理学療法は評価に始まり評価に終わる。流れは情報収集→検査・測定→統合と解釈→問題点抽出→目標設定→治療プログラム立案→再評価。ICF(心身機能・身体構造/活動/参加)の枠組みで整理する。
| 記号 | 意味 | 書く内容 |
|---|---|---|
| S | Subjective(主観的情報) | 患者の訴え・自覚症状 |
| O | Objective(客観的情報) | 検査・測定値・観察所見 |
| A | Assessment(評価) | 結果の解釈・統合 |
| P | Plan(計画) | 治療プログラム・目標・方針 |
| 項目 | 痙縮(spasticity) | 固縮=強剛(rigidity) | 低緊張(弛緩) |
|---|---|---|---|
| 障害部位 | 上位運動ニューロン(錐体路) | 錐体外路(基底核) | 下位運動ニューロン・小脳・脊髄ショック期 |
| 速度依存性 | あり(速く動かすほど抵抗が強い) | なし(速度に関係なく一様) | — |
| 抵抗の性状 | 折りたたみナイフ現象(途中で急に抜ける) | 鉛管様・歯車様 | 抵抗が乏しい |
| 腱反射 | 亢進・病的反射陽性 | 正常〜軽度亢進 | 減弱〜消失 |
| 代表疾患 | 脳卒中・脊髄損傷・痙直型脳性麻痺 | Parkinson病 | 末梢神経障害・小脳障害 |
Westphal現象=他動的に関節を動かしたときに急に抵抗(筋の持続収縮)が生じる現象で、Parkinson病の固縮の評価に用いる。Parkinson病の重症度はHoehn&Yahr分類(Ⅰ〜Ⅴ)・UPDRS。
Parkinson病の評価にMASを当てるのは誤り → MASは痙縮の尺度で、固縮の評価には一般的でない。紛らわしい他の徴候・尺度:Beevor徴候=腹直筋の上下の筋力不均衡で臍が偏位(腹筋麻痺・T10レベルの脊髄損傷)/Finkelstein test=de Quervain病(狭窄性腱鞘炎)/SARA=小脳性運動失調の重症度。
生理的に筋緊張が下がるのがレム睡眠。急速眼球運動を伴い、抗重力筋の筋緊張は著しく低下(消失)、脳波は覚醒時に近い低振幅速波、夢を多くみる。ノンレム睡眠は高振幅徐波で脳が休む。周期は約90分で一晩に4〜5回、入眠直後は深いノンレムが多く、レムは睡眠後半(明け方)ほど長くなる。
| MASのグレード | 所見 |
|---|---|
| 0 | 筋緊張の増加なし |
| 1 | 可動域の最終域だけに引っかかり(catch)と消失、または最小の抵抗 |
| 1+ | catchの後、可動域の1/2以下の範囲で軽度の抵抗が続く |
| 2 | 可動域の大部分(ほぼ全範囲)で抵抗が増すが、患部は容易に動かせる |
| 3 | 抵抗が著明に増加し、他動運動が困難 |
| 4 | 患部が屈曲位または伸展位で固まり、動かない |
判定の鍵は「抵抗が出る範囲」×「動かしやすさ」の2軸。最終域のみ=1/全範囲+容易=2/全範囲+困難=3。範囲だけ、あるいは重さだけで決めると1段ずれる。
MTS〈Modified Tardieu Scale〉は、速度を変えて(ゆっくり/重力に任せる速さ/できるだけ速く)他動伸張し、catchが起こる角度と反応の質で評価する。速度依存性を角度として定量できる点がMASとの違い。MTSも痙縮の尺度であり疼痛尺度ではない。
| 尺度 | 何を測るか |
|---|---|
| mRS(modified Rankin Scale) | 脳卒中後の転帰・生活自立度。0=症状なし 〜 5=重度障害(寝たきり・全介助)、6=死亡。「症状なしから死亡まで分類できる尺度」=mRSで決め打ちしてよい |
| GCS | 意識レベル。開眼E4・言語V5・運動M6の合計、最良15・最低3 |
| SIAS | 脳卒中の機能障害を運動・感覚・体幹・視空間など多項目で総合評価 |
| FMA(Fugl-Meyer assessment) | 片麻痺の運動・感覚・関節可動域/疼痛・バランスを点数化した機能障害の評価 |
| Brunnstrom stage | 片麻痺の随意運動の回復段階(Ⅰ〜Ⅵ) |
| MAS/MTS | 痙縮(筋緊張) |
| SCP(Scale for Contraversive Pushing) | pusher現象を「自発姿勢の傾き・押す動作・修正への抵抗」の3項目で定量評価 |
| SARA | 小脳性運動失調の重症度 |
| AIS | 脊髄損傷の完全/不全(A〜E) |
pusher現象(プッシャー症候群)=右半球損傷による左片麻痺で多く、非麻痺側の上下肢で座面や床を押して麻痺側へ傾き、正中位への修正に抵抗する。座位・立位のいずれでも出る。この病態を疑ったら最優先の評価はSCP(次いでBLS)。半側空間無視を合併しやすいが両者は別の病態。失語・注意・知能の検査を先に当てるのは優先順位の誤り。
| 測るもの | 指標 |
|---|---|
| 機能状態 | Steinbrockerのclass分類(Ⅰ〜Ⅳ)。身の回りのこと・仕事・余暇の3要素の遂行能力で分類 |
| 病期(進行度) | Steinbrockerのstage分類(Ⅰ〜Ⅳ) |
| 疾患活動性(病勢) | DAS28(28関節の腫脹・圧痛数、血沈/CRP、患者全般評価) |
| 関節破壊(X線) | Larsen分類(Grade0〜5)、Sharp score(骨びらん・関節裂隙狭小化の点数化) |
| (無関係) | CMI=心身の自覚症状を問う健康調査票。RAの評価法ではない |
| 尺度 | 方法と適応 |
|---|---|
| VAS | 両端を「痛みなし」「最悪の痛み」とした10cmの直線上に患者が印をつけ、端からの距離で表す |
| NRS | 0(痛みなし)〜10(最悪の痛み)の数値を患者が選ぶ。0を含めて11段階 |
| face scale | 表情のイラストで選ばせる。数値概念が不要なので小児・高齢者に使いやすい |
| VRS | 「なし/軽度/中等度/高度」など言語表現で段階を選ばせる |
| McGill疼痛質問票 | 強度に加えて痛みの性質(うずく・刺すなど)まで評価できる |
NRSでよくある誤り。「10段階で評価する」→ 誤り、0〜10の11段階。「疼痛の性質を評価する」→ 誤り、測るのは強度のみ(性質はMcGill)。「患者間の比較に有効」→ 誤り、主観的で個人差が大きく同一患者の経時変化に用いる。「幼児の疼痛評価に使用される」→ 誤り、数値概念が必要なので幼児にはface scale。尺度水準は間隔の等しさが保証されない順序尺度。
疼痛は主観的指標なので本人申告型のスケールを使う。選択肢に紛れる略語の整理:GCS=意識/mRS=生活自立度/MAS・MTS=痙縮/SLTA=失語/WCST=遂行機能。いずれも疼痛評価ではない。
| 検査 | 評価対象 |
|---|---|
| TMT(Trail Making Test) | 注意・処理速度・遂行機能。数字を順に結ぶA、数字と仮名を交互に結ぶBがあり、A・Bの差が遂行機能を反映 |
| かなひろいテスト | 注意(選択的注意) |
| WCST | 前頭葉機能・遂行機能・概念形成 |
| BADS | 遂行機能(日常場面に近い課題) |
| Stroop test | 色名と文字の干渉を使う選択的注意・抑制(前頭葉) |
| Rey-Osterrieth複雑図形検査(ROCFT) | 複雑な幾何図形の模写と遅延再生で視空間構成能力・視覚性記憶 |
| Rey聴覚性言語学習検査(RAVLT) | 単語リストの記銘・再生による言語性記憶 |
| Bender gestalt test(BGT) | 複数の単純な幾何図形カードを模写させる視覚運動構成 |
| Raven色彩マトリックス検査 | 欠けたパターンを選択肢から補充する非言語性知能 |
| WAIS-Ⅳ | 成人知能 |
| MMSE・HDS-R | 認知症スクリーニング |
| SLTA | 標準失語症検査=失語症 |
MASを高次脳機能検査の選択肢として選ぶのは誤り → MASは運動系(痙縮)の尺度。図で示された刺激の見分けは、単一の複雑な幾何図形の模写=ROCFT/複数の単純図形カードの模写=BGTで切る。