第4章|地域作業療法と就労支援

作業療法管理学・地域作業療法学 第4章

4-1 地域包括ケアシステム

  • 構成要素=住まい・医療・介護・予防・生活支援。住まい(住まい方)が土台に置かれる。
  • 圏域=おおむね30分以内に必要なサービスが届く日常生活圏域(中学校区が目安)。一次医療圏ではない。
  • つくる主体=市町村(保険者)が地域の自主性・主体性にもとづき、地域の特性に応じてつくる。国が中心になってつくる・全国均一のシステムは誤り。中核機関は地域包括支援センター。
区分中身例
自助自分のことを自分でする自身による健康づくり・介護予防、市場サービスの購入
互助費用負担が制度で裏づけられていない自発的な助け合い住民ボランティア・近隣の助け合い・住民組織の活動
共助リスクを共有する仲間(被保険者)の負担による社会保険介護保険・医療保険の給付
公助税による公の負担生活保護・一般財源による福祉事業

ボランティアは公助ではなく互助。介護保険は公費も入るが「共助」、税だけで賄う生活保護が「公助」。

4-2 介護予防とフレイル・転倒リスク

一次・二次・三次予防

段階対象目的
一次予防すべての高齢者(元気な高齢者・社会参加意欲の高い人も含む)生活機能・活動性を維持し、要介護状態になるのを防ぐ
二次予防要支援・要介護状態となるおそれの高い高齢者早期発見・早期対応で要介護状態になるのを遅らせる
三次予防要支援・要介護状態の人重度化の防止・状態の改善
  • 介護予防は運動器の機能向上だけが目的ではない(栄養・口腔・閉じこもり・認知機能・うつなども含む)。
  • 一次〜三次予防は別々でなく一体的・連続的に展開する。
  • 「要介護状態の改善」は三次予防、「要介護状態になるのを遅らせる」は二次予防の側。「生活習慣の改善」は三次予防の説明ではない。

介護予防教室(一般介護予防事業)

  • 介護保険法の地域支援事業の一つで、市町村が主体となって実施する。
  • 対象は要支援者に限らず65歳以上のすべての高齢者。
  • 目的は筋力向上だけでなく生活機能全体の維持・向上。回数(月2回など)や期間(1年以上など)の全国一律の決まりはない(市町村が決める)。
  • 基本チェックリスト(25項目)は介護予防の対象者を把握するための質問票。

フレイル・転倒リスクの見方

指標リスクが高い方向
TUG(Timed Up and Go Test)時間が長い。転倒リスクのカットオフは13.5秒前後で、20秒は明らかに高リスク
ファンクショナルリーチ距離が短い(15cm未満は高リスク)。40cm程度は良好
FBS(Functional Balance Scale/Berg Balance Scale)得点が低い
握力低い(サルコペニアの目安は男性28kg未満・女性18kg未満)
10m歩行時間・片脚立ち時間歩行時間が長い・片脚立ち時間が短い

フレイル=加齢で予備力が落ち、要介護の手前にある状態。筋量は減る(サルコペニア)・TUGは延長・バランス(FBS)は低下。選択肢は「数値が良くなる方向」を言っていたら誤り。

4-3 訪問・通所と生活環境への関わり

通所リハビリテーション(デイケア)

論点正しい理解
保険通所リハビリテーションは介護保険のサービス(医療保険では利用しない)。精神科デイ・ケアや重度認知症患者デイ・ケアは医療保険(診療報酬)の別の制度で、同じ「デイケア」の呼び名でも別物
訓練集団だけでなく個別訓練も提供できる
利用期間短期(3か月以内など)に限られない
設備専用の設備基準(機能訓練室の広さなど)がある

訪問支援(精神科訪問を含む)での基本姿勢

  • 訪問の強みは生活の場を直接見られること。部屋の様子(片づき具合・食事の跡・危険物など)をよく観察する。
  • 初期から病識の獲得を迫らない(関係づくりが先)。
  • 「作業療法士であること」を強調するより、自然な関係形成を優先する。
  • 家族が本人の前で話す愚痴に付き合うと本人を傷つける。家族の思いは別の機会に聴く。
  • 同職種で連れ立つ必要はない。必要に応じて多職種で訪問する。

生活機能の拡大は「起居の環境整備」から

臥床がちな在宅高齢者で、床(布団)からの立ち上がりに台が要る状態なら、まずベッドの導入など起居動作を安全にする環境整備を優先する。安全に起きられる基盤ができてから、運動習慣・家事・買い物・地域活動へと段階的に広げる。

「生活機能の拡大」と聞いていきなり地域活動・買い物・運動習慣を選ばない。今いちばん活動を妨げている障壁(起居)を先に取り除く。

4-4 地域作業療法の方法と保健所

考え方中身
ポピュレーションアプローチ集団全体に働きかけてリスクを全体に少し下げる。地域への波及効果が高い
ハイリスクアプローチリスクの高い個人を選んで介入する。個別的治療が必要な人が対象で、波及効果は小さい
ヘルスプロモーション人々が自らの健康をコントロールし改善できるようにするプロセス。地域住民への健康教育はその代表
コンサルテーション作業療法士が地域の支援者・機関に専門的な助言をする関わり方(地域との関わり方の一つ)

ポピュレーションとハイリスクの説明の入れ替えが定番。「ハイリスクアプローチは波及効果が高い」「ポピュレーションアプローチは個別的治療が必要な人が対象」はどちらも逆。

MTDLP(生活行為向上マネジメント)

段階使うシート
インテーク(望む生活・したい生活行為の把握)生活行為聞き取りシート・興味・関心チェックシート
アセスメント〜プラン(課題の分析と計画立案)生活行為課題分析シート・生活行為向上マネジメントシート
他職種・他機関への引き継ぎ生活行為申し送り表

MTDLPは本人が望む生活行為を起点に計画を立てる。「基本チェックリストに基づき計画を立てる」は誤り(基本チェックリストは介護予防の対象者把握の道具)。

保健所の業務(地域保健法)

保健所の業務の例保健所の業務ではない例
精神保健・難病・障害児の保健相談、母子保健/感染症の届出の受理・予防/人口動態統計に関する事務/食品衛生(営業者の監視)・環境衛生/医事・薬事医療保険の審査事務(診療報酬の審査は社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会)

4-5 障害者の就労支援

機関・サービス主な役割ひっかけ
地域障害者職業センター職業評価・職業準備支援(職業準備訓練)・ジョブコーチ支援・精神障害者の職場復帰支援(リワーク)求人開拓・職業紹介はしない
ハローワーク(公共職業安定所)職業紹介・求人開拓・求職者向けの職業相談—
障害者就業・生活支援センター就業と生活の両面を一体的に支援。職場実習のあっせんも行う「職場実習を斡旋しない」は誤り
ジョブコーチ(職場適応援助者)職場に出向いて本人の適応を支援し、事業主・同僚にも助言する職業紹介はしない/事業主支援もできる
就労定着支援一般就労後の定着を支える障害福祉サービス地域障害者職業センターの業務ではない
障害者職業能力開発校職業訓練精神障害者も対象

障害福祉サービスの就労系

サービス雇用契約特徴
就労継続支援A型あり最低賃金が適用される。利用期限はない
就労継続支援B型なし支払われるのは工賃で、最低賃金は保障されない
就労移行支援なし一般就労をめざす訓練。利用期間は原則2年

「2年の利用期限」は就労移行支援であってA型ではない。

障害者雇用と合理的配慮

  • 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳の所持者)は2006年4月から障害者雇用率に算定できるようになり、2018年4月からは雇用義務の対象(法定雇用率の算定基礎)にも加わった。「精神障害者は雇用率に算定できない」は誤り。
  • 法定雇用率(民間企業)は段階的に引き上げられており、2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%。「2%」は古い数値。
  • 障害者雇用促進法により事業主には合理的配慮の提供が義務づけられている。作業療法士は障害特性に応じた配慮(休憩・業務量・指示の出し方など)を事業主と一緒に検討できる。