第3章|就労支援と精神保健福祉

保健医療福祉 第3章

3-1 就労系の障害福祉サービス(就労移行・就労継続A型/B型・就労定着)

いずれも障害者総合支援法の訓練等給付(障害者雇用促進法の事業ではない)。実施するのは指定を受けた障害福祉サービス事業所で、ハローワークではない。

サービス雇用契約対象・期間内容
就労移行支援なし一般就労を希望する原則65歳未満の人。利用期間は原則2年(市町村が必要と認めれば最大1年延長)一般企業への就職を目指す訓練・求職活動の支援・職場開拓(A型事業所への就労が目標ではない)
就労継続支援A型あり(最低賃金以上)通常の事業所での雇用は難しいが、雇用契約に基づく就労ができる人。原則18歳以上65歳未満。利用期間の定めはない雇用契約に基づく就労の機会。職業指導員の指導のもとで働き、業務以外の悩みは生活支援員に相談できる
就労継続支援B型なし(工賃)雇用契約に基づく就労が難しい人(就労経験があり年齢・体力面で一般就労が難しくなった人など)。年齢・利用期間の定めはない雇用契約を結ばずに就労・生産活動の機会を提供
就労定着支援—就労移行支援などを経て一般就労し、就職後6か月を経過した人職場への定着のための相談、生活リズム・家計などの課題への対応、企業・関係機関との連絡調整
自立訓練(生活訓練)—地域生活を送るための生活能力の向上が必要な人生活能力の訓練(就労の場ではない)

事例の見分け方:雇用契約あり→A型/雇用契約なし・体力的に雇用が難しい→B型/一般就労へ向けた期限つきの訓練→就労移行支援/一般就労して6か月たった後の支援→就労定着支援。障害者就業・生活支援センターや障害者職業能力開発校は「事業所で働く場」ではない。

A型にジョブコーチの配置義務はない。「A型の利用期間は3年」「A型は一般就労を6か月続けた人が対象」は誤り。「就労移行支援は年齢制限がない」も誤り(原則65歳未満)。

3-2 就労支援の機関と雇用施策

機関主な業務
ハローワーク(公共職業安定所)職業紹介・求職登録、トライアル雇用(助成金の申請窓口)、職場適応訓練の窓口、ジョブガイダンス(就職前の求職者向けの説明・実習)、精神障害者雇用トータルサポーターの配置(求職者へのカウンセリング・事業主への助言など)
地域障害者職業センター職業評価・職業準備支援・ジョブコーチ(職場適応援助者)支援・リワーク支援(休職者の職場復帰支援)・事業主への支援(雇用管理の助言など)。就労経験の有無を問わず職業評価を利用できる
障害者就業・生活支援センター就業面と生活面の一体的な相談・支援。就労中の生活上の問題も相談できる。職業紹介は行わない(職業紹介はハローワーク)
精神科医療機関・精神科デイケアリワークプログラム(復職支援)

組合せ問題の定番:ジョブコーチ・職業準備支援=地域障害者職業センター/トライアル雇用・職場適応訓練・ジョブガイダンス=ハローワーク/リワーク=医療機関・地域障害者職業センター(ハローワークではない)。保健所・精神保健福祉センター・地域包括支援センターは就労支援制度の実施機関ではない。ジョブガイダンスは就職前の支援で、就労中の定着支援ではない。

制度のポイント

制度押さえること
トライアル雇用一定期間の試行雇用で適性を見極める。期間は障害の種類で異なり、精神障害者は長めに設定されている(「障害種別を問わず3か月」は誤り)
障害者雇用率(法定雇用率)算定の対象は障害者手帳を持つ人(身体・知的・精神)。手帳を持たない難病患者は算定に含まれない。率そのものは改定されるので最新値を確認する
ストレスチェック労働安全衛生法による労働者全般のメンタルヘルス対策で、高ストレス者には医師の面接指導を勧める。障害者の就労支援制度ではない
両立支援コーディネーター治療と仕事の両立のため、本人・主治医・企業の間の調整を支援する役割。本人の代理として関係者と交渉するのではない
作業療法士の企業訪問訪問リハビリテーションは居宅で行うサービスであり、企業訪問をそれで算定するのではない

3-3 精神障害者の就労支援・就学支援の原則

適切不適切
就労支援の方針は本人が主体で決め、作業療法士は協働する作業療法士が方針を決定する
障害を開示する(オープン)か否か(クローズ)は本人が選ぶ。開示すれば合理的配慮を受けやすい「障害を開示して働くことは勧めない」と一律に言う
生活リズムが不安定でも、本人の意欲と状態に応じてデイケア以外の場も含めて段階的に選ぶ「デイケア以外は勧めない」と制限する
就労経験があっても地域障害者職業センターの職業評価を利用できる「就労経験者は職業評価を使えない」
就労中の生活の問題は障害者就業・生活支援センターに相談できる

精神障害のある生徒(高校生など)の就学支援

  • 担当医・家族・担当教員の連携(医療・家庭・教育の三者)が基本。
  • 本人の意向を尊重して方針を決める(親の希望を本人より優先しない)。
  • 病状の回復が優先。修業年限内の卒業に固執しない(休学・留年・転校・通信制なども選択肢)。転校を一律に避けさせない。
  • 休学中の試験的な登校(段階的な登校)は復学の準備として行ってよい。

3-4 精神保健福祉法の入院形態

措置入院・医療保護入院などの入院形態を定めるのは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)。

入院形態誰が決める・誰の同意要件期間の制限
任意入院本人の同意による自発的な入院—退院の申し出があっても、指定医が必要と認めれば72時間まで退院を制限できる
措置入院都道府県知事(政令指定都市の市長)の権限精神保健指定医2名以上の診察結果が一致して「入院させなければ自傷他害のおそれがある」—
緊急措置入院都道府県知事急速を要し、指定医1名の診察で自傷他害のおそれが著しい72時間以内
医療保護入院精神科病院の管理者が、指定医1名の診察+家族等の同意で入院させる(家族等がいない場合などは市町村長の同意)医療・保護のため入院が必要だが、本人の同意による入院ができない入院期間を定める(2024年4月施行の法改正から。入院から6か月までは3か月以内、以後は6か月以内。更新には要件の確認が必要)
応急入院応急入院指定病院の管理者急速を要し、家族等の同意を得ることができない。指定医の診察で入院が必要72時間以内

「措置入院は精神科病院管理者の判断」は誤り=知事の権限。「任意入院は本人の同意が不要」は誤り。「応急入院は身体合併症の治療が目的」は誤り(精神科の入院形態)。緊急措置入院中に作業療法を行ってはならないという規定はない。

障害・精神保健の法律の役割分担

法律主に定めること
障害者基本法障害者施策の基本理念・基本的な方向
障害者差別解消法障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供
障害者総合支援法障害福祉サービスの給付・地域生活支援事業
精神保健福祉法入院形態(任意・措置・緊急措置・医療保護・応急)・精神保健指定医・精神障害者保健福祉手帳など
医療観察法心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人の処遇(3-5)

3-5 心神喪失者等医療観察法

正式名称は「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(医療観察法)。

項目内容
目的継続的で適切な医療とそのための観察・指導により、病状の改善と同様の行為の再発の防止を図り、社会復帰を促進する(「対象者の行動管理」が目的ではない)
対象行為殺人・放火・強盗・強制性交等・強制わいせつ(刑法改正後の名称は不同意性交等・不同意わいせつ)・傷害の重大な他害行為。窃盗は含まれない
申立て検察官が地方裁判所に申し立てる(裁判官が申し立てるのではない)
処遇の決定地方裁判所で、裁判官1名と精神保健審判員(必要な学識経験を有する医師)1名の合議体が決める(簡易裁判所ではない)
精神保健参与員精神保健福祉士などが選ばれ、審判で福祉的な見地から意見を述べる(決定はしない)
決定の種類入院決定・通院決定・この法律による医療を行わない決定
入院先指定入院医療機関(多職種チームで治療。作業療法士も加わる)
社会復帰調整官保護観察所に所属し、精神保健福祉士などが任命される。審判の段階・入院中から生活環境の調査・調整に関わり、通院期間中は精神保健観察を行うなど、処遇の全体を通じて継続的にケアマネジメントを担う

「社会復帰調整官は指定入院医療機関に配置される」「退院決定のときから関わる」はいずれも誤り=保護観察所の職員で、入院当初から関わる。鑑定医・検察官・裁判官・精神保健参与員は継続的なケアマネジメントは担わない。処遇を決めるのは検察庁・保護観察所・指定入院医療機関・精神保健福祉センターではなく地方裁判所。

3-6 地域精神保健:ACT・精神科デイケア・精神障害にも対応した地域包括ケアシステム

ACT(Assertive Community Treatment:包括型地域生活支援プログラム)

特徴誤りの形
対象は重い精神障害のある人「軽度の人が対象」
精神科医・看護師・精神保健福祉士・作業療法士などの多職種チームでケアマネジメントを行い、チームで利用者を担当する
自宅・生活の場に出向く訪問(アウトリーチ)中心「医療機関内でのみ援助」
24時間365日の危機対応「日中に限定」
入院を減らし地域生活を続けることを目指す「入院治療を推奨」

精神科デイケア(診療報酬上の規定)

項目内容
実施時間デイケアは1日6時間が標準(ショートケア3時間・ナイトケア4時間・デイ・ナイトケア10時間)。「1日8時間」は誤り
規模小規模と大規模がある。大規模では疾患などに応じた診療計画の作成が必要
従事者小規模でも作業療法士・看護師・精神保健福祉士などの専従者が複数必要(専従1名では実施できない)
利用期間・年齢利用期間の上限・年齢の制限はない(長期利用では算定回数の制限がある)

精神保健医療福祉の政策の流れ

政策・報告書内容
精神保健医療福祉の改革ビジョン(2004年)「入院医療中心から地域生活中心へ」
これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会 報告書(2017年)精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を打ち出した
地域移行支援・地域定着支援障害者総合支援法の地域相談支援として以前からある仕組み
オレンジプラン認知症施策(精神保健医療福祉の検討会報告書とは別)
重層的支援体制整備事業社会福祉法の改正で創設された市町村の包括的支援体制(2017年の報告書とは別)

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの相談窓口として明記されている機関=精神保健福祉センター(都道府県・政令指定都市に置かれる精神保健福祉の中核機関)。自治会・精神科病院・グループホーム・介護老人保健施設は相談窓口として位置づけられていない。