不安症・強迫症・ストレス関連障害・身体症状症・解離症などは、従来神経症性障害とまとめられてきた。このうち不安症・強迫症では統合失調症と違い病識(症状の不合理さの自覚)は保たれることが多く、ADL(身辺処理)も大きくは崩れないことが多い。一方、身体症状症・変換症では症状を身体の病気と考えて心理的要因を認めにくく(2-1)、変換症では麻痺・歩行障害でADLが大きく低下し、身体機能への介入(廃用予防)が要ることもある(2-2)。作業療法の中心は「症状(不安)とどう付き合うか」である。
| 項目 | 神経症性障害での考え方 | 引っかけになりやすい選択肢 |
|---|---|---|
| 導入時の評価で最も重視 | 症状への対処方法(どんな場面で不安が出るか・そのとき何をしているか=回避・安全行動・確認など) | 精神内界の葛藤(深層心理の探索は導入期の評価ではない)、就労関連技能(回復後期の課題)、身辺処理能力(不安症などでは通常保たれる) |
| 作業療法の目標 | 不安対処能力の向上、生活リズムの回復、自信・達成体験 | 病識の獲得(統合失調症の目標)、現実感喪失からの回復 |
| 導入期の形態 | 個別・低負荷・本人が安心してできる作業から | 集団作業療法を基本とする、集団で役割を持たせる |
| 導入期の身体へのアプローチ | リラクセーション、全身のストレッチなど緊張をゆるめる低負荷の活動 | 高負荷の歩行訓練、スポーツでの体力向上 |
| 職業準備 | 症状が落ち着いてからの段階で | 導入期のワークサンプル法・SSTでの接客ロールプレイ・遂行機能の認知リハ |
判断の軸=「導入期は個別・低負荷・安心」→「回復に応じて段階的に不安場面・対人場面・社会参加へ」。導入期に洞察を促す・集団に入れる・不安場面へいきなり曝露する選択肢は外れることが多い。
不安や症状が出たからといって作業療法を中止する選択肢は誤り。中止は回避行動を強める。症状が出ても安全を確保しつつ参加を続けられるよう支える。
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| 薬物療法 | 抗うつ薬(SSRI)が中心。ベンゾジアゼピン系抗不安薬は即効性があるが依存に注意して補助的に。抗精神病薬・気分安定薬・中枢神経刺激薬は主役ではない |
| 作業療法の目的 | 不安対処能力の向上 |
| 導入初期 | リラクセーション(腹式呼吸・漸進的筋弛緩法・自律訓練法)を練習する。症状軽減を目的とするプログラムとして最も直接的 |
| その後 | 不安場面への段階的な曝露、行動範囲の拡大 |
パニック症で「症状軽減を目的としたプログラム」を問われたらリラクセーション。SST(対人技能)・散歩・絵画・レクリエーションは間接的。導入初期の集団での役割・自己洞察・スポーツでの体力向上・発作の不安があるときの中止は誤り。
| 疾患 | 不安の対象 | 典型像 |
|---|---|---|
| 社交不安症(社交〈社会〉不安障害・対人恐怖) | 他者に見られる・評価される社会的場面に限定 | 人前での発表・会議・人前での食事で動悸・振戦・発汗・赤面・声のふるえ。「変に思われないか」「視線が怖い」。相手が知人か見知らぬ人かは問わず、人から見られる・評価されうる場面で起こる(事例によっては「知り合いがいる場面でだけ出る」のように場面が限られて描かれる)。思春期(中学生頃)からの経過が多い |
| 全般不安症(全般性不安障害) | 対象を特定しない、多くの事柄への制御できない心配(家族の健康・仕事・お金など) | 落ち着かなさ・いらいら・集中困難・筋緊張・不眠・自律神経の過活動(動悸・発汗・呼吸促迫)。女性に多く慢性化しやすい。環境・ストレスで症状が増減し、他の精神疾患の併存も多い |
| パニック症 | 予期しない発作 | 状況に限定されない突然の発作+予期不安(1-2) |
| 強迫症 | 強迫観念 | 確認・洗浄などの強迫行為(1-4) |
見分け方:「人の目がある場面だけ」=社交不安症/「何でも心配」=全般不安症/「突然・場所を選ばずの発作」=パニック症。持続性抑うつ症(気分変調症)は2年以上続く慢性の抑うつ気分が主体、身体症状症は身体症状そのものへのとらわれが主体。
導入期・初期に人前で発表する練習・言語的交流が必要な作業・他者との共同製作・集団作業療法を基本とする・就職希望の聴取や履歴書の学習会は時期尚早。「会議の準備を十分にするよう助言」も、準備しないと不安という認知を強めるので不適切。
| 治療 | 内容 |
|---|---|
| 曝露反応妨害法(ERP・暴露反応妨害法) | 不安を起こす刺激にあえて曝露し、強迫行為をしないで不安が自然に下がる(慣れる)のを体験する。強迫症の代表的な認知行動療法 |
| 薬物療法 | SSRIが有効(「薬物療法は無効」は誤り) |
| 適切 | 不適切 |
|---|---|
| 自由度の高い作業(正解が一つでなく、仕上がりの多様さが許される)を提供する | 正確さを必要とする作業(完璧主義・確認を誘発) |
| 「完全な作品ができない」と訴えて増悪したら、できている部分に注意を向ける | 作業種目の変更・作業療法の中止・担当交代(回避を強める)、訴えを聞いて経過をみるだけ |
| 作業中に手洗いが始まったら、無理に止めず見守りながら作業への復帰を待つ | 強迫行為が始まれば作業を中止させる、蛇口を閉める、いきなり手を汚す作業をさせる |
| 確認は本人が行う範囲を少しずつ広げる | 作業工程の確認を作業療法士が代わりに行う(巻き込まれ)、原因について洞察を促す |
家族への助言:本人からの確認の要求に応じない(巻き込まれ〈accommodation〉を減らす)。家中の消毒の徹底・常時の監視・原因を本人と話し合う・早期の再就職の促しは不適切。
| 疾患 | きっかけ | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 急性ストレス障害(ASD) | 生命に関わる外傷的出来事(事故・災害の目撃など) | 出来事の後3日〜1か月未満で消退 | 侵入(悪夢)・回避・過覚醒(不眠・集中困難)・解離(現実感の変化) |
| PTSD(外傷後ストレス障害・心的外傷後ストレス障害) | 同上 | 症状が1か月以上持続。出来事から時間をおいて出ることもある | 下の4症状群 |
| 適応障害(適応反応症) | 生活上の特定のストレス因(異動・職場環境の変化など) | ストレス因の後に出現 | 抑うつ気分・不安・不眠で日常生活に支障。外傷体験の再体験症状はない |
| 適切 | 不適切 |
|---|---|
| 心理教育:外傷体験後に起こる一般的な心理反応を説明する(異常な出来事への正常な反応と伝える) | 外傷体験の直後に詳しく体験を語らせる(デブリーフィング)=予防効果がなく悪化させうる |
| 体験に伴う認知の再構成を促す(認知行動療法・認知処理療法) | トラウマ体験を一切想起させない、数か月以降は触れないようにする |
| 早期介入は心理的応急処置(PFA:Psychological First Aid)=安全・安心・つながりの確保。出来事の直後から行う | 「心理的動揺が収まってから心理的応急処置を行う」 |
| 支持的な集団で体験を語り合うことには治療的意義がある(強制はしない) | 集団の中で体験を語ることを避けさせる |
| 治療は段階的に、十分な期間をかける | 外傷体験への馴れが生じないようにする、治療は短期間で完結させる |
疾患と治療の組合せ:PTSD=持続エクスポージャー法(PE)・認知処理療法・EMDR/強迫症=曝露反応妨害法/系統的脱感作法は恐怖症など不安の対象がはっきりした障害に用いる。電気けいれん療法はPTSDの治療ではない(重症うつ病など)。「PTSD=フラッディング」「心気障害=持続エクスポージャー法」「解離性健忘=自律訓練法」「身体化障害=系統的脱感作法」は正しい組合せとして選ばれない。