第4章|公衆衛生・社会保障・災害とリスク管理
保健医療福祉 第4章
4-1 予防の段階・健康づくり・自殺対策
| 段階 | ねらい | 例 |
| 一次予防 | 発症させない(健康増進・特異的予防) | 健康な高齢者への運動指導、高齢者の骨折予防指導、予防接種(インフルエンザワクチン)、禁煙指導(肺がん予防)、健康教室 |
| 二次予防 | 早期発見・早期治療、発症した病気の重症化予防 | がん検診、糖尿病患者への食事指導(合併症への進行を防ぐ) |
| 三次予防 | 機能の維持・悪化防止、リハビリテーション、社会復帰・再発防止 | 関節リウマチ患者への生活指導(関節保護)、障害のある人のリハビリテーション |
「肺がん予防のための禁煙指導は二次予防」は誤り=一次予防。病気がまだ無い人への働きかけは一次、病気を持つ人の進行を抑えるのは二次、障害の悪化防止や社会復帰は三次。
自殺対策の予防段階
| 段階 | 例 |
| 一次予防(普及啓発・環境づくり) | うつ病のパンフレットの全戸配布、住民参加型の健康教室、傾聴ボランティア(ゲートキーパー)の養成講座 |
| 二次予防(ハイリスク者への早期介入) | 自殺念慮のある人への精神的ケア |
| 三次予防(事後対応) | 自死遺族へのグループケア(遺族支援) |
健康づくりの用語
| 用語 | 意味 |
| 保健指導 | 生活習慣病の予防・改善のため、食事・運動・喫煙などの行動変容を促す |
| ポピュレーションアプローチ | 集団全体に働きかけてリスクを下げる(個人に重点を置くのはハイリスクアプローチ) |
| ヘルスプロモーション | 人々が自らの健康をコントロールし、改善できるようにするプロセス(オタワ憲章)。「誰でも病院を受診できる過程」ではない |
| 健康日本21(第二次) | 「こころの健康」の分野があり、自殺者の減少などの目標値が設定されている |
4-2 死因の統計と公害
| 時期 | 死因の上位 |
| 2011年(平成23年)以降 | 第1位 悪性新生物・第2位 心疾患・第3位 肺炎(肺炎が脳血管疾患を上回った) |
| その後 | 老衰が肺炎を上回り第3位になった |
- 脳血管疾患はかつて死因の第1位だったが、現在は上位3つに入らない。
- 自殺は全年齢の順位では上位3つに入らない(若い年代では死因の上位になる)。
四大公害病
| 公害病 | 原因物質 |
| 水俣病・新潟水俣病 | 有機水銀(メチル水銀)。魚介類に濃縮され食物連鎖で摂取された |
| イタイイタイ病 | カドミウム |
| 四日市ぜんそく | 硫黄酸化物(亜硫酸ガス)による大気汚染 |
水俣病=有機水銀、イタイイタイ病=カドミウムの取り違えが定番。鉛・マンガン・有機リン(農薬)は水俣病の原因ではない。
4-3 社会保障制度と医療法
| 分類 | しくみ | 例 |
| 社会保険 | 保険料を出し合い、病気・老齢などのリスクに備える | 医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療)・年金・介護保険・雇用保険・労災保険 |
| 公的扶助 | 税財源で最低限度の生活を保障。資力調査(ミーンズテスト)を伴う | 生活保護 |
| 社会福祉 | 支援が必要な人へのサービス | 児童福祉・障害者福祉・高齢者福祉 |
| 公衆衛生・保健医療 | 国民の健康の保持・増進 | 母子保健・感染症対策・生活習慣病対策 |
医療法に規定されるもの・されないもの
| 医療法に規定がある | 医療法ではない |
| 医療提供の理念/医療の担い手(医療従事者)の責務(適切な説明に努めるなど)/病院・診療所の開設(開設者・管理者)と管理/病床の種別/都道府県の医療計画 | 診療報酬=健康保険法などに基づき厚生労働大臣が定める点数表 |
4-4 ICFと障害者福祉の理念の歴史
ICF(国際生活機能分類)の背景因子
| 背景因子 | 内容・例 |
| 環境因子 | 人を取り巻く物的・人的・社会的な環境。章立ては①製品と用具 ②自然環境と人間がもたらした環境変化 ③支援と関係 ④態度 ⑤サービス・制度・政策。介護保険制度・障害者総合支援法などの制度はここに入る |
| 個人因子 | 年齢・性別・ライフスタイル・教育歴・生活歴・趣味・価値観(生活感)など、その人固有の特徴 |
「ライフスタイル」「教育歴」「趣味」は環境因子ではなく個人因子。制度・サービスは本人の外にあるので環境因子。
障害者福祉の理念・運動の年代
| 理念・出来事 | 時期・場所 |
| ノーマライゼーション | 1950年代、デンマーク(知的障害者の親の会の運動から) |
| 自立生活運動(IL運動) | 1960年代、アメリカ(重度障害のある学生の運動から) |
| 国際障害者年 | 1981年、国連(テーマ「完全参加と平等」) |
| 障害者権利条約 | 2006年に国連で採択、日本は2014年に批准 |
古い順にノーマライゼーション→IL運動→国際障害者年。
4-5 災害時の作業療法
| 作業療法士の役割(優先度が高い) | 作業療法士の役割ではない・優先度が低い |
- 避難所の状況把握
- 避難者の生活ニーズの聞き取り
- 障害者・高齢者の避難所アセスメント
- 避難先での動線の整備・段差やトイレなどの環境調整
- 生活不活発病(廃用症候群)の予防(体操指導・役割や活動の確保)
- 感染予防対策
- 避難所の責任者・行政・他職種との情報共有
|
- トリアージ(傷病の重症度に応じた治療優先度の判断)=救急医療を担う医師などが行う
- 避難者一人ひとりへの個別の筋力増強訓練(災害直後の避難所では、集団・環境への働きかけが優先)
|
災害時の作業療法は「個人の機能訓練より、集団と環境への働きかけ」。生活の専門職として、避難生活で活動量が落ちること(生活不活発病)を防ぐ。
4-6 感染管理(陽圧・陰圧)と急性期のリスク
| 空調 | 目的 | 部屋の例 |
| 陽圧(室内の気圧を外より高くする) | 外から病原体を入れない=免疫が低下した患者を守る | 集中治療室・無菌室(骨髄移植など)・手術室 |
| 陰圧(室内の気圧を外より低くする) | 室内の病原体を外へ出さない=周囲への感染拡大を防ぐ | 感染症隔離室(結核などの空気感染) |
一般病室・外来待合室・機能訓練室は特別な気圧管理の対象ではない。
周術期の肺塞栓症
- 原因の多くは下肢(骨盤)の深部静脈血栓が遊離して肺動脈を詰まらせること。
- 症状は突然の呼吸困難・胸痛・低酸素。突然死の危険が高い。
- 臥床後の初回歩行・離床時に発症しやすい。
予防は早期離床・足関節の自動運動・弾性ストッキングなど。「予防のため安静臥床とする」は誤り=安静は静脈うっ滞を招き血栓を作りやすくする。
広範囲熱傷の急性期
| 病態 | 治療 |
| 毛細血管の透過性が高まり全身浮腫・循環血液量の減少(ショック)。侵襲によるストレス反応で高血糖・基礎代謝量の増加 | 大量の輸液(Parkland法などで輸液量を決める)。高蛋白・高エネルギーの栄養療法 |
「熱傷急性期は輸液量を制限する」は誤り=ショックを防ぐため積極的に補液する。
大動脈解離の合併症
解離が大動脈の枝や心臓側へ及ぶと、その先の臓器に障害が出る。
| 及ぶ部位 | 起こる合併症 |
| 頸動脈など弓部の枝 | 脳梗塞 |
| 肋間動脈(脊髄への血流) | 脊髄障害(対麻痺) |
| 腎動脈 | 腎不全 |
| 大動脈の根元(上行大動脈) | 心タンポナーデ・大動脈弁閉鎖不全 |
三尖弁閉鎖不全は右心系の弁で、大動脈解離の合併症としては起こりにくい。