第1章|評価(病巣と症状・Brunnstromステージ・評価尺度・記録)

脳卒中 第1章

1-1 病型・病巣と症状

作業療法の問題でも、画像や病巣から「どんな症状が出るか」を先に読ませる形が多い。原則は大脳・内包の病変は反対側、小脳の病変は同じ側。

病型と画像

病型要点画像
脳出血(高血圧性)危険因子は高血圧。好発部位は被殻が最多、次いで視床CTで高吸収域(白)が発症直後から見える
脳梗塞(ラクナ・アテローム血栓性・心原性脳塞栓)日本の脳血管障害で発症数が最多。心房細動→心内血栓→心原性脳塞栓症(再発予防は抗凝固薬)超急性期のCTは変化が乏しい。MRI拡散強調像(DWI)で高信号。陳旧性梗塞はT2強調像・FLAIR像
くも膜下出血主因は脳動脈瘤破裂。女性に多い。治療はクリッピング術・コイル塞栓術急性期の診断は頭部単純CTが第一選択

「発症数時間の梗塞を確認するのはCT」は誤り。数時間の梗塞はCTでは写りにくく、拡散強調像で見る。逆に出血・くも膜下出血の早期診断はCT。

病巣と出やすい症状(代表例)

病巣出やすい症状
被殻(内包に及ぶ)対側の片麻痺・感覚障害。左(優位半球)なら失語症、右なら半側空間無視・運動維持困難
視床対側の感覚障害(表在・深部とも)、視床痛、注意障害・意識障害・記憶障害
内包後脚・放線冠錐体路が通る→対側上下肢の運動麻痺
右頭頂葉(側頭頭頂接合部)左半側空間無視
小脳半球同側上下肢の運動失調、構音障害(失調性)。片麻痺・感覚障害は通常出ない
脳幹(橋)・両側の病変構音障害・嚥下障害・眼球運動障害、重症なら意識障害
延髄外側(Wallenberg症候群:椎骨動脈・後下小脳動脈〈PICA〉)同側の顔面温痛覚障害・Horner症候群(眼瞼下垂)・小脳性運動失調、対側の体幹・上下肢の温痛覚障害、嚥下障害。錐体路は延髄錐体を通るので片麻痺は出ない

左小脳半球梗塞→失調は左(同側)。「右上下肢の失調」は誤り。小脳と脳幹は構音障害が出やすい部位として覚える。

失語症の見分け(作業療法で問われる範囲)

タイプ流暢性聴理解復唱
Broca失語(運動性失語)非流暢比較的良好(軽〜中等度の障害)障害
Wernicke失語(感覚性失語)流暢重度に障害障害
伝導失語流暢良好障害が目立つ
健忘失語(失名詞失語)流暢良好保たれる(喚語困難が主体)
超皮質性運動失語非流暢比較的良好保たれる
超皮質性感覚失語流暢障害保たれる

伝導失語では書字で仮名(平仮名)のほうが漢字より書きにくい傾向がある。「理解は良いのに復唱だけ悪い」が伝導失語の決め手。失語症・失行・半側空間無視の詳しい評価と訓練は高次脳機能障害のノートで扱う。

1-2 Brunnstrom法ステージ(Brunnstrom回復段階)

片麻痺の回復を弛緩→共同運動→分離運動の順で6段階に分ける。上肢・手指・下肢を別々に判定する。各段階のテスト動作の組合せは繰り返し問われる。

上肢

ステージ状態・テスト動作
Ⅰ弛緩性麻痺。随意運動なし
Ⅱ共同運動(またはその要素)がわずかに出現、連合反応。痙縮の出現期
Ⅲ屈筋・伸筋共同運動を随意的に起こせる。痙縮が最も強い
Ⅳ共同運動から逸脱した運動が出現:①手を腰の後ろへ回す、②肘伸展位で上肢を前方水平位へ挙上、③肘90°屈曲位で前腕の回内・回外
Ⅴ分離運動が可能:①肘伸展位で側方水平位へ挙上(外転)、②肘伸展位で前方から頭上へ挙上、③肘伸展位・肩前方挙上位で前腕の回内・回外
Ⅵ分離運動が自由にでき、協調性もほぼ正常

前腕回内・回外は肘の位置で段階が変わる。肘90°屈曲位→Ⅳ、肘伸展位・肩屈曲位→Ⅴ。挙上も同じで、前方水平まで→Ⅳ、側方水平・頭上→Ⅴ。「側方水平位への挙上はⅢ」「前方水平挙上はⅤ」はどちらも誤り。

手指

ステージ状態・テスト動作
Ⅰ弛緩
Ⅱ集団屈曲がわずかに可能
Ⅲ集団屈曲(握り)・鉤形握りは可能だが、随意的な指伸展はできない
Ⅳ横つまみ(側腹つまみ)と母指を離して放す動作、指のわずかな(一部の)伸展
Ⅴ対向つまみ、円柱握り・球握り、集団伸展が可能(範囲は一定しない)
Ⅵすべての握りが可能、全可動域の指伸展、指の個別運動

手指は「つまみの種類」で決める。横つまみ=Ⅳ、対向つまみ・集団伸展=Ⅴ、全可動域の伸展・あらゆる握り=Ⅵ。

下肢

ステージテスト動作
Ⅲ座位・立位で股・膝・足の同時屈曲(共同運動)
Ⅳ座位で膝を90°以上屈曲して足を床上で後方へ滑らせる、座位で踵を床につけたまま足関節背屈
Ⅴ立位で股関節伸展位のまま膝関節屈曲、立位で踵を床につけたまま足関節背屈
Ⅵ立位で骨盤挙上の範囲を超えた股関節外転、座位で下腿の内旋・外旋

下肢の足関節背屈は座位ならⅣ、立位ならⅤ。「立位・股伸展位での膝屈曲はⅥ」は誤りでⅤ。

事例問題では、記述された動作を表に当てはめ、いちばん高い段階のテスト動作が可能かで判定する。たとえば上肢で頭上挙上と100°の外転ができ、手指で対向つまみと集団伸展ができれば、上肢Ⅴ・手指Ⅴ。

1-3 脳卒中の評価尺度(SIAS・FIM・Barthel Index など)

脳卒中に特有の評価

評価内容
SIAS(Stroke Impairment Assessment Set)機能障害の総合評価。麻痺側運動機能、筋緊張(腱反射)、感覚、関節可動域・疼痛、体幹機能、視空間認知、言語、非麻痺側機能(握力など)。器具は握力計・打腱器など
NIHSS急性期の神経学的重症度(意識・視野・麻痺・失語・無視など)
JSS(日本脳卒中学会スケール)脳卒中の重症度
mRS(modified Rankin Scale)障害度・生活の自立度の大まかな分類
FMA(Fugl-Meyer Assessment)運動機能・バランス・感覚・可動域の定量評価
MFT(Manual Function Test)上肢機能検査。32点満点で、標準回復プロフィールがある
STEF(簡易上肢機能検査)物品の移動にかかる時間で上肢の動作能力を評価
MAL(Motor Activity Log)生活の中での麻痺手の使用頻度と質(CI療法の効果判定に使う)

SIASの器具に音叉・秒針付き時計は入らない。GMFCS(脳性麻痺)・UPDRS(パーキンソン病)・MMPI(人格検査)は脳卒中の身体機能評価ではない。

FIM(機能的自立度評価法)の採点

点水準目安
7完全自立補助具なし・安全・通常の時間
6修正自立補助具使用、時間がかかる、安全への配慮が要る(人の手は不要)
5監視・準備見守り・声かけ・準備のみ。体に触れない
4最小介助本人が75%以上を行う。触れる程度の介助
3中等度介助本人が50〜74%
2最大介助本人が25〜49%
1全介助本人が25%未満

移乗のように方向によってできる度合いが違うときは、低いほう(より介助が多いほう)で採点する。「触れる程度の介助」が出たら4点、「そばで見守る」なら5点。

Barthel Index(BI)の配点

項目配点
食事自立(自助具を使っても自力なら自立)10/部分介助5/全介助0
車椅子からベッドへの移乗15/10/5/0
整容自立5/介助0(最高5点)
トイレ動作10/5/0
入浴自立5/介助0(一部介助でも0点)
歩行(移動)45m以上歩行自立15/介助歩行10/車椅子操作自立5/0
階段昇降・更衣・排便・排尿各10/5/0

合計100点。BIは「できるADL」の評価で段階が粗く、FIMは「しているADL」を7段階で細かく見る。

1-4 面接と目標設定(COPM・興味関心チェックシート)

COPM(カナダ作業遂行測定)

  • 本人が大切にしている作業の問題を面接で挙げ、重要度を1〜10で付ける
  • 重要な作業(最大5つ)について遂行度と満足度を1〜10で自己評価する(12段階ではない)
  • 介入後に遂行度と満足度を再評価し、変化量で効果を判定する(再評価が評価法の中核)
  • 介入の優先順位は本人にとっての重要度で決める。ADLかどうか、点が低いかどうかでは決めない

COPMで重要度の高い作業(例:ペットの世話)を「家族に任せる」と切り捨てるのは、本人中心の考え方に反する。重度麻痺の人に麻痺手での調理をいきなり課すのも不適切。

面接で十分な情報が出ないとき

初回面接で本人から具体的な希望や困りごとが出てこない場合、次の一手は生活行為への関心を把握すること。興味・関心チェックシート(生活行為向上マネジメント〈MTDLP〉で使う)などで、していること・してみたいこと・興味があることを具体的に引き出す。言語に問題がない人に言語検査を先に行う、アンケートに切り替える、他職種を同席させる、は優先されない。

1-5 記録(SOAP)と統計

SOAPの書き分け

欄書く内容例
S(Subjective:主観的情報)患者・家族の発言・訴えそのもの「今日は調子が良くない」「退院までにトイレに行けるようになってほしい」(家族)
O(Objective:客観的情報)観察・測定値・検査結果・実施した内容血圧、Brunnstromステージ、FIMの点数、表情の観察
A(Assessment:評価・考察)情報の解釈・判断、問題点、目標の設定「動作能力に変化なしと考えられる」「短期目標はズボンの上げ下げの遂行」
P(Plan:計画)今後の治療計画・訓練内容「ズボンの着脱訓練を3回実施する」(これから行う)

目標設定はA。P欄に目標を書くのは不適切。「〜であった」と過去の測定値ならO、「〜する」と予定ならP。患者の言葉をPに書くのも誤り。

研究データの検定

「右片麻痺・左片麻痺」の2群で「使いやすい・使いにくい」の人数を比べるような名義尺度の度数(分割表)はχ²検定。t検定は平均値の差(間隔・比率尺度)、Mann-Whitney検定は対応のない2群の順序尺度、符号検定・Wilcoxon符号付順位検定は対応のある2群。