・社会的活動・コミュニケーションなど5領域を評価。 |
| LASMI(精神障害者社会生活評価尺度) | 日常生活・対人関係・労働・適応行動の4領域で精神障害者の社会機能を評価する。 |
| 自立生活プログラム評価 | 調理・掃除・洗濯・買い物などの生活技能を実際に観察して評価する。OTが自立訓練の場面でよく行う。 |
4. 精神科OTのプログラム構成
精神科OTでは作業活動を手段として治療的に使う。「なぜその活動を選ぶか」という治療的根拠が国試で問われる。
- 個別作業療法:1対1の関係性の中で個別の目標に合わせた介入。初期段階・症状が不安定な時期・特定のスキル習得に適する。
- グループ作業療法:集団の力動を活用した治療。社会的スキルの練習・孤立感の軽減・自己開示の機会として機能する。
- 生活技能訓練(SST: Social Skills Training):社会生活に必要なスキル(服薬管理・対人コミュニケーション・感情表現など)を行動療法的手法で訓練する。
- 心理教育:疾患の知識・症状への対処法・再発の早期サインについて本人・家族に教育する。
- 就労支援・自立訓練:地域生活・復職に向けた実際的なスキルの獲得を目指す。
💡 臨床メモ: 精神科OTで大切なのは「作業をやらせること」ではなく「作業を通して何が起きているかを観察すること」。グループでの反応・集中の持続・他者との関わり方がそのまま評価情報になる。評価と介入が同時に進んでいるのが精神科OTの面白さだと思う。
⚠️ よくある誤解
- 「精神科OTは心理療法と同じ」→ 心理療法は言語による心理的介入が中心。OTは作業活動を通した介入が特徴。また、心理療法は公認心理師・精神科医が行うことが多い。
- 「GAFとGASは同じ」→ 別の評価。GAFはDSM-IV時代に使用されていた評価で、GASは別の評価尺度。混同しないように。
- 「BPRSは患者自身が記入する」→ BPRSは面接者(OT・医師・看護師など)が観察・面接によって評価する他者評価。自己記入式ではない。
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※ 本記事は現役の作業療法士が執筆・監修しています。
最終更新: 2026年5月