SCDの中心は運動失調(協調運動障害)で、筋力低下が主体ではない。MRIでは小脳・脳幹(橋)の萎縮がみられる。孤発性の多系統萎縮症では自律神経症状(起立性低血圧・排尿障害)が目立つ。
下肢機能障害と上肢機能障害をそれぞれⅠ度(微度)・Ⅱ度(軽度)・Ⅲ度(中等度)・Ⅳ度(重度)・Ⅴ度(極度)で判定する。下肢Ⅲ度前後では歩行に手すり・歩行器などの補助が要り、転倒予防と環境調整が中心になる。
| 場面 | 適切 | 誤りの選択肢の例 |
|---|---|---|
| 住環境 | 家具の配置変更(動線の確保・伝い歩きでつかまれる場所)、手すりの設置 | — |
| 歩行 | 支持基底面を広げる=歩隔を広く | 歩隔をできるだけ狭くする |
| 杖・歩行器 | 重さのある杖(重錘で動揺を抑える)、歩行器 | 杖はできるだけ軽量にする |
| 食事 | 柄の太い・重いスプーン、重錘バンド | 柄の細いスプーン |
| 運動 | 筋力・持久力の維持訓練は続ける | 筋力増強訓練は控える |
| パソコン | キーボードカバー(キーガード)で指を目的のキーへ誘導し誤打鍵を防ぐ | タイピングエイド(手指の筋力低下・可動域制限向け) |
PSB(ポータブルスプリングバランサー)・BFO(バランス式前腕装具)は上肢の重さを免荷する用具で、筋力低下(筋ジストロフィー・頸髄損傷・多発性筋炎など)向け。失調には効かず、上肢の失調が重い人に「日常で使う福祉用具」として選ぶのは誤り。
失調への対応は「広く・重く・太く・誘導する」:歩隔を広く、杖や食具は重く、柄は太く、キーはカバーで誘導。軽く・細く・狭くは逆。
| 項目 | 正しい知識 | 誤りの選択肢の例 |
|---|---|---|
| 遺伝 | X連鎖劣性(伴性劣性)遺伝の遺伝性疾患、ジストロフィン遺伝子の異常で筋形質膜のジストロフィンが欠損 | 常染色体劣性・常染色体優性、ジストロフィンがみられる、感染が契機 |
| 性・発症 | 男児、幼少期(3〜5歳頃)に転びやすさ・歩容異常で気づかれる | 女性に多い、成人後に発症 |
| 乳児期 | 乳児期は症状が目立たない=フロッピーインファントを示さない | 出生時から筋緊張低下 |
| 筋力低下 | 近位筋優位、下肢が上肢より先に弱くなる | — |
| 徴候 | Gowers徴候(登はん性起立)、腓腹筋の仮性肥大、動揺性歩行、腰椎前弯 | ミオトニア(筋強直性ジストロフィー) |
| 変形 | 尖足、股・膝の屈曲拘縮、脊柱側弯 | 下肢の伸展拘縮 |
| 歩行 | 10歳前後で歩行不能になることが多い | 15〜20歳で歩行不能 |
| 呼吸 | 呼吸筋の筋力低下で換気量が減る → 動脈血二酸化炭素分圧(PaCO₂)が上昇(肺胞低換気)、咳の力が弱くなる。側弯は呼吸機能を悪化させる | 咳をする力は保たれる、口すぼめ呼吸が有効(COPD向け)、側弯は呼吸に影響しない、5歳以下から呼吸不全 |
| 心臓 | 心筋障害(心筋症)を伴う | 心筋障害はまれ |
DMDの三点セットは「男児・近位筋(下肢から)・Gowers徴候」。呼吸はCO₂がたまる型の呼吸不全と覚える。
| ステージ | 状態 | 判定の目印 |
|---|---|---|
| 1 | 階段昇降が可能(手の介助なし、または手で膝を押さえて) | — |
| 2 | 階段昇降が可能(手すりを使う) | 階段に手すりが要る(ステージ1との境目) |
| 3 | 階段昇降は不能、椅子からの起立は可能 | — |
| 4 | 椅子からの起立も不能、歩行は可能(独歩、または手すり・歩行器・手引きで5m以上) | 「椅子から立ち上がれないが、手すりなどにつかまれば5m以上歩ける」 |
| 5 | 起立歩行は不能、四つ這いは可能 | つかまり立ちはできても伝い歩きはできない |
| 6 | 四つ這いも不能、いざり這行(座位での移動)は可能 | — |
| 7 | 四つ這いもいざり這行も不能、座位の保持は可能 | — |
| 8 | 座位の保持も不能、常時臥床 | — |
判定は上から順に「階段→椅子から起立→歩行→四つ這い→いざり→座位」の何ができなくなったかで区切る。事例文で「できる」と書かれた動作のうちいちばん上(いちばん難しいもの)を拾い、それが「可能」とされている段階をステージにする(例:椅子からの起立は不能で手すりにつかまり5m歩ける→ステージ4、起立・歩行は不能で四つ這いは可能→ステージ5)。
床から立ち上がるときに手で膝を押して体を起こすGowers徴候は、歩行できる早い時期からみられる所見で、ステージの判定基準ではない。Gowers徴候があってもステージは階段・椅子からの起立・歩行で決める。
「つかまり立ちができる」ことに引っ張られてステージ4にしない。ステージ4は5m以上歩けること(手すりなどを使ってよい)が条件。伝い歩きもできず床上で四つ這い移動ならステージ5。
| 段階 | できる動作 |
|---|---|
| 1 | 500g以上の重りを持って、利き手を前方へまっすぐ上まで挙上できる |
| 2 | 500g以上の重りを持って、前方90°まで挙上できる |
| 3 | 重りなしで、前方へまっすぐ上まで挙上できる |
| 4 | 重りなしで、前方90°まで挙上できる |
| 5 | 重りなしで、肘を90°以上屈曲できる |
| 6 | 机上で、肘の伸展により手を水平前方へ移動できる |
| 7 | 机上で、体幹の反動を使い、肘の伸展で手を水平前方へ移動できる |
| 8 | 机上で、体幹の反動を使って肘を伸展した後、手の運動で水平前方へ移動できる |
| 9 | 机上で、手の運動のみで水平前方へ移動できる |
段階6〜9は、机の上で手を水平前方へ動かせるかで区切る段階である。段階8では重力に抗して腕を持ち上げられず、机の上を滑らせる動き(マウス操作など)は自立するが、スプーンを口へ運ぶ・急須で注ぐ・Tシャツを脱ぐ・普通型車椅子を自走するのは自立が難しい。
段階8の「できない動作」を段階6〜7にそのまま当てはめない。段階6〜7では肘を机につくなどの代償で食事が自立していることがある。ADLの可否は事例文の段階と動作で確かめる。
| 時期 | 主な支援 | この時期に合わないもの |
|---|---|---|
| 歩行期(ステージ1〜4) | 転倒予防、学校・家庭の環境調整、ストレッチによる拘縮予防、歩行を延ばすための装具・歩行器 | — |
| 歩行不能期(ステージ5) | 車椅子での移動へ移る時期。歩行を延ばす目的で長下肢装具を使うことがある(ステージ4〜5) | — |
| 床上移動期(ステージ6) | 学校生活での移動の自立には電動車椅子を優先して導入 | 歩行器、長下肢装具(ステージ6では適応外)、食形態の変更(嚥下障害はまだ主課題でない)、トイレの手すり |
| 座位期(ステージ7) | 上肢機能の低下に合わせてスイッチを使ったパソコン操作・環境制御装置、PSB・BFOなどで上肢を免荷して机上動作、前開きの上衣 | 片手での洗髪、自走式車椅子、ソックスエイド、かぶりシャツ(上肢挙上が要る) |
| 臥床期(ステージ8) | 座位保持装置で頭部・体幹を支えて座位をとる、呼吸管理(NPPV)、コミュニケーション機器 | 標準型車椅子、PCW(postural control walker)、四輪型サドル付き歩行器、頭部保護帽 |
DMDの用具問題は「その段階でできなくなった動作を補う用具」を選ぶ。すでに通り過ぎた段階の用具(歩行器・長下肢装具・自走式車椅子)は外す。
PSB・BFOは上肢の重さを支えて残った筋力で机上の動作を可能にする用具。筋力低下(筋ジストロフィー・多発性筋炎など)に使い、失調(脊髄小脳変性症)には使わない。
| 病型 | 遺伝形式 | 発症 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Duchenne型 | X連鎖劣性 | 幼児期(3〜5歳頃) | 男児、近位筋、Gowers徴候(2-2) |
| Becker型 | X連鎖劣性 | Duchenne型より遅い | Duchenne型と同じ遺伝子で軽症・進行が緩やか |
| 福山型(先天性) | 常染色体劣性 | 乳児期(最も早い) | フロッピーインファント、知的障害がDuchenne型より多く重い、歩行の獲得は難しいことが多い。日本ではDuchenne型に次いで多いが、頻度はDuchenne型より少ない。男女とも発症 |
| 筋強直性ジストロフィー | 常染色体優性 | 主に成人 | ミオトニア(筋強直)、斧状顔貌(顔面筋・咀嚼筋の萎縮)、前頭部の脱毛、遠位筋優位の筋力低下で下垂足、白内障、認知機能障害など多臓器の症状 |
| 顔面肩甲上腕型 | 常染色体優性 | 思春期〜成人 | 顔面・肩甲帯・上腕の筋力低下 |
| 肢帯型 | 主に常染色体劣性 | 小児〜成人 | 肩甲帯・骨盤帯の筋力低下、感覚障害はない |
筋強直性ジストロフィーで「顔面筋は侵されにくい」「認知機能は障害されない」「5歳までに発症」「伴性劣性遺伝」は誤り。痙縮・ジストニア・有痛性けいれんは筋強直性ジストロフィーの症状ではない。
乳児期のフロッピーインファントは福山型・Werdnig-Hoffmann病(脊髄性筋萎縮症)・Prader-Willi症候群・失調型脳性麻痺などで示し、Duchenne型は示さない。
| 項目 | 正しい知識 | 誤りの選択肢の例 |
|---|---|---|
| 筋力低下 | 近位筋優位(肩・骨盤帯・頸部) | 遠位筋優位 |
| 検査 | 血清クレアチンキナーゼ(CK)上昇、赤沈亢進、筋電図で筋原性変化 | 筋電図で高振幅電位(神経原性の所見)、深部腱反射亢進、手袋靴下型感覚障害 |
| 皮膚症状(皮膚筋炎) | ヘリオトロープ疹、Gottron徴候 | 蝶形紅斑(全身性エリテマトーデス) |
| 合併症 | 皮膚筋炎は悪性腫瘍の合併が多い、嚥下障害、間質性肺炎 | 胸腺腫の合併(重症筋無力症)、嚥下障害はきたさない、男性に多い |
| 疫学 | 女性に多い(自己免疫疾患は女性に多いものが多い) | 男性に多い(男性に多い病気の代表例は痛風・高尿酸血症、強直性脊椎炎、Perthes病、Duchenne型筋ジストロフィー) |
運動負荷の調節の指標はCK。運動後にCKが上がるなら負荷が過大(筋の炎症・破壊が進んでいる)。増悪期に高負荷の筋力増強訓練は行わない。
| 項目 | 正しい知識 | 誤りの選択肢の例 |
|---|---|---|
| 病態 | 神経筋接合部のアセチルコリン受容体に対する自己免疫性疾患 | — |
| 疫学 | 女性に多い、若年でも発症する。患者数はParkinson病より少ない | 男性に多い、40歳以前の発症は稀、Parkinson病より多い |
| 症状 | 易疲労性、眼瞼下垂・複視、夕方に悪化(日内変動) | 起床時に症状が強い |
| 合併 | 胸腺の異常(胸腺腫・胸腺過形成)を伴うことが多い | 悪性腫瘍・肺小細胞癌の合併(Lambert-Eaton症候群) |
| 検査 | テンシロン試験で症状が改善、反復刺激試験で漸減(waning)、CKは上がらない | テンシロン試験で悪化、漸増(waxing)、CK上昇 |
MGの作業療法は易疲労への配慮:症状の軽い時間帯(午前中)に活動を置き、休息を挟む。