第1章|介護保険制度と地域包括ケア

保健医療福祉 第1章

1-1 地域リハビリテーションと地域包括ケア

地域リハビリテーションの定義

  • 対象は高齢者だけではない。障害児・障害者・その家族など、地域で生活するすべての人
  • 訪問リハビリテーションと同義ではない。訪問リハは地域リハを構成する一手段にすぎない
  • 具体的な取り組みに対象者・住民への教育・啓発活動、まちづくりが含まれる。直接的な治療だけではない
  • 基本理念はノーマライゼーション。「ソーシャル・インテグレーション(社会統合)が基本理念」ではない
  • CBR(Community-Based Rehabilitation)マトリクスはWHOなど国際機関が提唱。日本で作成されたものではない

地域包括ケアシステムと「4つの助」

振り分けの決め手は「費用負担の制度的裏付けがあるか」「保険か税か」の2軸。

区分財源・性質具体例(頻出選択肢)
自助自分で対処毎日のウォーキング等のセルフケア/自費で外出サービス・市場サービスを購入
互助制度の裏付けなし・自発的住民ボランティアが要介護者宅の庭を掃除/近隣同士の支え合い
共助社会保険介護保険による給付(通所リハの利用など)/医療保険
公助税生活保護/行政による福祉

ひっかけの中心は「自費でサービスを買う=自助」(お金を払うから共助ではない)と「介護保険サービスの利用=共助」(サービスを受けるから公助ではない)。

システムで特に重視されるのは互助の推進。高齢化で共助・公助の拡大に限界があるため。主体は国ではなく市町村・地域で、地域特性に応じて構築する。「自助の軽減」「要介護度の細分化」は趣旨ではない。

地域包括支援センター

  • 設置主体は市町村。地域包括ケアの中核機関
  • 必置3職種=保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
  • PT・OT・ST・看護師は必置職種ではない(配置義務の対象外)

ACT(包括型地域生活支援プログラム)

項目ACTの実際よくある誤答
対象重度の精神障害者(入退院を繰り返す層)地域生活が安定した軽度者
チーム多職種が対等に協働医師を中心としたチーム
体制毎日24時間365日対応日中のみ
訪問短時間でも頻回のアウトリーチ長時間・低頻度
担当数スタッフ1人あたり10人程度(高密度)50人程度

1-2 介護保険制度の骨格

項目正しい内容
保険者市町村(および特別区)。厚生労働省でも都道府県でもない
第1号被保険者65歳以上。原因を問わず要介護認定を受ければ給付
第2号被保険者40〜64歳の医療保険加入者。16の特定疾病が原因のときのみ給付
加入・保険料40歳から負担が義務づけられる(20歳でも45歳でもない)
財源公費約50%+保険料約50%。全額公費ではない
申請先市町村の窓口。都道府県の担当部署ではない
不服申立て都道府県の介護保険審査会へ審査請求できる(「再審査請求はできない」は誤り)
事業者の選択利用者が自由に選定・契約できる(措置から契約へ)

「介護保険は20歳以上の全国民が加入する」は誤り → 正しくは40歳以上。「第2号被保険者は65歳以上」「第1号被保険者は40〜64歳」「第1号被保険者は75歳以上」も全て入れ替え・ずらしのひっかけ。65=第1号/40〜64=第2号を固定して覚える。

特定疾病(第2号被保険者の給付条件)

  • 16疾病。脳血管疾患・初老期認知症・パーキンソン病関連疾患・末期がん・関節リウマチ・ALS・脊髄小脳変性症・骨折を伴う骨粗鬆症・糖尿病性神経障害/腎症/網膜症など
  • COPDは特定疾病に含まれる(「含まれない」は誤り)
  • 慢性腎不全は含まれない(糖尿病性腎症は含まれる、という違いに注意)
  • したがって「65歳未満では給付を受けられない」は誤り。40〜64歳でも特定疾病が原因なら給付される

制度の理念

  • 特に重視されるのは予防とリハビリテーション(自立支援・重度化予防)
  • 在宅(居宅)重視。入所型施設サービスが基本ではない
  • 介護の社会化。家族による介護への依存からの脱却を目指す(家族介護が重視点ではない)
  • 高齢者の尊厳保持・自己決定権の尊重、ノーマライゼーションの実現、国民の健康保持増進の努力
  • 公設介護施設の建設が主眼ではない
  • 市町村が介護プランを作成するわけではない(作るのはケアマネジャー)

1-3 要介護認定の流れと区分

段階誰が・何をする
① 申請市町村へ申請
② 調査認定調査+主治医意見書(必須)
③ 一次判定コンピュータが要介護認定等基準時間を推計
④ 二次判定介護認定審査会が審査・判定
⑤ 認定市町村が認定・通知

「介護度は介護認定審査会の1次判定で決定される」は誤り → 1次判定はコンピュータ、審査会がやるのは2次判定。「主治医意見書は必要ない」も誤りで、主治医意見書は必須。

区分と支給限度額

  • 区分は要支援1・2+要介護1〜5=合計7段階(「6段階」は誤り)
  • 区分支給限度基準額は区分ごとに異なる。重度ほど高い(「区分別支給限度額は同じ」は誤り)
  • 要支援者=予防給付(介護予防サービス)を利用できる。地域密着型介護予防サービス(介護予防小規模多機能型居宅介護など)も対象
  • 施設サービス(特養など)は要介護者のみ。要支援者は利用できない

要支援2と要介護1の分かれ目は最頻出。両者は一次判定の要介護認定等基準時間が同じ区分(32〜50分)に重なるため、基準時間では区別できない。二次判定で状態の不安定性(病状の不安定さ)と認知機能低下の有無によって振り分け、不安定なら要介護1とする。歩行速度・本人の意欲・家族の介護負担感は判定要素ではない(要介護度は本人の状態だけで決まる)。

1-4 ケアマネジメントとケアプラン

  • 作成するのは介護支援専門員(ケアマネジャー)。PTでも主治医でも市町村でもない。ただし利用者本人が作るセルフケアプランも制度上は可能
  • モニタリング(実施状況の評価・見直し)も介護支援専門員が行う。主治医ではない
  • ケアプラン作成(居宅介護支援)の費用は全額が保険給付で、利用者の自己負担なし。「1割を負担する」は誤り
  • 作成には利用者・家族の意向の尊重が不可欠。「本人の意見は不要」は誤り
  • 流れ=アセスメント→計画作成→サービス担当者会議→実施→モニタリング→再評価のサイクル

居宅サービス計画書の様式(第1〜5表)

様式記載する内容
第1表利用者・家族の生活に対する意向/認定情報/総合的な援助の方針
第2表生活全般の解決すべき課題(ニーズ)/長期目標・短期目標/援助内容(サービス種別)
第3表週間サービス計画表(週単位の利用計画)
第4表サービス担当者会議の要点
第5表居宅介護支援経過(支援経過の記録)

「生活全般の解決すべきニーズは第1表に記載する」は誤り → ニーズは第2表。第1表は意向と総合的な援助の方針。1=方針、2=ニーズ・目標、3=週間と数字で固定する。

1-5 訪問リハビリテーションと通所リハビリテーション

訪問リハビリテーション

  • 目的は日常生活の自立支援。通院困難な利用者の居宅で、医師の指示のもと実施する
  • 実施者はPT・OT・STのいずれか。理学療法士の配置が必須ではない
  • 事業所内にリハを行うスペースは不要(自宅で実施するため)
  • 通所介護(デイサービス)等と併用できる。ケアプランに位置づければよい
  • 通所リハとの優先順位はない。状態と目標に応じてケアマネジメントで選択する
  • 家族を対象とした目標設定も可能(介助方法の指導・介護負担軽減・住環境調整)
  • 最も多い原因疾患は脳血管疾患(認知症ではない)
  • 事業所の開設主体は病院・診療所(医療機関)が最も多い(介護老人保健施設ではない)
  • LIFEへの入力は加算の要件(任意)であり必須ではない
  • 医療保険・介護保険の両制度下で提供される。18歳未満だから一律に算定できない、ということはない

通所リハ(デイケア)と通所介護(デイサービス)

通所リハビリテーション(デイケア)通所介護(デイサービス)
主目的日常生活の自立を助けるために必要なリハ/心身機能の維持回復入浴・食事・レク等の生活支援と家族のレスパイト(負担軽減)
指示医師の指示のもと医師の指示は必須でない
職種PT・OT・STを配置介護職員中心
対象要介護者+要支援者も対象要介護者・要支援者

通所リハについて「他の利用者との交流が少ない」は誤り → 集団で実施され交流・社会参加の促進もメリット。「家族の負担軽減が主目的」も誤りで、それは副次的効果(主目的は自立支援)。「利用者150名に1名のPT配置が必要」という基準も存在しない。

発症から長く経った利用者の目標設定

  • 発症から年単位がたち機能が頭打ちの利用者では、機能回復や新たな動作の獲得より、いま行っているADLの介助量を減らす目標(移乗動作の安定など)を立てる
  • 介助量の表し方の例:FIMの3点=中等度介助(本人が50%以上を行う)、2点=最大介助(25%以上50%未満)

1-6 福祉用具 — 貸与と購入の線引き

線引きの原則は「直接肌に触れて再利用しにくい入浴・排泄関連=購入(特定福祉用具販売)」、それ以外=貸与。

区分品目
福祉用具貸与車椅子・車椅子付属品/特殊寝台・付属品/床ずれ防止用具/体位変換器/手すり(工事を伴わないもの)/スロープ(可搬型)/歩行器/歩行補助つえ(ロフストランド杖・多脚杖など)/認知症老人徘徊感知機器/移動用リフト(つり具部分を除く)/自動排泄処理装置/スライディングボード/ベッド用手すり
特定福祉用具販売(購入)腰掛便座(ポータブルトイレ)/入浴補助用具(シャワーチェア=入浴用いす・バスボード・浴槽用手すり等)/簡易浴槽/移動用リフトのつり具部分/自動排泄処理装置の交換可能部品
介護保険の福祉用具ではないT字杖(一本杖)=貸与種目そのものに含まれない/短下肢装具=医療保険(治療用装具)/義肢・補装具=障害者総合支援法/携帯用会話補助装置

軽度者への給付制限

要支援1・2/要介護1でも原則可原則要介護2以上(軽度者は原則対象外)
手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえ(ウォーカーケイン等の多脚杖、ロフストランド杖)車椅子・特殊寝台・床ずれ防止用具・体位変換器・認知症老人徘徊感知機器・移動用リフト

「要支援1の者が給付対象となる福祉用具はどれか」型は、杖・歩行器・手すり・スロープの4つだけが正解候補と割り切る。ただしT字杖は貸与種目自体に入っていないので、選択肢にT字杖と多脚杖(ウォーカーケイン)が並んだら多脚杖が正答。これが最頻出のひっかけ。

1-7 住宅改修と住環境整備

介護保険の住宅改修(支給限度基準額20万円)

対象6項目対象外(頻出の誤答肢)
  • ① 手すりの取付け(屋外・外階段でも可)
  • ② 段差の解消(浴室段差・出入口段差)
  • ③ 滑り防止・移動円滑化のための床材の変更
  • ④ 引き戸等への扉の取替え(折れ戸も含む)
  • ⑤ 洋式便器等への便器の取替え(和式→洋式)
  • ⑥ ①〜⑤に付帯して必要な工事
  • 居室・寝室スペースの増築
  • 廊下幅の拡張(壁の移動を伴う大規模工事)
  • 照明器具の変更
  • 階段昇降機・段差解消機・リフトの設置(機械装置は福祉用具の枠組みで扱う)

判別の合言葉は「材料を変える工事は対象/面積を増やす工事は対象外」、そして「機械装置は住宅改修ではない」。床材の変更は対象だが、廊下幅の拡張や増築は対象外。手すりは屋内外を問わず対象。

スロープ(傾斜路)の勾配基準と長さの計算

条件勾配意味
車椅子の自走1/12以下高さ1に対して長さ12以上。建築物バリアフリー法の基準も1/12以下(屋外でやむを得ない場合は1/15以下が望ましい)
介助者が押す1/8程度まで介助があれば1/12より急でも許容されることがある。自走の基準と混同しない

計算は「必要な長さ=段差の高さ×分母」の一本だけ。例)段差25cm=0.25mを自走で越えるなら 0.25×12=3.0m。

同じ段差で2.5mなら1/10、2.0mなら1/8、1.5mなら1/6、1.0mなら1/4と、短いほど急になりいずれも1/12より急で自走には足りない。選択肢が長さで並ぶ問題は基準を満たす最短の長さを選ぶ。

浴室の環境整備 — 優先度の考え方

  • 目的は転倒・溺水の防止。優先度は「その人の動作のどこに最大の危険が残るか」で決める
  • 浴槽の出入り → バスボード・縦手すり / 洗体 → シャワーチェア
  • 移動 → 段差解消・滑り止め / 扉 → 引き戸・折り戸(開き戸は身体を引く動作を伴い危険)

片麻痺でBrunnstromステージⅢ程度、AFOとT字杖で屋内歩行が自立している例では、段差解消・バスボード・シャワーチェア・折り戸への変更はいずれも直接危険を減らす。一方洗い場の手すりは、歩行が自立しており他の設備で安全が担保されるため相対的に優先度が下がる。「必要性が最も低いのはどれか」型は、能力レベルを読んですでに代替手段で安全が確保される項目を選ぶ。