第3章|認知・対人技能へのプログラムと家族支援

統合失調症 第3章

3-1 SST(社会生活技能訓練)

項目正しい理解よく出る誤りの肢
理論的基盤認知行動療法・社会的学習理論(学習理論)精神分析理論に基づく
目的対人場面・生活場面の技能を練習し、ストレス対処技能を強化する(症状があっても生活できる力をつける)病識の獲得(=心理教育)、精神症状そのものの改善、自動思考の修正(=認知療法)、対人関係パターンの自己洞察(=精神分析的療法)
方法具体的な対人場面を設定し、構造化された手順で行う。主な要素=練習課題の設定、モデリング(手本を見る)、ロールプレイ(行動リハーサル)、正のフィードバック→改善点の提案(修正的フィードバック)、再練習、宿題(チャレンジ課題)。モデリングとロールプレイの順序や、モデリングを入れる場面は進め方で異なる(基本訓練モデルでは練習の後に必要に応じて手本を示す)が、モデリングは重要な技法で「最小限にとどめる」ものではないロールプレイは自由に行う、モデリングは最小限
フィードバックできた点を具体的にほめる正のフィードバックが中心。改善点はほめた後に「さらによくする点」として伝える批判・修正点の指摘が中心
相手役メンバー同士で行うのが基本相手役はスタッフが優先して行う
負荷ロールプレイやフィードバックで一定のストレスはかかる。だから安全な場と正のフィードバックが要るストレスのかからない技法
モジュール服薬自己管理・症状自己管理などの課題別にパッケージ化された学習。初めての人にも使えるモジュールは経験を積んでから行う

事例で「質問ができない」「一方的に話す」「人とうまくやりとりできない」=対人コミュニケーション技能の問題 ⇒ SST。同じ就労準備の事例でも「説明が途中で分からない・ミスが多い」なら認知機能(BACS/NEAR)、「周りが自分のことを言っている気がする」なら社会認知(SCIT)。

3-2 認知機能・社会認知へのプログラムの使い分け

アルファベット略語の選択肢が並ぶ問題が非常に多い。何に焦点を当てるかと道具(パソコンか、グループか)で区別する。

略語名称焦点・特徴
NEARNeuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation(神経心理学的・教育的認知矯正療法)神経認知機能(注意・記憶・処理速度・遂行機能)の改善。パソコン上の教育用ソフトウェア(ゲーム的課題)を使い、動機づけを重視
SCITSocial Cognition and Interaction Training(社会認知ならびに対人関係のトレーニング)社会認知(表情の認知・他者の意図の推測・原因帰属)。被害的な解釈・猜疑的な受け取り方の修正
MCTMetacognitive Training(メタ認知トレーニング)結論への飛躍などの認知の偏り(認知バイアス)への気づき。主にグループで実施
SSTSocial Skills Training(社会生活技能訓練)対人技能・生活技能(3-1)
CBTCognitive Behavioral Therapy(認知行動療法)認知と行動のパターンの修正。就労支援プログラムではない
IMRIllness Management and Recovery(疾病管理とリカバリー)症状・再発の自己管理を学ぶ
WRAPWellness Recovery Action Plan(元気回復行動プラン)本人が自分で作る調子の維持・悪化時の行動計画(リカバリー)
IPS(Individual Placement and Support)個別就労支援(援助付き雇用)一般就労の支援(4-3)
Intentional Peer Support意図的なピアサポート当事者同士の支え合い(同じ略称IPSに注意)
ACTAssertive Community Treatment(包括型地域生活支援)多職種の訪問支援(4-2)。デイケアのプログラム種目ではない
TEACCH自閉スペクトラム症の構造化による支援統合失調症のプログラムではない
EMDR/曝露反応妨害法PTSD/強迫性障害の治療統合失調症の昏迷には電気けいれん療法

事例の手がかり ⇒ プログラム:
「パソコン」「コンピューターゲーム」「教育用ソフトウェア」⇒NEAR
「同僚から嫌がらせを受けているという被害的な訴えが増えた」「周りの表情やしぐさを見て自分のことを言っている気がする」⇒SCIT
「注意・集中力の低下で仕事を覚えられず退職、でも一般就労したい」⇒認知機能の改善を目指したプログラム(就労をあきらめさせない・休息入院は不要・就労定着支援は就職後のサービス)

3-3 家族支援:EE(感情表出)と家族心理教育

EE(Expressed Emotion:感情表出)

  • 高EE=家族の批判的コメント・敵意・情緒的巻き込まれ(過干渉・過保護)が多い状態。
  • 高EEの家族のもとでは再発率が高い。高EEが再発に関わる患者に有効なのは家族心理教育(自律訓練法・SST・本人へのCBTではない)。
  • 高EE・口論がみられるとき ⇒ 対面接触時間を減らす。

「EEが高い場合は患者との接触を増やす/対面接触時間を長くさせる」は誤り。人格を批判する、服薬を忘れたら厳しく叱責する(批判・敵意)、外出に毎回同行する(過干渉)、借金を無条件に返済する(過保護・依存の助長)はいずれも高EE側。

家族心理教育

正しい誤り
目標は家族の対処能力の向上(疾患の理解・対処法の習得・EEの低下)家族を精神疾患の原因と捉える
再発防止効果に科学的根拠がある精神分析理論に基づく
継続的に複数回行う単発での実施が一般的
情報提供と双方向の話し合い。家族を支援の協力者として位置づける治療者から家族への指示を重視する
同居していない家族も対象になりうる同居家族のみが対象、専門家が家族の範囲を決める
—日常生活での家族の情緒的な巻き込まれを促す、EEを高める指導

地域で暮らす家族への支援の内容

  • 活用できる社会資源の情報提供。
  • 家族が地域から孤立しないよう助言(家族会・家族教室への接続)。
  • 再発の兆候に気づいたら主治医に相談するよう伝える。
  • 家族自身のストレスを軽減する対処法を一緒に考える。

3-4 ストレングスモデルとリカバリー

本人の強み(性格・才能・希望・環境)を、日常生活・経済・仕事など7つの生活領域に分けて本人と一緒に確認・文章化し、本人の言葉で目標を立てる ⇒ ストレングスモデル(ストレングスアセスメント)。長期入院から退院してグループホームへ、という事例で繰り返し出る。

モデル中心ストレングスモデルとの違い
ストレングスモデル問題・欠損でなく強みから支援を組み立てる。リカバリー志向—
ICFモデル健康状態・心身機能・活動・参加・環境因子・個人因子で障害を整理強みの文章化を核にしない
人間作業モデル(MOHO)意志・習慣化・遂行能力と環境同上
CMOP(カナダ作業遂行モデル)人・環境・作業の関係と作業遂行同上
作業適応モデル人と環境の適応同上
脆弱性-ストレスモデル個人の脆弱性とストレスの重なりで発症・再発を説明病因の理解の枠組みで、強みのアセスメントではない
IPSモデル就労支援(援助付き雇用)就労に特化
Empowerment approach当事者が力を取り戻す過程の支援7領域の強みの確認という手順はストレングスモデル

IPSも「ストレングスとリカバリー志向」を特徴にもつが、強みを7領域で文章化するアセスメントそのものはストレングスモデル。