第7章|代謝障害・老化・先天異常

病理学 第7章

7-1 細胞小器官と機能の対応

小器官の機能をすり替えた誤答肢が作られる。一対一で固める。

細胞小器官機能
DNAを保存し転写(mRNA合成)を行う
リボソームmRNAを翻訳して蛋白質を作る
粗面小胞体リボソームが付着。分泌蛋白・膜蛋白の合成と修飾
滑面小胞体脂質・ステロイド合成、カルシウム貯蔵、解毒
Golgi装置蛋白質の修飾・選別・輸送(分解ではない)
ミトコンドリア酸化的リン酸化でATPを産生。独自DNAをもつ
リソゾーム加水分解酵素による分解(ATP合成ではない)
中心体(中心小体)紡錘体を形成し染色体を分離(転写はしない)

「細胞分裂は小胞体の移動から始まる」は誤り → 正しくは染色体の凝縮と中心体からの紡錘体形成で始まる。

合成=粗面小胞体/修飾・輸送=Golgi/分解=リソゾーム/ATP=ミトコンドリア/染色体分離=中心体/転写=核。

7-2 染色体の基本と細胞分裂

  • ヒトの体細胞の染色体は46本(23対)。内訳は常染色体44本(22対)+性染色体2本
  • 配偶子(精子・卵子)は半数の23本
  • Y染色体はX染色体より小さく、遺伝子も少ない。

「常染色体は46個ある」は誤り → 46本は総数。常染色体は44本。

体細胞分裂減数分裂
起こる細胞全身の体細胞生殖細胞のみ(精母細胞・卵母細胞)
染色体数2n→2n(不変)2n→n(半減)
意義増殖・修復配偶子形成

数的異常

  • トリソミー=ある1種類の染色体が3本になった状態。常染色体か性染色体かを問わない。
  • モノソミー=ある1種類が1本しかない状態(45,X)。
  • 原因は減数分裂時の染色体不分離

「トリソミーとは性染色体が3個ある状態である」は誤り → 正しくは特定の1種類が3本になる状態で、性染色体に限らない。

7-3 先天異常の4分類

分類代表疾患
染色体の数的異常Down(21トリソミー)/Edwards(18)/Patau(13)/Turner(45,X)/Klinefelter(47,XXY)
染色体の構造異常ネコ鳴き症候群(5番短腕欠失)/Williams(7番長腕の微細欠失)/Prader-Willi(15番)/転座型Down
単一遺伝子病Marfan・von Recklinghausen病・結節性硬化症(常染色体優性)/フェニルケトン尿症(常染色体劣性)/血友病(X連鎖劣性)
多因子・環境風疹・アルコール・薬剤・放射線。器官形成期(妊娠4〜7週)の影響が大きい

まず「染色体の本数の異常か、遺伝子1個の変異か」で切る。von Recklinghausen病・Marfan症候群・フェニルケトン尿症は染色体異常ではない

7-4 常染色体トリソミー

番号疾患名特徴
21Down症候群最も頻度が高い。知的障害・筋緊張低下・特徴的顔貌・先天性心疾患
18Edwards症候群手指が重なり合う・揺り椅子状足底・小顎。予後不良
13Patau症候群口唇口蓋裂・小眼球・多指症。予後不良

常染色体トリソミーは13・18・21の3つだけ。

Down症候群を性染色体異常とする誤答が繰り返し出る → 21番は常染色体。性染色体異常はTurnerとKlinefelterだけ。

7-5 Down症候群

病型要点
標準型(約95%)不分離による21トリソミー。母親の出産年齢が高いほど頻度が上昇
転座型(約5%)両親のいずれかが均衡型転座の保因者のことがある→ 遺伝相談が重要
モザイク型正常細胞と混在。症状は軽い傾向

「転座型では両親に転座があることは少ない」は誤り → 保因者のことがあり遺伝相談の対象。「出現頻度は母親の出産年齢に影響されない」も誤り → 高齢出産で上昇

身体特徴・合併症

  • 顔貌:眼裂斜上・内眼角贅皮・鞍鼻・巨舌・短頸。単一手掌屈曲線(猿線)・第1第2趾間の開大。
  • 合併症:先天性心疾患(心内膜床欠損=房室中隔欠損)・十二指腸閉鎖・難聴・甲状腺機能低下・成人期のAlzheimer型認知症。
  • 知的障害は軽度〜中等度を伴うのが一般的。

運動発達

  • 最大の特徴は全身性の筋緊張低下(hypotonia)と関節弛緩。運動発達は全般に遅延。
  • 背臥位で股関節が外転・外旋し四肢が床に投げ出されたフロッグレッグポジション=Down症候群に特徴的な姿勢。

環軸椎不安定性を合併しうるため、頸部を強く前屈させる運動(でんぐり返し等)は避ける。

「知的障害はみられない」は誤り → 軽度〜中等度を伴う。「両親に対する愛着は少ない」も誤り → 愛着形成は可能でむしろ人懐こい。

7-6 性染色体異常

Turner症候群Klinefelter症候群
核型45,X(モノソミーX)47,XXY(X過剰)
性・身長女性・低身長男性・高身長
身体所見翼状頸・外反肘女性化乳房・体毛が少ない
性腺性腺機能不全・原発性無月経性腺機能低下・無精子症
知能問題を伴うことがある軽度の知的障害を伴うことがある

性染色体異常の代表はこの2つだけ。「女性・低身長=Turner」「男性・高身長=Klinefelter」と対で覚える。

7-7 単一遺伝子病・微細欠失症候群

疾患原因要点
Marfan症候群常染色体優性・FBN1(フィブリリン)高身長・クモ状指・水晶体亜脱臼・大動脈解離
von Recklinghausen病(神経線維腫症1型)常染色体優性・NF1遺伝子カフェオレ斑・多発する神経線維腫
結節性硬化症常染色体優性白斑・顔面血管線維腫・てんかん・知的障害
Williams症候群7番染色体長腕の微細欠失大動脈弁上狭窄・人懐こい性格・知的障害
Prader-Willi症候群15番染色体の異常乳児期の低緊張 → 幼児期以降の過食・肥満・知的障害
ネコ鳴き症候群5番染色体短腕の欠失猫のような泣き声・知的障害
血友病X連鎖劣性(伴性劣性)男性に発症・関節内出血

von Recklinghausen病・Marfan症候群・結節性硬化症は遺伝子変異でありトリソミーではない。結節性硬化症・神経線維腫症は代謝異常でもない(腫瘍形成が本態)。

7-8 先天性代謝異常

フェニルケトン尿症(PKU)

  • フェニルアラニン水酸化酵素の欠損による常染色体劣性の先天性代謝異常。
  • フェニルアラニンが蓄積して脳を障害し、放置すると知的障害をきたす。
  • チロシン不足でメラニンが減り色白・毛髪が明るい。尿にネズミ尿様臭。
  • 新生児マススクリーニングで早期発見し、低フェニルアラニン食で発症を予防できる=治療で防げる知的障害の代表。

ほかにメープルシロップ尿症・ホモシスチン尿症(アミノ酸代謝)、ガラクトース血症(糖代謝)、先天性甲状腺機能低下症もスクリーニング対象。ライソゾーム病・糖原病も含め、酵素欠損 → 基質が蓄積 → 臓器障害が共通の型。

「精神遅滞を生じる疾患のうち先天性代謝異常はどれか」=フェニルケトン尿症。Down・Turnerは染色体異常、結節性硬化症・神経線維腫症は遺伝子疾患で代謝異常ではない。

7-9 知的障害の原因と後天性の異物

知的障害(精神遅滞)は発達期に生じた知的機能の障害。成人後に発症した疾患による認知機能低下は含まない。この線引きで「関連がないのはどれか」を解く。

関連する関連しない(後天性)
Down症候群/ネコ鳴き症候群/Prader-Willi症候群/Klinefelter症候群/Turner症候群/Williams症候群/結節性硬化症/フェニルケトン尿症/West症候群Wallenberg症候群(延髄外側梗塞)/Korsakoff症候群(ビタミンB1欠乏の健忘・作話)/Guillain-Barré症候群(末梢神経障害)

Wallenberg症候群=椎骨動脈・後下小脳動脈領域の脳幹梗塞で急性発症。回転性めまい・嚥下障害と嗄声・Horner症候群・交叉性の温痛覚障害(同側顔面/対側の体幹四肢)・同側の小脳失調。発達期の障害ではない。

染色体異常・先天代謝異常・てんかん性脳症が並ぶ中に脳血管障害や末梢神経疾患が1つ混じる。発症時期が発達期か否かで異物を抜く

7-10 てんかん

  • 誘因:睡眠不足が最重要。ほか過労・飲酒・発熱・服薬中断・光刺激。
  • 発症率は小児期と高齢期の二峰性。加齢とともに減るのではなく高齢期で再び上昇。
  • 全体では特発性が6〜7割で明確な遺伝性は少数派。ただし成人発症では脳卒中・頭部外傷などの症候性が特発性より多い
  • てんかん重積状態(5分以上の持続)は脳損傷を招き、発作の持続時間は後遺障害と相関する

「半数以上が遺伝性」「年齢とともに発症率が減少する」「成人では症候性より特発性が多い」「持続時間は後遺障害と相関しない」はすべて誤り

West症候群(点頭てんかん):乳児期の点頭発作・脳波でヒプスアリスミア・精神運動発達遅滞を伴うてんかん性脳症=知的障害と関連する側。

7-11 物質代謝の障害と老化

病態要点
黄疸ビリルビン増加で皮膚・眼球結膜が黄染(結膜が最も早い)。溶血性(間接優位)/肝細胞性/閉塞性(直接優位・灰白色便・掻痒)
アミロイドーシス異常な線維状蛋白が臓器に沈着。全身性=慢性炎症のAA型・骨髄腫のAL型。限局性=Alzheimer病の脳、透析アミロイドーシス(手根管症候群)
石灰化異栄養性=壊死組織へ沈着(血清Caは正常)/転移性=高Ca血症で正常組織へ沈着
痛風尿酸塩結晶が第1中足趾節関節などに沈着

老化

  • 本質は予備力・恒常性維持機能の低下。安静時は保たれても負荷時に破綻しやすい。
  • 細胞:テロメア短縮・分裂能低下・リポフスチン蓄積(褐色萎縮)
  • 臓器:実質細胞の萎縮と線維化、動脈硬化の進行。骨格筋は速筋線維が優位に減る(サルコペニア)。

加齢そのものによる生理的老化と、生活習慣病が加わった病的老化を分ける。