第1章|関節可動域・徒手筋力・形態測定

作業療法評価学 第1章

1-1 関節可動域(ROM)測定の原則

基準は日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会「関節可動域表示ならびに測定法」(1995年)。角度計は基本軸と移動軸に当てて測り、5°刻みで記録する。原則は他動運動での測定。

項目原則よくある誤り
記録の単位5°刻み1°刻みで記載する
運動の種類他動運動で測るのが原則(自動で測ったときはその旨を明記)自動運動が原則
股関節伸展腹臥位で測る(膝伸展位)背臥位(仰臥位)で測る
股関節屈曲背臥位・膝屈曲位膝伸展位で測る(ハムストリングスで制限される)
足関節背屈・底屈膝屈曲位で測る(腓腹筋の影響を除く)膝伸展位だけで測る
肩内旋・外旋上腕を体幹に接し肘90°屈曲・前腕中間位。肩外転90°位で測ることもある肘伸展位で測る
記録の書き方測定肢位が基準と違うときは肢位を併記。疼痛があれば記録する—

「〜は〇〇位で測る」型の選択肢は、二関節筋の影響を除く肢位かどうかで判断する。股屈曲は膝を曲げて(ハムストリングスを緩める)、足関節は膝を曲げて(腓腹筋を緩める)測る。

1-2 ROMの基本軸・移動軸と参考可動域

出題は基本軸・移動軸の組合せと参考可動域の数値の2本立て。手・母指・手指はどの中手骨を軸にするかで迷わせる。

上肢・頸部

部位・運動基本軸移動軸参考可動域
肩甲帯 屈曲・伸展両側の肩峰を結ぶ線頭頂と肩峰を結ぶ線20・20
肩甲帯 挙上・引き下げ(下制)両側の肩峰を結ぶ線肩峰と胸骨上縁を結ぶ線20・10
肩 屈曲・伸展肩峰を通る床への垂直線上腕骨180・50
肩 外転・内転肩峰を通る床への垂直線上腕骨180・0
肩 外旋・内旋肘を通る前額面への垂直線尺骨60・80
肩 水平屈曲・水平伸展肩峰を通る矢状面への垂直線上腕骨135・30
肘 屈曲・伸展上腕骨橈骨145・5
前腕 回内・回外床への垂直線手指を伸展した手掌面90・90
手 屈曲(掌屈)・伸展(背屈)橈骨第2中手骨90・70
手 橈屈・尺屈前腕の中央線第3中手骨25・55
頸部 屈曲・伸展肩峰を通る床への垂直線外耳孔と頭頂を結ぶ線60・50
頸部 回旋両側の肩峰を結ぶ線への垂直線鼻梁と後頭結節を結ぶ線60・60

母指・手指

運動基本軸移動軸メモ
母指 橈側外転・尺側内転示指(橈骨の延長上)母指手掌面上の運動
母指 掌側外転・掌側内転示指(橈骨の延長上)母指手掌面に垂直な面の運動(「手掌面上」は橈側外転)
母指 MP屈曲・伸展第1中手骨第1基節骨—
母指 IP屈曲・伸展第1基節骨第1末節骨—
手指 MP屈曲・伸展第2〜5中手骨第2〜5基節骨—
手指 外転・内転第3中手骨延長線第2・4・5指軸中指が基準。中指自体は橈側・尺側外転で表す

体幹・下肢

部位・運動基本軸移動軸参考可動域
股 屈曲・伸展体幹と平行な線大腿骨(大転子と大腿骨外顆の中心を結ぶ線)125・15
股 外転・内転両側の上前腸骨棘を結ぶ線への垂直線大腿中央線(上前腸骨棘より膝蓋骨中心を結ぶ線)45・20
股 外旋・内旋膝蓋骨より下ろした垂直線下腿中央線45・45
膝 屈曲・伸展大腿骨腓骨130・0
足 背屈・底屈腓骨への垂直線第5中足骨20・45

手関節の軸の覚え方:屈伸=橈骨と第2中手骨(橈側の骨同士)、橈尺屈=前腕中央線と第3中手骨(真ん中同士)。股の回旋と足関節は「垂直線」が基本軸になるのが共通点。

1-3 徒手筋力テスト(MMT)の段階と抵抗のかけ方

基準はDanielsらの徒手筋力テスト。段階は5〜0の6段階で、順序尺度(段階の間隔は等しくない)。

段階判定検査の条件
5(Normal)最大抵抗に抗して全可動域抗重力肢位で、運動する体節の遠位端に、運動と反対方向の抵抗
4(Good)強い〜中等度の抵抗に抗して全可動域同上
3(Fair)重力に抗して全可動域(抵抗なし)抗重力肢位
2(Poor)重力の影響を除いた肢位で全可動域重力除去肢位(運動面を床と平行にする)
1(Trace)筋収縮は触知できるが関節運動なし触診で判定。腱や筋腹を触れる
0(Zero)収縮も触知できない触診

抵抗は原則として運動する体節の遠位端。ただし代償を防ぐため、関節を2つまたがない位置にかける(例:肩外転は肘を越えず上腕遠位部、母指内転は基節骨)。抵抗の方向は常に運動の逆。

段階3を背臥位・腹臥位・側臥位のどれで行うかは「その運動が重力に逆らう向きになる体位」で決まる。段階2はその運動面を水平にした体位。迷ったら運動方向と重力の向きを図に描いて確かめる。

1-4 部位別MMTの肢位・抵抗・触診

段階5・4の肢位と抵抗の位置

運動・筋体位抵抗・ポイント
肩外旋(棘下筋・小円筋)腹臥位、肩外転90°・肘90°屈曲で前腕をベッド端から下垂前腕遠位部に内旋方向の抵抗
肩外転(三角筋中部・棘上筋)座位上腕遠位部(肘の直上)に内転方向
肩甲骨内転・下方回旋(菱形筋)腹臥位(段階3もこの体位)肩甲骨を外転・上方回旋方向へ押し戻す
肘屈曲(上腕筋を主に見る)座位前腕回内位で行う(上腕二頭筋は回外位、腕橈骨筋は中間位)
母指内転(母指内転筋)座位基節骨に外転方向
股屈曲・外転・外旋+膝屈曲(縫工筋)座位膝外側と下腿遠位部(足関節の上)に逆方向の抵抗

段階3・2の体位

運動段階3段階2
体幹屈曲背臥位(上肢の位置で段階を分ける)背臥位で頭部・肩甲骨の持ち上がりを見る
肩甲骨挙上座位腹臥位
肩屈曲座位側臥位(座位ではない)
股外転側臥位背臥位

表に無い運動も、段階3=重力に逆らう体位/段階2=運動面を水平にした体位の原則で選べる。

段階1・0の触診部位

筋触診する場所
前鋸筋中腋窩線付近の肋骨上(肩甲骨下角の前方)の筋腹
長橈側手根伸筋第2中手骨底の背側の腱、または前腕近位橈側の筋腹
尺側手根屈筋豆状骨の近位の腱
前脛骨筋足関節前内側の腱・下腿前面の筋腹

段階1・0の問題は「その筋の腱がどこを通るか」で解く。屈筋は手掌側、伸筋は手背側、橈側・尺側は名前のとおり。

1-5 筋短縮テスト・動作の筋活動・形態測定

筋の短縮テスト

テスト方法の要点陽性で疑う筋
Thomasテスト背臥位で一側の股・膝を胸に引き寄せる反対側の大腿が浮く=腸腰筋(大腰筋)の短縮
Oberテスト側臥位で上側の股を伸展・外転し、内転させる大腿筋膜張筋(腸脛靱帯)
Elyテスト(尻上がり現象)腹臥位で膝を屈曲すると殿部が上がる大腿直筋

動作と筋の収縮様式

机上のコップへ手を伸ばす(肩屈曲で持ち上げる)=三角筋前部の求心性収縮。重力に逆らって持ち上げる局面は主動作筋の求心性、重力にまかせてゆっくり下ろす局面は同じ筋の遠心性収縮、と読む。

形態測定(四肢長・周径)

項目測定部位
上肢長肩峰〜中指先端(または橈骨茎状突起)
上腕長肩峰〜上腕骨外側上顆
前腕長上腕骨外側上顆(橈骨頭)〜橈骨茎状突起
手長橈骨茎状突起と尺骨茎状突起を結ぶ線の中点〜中指先端
手幅第2〜第5中手骨頭の間
下肢長(棘果長)上前腸骨棘〜内果
転子果長大転子〜外果
大腿長大転子〜大腿骨外側上顆(または膝関節外側裂隙)
下腿長大腿骨外側上顆(膝関節外側裂隙)〜外果
上腕周径上腕二頭筋の最大膨隆部(肘屈曲位・伸展位で測る)
大腿周径膝蓋骨上縁から一定の距離(5cm・10cmなど)

周径は筋萎縮・浮腫の推移を見る指標。必ず同じ部位・同じ肢位で左右を比べる。

1-6 上肢機能検査(STEF)

簡易上肢機能検査(STEF)は上肢の動作の速さを見る標準化された検査。大きさ・形の違う物品を移動させる10種類のサブテストからなる。

項目内容
採点各サブテストの所要時間を得点(0〜10点)に換算。左右それぞれ100点満点
判定年齢階級別の正常域と比べる
物品の例大球・中球・大直方・中立方・木円盤・小立方・布・金円板・小球・ピン
実施の注意物品の置き方・移動の方向は検査手引きの規定どおりに設定する(左右の手で向きが変わる)

「8種類」「50点満点」は誤りの定番。10種類・左右各100点・所要時間で採点の3点で覚える。