第4章|パーソナリティ障害

その他の精神疾患 第4章

4-1 パーソナリティ症〈パーソナリティ障害〉の分類と特徴

考え方・感じ方・対人関係・衝動のコントロールのかたよりが青年期以降に持続し、本人または周囲が苦しむ状態。DSMでは3つのクラスターに分ける。

クラスター類型特徴(キーワード)
A群(奇妙・風変わり)猜疑性〈妄想性〉他者への不信・疑い深さ
A群シゾイド〈スキゾイド・統合失調質〉親密な関係を求めず一人でいることを好む、感情表出が乏しい
A群統合失調型風変わりな思考・魔術的思考、奇妙な外見・行動
B群(演技的・感情的・移り気)反社会性〈非社会性〉他者の権利の無視、規範違反、良心の呵責の欠如
B群境界性見捨てられ不安、対人関係・自己像・感情の不安定、衝動性(4-2)
B群演技性注目を求める、芝居がかった感情表現、被暗示性が高い
B群自己愛性誇大性、賞賛を求める、共感の欠如
C群(不安・恐怖)回避性〈不安性〉劣等感、批判・拒絶への過敏さから対人場面を避ける
C群依存性自分で決められず助言や保証を過度に求める
C群強迫性細部・規則・秩序へのとらわれ、完璧主義、柔軟性の欠如

字面の似た2つ:統合失調質=シゾイド(孤立を好む・感情表出が乏しい)/統合失調型(風変わり・魔術的思考)。

性差の目安:男性に多い=反社会性・強迫性/女性に多い(臨床で多く診断される)=境界性・演技性・依存性。

強迫性パーソナリティ障害(性格のかたより)と強迫症(強迫観念・強迫行為、1-4)は別物。回避性パーソナリティ障害と社交不安症は似るが、前者は対人関係全般の持続的なパターン。

4-2 境界性パーソナリティ障害の特徴と治療

特徴

  • 見捨てられ不安:見捨てられまいとする必死の努力
  • 理想化とこき下ろしを揺れ動く不安定な対人関係(スプリッティング=分裂:人を「全部よい」「全部悪い」に分ける)
  • 不安定な自己像、慢性的な空虚感
  • 衝動性(浪費・過食・物質乱用など)、自傷行為・自殺企図の繰り返し(行動化〈アクティングアウト〉)
  • 激しい怒り、感情の不安定、ストレス時の一過性の妄想様観念・解離

治療

治療法位置づけ
弁証法的行動療法(DBT)感情調節・苦痛耐性・対人関係スキル・マインドフルネスを学ぶ。境界性の代表的治療
メンタライゼーションに基づく治療自他の心の状態を推し量る力を育てる
認知行動療法、精神力動的精神療法(転移焦点化精神療法など)用いられる
薬物療法衝動性・気分の不安定などの標的症状への補助。治療の中心ではない
入院危機介入として短期。長期入院は退行・依存を強めるので避ける

TEACCHは自閉スペクトラム症への構造化された支援であり、境界性パーソナリティ障害の治療ではない。

4-3 境界性パーソナリティ障害への作業療法:枠組みと限界設定

中心は「治療構造(枠組み)を明確にし、一貫して守る」こと。枠組みが揺れると、試し行動・操作・退行が強まる。

適切不適切
治療の枠組み(時間・場所・頻度・役割)を明確に示す。患者と作業療法士の双方が守るルールを決める要求に応じて回数・時間・担当を変える、特別扱いをする
目標と治療契約を繰り返し確認する要求を受け入れ続ける、退行を許容する、依存を促す
自力で達成できる作業(構成が明確で成功しやすい)を用いるメンバーの入れ替わりが多い集団、話し合い中心のプログラム。他の患者との交流を禁じる・対人交流をスタッフと家族に限定する(孤立を強める)
安心できる居場所をつくり感情の安定を図る転移を治療に利用する(作業療法の場で扱わない)
衝動を適応的に発散できる活動(身体を使う作業・創作など)逸脱行動を無視する
主観的な苦痛に共感しつつ、行動には限界を設ける攻撃的な言動があったら担当者を交代する(見捨てられ体験・操作の強化)

覚え方=「共感はする、枠は動かさない」。気持ちは受け止めるが、時間・頻度・ルールは要求で変えない。

4-4 境界性パーソナリティ障害のリスク管理・チーム・家族支援

リスク管理

  • 導入時は過去の行動化(自傷・自殺企図・暴力)の情報を収集する。
  • 自傷をほのめかされたら、死にたい気持ちがあるか率直に尋ねる(聞くことで自殺を誘発することはない)。ただし初回面接で自殺企図の詳細を深く掘り下げることはしない。

チームアプローチ

適切不適切
作業療法以外の治療の内容を把握する担当者が一人で抱え込む・個人的に対応する
自分の中に起こる逆転移(怒り・救済願望など)を自覚するスタッフごとに対応を変える(スプリッティングに巻き込まれる)
多職種で対応を統一する患者の評価をスタッフ間で共有しない

家族支援

適切な助言不適切な助言
家族会・家族教室の情報を伝える本人を常に監視する
家族が自分のための時間をもつ本人の要求にすべて応じる
本人の感情の揺れにいちいち反応しない感情的に言い返す
暴力がおさまらないときはその場を離れる(安全確保)その場にとどまり説得し続ける

4-5 回避性など他のパーソナリティ障害への作業療法

類型導入期の関わり避けること
回避性工程が明確に構造化された作業で、失敗の不安を減らし成功体験を積む。安心できる関係から他者との共同作業、作業選択を本人に任せる(決められない・失敗を恐れる)、誤りを指摘して修正させる(批判への過敏さ)
依存性小さな決定を本人にさせ、自己決定の経験を積む何でも代わりに決める
強迫性完成度より過程を重視、時間の区切り精密さを競う作業
演技性枠組みを示し、注目を得る手段を適応的なものへ過度な賞賛・特別扱い

どの類型でも共通=「特性を変えようとせず、特性が出にくい構造の中で成功体験」。導入期は個別・構造化が基本。