第3章|知的障害・その他の障害と支援制度

発達障害 第3章

3-1 知的障害の作業療法と就労支援

課題の水準と関わり方

適切不適切
精神年齢(発達年齢)に合わせた作業を選ぶ暦年齢相応の作業を用いる(難しすぎて失敗・混乱・行動問題を招く)
本人が興味を示す作業から導入する-
称賛して動機づけを高める(正の強化)失敗を指摘して直させる
行動的・技能的なアプローチ(具体的な場面での練習)洞察・内省を促す(暴力の内省など。高次の内省は難しく自責を強める)
障害特性を家族に説明する・親子の情緒的交流を支える-

就労・復職の支援

  • 職場でのつまずきの原因が対人場面(相手の発言を被害的に受け取る、接客態度を注意された など)なら、優先するのは対人関係技能(対人技能)の向上で、SSTが中心
  • 問題文に書かれていない課題(作業耐久性・生活リズム・注意力・運動能力)を優先しない。就労意欲が高いと書かれていれば耐久性や意欲は主な問題ではない
  • 原因に手を付けずに職場を変えても同じ問題がくり返す。てんかんなど合併症の疾病教育も、つまずきの原因が対人なら優先ではない

事例問題は「何がきっかけで仕事に行けなくなったか」を探す。きっかけが対人なら対人技能・SST、急性期の消耗なら休養(2-3)。

就労系の福祉サービス(代表例)

サービス内容
就労継続支援A型事業所と雇用契約を結んで働く
就労継続支援B型雇用契約を結ばずに生産活動を行う
就労移行支援一般就労を目指し、期間を区切って訓練する
放課後等デイサービス就学中の障害児が放課後・休日に通う児童福祉の支援

3-2 選択性緘黙・チック症への関わり

選択性緘黙〈場面緘黙〉

  • 家庭など安心できる場面では話せるが、学校など特定の社会的場面で話せない。不安の病態
  • 作業療法の導入時は発話を強制しない。表情・アイコンタクト・ジェスチャー・筆談・絵など非言語の手段から関係を作る

導入時のコミュニケーション方法として「会話」は不適切。話すことを求めると不安が高まり症状を強める。

チック症

  • 突発的・反復的な運動(まばたき・肩すくめ・顔しかめ・首ふり)や音声。本人の意思では止めにくい。緊張で増え、遊びに熱中しているときや睡眠中は出にくい
  • 音声チックと運動チックが長く続くものがTourette症候群
  • 作業療法士の最初の対応は本人に困っていることを聞く(本人の主観的な困難の把握が出発点)

不適切な対応の代表例:「チックを起こさないよう努力しなさい」と言う(抑制を求めると不安・自責が増して悪化)、緊張に慣れさせるために最前列に座らせる、初回からチックが起こる状況を本人に細かく尋ねる(自己観察を強いる)。周囲の理解を得る環境調整は支援の一部である。

3-3 運動発達(座位・手指)と発達性協調運動症

座位の発達の順序

  1. 手をついて支える座位(バランスを手で補う)
  2. 手を離して座り、両手でおもちゃを操作できる座位
  3. 体幹を回旋したり、前方・足先へ手を伸ばしたりして重心を大きく移しても崩れない座位

イラストの並べ替えは「手で支える→手が自由になる→手を伸ばして重心を移せる」の順で判断する。

手指の把握の発達の順序

段階(早い→遅い)特徴
把握反射手掌に触れると握る(反射)
手掌握り(全手把握)手のひら全体で包む。はじめは尺側寄り、次第に橈側寄りへ
橈側手掌握り・橈側指握り母指側の指で持つようになる
はさみ持ち(側腹つまみ)母指と示指の側面で挟む
指腹つまみ(三指・二指)母指と示指(中指)の指腹でつまむ
指尖つまみ(ピンセットつまみ)母指と示指の指先で小さな物をつまむ。最も精密で、1歳前後

発達は「尺側→橈側」「手掌→指腹→指尖」「粗大な握り→精密なつまみ」へ進む。図問題は指先だけを使った小さな物の操作ほど難易度が高い。

発達性協調運動症〈運動機能の特異的発達障害〉(DCD)

  • 知的に保たれていても、ボタンかけ・箸・書字(微細運動)やボール遊び・縄跳び(粗大運動)など協調運動が極端に苦手
  • 作業療法:感覚統合療法、ボタンかけなど特定の技能を直接教える(課題指向型)アプローチがどちらも有効とされる
  • チックを伴うのが特徴ではない(1-3)。ADHD・ASDに協調運動の苦手さを合併することも多い

3-4 Down症候群の乳幼児への支援

特徴は筋緊張低下(低緊張)と関節の過可動性。これが支援の優先順位を決める(原因・合併症は1-4)。

保護者への指導内容優先度理由
姿勢の安定を促す抱き方高い低緊張で姿勢保持が難しく、運動発達を促す
離乳食の摂食方法高い舌の突出・口腔の低緊張で摂食・嚥下の協調が難しい
児とのコミュニケーションの取り方高い言語発達(特に表出)の遅れ
保護者のストレス対処法高い保護者のメンタルヘルスを支える
関節拘縮の予防法低い低緊張・過可動性のため拘縮は起こりにくい

Down症候群は環軸椎亜脱臼に注意する。首に強い屈曲がかかる運動・遊びは避け、首の痛みや手足のしびれ・歩き方の変化に気をつける。

3-5 特別支援教育と視覚障害児の支援機器

特別支援教育

項目正しい知識よく出る誤り
対象ADHD・LD(学習障害)・ASD は通級による指導の対象。軽度知的障害も特別支援教育の対象軽度知的障害は対象外/ASDは知的障害を伴う場合のみ対象
指導一人ひとりのニーズに応じた指導(個別の教育支援計画・個別の指導計画)障害のレベルによらず標準的な指導
特別支援学級の人数1学級8人以下10名以上で編成

場は、通常の学級(必要に応じて通級による指導=通常学級に在籍しながら一部の時間だけ別の場で指導を受ける)、特別支援学級、特別支援学校。

弱視(ロービジョン)児の生活・学習の支援機器

機器・工夫使う/使わない目的
遮光眼鏡使うまぶしさ(羞明)を減らしコントラストを上げる
罫プレート使う書字で行をたどるガイド
内側が黒い茶碗使う白いご飯とのコントラストを上げて見やすくする
タッチパネル付きコンピューター使う拡大表示・音声読み上げ
拡大読書器・ルーペ使う拡大
プリズム眼鏡使わない斜視・複視の矯正や半側空間無視の訓練に用いるもの

弱視の工夫は「拡大・コントラスト・まぶしさの軽減・音声」の4方向で考える。