第4章|入院形態と地域生活・就労の支援
統合失調症 第4章
4-1 精神保健福祉法の入院形態
事例では「本人の同意があるか」「家族等の同意があるか」「自傷他害のおそれがあるか」の3点を順に確認する。
| 入院形態 | 本人の同意 | 要件 | 期間など |
| 任意入院 | あり | 本人の同意に基づく | 退院を申し出ても、指定医の判断で72時間(特定医師は12時間)退院を制限できる |
| 医療保護入院 | なし | 精神保健指定医1名の診察+家族等の同意。自傷他害のおそれは要件ではない | — |
| 応急入院 | なし | 指定医1名。家族等の同意が得られないが急速な入院が必要 | 72時間以内。応急入院指定病院 |
| 措置入院 | 問わない | 自傷他害のおそれ。指定医2名の診察が一致し、都道府県知事(政令市長)の権限で入院 | — |
| 緊急措置入院 | 問わない | 自傷他害のおそれが著しく急を要する。指定医1名 | 72時間以内 |
| 医療観察法による入院 | — | 心神喪失等の状態で重大な他害行為(対象行為)を行った人。裁判所の審判による | 指定入院医療機関 |
任意入院の後に「退院したい」と同意を取り下げ、指定医の判断と家族の同意で非自発的入院へ ⇒ 医療保護入院。服薬中断で病状が悪化し入院を拒否しているが、自傷・他害の行動はなく家族が付き添っている ⇒ これも医療保護入院。過去に措置入院歴があっても、いまの状態で判断する。
4-2 ACT(包括型地域生活支援)と訪問・デイケアでの関わり
| 項目 | ACTの特徴(正) | 誤りの肢 |
| 対象 | 重症の精神障害者(入退院を繰り返す、通常のサービスでは地域生活の維持が難しい) | 比較的軽度・地域生活が安定した人 |
| 体制 | 24時間365日の相談・危機対応 | 休日を除く毎日、日中に限定、夜間の対応はしない |
| チーム | 医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士などの多職種チーム。チームでケアマネジメントを行う | 医師が中心、作業療法士が中心、訪問作業療法の一形態 |
| 方法 | 生活の場へ出向くアウトリーチ(訪問)。短時間でも頻回に訪問する | 地域の福祉施設の利用時に実施する |
| ケース数 | スタッフ1人当たり10人程度と少なく抑える | 25人程度、50人程度 |
| 期間 | 原則として期限を設けない | — |
| 目標 | 地域生活の継続(入院の予防・生活の質・リカバリー) | 主たる目標は症状軽減 |
長期入院から単身生活へ移る人を、医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士のチームが24時間365日体制で相談・訪問で支える ⇒ ACT(IMR・IPS・WRAPではない。略語の整理は3-2)。
訪問の初期にすること・しないこと
| ○ 優先する | × 初期には避ける |
| 本人がいま困っていることを聴く、興味・関心を把握する、関係づくり | 服薬を強く促す・服薬を約束させる |
| 同じスタッフが継続して訪問する(顔なじみの関係) | 外出を強く勧める、生活の乱れを一度に正そうとする |
| 本人の生活のペースを尊重する | 強制的な受診・入院への移送をちらつかせる |
訪問先では「支援者側が必要と考えること」より「本人が必要と感じていること」から入る。服薬の管理や外出の拡大は関係ができてからの課題。
精神科デイケア開始時の評価
- まず把握するのは精神症状が日常生活にどう影響しているか(生活のどこで困るか)。
- 病歴の細部・家族歴・発症のきっかけを詳しく聴き取ることが初回の中心ではない(1-5のインテークと同じ考え方)。
4-3 就労支援
IPS(Individual Placement and Support:個別就労支援)
- 理念はストレングスとリカバリー。働きたいという本人の希望があれば、症状の程度にかかわらず対象。
- 先に就職し、職場で支える(place-then-train)。長い職業前訓練を前提にしない。
- 支援者が職場を訪問し、雇用主との調整も行う。精神科の治療チームと連携する。
- 支援の最初に聴くのは本人が希望する仕事・働き方(職種・時間・条件)。支援者が職種を決めたり、まず訓練を勧めたりしない。
障害福祉サービスなどの就労系支援
| サービス | 内容 |
| 就労移行支援 | 一般就労を目指す人に訓練・求職活動・職場開拓を行う。利用期間は原則2年(24か月)。本人の就労意欲が利用の前提 |
| 就労継続支援A型 | 事業所と雇用契約を結ぶ(最低賃金の適用) |
| 就労継続支援B型 | 雇用契約を結ばない。工賃を受け取る |
| 就労定着支援 | 一般就労した後の職場定着を支える(就職前の訓練ではない) |
| 職場適応訓練 | 実際の事業所で作業に慣れる訓練 |
| リワーク(復職支援) | 休職中の人の職場復帰を目指すプログラム |
統合失調症の人に向きやすい仕事の条件
| 向きやすい | 負担になりやすい |
| 手順が決まっている・作業内容が一定 | その場の判断・臨機応変さが要る |
| 勤務時間が一定 | 交代勤務・不規則な時間 |
| 対人接触が少ない | 接客・電話対応・交渉が多い |
| 速さを求められない | スピード・ノルマを求められる |
| — | 高い精度を求められる細かい作業 |
精神障害者の雇用の現状
- 2018年から精神障害者も障害者雇用率(法定雇用率)の算定対象になった(雇用義務の対象)。
- 雇用率の算定対象は精神障害者保健福祉手帳の所持者。障害年金の受給が定義ではない。
- ハローワークでの就職件数の伸びは大きい一方、職場定着率は他の障害に比べて低い=就職後の定着支援が課題。
4-4 地域生活のサービスと身体の健康管理
| サービス(障害者総合支援法など) | 内容・対象 |
| 居宅介護(ホームヘルプ) | 自宅での家事援助・身体介護。精神障害者も利用できる |
| 共同生活援助(グループホーム) | 共同生活の住居で相談・日常生活の援助を受ける。自宅で暮らし続ける人の家事援助ではない |
| 重度訪問介護 | 重度の肢体不自由や重度の行動障害で常時介護を要する人 |
| 短期入所(ショートステイ) | 介護者が不在のときなどに施設へ短期間入所 |
| 同行援護 | 視覚障害者の外出時の移動支援 |
| 地域活動支援センター | 創作的活動・交流の場、相談 |
65歳以上(第1号被保険者)で、加齢や脳卒中などの身体の障害により家事・生活が難しくなったら、まず介護保険サービスの利用を検討する(介護保険優先の原則)。精神症状が悪化していないのに入院を勧めない。
身体の健康管理(肥満・脂質異常症・糖尿病)
- 抗精神病薬の副作用・活動量の低下・偏食でメタボリックシンドロームになりやすい(1-2)。
- 訪問作業療法での支援は、本人の生活に合わせて実行できる運動(散歩・ストレッチなど)を取り入れる提案から。
- 薬の変更を作業療法士が主治医に提案するのは職域を越える(情報共有は行う)。調理訓練で自炊を目指す、入院で生活リズムを整える、買い物を代行するは、いまの生活の実態に合わない・活動を減らす方向。