第2章|感覚・神経学的検査と全身状態

作業療法評価学 第2章

2-1 感覚検査の手技

感覚検査は閉眼で行い、健側(正常部)と比べる。刺激は不規則な間隔・順序で与え、予測で答えさせない。

感覚道具・方法誤りやすい点
触覚筆・ティッシュで軽く触れる。毛筆は四肢の長軸に沿って動かす長軸に直角になでる/一定のリズムで刺激する
痛覚安全ピン・ピンで軽く突くピンで「こする」
温度覚温水(40〜45℃)と冷水(5〜10℃)の試験管を1〜2秒当てる氷・0℃を使う/10秒など長く当てる(痛覚として感じてしまう)
振動覚128Hz音叉を骨突出部に当て、振動が止まったら答えさせる軟部組織に当てる
位置覚(関節覚)他動的に関節を動かし方向を答えさせる。手指は側面を持つ指の背側・掌側を持つ(圧の手がかりで分かってしまう)
立体覚手の中の物を触って当てさせる(鍵・硬貨など)鈴など音の出る物(聴覚で分かる)
2点識別覚ノギス(ディスクリミネーター)で同時に2点を当てる—
触圧覚の閾値Semmes-Weinstein monofilament—

温度覚は「熱すぎ・冷たすぎは痛覚刺激になる」が出題の芯。痛覚で答えていないか注意して観察する。

2-2 感覚障害の分布と責任部位

Romberg徴候

開眼で立てるが閉眼で動揺が大きくなる=陽性。脊髄後索(深部感覚)障害で陽性。小脳性失調は開眼でも動揺し、閉眼での増悪が目立たない=陰性。

デルマトームと末梢神経

部位神経根末梢神経
母指・示指C6正中神経(掌側)・橈骨神経(背側)
中指C7正中神経
小指C8尺骨神経
前腕尺側C8内側前腕皮神経
上腕内側T1内側上腕皮神経
乳頭T4—
臍T10—

頸椎症性神経根症の上肢のしびれはその神経根のデルマトームに一致して帯状に出る。図の領域を見たら、母指側か小指側かで神経根を絞る。

脊髄の障害と感覚障害のパターン

障害同側反対側
脊髄半側切断(Brown-Séquard症候群)障害レベル以下の運動麻痺・深部感覚障害障害レベル以下の温痛覚障害

理由:深部感覚(後索)は同側を上行して延髄で交叉、温痛覚(脊髄視床路)は脊髄に入ってすぐ交叉して反対側を上行する。身体図で「片側は運動と深部感覚、反対側は温痛覚」と分かれていたら半側障害。

顔面神経麻痺と味覚

舌の部位味覚を伝える神経
前2/3顔面神経(鼓索神経)
後1/3舌咽神経

末梢性顔面神経麻痺では麻痺側(同側)の舌前2/3の味覚が障害されうる。

2-3 運動失調の検査

検査主に見る症状
指鼻試験・鼻指鼻試験測定障害(測定異常)・企図振戦
踵膝試験(踵脛試験)下肢の測定障害・運動分解
前腕回内外試験・膝打ち試験反復拮抗運動障害
foot pat(足のタッピング)反復運動の拙劣さ(リズム・速さ)
跳ね返り現象(rebound)急に抵抗を外すと止まれない=時間測定異常(運動の開始・停止の遅れ)
継ぎ足歩行・継ぎ足立位体幹失調(平衡障害)
Romberg試験後索性(感覚性)失調の鑑別。小脳性では陰性

「鼻指鼻試験で反復拮抗運動障害を見る」のように検査と症状をずらした組合せが誤りの定番。反復拮抗=回内外・膝打ち、時間測定異常=跳ね返り、と対で覚える。

2-4 意識レベルの評価(JCS・GCS)

JCS(Japan Coma Scale・3-3-9度方式)

段階状態
Ⅰ 刺激しなくても覚醒—
Ⅰ-1だいたい清明だが、今ひとつはっきりしない
Ⅰ-2見当識障害がある
Ⅰ-3自分の名前・生年月日が言えない
Ⅱ 刺激すると覚醒—
Ⅱ-10普通の呼びかけで容易に開眼
Ⅱ-20大きな声または体を揺さぶることで開眼
Ⅱ-30痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼
Ⅲ 刺激しても覚醒しない—
Ⅲ-100痛み刺激に払いのける動作
Ⅲ-200痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる
Ⅲ-300痛み刺激に反応しない

GCS(Glasgow Coma Scale)

点E 開眼V 言語M 運動
6——命令に従う
5—見当識あり疼痛部位を認識する(払いのける)
4自発的に開眼混乱した会話逃避(痛みから手足を引っ込める)
3呼びかけで開眼不適当な言葉異常屈曲(除皮質硬直)
2痛み刺激で開眼理解不能の発声伸展(除脳硬直)
1開眼しない発語なし動かさない

JCSは数字が大きいほど重い、GCSは合計が小さいほど重い(最良15・最低3)。向きが逆なので取り違えない。軽度の意識障害の客観的な評価には脳波が使われる。

2-5 バイタルサイン・呼吸・嚥下の評価

パルスオキシメーター(SpO2)

  • 赤色光と赤外光の吸収の差から動脈血の酸素飽和度を推定する。
  • 正常値の目安は96〜100%。
  • 末梢循環不全・マニキュア・体動で値が不正確になる。
  • SpO2とPaO2は比例しない(酸素解離曲線はS字)。

腋窩検温

  • 体温計は前下方から後上方へ向けて腋窩の最深部に挿入する。
  • 側臥位では上側の腋窩で測る(下側は圧迫で温度が変わる)。
  • 汗は乾いたタオルで拭く(アルコールは気化熱で冷える)。
  • 麻痺があれば健側で測る。
  • 実測(平衡温)に達するには時間がかかり、3分程度では足りない。

体位排痰

痰のある肺区域を上にして重力で流す。後上葉区(S2)=前傾側臥位が頻出。肺尖区(S1)=座位、前上葉区(S3)=背臥位。

摂食嚥下の評価

検査分かること・判定
反復唾液嚥下テスト(RSST)30秒間の空嚥下の回数。3回未満で陽性(嚥下障害の疑い)
改訂水飲みテスト少量の冷水を飲ませ、むせ・呼吸の変化を見る
嚥下造影検査(VF)造影剤を含む食物でX線透視。口腔〜食道の動きと誤嚥の有無が見える
嚥下内視鏡検査(VE)鼻から内視鏡。声帯の動き・咽頭の残留を直接観察できる。被曝なし・ベッドサイドで可