第2章|リハの理念・障害者福祉・予防と統計

保健医療福祉 第2章

2-1 リハビリテーション理念の系譜

理念問題は「いつ・どこで・誰が」の3点セットで出る。年代順の並べ替えが定番。

理念・出来事年代発祥中身
ノーマライゼーション1950年代北欧(デンマーク)。Bank-Mikkelsen提唱→Nirje体系化→Wolfensbergerが米国へ知的障害者の大規模施設収容を改める人権改善運動が発端。障害があっても一般市民と同等の生活条件で暮らせる社会をつくる
IL運動(自立生活運動)1960〜70年代米国重度障害の当事者自身が起こした運動。自己決定と地域生活の権利を主張
ユニバーサルデザイン1980年代米国(Mace)はじめから誰もが使える設計。バリアフリー(後から障壁を除く)と対比
国際障害者年1981年国連テーマは「完全参加と平等」

年代順は ノーマライゼーション(1950s)→ IL運動(1970s)→ 国際障害者年(1981)。「理念の提唱 → 当事者運動 → 国際施策」という発展の順番で覚える。

ノーマライゼーションの中身

  • 核にあるのは障害者本人の自己決定権の尊重。何をどう選ぶかを本人が決める
  • 立場は社会モデル寄り。障害を個人の医学的問題に還元する医学的モデルではない
  • 身体機能を「正常化」する理念ではない。障害があるままで普通の生活ができるよう、変えるのは社会環境の側
  • 福祉サービスを使わずに生活することでもない。必要な支援を使いながら当たり前の生活を実現する

「日本から始まった社会理念」は誤り → 正しくは北欧(デンマーク)発。「ソーシャルインクルージョン」「バリアフリー」「ユニバーサルデザイン」は年代も発端も別物で、1950年代北欧・知的障害者の人権運動=ノーマライゼーションで一意に決まる。

ユニバーサルデザインの7原則

ユニバーサルデザインは年齢・能力・状況を問わず、できるだけ多くの人がそのまま使えるように最初から設計する考え方(Maceが提唱)。対象は製品に限らず建築物・交通・公共空間・情報にも及ぶ。

原則中身逆の言い回し(誤り肢)
①公平な使用誰にでも使える健常者には使いにくい
②使用における柔軟性使い方の自由度が高い(右利き・左利きどちらでも使えるなど)使い方が1通りに限られる
③単純で直感的な使用経験・知識・言語能力に関係なく分かる使用法が複雑
④分かりやすい情報必要な情報が感覚の違いを問わず伝わる—
⑤危険とミスに対する寛大さ誤操作しても重大な事故につながりにくい誤った場合のリスクが高い
⑥身体的負担が少ない少ない力で楽に使える—
⑦接近・利用のための大きさと空間体格・姿勢・移動手段を問わず使える広さ—

バリアフリー=今ある障壁を後から取り除く(障害者・高齢者が主な対象)/ユニバーサルデザイン=初めから対象を限定せず設計する。例はレバー式ハンドル・センサー式蛇口・ノンステップバス・多機能トイレ・ピクトグラムなど。

2-2 障害者総合支援法と関連法規

  • 障害者自立支援法(2006)→障害者総合支援法(2013施行)への改正で、新たに「難病等」が支援対象に追加された
  • 身体障害・知的障害・精神障害の3障害は自立支援法の時点ですでに一元化済みで、新規追加ではない。高次脳機能障害も精神障害の枠組みで従来から対象
  • 基本理念に「地域社会での共生」「社会参加の機会の確保」が明記された
給付の枠主なサービス
介護給付(介護中心)居宅介護(ホームヘルプ)・重度訪問介護・同行援護・行動援護・重度障害者等包括支援・短期入所・療養介護・生活介護・施設入所支援
訓練等給付(訓練・就労・生活)自立訓練(機能訓練・生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援A型/B型・就労定着支援・自立生活援助・共同生活援助(グループホーム)
別枠補装具費支給(義肢・装具・車椅子)/自立支援医療/相談支援(計画相談・地域相談)/地域生活支援事業

「介護保険法 ─ 義肢の支給」は誤った組合せ → 義肢などの補装具の支給は障害者総合支援法の補装具費支給制度(ほかに労災・健康保険等)。介護保険が扱うのは介護サービス・福祉用具貸与・住宅改修まで。

またグループホーム・自立生活援助は訓練等給付であり介護給付ではない。補装具・相談支援は介護給付でも訓練等給付でもない別枠。

法律とその規定内容

法律規定される主な内容
健康増進法がん検診(胃・肺・大腸・乳・子宮頸)/特定健診・特定保健指導/生活習慣病の発症・重症化予防/受動喫煙防止
医療法インフォームドコンセント(説明と同意の努力義務)/医療提供体制の整備
介護保険法要介護認定・介護サービス・福祉用具貸与・住宅改修
生活保護法生活困窮者への8扶助(生活・医療・介護・住宅ほか)=公助
バリアフリー新法移動等円滑化基準。車椅子使用者用駐車場の確保など
社会福祉法/地域保健法社会福祉事業の基本原則/保健所・市町村保健センター等

健康日本21(第二次)は「法律」ではない。健康増進法に基づく国民健康づくり運動・基本方針。「がん検診の実施が規定されているのはどれか」「生活習慣病の発症・重症化予防が規定された法律はどれか」はどちらも健康増進法が答えになる。

バリアフリー新法と身体障害者補助犬法

  • バリアフリー新法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律・2006年)はハートビル法と交通バリアフリー法を統合した法律
  • 移動等円滑化基準の対象の例=建築物・公共交通機関(旅客施設・車両)・道路・路外駐車場・都市公園
  • 補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)の受け入れ義務を定めているのは身体障害者補助犬法で、バリアフリー新法ではない

2-3 予防・統計と専門職の責務

介護予防の3段階

段階対象具体例
一次予防健康な高齢者全体(ポピュレーションアプローチ)パンフレットによる啓発活動/介護予防ボランティアの養成
二次予防要支援・要介護に陥るおそれの高いハイリスク者(未認定)基本チェックリストによって対象者を決定・抽出し早期介入
三次予防すでに要支援・要介護の者悪化防止・重度化予防/居宅を訪問しての理学療法

決め手は「基本チェックリストで対象者を選定=二次予防」。要支援認定者への運動機能向上教室は予防給付の話であって二次予防ではなく、居宅訪問での理学療法はすでに三次予防。

基本チェックリストの該当基準

25項目(生活・運動・栄養・口腔・閉じこもり・認知・うつ)。領域ごとに該当者を拾う。

領域該当の基準
低栄養BMI 18.5未満かつ「6か月で2〜3kg以上の体重減少」に該当(項目11・12)
運動機能低下運動5項目(No.6〜10)のうち3項目以上に該当
口腔機能低下口腔3項目(No.13〜15)のうち2項目以上
閉じこもりNo.16「週1回以上は外出していますか」が「いいえ」
認知機能低下No.18〜20のいずれか1項目以上
うつNo.21〜25のうち2項目以上

低栄養の閾値はBMI 18.5未満。20・22・25はいずれも誤り。日本人高齢者ではBMI 21.5未満で低栄養リスクありとする基準(介護予防マニュアル)も併記されるが、基本チェックリストの該当基準は18.5未満。

押さえるべき統計値

  • 介護が必要となった原因(平成28年国民生活基礎調査)の第1位は認知症。以下、脳血管疾患・高齢による衰弱・骨折/転倒・関節疾患が上位。糖尿病は上位ではない。要支援では関節疾患・高齢による衰弱が上位に来る点も出る
  • 65歳以上のMCI(軽度認知障害)の有病率は約15〜20%。認知症の有病率(約15%)とほぼ同水準。MCIは年間5〜15%が認知症へ移行する一方、一部は正常へ戻る可逆性をもつ
  • 年齢階級別の自殺死亡率が最も高いのは50歳代。15〜39歳では「死因の第1位」が自殺だが、これは他の死因が少ないためで、死亡「率」とは別。死因順位と死亡率を混同しない

報酬改定の周期

報酬改定周期
診療報酬2年ごと(中央社会保険医療協議会=中医協の答申を経る)
介護報酬3年ごと
障害福祉サービス等報酬3年ごと
同時改定最小公倍数の6年ごと(トリプル改定)

個人情報と職業倫理

  • 適切=職務に関わる同僚への、支援に必要な範囲での情報共有(例:先輩職員に患者宅の家屋構造を伝えて住宅改修を相談する)
  • 不適切=患者の同意なく友人など第三者に病状を伝える/他職員の自宅住所を患者に教える/患者の動画を個人所有のスマートフォンに保存する/利用者限定のSNSでも患者の個人情報を投稿する
  • 原則は「患者の同意」または「職務上の必要性」がなければ開示しない。アクセス制限があっても外部プラットフォームへの投稿は不可

在宅での自立度評価 — FIMの修正自立

  • FIMは7段階。7=完全自立、6=修正自立、5=監視・準備、4=最小介助(75%以上自分で行う)…1=全介助
  • 修正自立(6点)のキーワード=装具・自助具・補助具・パッド・カテーテル・薬剤の使用、通常以上の時間がかかる、安全への配慮が必要
  • 該当例=パッドを用いた排尿管理が自立/装具を装着して300m程度の歩行が自立
  • 該当しない例=入れ歯の着脱・シャワーのみの入浴・スプーンを用いた食事。一般的な食器や日常品は補助具とみなさず完全自立(7点)扱いになる

産業衛生と労働災害

  • 休業4日以上の死傷災害を事故の型別に見ると「転倒」が最多。背景は働く人の高齢化で、転倒予防は職場でも理学療法士の出番になる
  • プレゼンティーズム(presenteeism)=体調不良のまま出勤して生産性が落ちている状態。日本は諸外国に比べて多いとされる(「少ない」は誤り)。体調不良で休むアブセンティーズムと対で覚える
  • 職場における腰痛予防対策指針には重量物取扱いの具体的な記載がある(例:満18歳以上の男性が人力で扱う重量は体重のおおむね40%以下、女性はその60%くらいまで)。「具体的な記載はない」は誤り
  • メンタルヘルス不調で休職した人の復職率を「10%程度」とするのは低すぎて誤り

統計問題は「最多はどれか」「日本は多いか少ないか」「具体的な基準があるか」の形で出る。数字を覚えるより向き(多い/少ない・ある/ない)を押さえる。