THA後の理学療法の核心は脱臼予防と早期離床の両立。脱臼肢位は進入法(アプローチ)で正反対になるので、症例文の進入法を最初に確認する。
| 進入法 | 切離する組織 | 脱臼肢位 | 避ける動作の例 |
|---|---|---|---|
| 後方・後外側(後側方)(出題の大半) | 後方関節包・外旋筋群 | 屈曲+内転+内旋 | 深いしゃがみ込み・深いお辞儀・脚を組む・横座り・低い椅子・和式トイレ・前かがみで床の物を拾う・前かがみで靴下を履く・前かがみで足の爪を切る |
| 前方・前外側(前側方) | 前方関節包 | 伸展+内転+外旋 | 立位で患側を外へひねる・腹臥位で脚を後ろへ反らす・後ろの物を取る |
後方進入では内旋方向の可動域練習・内旋位での立ち上がりは脱臼肢位へ誘導する行為で行わない。股関節屈曲は90°以内が目安。
| 内容 | 判断 |
|---|---|
| 術後翌日から等尺性筋力増強(大腿四頭筋セッティング・大殿筋・中殿筋) | 正しい。関節運動を伴わず脱臼リスクが低い |
| 中殿筋の筋力強化(術後数日) | 正しい。内転・内旋を伴わない範囲で |
| 早期離床・翌日から起立・歩行練習 | 正しい |
| 術後早期から部分荷重〜全荷重の歩行練習 | 正しい(セメント・セメントレスとも早期荷重が一般的) |
| 創治癒後の水中歩行 | 正しい。浮力で荷重を減らせる |
| 術後3日間のベッド上安静 | 誤り。深部静脈血栓症・廃用を招く |
| 術後3週間の免荷 | 誤り。過度で廃用を招く |
| 術後2週は45°以上屈曲しない | 誤り。制限が過度。注意するのは90°を超える過屈曲 |
「安静」「長期免荷」「極端な角度制限」は、慎重そうに見えて誤りになる型。THAは早期離床・早期筋力増強・早期荷重が基本で、術後早期の制限の中心は脱臼肢位。骨移植・骨切りの併用など術式によっては荷重や運動の制限が加わることがあり、創治癒前の水中歩行も行わない。長期的には走る・跳ぶなど衝撃の大きい運動は避ける。
| 場面 | 適切な方法 | 避ける方法 |
|---|---|---|
| 靴下の着脱 | ソックスエイドなどの自助具を使う/過屈曲・内転内旋をとらない肢位で行う(股関節を外転・外旋させて外側から履く) | 椅子上で深く前屈/患側の大腿を健側の脚の上に組む(屈曲+内転+内旋)/長座位で深く前屈して足を引き寄せる |
| 床の物を拾う | リーチャーを使い座ったまま拾う | 体幹を深く前屈して拾う |
| 座る | 座面の高い椅子・洋式トイレ・ベッド | 低い椅子・ソファ(膝が股関節より高くなり過屈曲)・和式の座位 |
| 床上の姿勢 | 腹臥位:股関節を伸展位に保ち、屈曲拘縮の予防になる | 横座り(お姉さん座り):屈曲+内転+内旋/膝を深く曲げて前屈する姿勢 |
| 就寝 | 外転枕 | — |
後方進入は「深く曲げない・内側に交差させない・内にひねらない」の3点で判断する。腹臥位は後方進入では安全な姿勢。前方進入では伸展が脱臼方向に含まれるので、腹臥位で脚を後ろへ反らす動作は避ける。
術後の症例では、教科書どおりの肢位がそのまま使えないことがある。健側の中殿筋を測ると術側が下になる(創部の圧迫・痛み)。下側の術側股関節を屈曲させて安定させる手技は、後方進入では屈曲+内転+内旋に近づく。症例文の術側・術後日数・進入法を必ず確かめる。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 当日〜翌日 | 足関節の自動底背屈運動(足関節ポンプ)=深部静脈血栓症の予防/大腿四頭筋セッティング |
| 1〜3日 | 膝関節可動域練習(CPM併用)・離床・車椅子移乗 |
| 3〜7日 | 荷重開始(セメント固定なら全荷重可)・平行棒内歩行 |
| 2週前後 | 歩行器・杖歩行・階段昇降・退院 |
| 退院後 | 屋外での杖の継続使用(転倒予防・人工関節への負荷軽減) |
足関節の自動運動は術直後から。「術後7日目から開始」は遅すぎて誤り。TKA後の主な合併症は深部静脈血栓症・感染・ゆるみ。
| 段階 | 対応 |
|---|---|
| 予防(発症前) | 足関節の自動底背屈(足関節ポンプ)・早期離床・弾性ストッキング・間欠的空気圧迫法 |
| 発症直後 | 患側の運動・マッサージは行わない(血栓が遊離して肺血栓塞栓症を起こす危険)。抗凝固療法が確立するまで、理学療法は健側下肢と上肢に限る |
足関節ポンプは予防には第一選択だが、発症後の患側には行わない。「両側」の文字に患側が含まれていないかを見る。
| 物理療法 | 体内金属がある部位 |
|---|---|
| 超短波・極超短波(マイクロ波)=ジアテルミー | 禁忌:高周波電磁波が金属に渦電流を生じ、局所が異常発熱して熱傷を起こす |
| ホットパック・パラフィン浴・赤外線・渦流浴 | 使える(伝導熱・輻射熱・温水) |
| 超音波 | 使える。体内金属は原則禁忌ではない(インプラント直上は避け、周囲の軟部組織に当てる)。深部の伸張性改善に有効 |
| 低周波電気刺激(TENS・NMES) | 使える(創部・電極直下の皮膚状態に注意) |
人工関節・骨接合材料が入った部位に超短波・極超短波は禁忌。心臓ペースメーカーがある場合は、これに加えて電気刺激療法も禁忌になる。
TKA後の屈曲拘縮と痛みには、表在温熱や超音波で温めてから伸ばす(温熱の直後に可動域練習・ストレッチ)。
杖・装具を使っても、介助・見守り・準備が要らず自分でできれば6点(修正自立)。補助具使用で「2点減」と数えない。