第3章|摂食障害

その他の精神疾患 第3章

3-1 摂食障害の病態と身体所見

項目神経性やせ症(神経性無食欲症・神経性食思不振症)神経性過食症(神経性大食症)
中心症状体重増加への強い恐怖、ボディイメージの障害(やせていても太っていると感じる)、極端な食事制限コントロールできないむちゃ食いと、体重増加を防ぐ代償行動
体重著しい低体重ほぼ正常範囲のことが多い
代償行動過活動(過剰な運動)、むちゃ食い・排出型では嘔吐・下剤自己誘発性嘔吐が最も多い、下剤・利尿薬の乱用、絶食、過剰な運動
病識・態度病識が乏しい、治療に抵抗。食べ物への関心はむしろ強い(料理・カロリー計算)。過活動むちゃ食い後の自己嫌悪・抑うつ。衝動行為・自傷を伴うことがある
疫学思春期〜青年期の女性に多い女性に多い。有病率はやせ症より高い。やせ症から過食症へ移行することがある

神経性やせ症の身体所見

領域所見
循環・体温徐脈・低血圧・低体温
代謝・検査値低血糖、低リン血症、高コレステロール血症、嘔吐・下剤では低カリウム血症
内分泌無月経
骨・皮膚骨密度低下(骨粗鬆症)、産毛(うぶ毛)の増加、皮膚乾燥

「頻脈・高血圧・高体温」はやせ症の所見として選ばれない(逆)。低栄養で代謝が落ちる方向と覚える。

3-2 入院治療の原則と身体リスク

  • 治療は身体的な安定(栄養状態の改善)を優先し、その後に心理的・行動的な治療を進める。
  • 活動量は体重に合わせて段階的に。目標体重に達してから活動範囲を広げる(行動制限を用いた行動療法)。
  • 再栄養(リフィーディング)症候群:高度の低栄養状態に急に栄養を入れると低リン血症などを起こし、心不全・不整脈など命に関わる。最初から高カロリーの食事を与えない。少量から漸増。
  • 体重回復前の高負荷の運動・長時間の作業は消費エネルギーを増やし、過活動を助長する。

やせ症の入院初期:身体の安定が先、活動は体重に応じて段階的、栄養は少量から。

3-3 導入期の作業種目の選び方

選ぶ避ける
座位でできる小さな手工芸(アイロンビーズ・簡単なアクセサリー作り・刻印による革細工など)調理・食べ物に関する学習(食物・カロリーへのとらわれを強める)
エネルギー消費が少ない作業屋外スポーツ・散歩・体操(過活動を助長、消費エネルギー増)
短時間で完成し達成感が得られる作業勝ち負けのある競争的な集団ゲーム
個別で始める集団活動から始める
失敗しても取り返しがつき、出来栄えにこだわりすぎない作業完成までに時間と技術が要り、失敗が目立つ作業(陶芸の花瓶作りなど)

選び方の3条件=「低カロリー消費・個別・達成感」。作業種目として食べ物・運動を扱わない、という種目選択の話であり、料理本を見るのを禁止するなど本人の行動を制限する声かけはしない(3-4)。

3-4 摂食障害への関わり方

やせ症の人は過剰適応・完璧主義、自己評価の低さをもつことが多い。作業療法では体重や食事ではなく、作業を通した自己評価の回復と気分転換・感情表出を扱う。

適切不適切
「失敗しても大丈夫」と伝え、完璧でなくてよい体験をさせる出来栄えを厳しく評価する、高い目標を設定する
今取り組んでいること自体を認める体重の変化をグラフにして一緒に確認する(体重へのとらわれを強める。体重管理は医師・看護師の領域)
気分転換になる活動を一緒に探す作品の内容を解釈して本人に伝える
体重・食事の管理は治療チームの役割分担に沿い、作業療法では作業に焦点作業療法士が食事摂取を促す・説得する、食べ物を隠して捨てたことを叱る
復学・復職は身体と心理が安定してから入院早期から復学計画を立てる、調理活動を取り入れる、料理本を読むことを禁止する

過食症で自傷を伴うとき

  • 傷を見つけたら心配していることを伝える(責めない・無視しない)。
  • 健康状態について本人がどう考えているかを受容的に尋ね、必要に応じて検査・受診を勧める(嘔吐による低カリウム血症など)。