自閉スペクトラム症〈自閉症スペクトラム障害〉(ASD)。旧称の広汎性発達障害・自閉症(自閉性障害・小児自閉症)・Asperger症候群も国試の選択肢にそのまま出る。中核は次の2つ。
| 中核症状 | OT場面・生活場面での現れ(代表例) |
|---|---|
| ①社会的コミュニケーション・対人相互交流の障害 | 冗談・皮肉・比喩が通じない(字義どおりに受け取る)/本音と建前を区別できない/場の空気が読めない/一方的に自分の関心事を話し続ける/他児への関心が乏しい・一人遊びが多い/他者との関係に無頓着/表情変化に乏しい・視線が合わない/身振り・表情など非言語の使用と理解が苦手/共感性が乏しい(心の理論の困難)/人見知りや後追いをしない・抱っこをせがまない |
| ②限定的・反復的な行動・興味(こだわり) | 同一性保持:予定変更・いつもと違う道でパニック、新しい環境を嫌う/同じ遊びに没頭・常同運動/独自の手順にこだわる/特定分野(鉄道・選手の背番号など)の知識を大量に記憶/感覚過敏・鈍麻(物音・匂い・触覚)と、それに関連した偏食 |
| 好む(得意) | 苦手 |
|---|---|
| 構造化された環境・決まった手順・ルーティン 明確で具体的な指示 図鑑・事典・規則・システム(事実の世界) 視覚情報(視覚優位のことが多い) | 流動的な状況・臨機応変さを求められる場面 曖昧な条件・指示 物語・想像力を要する遊び(ままごと・ごっこ遊び=象徴遊び) 暗黙のルールの理解 |
事例文では、幼少期から「一人遊びが多い・人見知りや後追いをしない・こだわり・感覚過敏」→学童期・思春期に「一方的な会話で孤立・場の空気が読めずいじめ・不登校」→成人で「成績は良いのに接客・同僚との関係でつまずき退職・引きこもり」という幼少期から一貫した対人の困難+こだわりの流れが描かれる。成績上位・知的に高いこともASDを否定しない。
「相手に気を遣い過ぎる」は回避・不安の傾向、「葛藤に満ちた対人関係(理想化とこき下ろし)」は境界性パーソナリティ障害、「他者の関心を集めようとする」は演技性パーソナリティ障害、「否定的評価を受ける状況を避ける」は回避性パーソナリティ障害・社交不安の像。ASDは「気遣いがずれる・関係に無頓着」と押さえる。うつ・引きこもりが前面に出ても、幼少期からの経過があれば二次障害と読む。
注意欠如多動症〈注意欠如・多動性障害〉(ADHD)。中核は不注意・多動性・衝動性の3つ。診断には12歳以前からの症状が必要なので生育歴の聴取が重要。
| 中核症状 | OT場面・学校・職場での現れ(代表例) |
|---|---|
| 不注意 | ケアレスミスが多い/忘れ物・落とし物が多い・道具をしばしばなくす/片付け・整理整頓が苦手(自室が乱雑)/他者の作業に目移りする(注意の転導性)/締め切り・約束を守れない/雑音で集中が切れる |
| 多動性 | じっと座っていられない・頻回に離席する・立ち歩く/手足をもぞもぞ動かす・鼻歌/しゃべりすぎる |
| 衝動性 | 順番を待てない・割り込む/他児にちょっかいを出す・余計な一言・おせっかい/注意されるとかっとなる・感情的になって暴れる/後先考えずに行動して失敗する |
| 項目 | 正しい知識 | よく出る誤り |
|---|---|---|
| 性差 | 男性(男児)に多い | 女性に多い |
| 年齢による変化 | 青年期以降は運動性の多動が目立たなくなる。不注意は成人期まで残りやすい | 成長につれて不注意の方が軽快しやすい |
| 成人期 | 成人期にも症状が続く例が多く、成人になってから診断されることもある | 約9割が成人期早期までに寛解する/成人では診断されない |
| 感情面の衝動性 | 感情の調節困難は改善しにくい側面 | 改善しやすい |
| 低出生体重 | リスク因子の一つにすぎない | 低出生体重児の多くで発症する |
| 原因 | 神経発達の特性。しつけの失敗が原因ではない | 親の育て方が原因 |
失敗体験と叱責の積み重ねで自己肯定感が下がり、うつ病・不安障害、反抗挑発症・素行症などの二次的な精神症状が出やすい。成人ADHDでは特にうつ病の併存に注意する。
「この患者(児)にみられる行動はどれか」「強く示唆する発言はどれか」は、選択肢の行動を疾患に振り分けると解ける。代表例を並べる。
| 行動・発言(代表例) | 考える疾患 |
|---|---|
| 冗談が通じない・いつもと違う道でパニック・同じ遊びに没頭・オウム返し・突然の予定変更で感情が乱れる | ASD |
| ケアレスミス・物をなくす・順番を待てない・頻回に離席・じっとしていられず後先考えずに行動 | ADHD |
| 知能は保たれるのに読み・書き・計算など特定の学習領域が極端に苦手(1領域とは限らず、読みと書きの困難が重なることも多い。音読が遅い・語の途中で区切って読む・読めるが書けない) | 限局性学習症〈学習障害〉(LD・SLD)。読字障害=ディスレクシア |
| ボタンかけ・箸・書字・ボール遊びなど協調運動が極端に不器用 | 発達性協調運動症〈運動機能の特異的発達障害〉(DCD) |
| 突発的にまばたき・肩すくめ・顔しかめ・首ふり・咳払いを繰り返す | チック症(音声チックを伴い長く続くものがTourette症候群) |
| 家ではよく話すが学校では話さない | 選択性緘黙〈場面緘黙〉 |
| 忘れ物がないか何度も確認・長時間手洗い・作業工程を何回も確認 | 強迫症(ADHDではない) |
| 誇大的な発言・根拠のない自信・活動性の波 | 双極性障害(躁状態) |
| 脳が溶けたなどの奇異な体感/周囲が不気味で何か起こりそう(妄想気分) | 統合失調症 |
| 映画を見ているようで現実感がない | 離人感・現実感消失(解離) |
| 検査で異常がないのに重病だと確信 | 心気妄想・病気不安 |
| 過呼吸/発作が心配で遠出できない | パニック症 |
| 発作を起こして倒れる | てんかん |
| 人前で緊張して話せない | 社交不安症 |
| 攻撃・器物破損・規則違反が続く | 素行症〈行為障害〉(反抗・拒否・敵意中心なら反抗挑発症) |
| 他者に対し過度に警戒的で、慰めを求めない・受け入れない | 反応性アタッチメント症〈反応性愛着障害〉 |
ASDとADHDの対比:ASDは「変化が苦手・こだわる・他児と関わらない」、ADHDは「待てない・なくす・すぐ他のことを始める・衝動的に他児に関わってトラブル」。自分から同級生との接触を避けるのはADHDよりASD寄り。
発達性協調運動症にチックは特徴的な随伴症状ではない。DCDには感覚統合療法も、ボタンかけなど特定の技能を直接教えること(課題指向型)も有効とされる。
知的障害(知的能力障害・知的発達症、旧称:精神遅滞)。作業療法では暦年齢ではなく精神年齢(発達年齢)で課題水準を考える(3-1)。原因疾患の特徴は基礎科目と共通で問われる。
| 疾患 | 原因 | 見分けの決め手(代表例) |
|---|---|---|
| Down症候群 | 21番染色体の異常(21トリソミーが大部分、ほかに転座型・モザイク型) | 筋緊張低下・関節の過可動性、特徴的顔貌、先天性心疾患、環軸椎亜脱臼。母親の高齢出産でリスク上昇。転座型では親が転座保因者のことがあり、両親の染色体検査が必要になる。知的障害・表出言語の遅れを伴う。人なつこく愛着は保たれる |
| 神経線維腫症(1型) | 遺伝性の神経皮膚症候群 | カフェオレ斑(皮膚色素沈着)、神経線維腫 |
| 結節性硬化症 | 遺伝性の神経皮膚症候群 | 白斑(葉状白斑)・顔面の血管線維腫・てんかん |
| ネコ鳴き症候群 | 5番染色体短腕の欠失 | ネコのような甲高い泣き声・小頭症・重い知的障害 |
| Williams症候群 | 7番染色体の微細欠失 | 妖精様顔貌・人なつこさ |
| Prader-Willi症候群 | 15番染色体の異常 | 乳児期の筋緊張低下、のちに過食・肥満 |
| フェニルケトン尿症 | 先天性代謝異常(アミノ酸代謝) | 新生児マススクリーニングの対象。食事療法で知的障害を防ぐ |
| Turner症候群/Klinefelter症候群 | 性染色体異常(45,X/47,XXY) | Turner=女性・低身長・翼状頸・性腺発育不全、Klinefelter=男性・高身長・精巣機能低下。Turnerは通常知的障害を伴わない。知的障害の原因としてでなく、性染色体異常という分類(Downは常染色体)で問われる |
Down症候群は「筋緊張が高い」「男子に多い」「出産年齢に影響されない」「知的障害はない」がすべて誤り。染色体異常(Down・ネコ鳴き・Turner)と代謝異常(フェニルケトン尿症)と遺伝子疾患(神経線維腫症・結節性硬化症)の区別も問われる。Korsakoff症候群(ビタミンB1欠乏の健忘症候群)は知的障害の原因ではない。
| 検査 | 何をみるか |
|---|---|
| WISC(WISC-Ⅲ・WISC-Ⅳなど) | 児童用の知能検査。WISC-Ⅳは言語理解・知覚推理・ワーキングメモリー・処理速度の4指標 |
| K-ABC心理・教育アセスメントバッテリー | 小児の知能(認知処理)と習得度 |
| WAIS(WAIS-Ⅲなど) | 成人用の知能検査 |
| WPPSI | 就学前の幼児用の知能検査 |
| 田中ビネー知能検査 | 日本版ビネー式の知能検査(幼児から成人まで) |
| 遠城寺式乳幼児分析的発達検査 | 運動・社会性・言語の各領域の発達(粗大運動だけではない) |
| JDDST-R(改訂日本版デンバー式) | 発達のスクリーニング |
| S-M社会生活能力検査 | 身辺自立・移動・作業・コミュニケーションなど社会生活能力 |
| フロスティグ視知覚発達検査 | 視知覚(巧緻運動ではない) |
| WeeFIM | 小児のADL(機能的自立度) |
| GMFM | 脳性麻痺児の粗大運動能力 |
| CARS/PEP-3/ASQ | ASDの重症度評定/ASD児の発達・行動の心理教育的プロフィール/ASDのスクリーニング質問紙 |
| ADHD-RS/CAARS | ADHD症状の評定尺度(CAARSは成人用) |
「知能検査はどれか」はWISC・K-ABC・田中ビネー(就学前ならWPPSI、成人ならWAIS)などの知能検査を拾う(代表例)。発達検査・スクリーニング・ADL・運動・ASD/ADHDの症状評定は知能検査ではない。
| 目的 | 評価(代表例) |
|---|---|
| 職業適性・作業能力 | マイクロタワー法(実際の作業サンプルで適性をみる)、GATB(一般職業適性検査) |
| 職業興味 | VPI職業興味検査 |
| 合併したうつの状態確認 | SDS(自己評価式抑うつ尺度)、HRS(ハミルトンうつ病評価尺度) |
PANSS は統合失調症の陽性・陰性症状の評価尺度。ASD+うつの就労評価には用いない。HTP・バウムテストなどの投影法も発達特性の評価には向かない。