第2章|ASD・ADHDの作業療法と家族支援

発達障害 第2章

2-1 ASDの作業療法:構造化と見通し

軸は「予測できる・目で見て分かる・具体的」。こだわりや感覚の特性を否定せず、環境の側を合わせる。

適切な対応不適切な対応(よく出る誤り)
予定変更は前もって伝える/作業の内容・手順・終わりをあらかじめ伝えるその場で急に変更する
ルールや取り決めを最初に明示しておくルールをその都度伝える
図・表・絵カード・スケジュール表など視覚的な提示(視覚支援)作業手順を言葉で細かく伝える・言語情報を多用する
用件は具体的・明確に伝える。指示は一度に1つ言葉を省略した短文・曖昧な指示・一度に複数の指示
導入期は構造化された課題(やり方と完成形がはっきりした作業)導入期に自由度の高い作業
興味・関心のある活動から導入する苦手な場面・苦手な感覚から慣らす
コミュニケーションの課題にはSST(社会生活技能訓練)で具体的なスキルを練習問題行動に内省を促す(抽象的な振り返りは苦手)
こだわりはまず受け止め、見通しを示しながら代わりの行動を段階的に示すこだわりを無言で制止する・強制的に行動変容させる
攻撃的な行動には落ち着いた声で具体的に伝える大きな声で「ダメ」とだけ言う(感覚過敏を刺激してパニックを強める)
パラレルな場(同じ場にいるが共同作業を求めない場)の利用、心理教育(自分の特性の理解)いきなり協力が必要な集団作業

「常同性(こだわり・同一性保持)に関わる特性への配慮で最も重要なもの」と問われたら予定変更の事前予告。静かな環境(感覚過敏への配慮)・具体的な用件(コミュニケーション特性への配慮)・図表(視覚支援)も正しい配慮だが、どの特性への配慮かで選び分ける。

TEACCHプログラム

  • 自閉症(ASD)とその関連のコミュニケーション障害児を対象とした包括的支援プログラム(米国ノースカロライナ州で開発)
  • 中心は構造化:物理的構造化(場所と活動を1対1にする)、スケジュール(時間の構造化)、ワークシステム(何を・どれだけ・いつ終わるか)、視覚的構造化
  • 素行症・選択性緘黙・チック症・反応性愛着障害は対象ではない

感覚統合療法と遊び

  • 感覚統合療法(Ayresの感覚統合理論)は、感覚の過敏・鈍麻をもつASD児に作業療法士が用いる代表的な治療法
  • トランポリン・ブランコなど前庭覚・固有覚の入力が豊富な遊びは、覚醒と情緒の調整に役立つ
  • 勧めにくい活動:ままごとの役割演技(象徴遊び・他者視点が必要)、テレビを見ながら宿題(注意の分配)、苦手な感覚の繰り返し
  • 回想法(高齢者)・内観療法・曝露反応妨害法(強迫症)・電気けいれん療法はASDの治療法ではない

2-2 ADHDの作業療法:環境調整と正の強化

軸は「刺激を減らす・短く1つずつ・できたらすぐほめる・失敗させない」。叱責で行動を直そうとしない。

場面適切な対応不適切な対応(よく出る誤り)
強化適切な行動ができたらすぐに具体的にほめる(正の強化・即時強化)/成功体験を積むほめずに見守る/失敗体験を基に動機づける/厳しく注意する・強い口調
指示指示は1つずつ・短く・視覚化(チェックリスト・絵・図)作業手順を一度にまとめて説明/詳細に長く説明/言語的介入中心
環境周囲の刺激を減らす/作業台には必要な物だけ/教室の席は前列・端など刺激の少ない位置雑談しながら作業させる/刺激を受けやすい環境/道具や材料を作業台に並べておく/複数課題を同時に提示
ルールルールは少なく・明確にルールや禁止事項を数多く設ける
感情の爆発不適応反応時に落ち着ける場所(クールダウンの場)を確保しておく感情的になっても放置する
症状軽微な症状は許容する(すべてを止めさせようとしない)じっとしておく取り決めをする
活動運動を取り入れて体を動かす(放課後等デイサービスなど)/小集団活動で順番・話を聞く・協力を練習/SST集団活動に参加させない/他児との交流を最小限にする
振り返り行動を具体的に示して練習するトラブルの原因を本人に考えさせる
家族・学校ペアレントトレーニング/保護者に関わってもらう/学校を訪問して授業の様子をみる保護者の関わりを最小限にする/教員に行動修正をもっと促すよう依頼する

「集団」の扱いに注意。導入時は個人作業から始め、他者との共同作業はトラブルや失敗が起きやすいので避ける。一方で、治療として少人数で構造化された小集団活動に導入するのは適切で、「集団活動に参加させない」は誤り。

ADHD児にも感覚統合療法は適切な選択肢として扱われる。「教員に行動修正をより強く求める」は叱責の強化になり、二次障害を招くので不適切。

2-3 成人期のADHD・ASD:二次障害と就労支援

失敗が重なって入院した直後

  • 職場の失敗で自信を失い欠勤・入院した急性期は、休養に専念し、職場復帰を焦らないよう伝える
  • この時期に転職を勧める・対人技能訓練を始める・上司や母親のしつけのせいだと説明する、は不適切(ADHDはしつけが原因ではない。母親の自責を強めない)
  • 二次障害としてのうつ病の併存に注意する

ADHDの就労への助言

適切不適切
自分だけの時間や場所を作る(刺激の少ない場所で集中する)-
リストやアプリで優先順位を見える化する優先順位にこだわらない
スマートフォンのスケジュール管理機能・便利な機器を使うハイテク機器・スケジュール機能を禁止する
手順を一定にしてルーティン化する多彩なやり方で物事を行う
周囲に特性を伝え配慮を求める周囲に配慮を求めない
作業中は作業に集中できるよう関わる作業と無関係な雑談を心がける

ASDの就労支援(就労継続支援A型事業所など)

  • 事業所での経験を振り返る面接を定期的に行い、自己理解と次の行動につなげる(具体的な出来事を一緒に整理する)
  • 事業所のルールは最初にまとめて明示する(その都度伝えるのではない)
  • 利用開始時は得意なこと・慣れた場面から。苦手な場面から慣らすのではない
  • 利用者同士で行う流れ作業から導入しない。巧緻性の得手不得手は個人差が大きく、一律に巧緻作業を任せない

ASDに「内省を促す」は不適切、しかし「経験を振り返る面接」は適切。前者は問題行動に対し抽象的な反省を求めるもの、後者は作業療法士と具体的な体験を整理して自己理解を助けるもの。

2-4 家族への支援

  • 診断を受けたばかりの子の親が、混乱・自責・不安を語る初回面接では、まず不安を受け止める(受容・共感)
  • この段階で、親の対応の誤りを指摘する・障害の特徴を解説する・他の障害児の親に会わせる・「障害は改善する」と根拠なく保証する、は不適切(情報提供やピアサポートの紹介は、気持ちが落ち着いてから)
  • 関係ができた後は、障害の特性を家族に説明する(心理教育)、ペアレントトレーニング、親子の自然な情緒的交流を支える
  • 親の育て方・しつけは発達障害の原因ではないと伝え、自責を強めない

初回面接は「受け止める」が先、「教える・指摘する・保証する」は後。親子どちらの初回対応でも同じ(チック児本人にも、まず困っていることを聞く:3-2)。