第7章|発達障害と評価

人間発達学 第7章

7-1 発達障害の全体像

発達障害は生まれもった脳機能の特性であり、育て方やしつけが原因ではない。発達早期に特性が現れ、環境調整と療育が支援の基本となる。

障害中核症状支援の要点
自閉スペクトラム症〈ASD〉社会的コミュニケーションの障害+限定的・反復的な行動(こだわり)/感覚過敏・鈍麻構造化(TEACCH)・視覚支援・見通しを与える
注意欠如・多動症〈ADHD〉不注意・多動性・衝動性刺激を減らす環境調整・即時の正の強化
限局性学習症〈LD〉読み・書き・計算など特定領域だけの習得困難(全般的知能は保たれる)代替手段(タブレット・読み上げ)の許容
知的障害知的機能と適応行動の両方の制約が発達期に発現生活年齢に合わせた課題設定

7-2 自閉スペクトラム症〈ASD〉

  • 発症時期=発達早期(おおむね3歳まで)に特性が現れる。学童期に発症するものではない。
  • 性差=男児に多く、男女比はおよそ3〜4:1
  • 知的障害の合併=稀ではない。スペクトラム(連続体)なので知的水準の幅が広い。
  • てんかんの合併=一部にみられるが大部分ではない。
  • 脊椎変形はASDの本質的特徴ではない。側弯を伴うのはRett症候群など別の疾患。

「学童期に発症」「精神遅滞を伴うことは稀」「大部分でてんかんを認める」はいずれも誤り。正しくは発達早期に発現・知的障害の合併は稀でない・てんかんは一部のみ

7-3 ADHDへの心理社会的治療

適切な対応理由
指示は1つずつ出す一度に複数だと混乱し実行できない
指示を視覚化する(絵カード・スケジュール表)聴覚のみの指示は流れてしまう
好ましい行動をしたらすぐにほめる即時の正の強化が定着に有効
軽微な症状は許容する完璧を求めず自己肯定感を守る
気の散る刺激を減らす環境調整注意の持続を助ける

雑談しながら作業をさせるのは適切でない。注意がそれて課題遂行を妨げる。ADHD支援は「刺激を増やす」方向ではなく減らす・整理する方向。叱責中心・一度に多くの指示も逆効果。

7-4 脳性麻痺の定義と病型

  • 定義=受胎から新生児期までに生じた脳の非進行性病変による運動・姿勢の障害。
  • 脳病変そのものは進行しないが、成長に伴い拘縮・変形などの二次障害が生じるため継続的な介入が必要。
病型責任病巣特徴・合併
痙直型(最多)錐体路(大脳皮質)痙縮。てんかん・知的障害の合併が多い
アテトーゼ型大脳基底核(核黄疸など)不随意運動が主症状・原始反射が残存しやすい
失調型小脳協調運動障害・動揺性
混合型複合安静時は筋緊張低下、動作時に亢進する例など

不随意運動=大脳基底核=アテトーゼ型」が鉄則。視覚障害・歩行障害は両型に共通しうるのでアテトーゼ型に特徴的とはいえず、知的障害・てんかんはむしろ痙直型で多い。

アテトーゼ型のここが問われる

  • 頻度は痙直型より少ない
  • 障害の分布は下肢より上肢・頸部・顔面が重度(構音・嚥下障害を伴いやすい)。「上肢より下肢が重度」は逆で誤り。
  • 成人期の代表的二次障害=頸椎症性脊髄症(不随意運動による頸部への反復負荷)。

7-5 GMFCS — 粗大運動能力分類システム

脳性麻痺児の粗大運動をレベルⅠ〜Ⅴの5段階に分類する。数字が大きいほど重度。年齢帯ごとに基準が記述され、12〜18歳帯を加えた拡張改訂版がGMFCS-E&R。判定の決め手は「何で移動するか」と「座位の自立度」の2つ。

レベル移動(6〜12歳の像)階段・座位
制限なく歩行。走行・跳躍も可能(速度・バランスに制限)階段は手すりなしで昇降
装具・歩行補助具なしで歩行。長距離・不整地・狭所・人混みで制限や介助階段は手すりを使用。走行・跳躍は困難
手に持つ移動器具(杖・ロフストランド杖・歩行器)で歩行。長距離・屋外は車椅子を自走不整地・階段は介助か車椅子。座位は自立
自力歩行は実用的でない。移動は介助または電動車椅子(自立操作可)。歩行器歩行は介助下で短距離のみ座位保持に体幹支持が必要(通常の椅子では保持できない)
手動車椅子で移送される。自力移動が著しく制限頭部・体幹の抗重力保持が困難。寝返り・四つ這いも難しい

境界の見分け Ⅰ/Ⅱ=階段で手すりが要るか(走行・跳躍の可否)/Ⅱ/Ⅲ=手に持つ移動器具が要るか/Ⅲ/Ⅳ=座位が自立しているか・移動が車椅子主体か/Ⅳ/Ⅴ=電動車椅子を自立操作できるか

症例からレベルを決める練習

記述レベル
ロフストランド杖など手に持つ移動器具で歩行可能
歩行補助具なしで屋外歩行可能。階段昇降で手すりが必要
階段で手すりを要し、長距離歩行や狭所で介助が必要
床上座位は体幹が崩れて保持できず、立位・移乗は介助。屋内は歩行器で介助下に10m。屋外は手動車椅子で移送か電動車椅子を自立操作

組合せ問題の定番誤答。「Ⅰ―階段で手すり使用」は誤り→手すり使用はⅡ。「Ⅲ―不整地の歩行」は誤り→Ⅲは不整地・階段が制限され介助か車椅子。「Ⅳ―通常の椅子で座位保持」は誤り→Ⅳは座位に支持が要る。「Ⅴ―寝返り可能/四つ這い移動可能」は誤り→Ⅴは抗重力保持そのものが困難。正しい組合せはⅡ―装具なしで歩行

7-6 レベル別の運動指導と補装具

状態優先する介入不適切な介入とその理由
痙直型・レベルⅡ歩行補助具なしでの歩行練習(今ある能力を伸ばす)車椅子駆動練習・スタンディングボードはⅣ〜Ⅴ向けで過剰/割り座(W座り)は股関節内旋・内転を助長し痙直型では避ける/バニーホッピングは異常パターンを助長
痙直型両麻痺・レベルⅢで立位が体幹前傾+上肢もたれ体幹筋の同時収縮を促す(近位・体幹の安定が先、遠位の運動は後)上肢支持能力の強化は依存姿勢を固定化/介助量を減らすのは基盤不足で転倒・代償を助長/長下肢装具は過剰制動/選択的後根切断術は重度痙縮への最終手段
レベルⅢで車椅子駆動が自立駆動を妨げない設定。フットサポートはスイングアウト式で足元を開放し移乗を容易にするヘッドサポート・リクライニングは過剰サポート/背もたれを肩まで上げると上肢駆動を妨げる(低めが適切)/座面を高くすると足が床に届かず駆動・移乗が困難
2歳台・全身の筋緊張低下、両上肢支持で座位1分、移動はずり這い、ADL全介助座位保持装置(体幹を支えて座位を安定させ、上肢の使用とADLにつなぐ)歩行器・靴型装具は歩行獲得の見通しが立たない段階で早すぎる/電動車椅子・普通型車椅子は座位が不安定な段階では支持不足

小児の補装具選択は発達段階を最優先。座位・体幹の安定が確立してから移動手段を検討する順序。自立度が高いほど装備は減らし、重度になるほど座位保持装置・ヘッドサポート・ティルトを足していく。

7-7 GMFM — 粗大運動能力尺度

項目内容
対象主に脳性麻痺。二分脊椎のための尺度ではない。年齢で対象を限定せず運動機能レベルで評価する
構成5領域88項目=A臥位と寝返り/B座位/C四つ這いと膝立ち/D立位/E歩行・走行・ジャンプ
採点各項目0〜3の4段階(0:着手なし 1:開始 2:部分的達成 3:完全達成)
基準健常5歳児なら全項目を達成できるように構成
性格粗大運動「能力」の評価尺度。定型発達と照合する発達検査ではない。経時的変化への反応性が高い
評価しないものセルフケアは含まない(セルフケアはPEDI・WeeFIMが扱う)/認知機能も評価しない

GMFM-88とGMFM-66

GMFM-88GMFM-66
項目数88項目66項目
尺度水準順序尺度的(%で表す)Rasch分析で重みづけした間隔尺度
Item Map作成できる。項目を難易度順に配列し、次に獲得すべき能力を予測・検討できる

頻出の誤り。「各項目は0〜4の5段階」→ 正しくは0〜3の4段階「4領域88項目」→ 正しくは5領域88項目「健常3歳児で達成可能」→ 正しくは5歳児「標準化された発達評価である」→ 発達評価ではなく運動能力の評価「GMFM-88は間隔尺度」→ 間隔尺度はGMFM-66「Item Mapで認知機能を判定できる」→ 認知機能は判定できない

GMFMとGMFCSの区別が最頻出 GMFM=粗大運動能力を点数化する評価尺度GMFCS=重症度をレベルⅠ〜Ⅴに分類する分類システム。「重症度をⅠ〜Ⅴに分類する」という記述をGMFMの説明として出す引っかけが繰り返し出題される。

7-8 まぎらわしい評価尺度の区別

略称正式名・内容対象
GMFCS粗大運動能力分類システム(Ⅰ〜Ⅴ)脳性麻痺児
GMFM粗大運動能力尺度(88項目・点数化)脳性麻痺児
PEDI/WeeFIMセルフケア・ADLの評価小児全般
NIHSS急性期の神経学的欠損度(0〜42点)脳卒中
SIAS運動・感覚など身体機能の総合評価脳卒中(回復期以降)
UPDRS統一パーキンソン病評価尺度パーキンソン病
MMPIミネソタ多面人格目録(心理検査)人格・精神状態(身体機能ではない)

脳卒中の身体機能評価として選ぶのはNIHSSとSIAS。GMFCSは脳性麻痺児用、UPDRSはパーキンソン病用、MMPIは心理検査で身体機能評価ではない。発達検査はデンバーⅡ・遠城寺式・新版K式で、これらもGMFM/GMFCSとは別物。

7-9 特別支援学校の教育環境

  • 学級編成人数は最大10名以下。知的障害を対象とする学級は6名以下が基準。
  • 自立活動に関する教室を設置し、生活能力・社会適応能力を高める指導を行う。
  • 在籍するのは知的障害・身体障害だけでなく、発達障害(ASD・LD・ADHD)を有する児も含む。
  • 嚥下障害などに対応するため、通常食・刻み食・ミキサー食など複数の食形態で食事提供が可能。
  • 重度障害児に対応したベッドタイプのトイレを併設する学校もある。

「学級編成人数は10名以上である」は誤り。正しくは最大10名以下(知的障害対象は6名以下)。少人数編成できめ細かい指導を行うのが原則。