第6章|統計・研究法とリスク管理
作業療法評価学 第6章
6-1 尺度の水準と統計の基本
| 尺度 | 性質 | 例 | 代表値 |
| 名義尺度 | 区別だけ | 性別・血液型・診断名 | 最頻値 |
| 順序尺度 | 順序はあるが間隔が等しくない | MMT・FIM・BI・JCS | 中央値 |
| 間隔尺度 | 間隔が等しい・絶対0点なし | 体温(℃)・西暦・IQ・関節角度(ROM) | 平均値 |
| 比率尺度 | 絶対0点あり | 身長・体重・時間・年齢 | 平均値 |
国試では「間隔尺度を用いる評価法」の正答としてROMが出ている。ROMは等間隔の量として扱い、「間隔尺度はどれか」と問われたらROMを選ぶ。
統計の使い分け
| 目的 | 方法 |
| データの要約(記述統計) | 度数分布・平均・標準偏差・中央値 |
| 2群の比較(間隔・比率尺度、正規分布) | t検定 |
| 2群の比較(順序尺度など) | Mann-WhitneyのU検定 |
| 3群以上の比較 | 分散分析 |
| 名義尺度の比率の比較 | χ²検定 |
χ²検定・分散分析・U検定は推測統計(標本から母集団を推し量る)で、記述統計ではない。
信頼性と妥当性
| 概念 | 意味 | 確かめ方 |
| 信頼性 | 同じ条件なら同じ結果が出るか | 再検査法(テスト-再テスト)・検者間/検者内の一致 |
| 妥当性 | 測りたいものを測れているか | 既存の尺度との相関(基準関連妥当性)・内容・構成概念 |
6-2 研究デザインとエビデンスレベル
| 用語 | 意味 |
| メタアナリシス | 複数の研究結果を統計的に統合する |
| 横断研究 | 一時点で調べる |
| 縦断研究(コホート研究) | 同じ対象を時間を追って調べる |
| 留め置き調査 | 調査票を配って後日回収する |
| ABAデザイン | シングルケース研究。基礎水準期(A)→介入期(B)→再び基礎水準期(A) |
エビデンスレベル(高い順)
- RCTのシステマティックレビュー・メタアナリシス
- ランダム化比較試験(RCT)(個々の研究では最も高い)
- 非ランダム化比較試験
- 分析疫学的研究(コホート研究・症例対照研究)
- 記述研究(症例報告・症例集積)
- 専門家の意見
有病率と発生率
有病率 ≒ 発生率 × 平均罹病期間。罹病期間が長くなると有病率は上がる(治療で死亡が減り慢性化すると有病率は上がる)。
6-3 感度・特異度・尤度比
| 疾患あり | 疾患なし |
| 検査陽性 | a(真陽性) | b(偽陽性) |
| 検査陰性 | c(偽陰性) | d(真陰性) |
| 指標 | 式 | 意味 |
| 感度 | a ÷(a+c) | 疾患がある人のうち陽性になる割合 |
| 特異度 | d ÷(b+d) | 疾患がない人のうち陰性になる割合 |
| 陽性的中率 | a ÷(a+b) | 陽性の人のうち本当に疾患がある割合 |
| 陽性尤度比 | 感度 ÷(1 − 特異度) | 大きいほど陽性結果が診断に役立つ |
| 陰性尤度比 | (1 − 感度)÷ 特異度 | 小さいほど陰性結果で除外できる |
計算問題はまず2×2表を書く。感度は「縦(疾患あり)の列」、特異度は「縦(疾患なし)の列」で割る。横(陽性の行)で割ると的中率になる。
6-4 感染対策と血栓予防
標準予防策(スタンダードプリコーション)
- すべての患者の血液・体液・分泌物・排泄物・粘膜・傷のある皮膚を感染の可能性があるものとして扱う。
- 基本は手指衛生。手袋の着用前後にも手指衛生を行う。
- 手袋は血液・体液に触れるおそれがあるときに着ける(血圧測定のような健常皮膚への接触だけなら不要)。
- 個室隔離は標準予防策ではなく感染経路別予防策の内容。
感染経路
| 経路 | 代表的な感染症 | 対策 |
| 空気感染 | 結核・麻疹・水痘 | 陰圧個室・N95マスク。排菌している結核患者の病室では予防衣・マスク |
| 飛沫感染 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹・インフルエンザ | サージカルマスク・距離をとる |
| 接触感染 | 疥癬・流行性角結膜炎・MRSA | 手袋・ガウン・物品の専用化 |
深部静脈血栓症(DVT)の予防
早期離床・足関節の自動運動・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫・十分な水分。長時間の座位の持続は予防にならない(下肢の静脈うっ滞を招く)。
6-5 栄養・フレイル・サルコペニア・転倒
栄養の指標
- BMI=体重(kg)÷ 身長(m)²。日本の基準で18.5未満が低体重、25以上が肥満。
- 栄養状態の評価には体重(体重変化)と血清アルブミンを使う。
フレイルとサルコペニア
| 概念 | 評価項目 |
| フレイル(Friedの基準・J-CHS) | 体重減少・疲労感・身体活動量の低下・歩行速度の低下・握力の低下 |
| サルコペニア(AWGS2019) | 骨格筋量の低下に、筋力(握力)または身体機能(歩行速度など)の低下が加わる |
フレイルとサルコペニアに共通する項目=握力と歩行速度。サルコペニアだけにあるのが筋量。
バランスと転倒リスク
| 評価 | 中身 |
| FRT(Functional Reach Test) | 立位で前方へどれだけ手を伸ばせるか=バランス |
| TUG(Timed Up and Go test) | 椅子から立ち3m先で折り返して座るまでの時間=バランス・移動能力。時間が長いほど転倒リスクが高い(13.5秒以上が目安の一つ) |
| BBS(Berg Balance Scale) | 14項目のバランス評価 |
| MAS(modified Ashworth Scale) | 痙縮の評価(バランスではない) |
| RM(最大反復回数) | 筋力の評価 |
ロコモティブシンドローム予防のスクワットは、膝がつま先より前に出ないように、殿部を後ろへ引いて行う。
6-6 その他の臨床評価と生活支援
痙縮への対応
- ボツリヌス療法の効果は注射後数日〜2週ほどで現れ、3〜4か月持続する(繰り返し投与する)。
- 痙縮には経皮的電気刺激・内服薬・ボツリヌス療法などを使う。温熱は禁忌ではない。
- Roodのアプローチは皮膚への感覚刺激(ブラッシング・アイシングなど)で筋活動を促通・抑制する。
スプリント(上肢装具)
| 種類 | 例 |
| 静的スプリント | 長対立装具・コックアップスプリント・短対立装具 |
| 動的スプリント | RIC型把持装具・Thomas型懸垂装具・Oppenheimer型装具・指用ナックルベンダー |
熱傷の良肢位(拘縮予防)
| 熱傷部位 | 保持する肢位 |
| 腋窩 | 肩外転90°程度 |
| 頸部前面 | 頸部伸展 |
| 会陰部・股関節周囲 | 股関節外転 |
| 膝窩 | 膝伸展 |
| 肘前面 | 肘伸展 |
ADL上の指導
- 人工股関節全置換術(後方進入)後:脱臼肢位は屈曲・内転・内旋。床の物を拾うときは患側下肢を後ろへ引いて深い屈曲を避ける(リーチャーも使う)。
- 排泄:夜間の尿失禁などには自動吸引式の収尿器。尿閉には導尿(カテーテル)。
視覚障害者の移動
- 白杖は2歩程度先の路面を確かめられる長さにする。
- 伝い歩きは手背(手の甲)を壁に沿わせる。
- 手引き(ガイド)は、ガイドが半歩前に立ち、視覚障害者にガイドの肘の上あたりを持ってもらう。