第4章|ADL・QOLの評価

評価・検査 第4章

4-1 ADLとIADL — 概念・階層・境界

ADL(日常生活活動・基本的日常生活活動=BADL)は、食事・整容・更衣・入浴・排泄・移動/移乗など自分の身体に対して直接行う身辺動作。IADL(手段的日常生活活動)は、調理・買い物・掃除・洗濯・金銭(家計)管理・服薬管理・交通機関の利用・電話など、道具や社会資源を使って地域で暮らすための高次の活動。

ADLの性質(概念問題で問われる点)

  • 環境要因の影響を受ける。同じ身体機能でも住宅改修・福祉用具・介助体制が整えば自立度は上がる。
  • 階層は ADLが基礎、IADLが発展概念。逆(IADLが基礎)ではない。
  • ICFの「生活機能」=心身機能・身体構造/活動/参加のほうが包括的で、ADLはその中の「活動」に相当する下位概念。
  • ADLの概念は1940〜60年代に形成された。WHOが2000年代初頭に定義したものではない(ICFの採択が2001年なだけ)。
  • IADLの自立度は独居の可否・社会復帰の可否を判断する指標になる。

ADL/IADLの振り分け(出題される具体例)

ADL(BADL)IADL
顔を洗う・化粧・髭を剃る・髪を洗う(整容・清潔)食事の準備(調理)
靴下をはく・義足の装着(更衣)掃除・家屋維持
寝返り・起き上がり(起居)洗濯
階段昇降・歩行器を使用した歩行(移動)買い物
車椅子からベッドへの移乗(移乗)家計管理・金銭管理
入浴・シャワーを浴びる服薬管理
排泄・排泄コントロールバスなど交通機関の利用
食事(食べる動作そのもの)電話をかける
見分け方=「道具・お金・外出・家事」が絡めばIADL/「自分の身体に直接する動作」はADL。階段昇降・歩行器歩行・義足装着はIADLではない(移動・更衣というADL)。

4-2 IADLの評価尺度 — Lawton・老研式・基本チェックリスト

Lawton のIADLスケール(8項目)

電話/買い物/食事の準備/家事(家屋維持)/洗濯/移動(交通機関の利用)/服薬管理/金銭(家計)管理の8項目。

含まれないのは 意思疎通(コミュニケーション)・階段昇降・排泄コントロール。階段昇降と排泄コントロールは基本的ADL、意思疎通はそもそもIADLスケールの項目にない。

老研式活動能力指標(13項目・3領域)

領域質問項目
手段的ADL(5)バスや電車を使って1人で外出できますか/日用品の買物ができますか/自分で食事の用意ができますか/請求書の支払いができますか/預貯金の出し入れができますか
知的能動性(4)年金などの書類が書けますか/新聞を読んでいますか/本や雑誌を読んでいますか/健康についての記事や番組に関心がありますか
社会的役割(4)友達の家を訪ねることがありますか/家族や友達の相談にのることがありますか/病人を見舞うことがありますか/若い人に自分から話しかけることがありますか
「年金などの書類が書けますか」は書類作成=知的能動性に分類される。手段的ADLではない。「読む・関心をもつ」系はすべて知的能動性、「相談・訪問・見舞い」系は社会的役割。

介護予防事業の基本チェックリスト(25項目)

領域=手段的ADLを含む生活機能・運動器・栄養・口腔・閉じこもり・認知機能・うつ。運動器の5項目は次のとおり。

  • 階段を手すりや壁をつたわらずに昇っていますか
  • 椅子に座った状態から何もつかまらずに立ち上がっていますか
  • 15分くらい続けて歩いていますか
  • この1年間に転んだことがありますか
  • 転倒に対する不安は大きいですか
「何もつかまらずに床から立ち上がっていますか」は基本チェックリストに存在しない → 正しくは「椅子から立ち上がる」。床か椅子かを入れ替えるひっかけが出る。

4-3 Barthel Index — 10項目と配点

項目満点段階
移乗(車椅子↔ベッド)1515自立/10最小介助・監視/5座位保持可だが多大介助/0不能
移動(歩行)1515自立45m以上/10介助で45m以上/5歩行不能だが車椅子で45m以上駆動/0不能
食事1010自立(自助具可)/5部分介助(食物を切ってもらう等)/0全介助
トイレ動作1010自立/5部分介助/0全介助
更衣(着替え)1010自立/5部分介助/0全介助
階段昇降1010自立/5介助・監視/0不能
排便コントロール1010失禁なし/5時々失敗/0全介助・失禁
排尿コントロール1010失禁なし/5時々失敗/0全介助・失禁
整容55自立/0要介助の2段階のみ
入浴55自立/0要介助の2段階のみ
10項目・満点100点。15点満点は移乗と移動の2つだけ/自立5点の2項目は整容と入浴だけ(覚え方=洗面とお風呂は5点)。残り6項目は自立10点。自立の得点は項目により5・10・15であって「7点」ではない。

採点の約束ごと

  • 歩行は平地歩行が対象。坂道歩行は含まない。
  • トイレ動作にはトイレの出入り・衣服の着脱・後始末を含む。
  • 移乗には車椅子をベッドに近づける等の車椅子操作を含む。
  • 食事は自助具(先割れスプーン等)を使っても自立していれば満点10点。補助具なしで評価するのではない。
  • BIは基本的ADLの10項目のみ。「食事の支度」などIADL項目は含まない。
  • 100点でも保証されるのは基本的ADLの自立だけで、IADL・社会生活に支障がないことは意味しない。

4-4 Barthel Index — 症例採点の実際

計算問題は10項目を縦に書き出し、下の判定ルールを機械的に当てるとミスが減る。

記述点
自助具・先割れスプーンを使って自分で食べる食事10
食物を細かく刻んでもらえば食べられる(=切る介助が要る)食事5
移乗に見守り・監視が必要移乗10(15ではない)
移乗は自力でできる移乗15
歩けないが車椅子を自力で45m以上駆動できる移動5
介助されて45m未満しか歩けず、車椅子駆動距離の記載もない移動0
排便・排尿が時々失禁各5
洗体やシャワーに介助が要る入浴0(5か0の2択)
下衣の上げ下げに介助が要る更衣5・トイレ動作5
階段昇降が部分介助階段5
「10点と評価される項目はどれか」型では、見守りレベルの移乗=10点が答えになりやすい。同じ症例で入浴0・トイレ動作5・移動5(車椅子)・食事5(刻み食)と、他項目が10点にならないことを併せて確認する。
歩行器を使って45m以上歩けるケースは、自立15点とみるか歩行補助具ゆえ介助相当10点とみるかで解釈が割れ、国試で90点と95点の複数正答が認められた例がある。「歩行器=必ず15点」と断定しない。

4-5 FIM — 18項目の構成

区分項目
セルフケア(6)食事/整容/清拭(入浴)/更衣・上半身/更衣・下半身/トイレ動作
排泄管理(2)排尿管理/排便管理
移乗(3)ベッド・椅子・車椅子/トイレ/浴槽・シャワー
移動(2)歩行・車椅子/階段
認知(5)理解/表出/社会的交流/問題解決/記憶
  • 運動13項目+認知5項目=18項目。運動13×7=91点、認知5×7=35点、合計126点満点。
  • 全項目が全介助でも1点は付くので最低点は18点。0点にはならない。
  • 更衣は上半身と下半身を分けて2項目として評価する。
  • FIMは「している(実際に行っている)ADL」を評価する。「できるADL」ではない。
見当識はFIMの認知項目に含まれない → 認知5項目は理解・表出・社会的交流・問題解決・記憶。認知項目の完全自立は5×7=35点で、42点ではない。

FIMのトイレ動作の中身

評価するのは①下衣の上げ下げ ②排泄後の清拭 ③生理用具の使用の3要素のみ。

「トイレに近づく」は移動項目、「便器に移乗する」は移乗(トイレ)項目で別に採点する。「トイレのドアを閉める」はFIMの評価要素に入っていない。

4-6 FIM — 7段階の判定と得点計算

点レベル内容
7完全自立補助具なし・時間内・安全に遂行
6修正自立補助具/装具使用・時間がかかる・安全性への配慮が必要
5監視・準備見守り・指示・準備のみ(手は出さない)
4最小介助患者が75%以上を行う
3中等度介助患者が50%以上75%未満
2最大介助患者が25%以上50%未満
1全介助患者が25%未満
5点以上=介助者不要/4点以下=介助者必要が境界線。杖・装具を使って自立=6点(修正自立)、見守りが必要=5点。この2つが最頻出のひっかけ。
「補装具・杖を使用して自立していれば完全自立」は誤り → 修正自立6点。「時間をかけても1人でできれば完全自立」も誤り → 時間延長は6点。「見守りが必要なら4点」も誤り → 5点。

得点計算

減点は満点7点との差で数える。補助具使用の修正自立は1項目あたり1点減。

  • 例:歩行・車椅子と階段の2項目がT字杖使用で自立、他16項目は補助具なし自立 → 126−(1点×2項目)=124点。
  • 2点減×2項目と数えて122点としない。7→6は1点減。

Barthel IndexとFIMの対比

Barthel IndexFIM
項目数10(運動のみ)18(運動13+認知5)
満点/最低点100/0126/18
段階0・5・10・151〜7の7段階
認知項目なしあり
更衣1項目上下2項目
介助量の細かさ粗い(自立か介助か)細かい(%で刻む)

4-7 小児のADL評価 — WeeFIM と PEDI

WeeFIMPEDI
正式名小児版FIM小児の能力低下評価法
対象年齢生後6か月〜(発達に遅れがあれば18歳まで)生後6か月〜7歳6か月
領域FIMと同じ18項目セルフケア/移動/社会的機能の3領域
評価の側面介助量(7段階)機能的スキル/介護者による援助/調整・改造(補装具)の3側面
項目数・所要時間18項目・簡便197項目・WeeFIMより多く時間がかかる
機能的スキルの採点—できる1/できない0の2件法(0〜3の4段階ではない)
  • PEDIは脳性麻痺・二分脊椎など発達障害児に広く用いる。対象外ではない。
  • PEDIは補装具・環境調整の使用(改造)まで評価できるのが特徴。
  • PEDIに社会的機能は含まれる(3領域の1つ)。
PEDI・WeeFIMとも出生直後からは使えない → 開始はいずれも生後6か月から。

4-8 QOL・主観的幸福感の評価

SF-36

  • 健康関連QOL(HRQOL)を測る包括的(疾患非特異的)尺度。36項目・8つの下位尺度(身体機能/日常役割機能・身体/体の痛み/全体的健康感/活力/社会生活機能/日常役割機能・精神/心の健康)。
  • 本人が回答する主観的(自己記入式)指標。客観的指標ではない。
  • 疾患を問わず使え、健常高齢者も対象になる。統合失調症・腰痛など疾患横断的に使用可。
  • 治療・介入効果のアウトカム指標として国際的に用いられる。
  • 効用値は算出しない。効用値を出すのはEQ-5D・HUIなど選好度ベースの尺度。
  • 下位尺度は4つでも5つでもなく8つ。IADLの指標でもない。
  • 測っているのは健康状態・機能制限・心身の状態であって、生活への満足感そのものではない。

「全般的に主観的満足感を評価する」は誤り → SF-36が評価するのは健康関連QOL(身体機能・役割機能・痛み・活力・心の健康など8領域)。主観的満足感(モラール・幸福感)を測るのはPGCモラールスケールなど別系統の尺度。「自己記入式だから主観的」であることと「満足感を測る」ことは別物で、この2つを重ねて読ませるのが定番のひっかけ。

目的別に尺度を切り分ける

尺度測るもの
SF-36・EQ-5D・WHOQOL包括的な健康関連QOL
PGCモラールスケール改訂版高齢者の主観的幸福感(モラール)
老研式活動能力指標IADL・高次生活機能(幸福感ではない)
Katz IndexADL6項目(入浴・更衣・トイレ動作など)の自立度
Barthel Index・FIMADLの自立度・介助量
FACTがん患者のQOL
CFS〈cancer fatigue scale〉がん関連疲労
PPI〈palliative prognostic index〉緩和ケアでの予後予測
TNM分類がんの病期(活動能力ではない)
RDQ腰痛による生活の支障度(疾患特異的)
SFS〈Social Functioning Scale〉社会機能・生活技能
BPRS精神症状の重症度
NEO-PI-Rパーソナリティ(ビッグファイブ)
ESCROW Profile社会的不利(環境・家族支援など5項目)

4-9 ADL以外の評価尺度との識別

尺度測るもの・数値
BBS(FBS)バランス(平衡機能)。14項目56点満点。体格ではない
MMSE・HDS-R認知機能。30点満点。平衡機能ではない
NRS疼痛。0〜10の数値で回答
VAS疼痛。10cmの直線上に印をつける。認知機能ではない
NIHSS脳卒中の急性期重症度。意識・注視・視野・麻痺・失調・感覚に加え言語(失語)・構音・消去/無視=高次脳機能を含む。関節可動域は含まない
SIAS脳卒中の包括的機能評価。運動・感覚・筋緊張・ROMに加え体幹機能(腹筋力・垂直性)・視空間認知を含む
FMA(Fugl-Meyer Assessment)運動機能・バランス・感覚・ROM/疼痛。歩行速度もADLも含まない
mRS生活自立度・障害度を0〜6で表す。バランス機能の項目はない
JSS脳卒中の神経学的重症度。ADLは含まない
MAS(Modified Ashworth Scale)筋緊張(痙縮)
Motricity Index上下肢の筋力(運動麻痺)
KPSがん患者の全身状態(PS)を0〜100%。周術期の活動能力評価にも使う
ECOG-PSがん患者のPSを0〜4の5段階で評価
MRC sum score左右の6筋群(肩外転・肘屈曲・手関節背屈・股屈曲・膝伸展・足背屈)=12筋群をMMT0〜5で採点し0〜60点。48点未満でICU-AW
TMT注意機能・遂行機能(QOL尺度ではない)
高次脳機能の項目を含むADL・脳卒中尺度=NIHSS(失語・消去/無視)とFIMの認知5項目。Barthel Index・FMA・MAS・Motricity Indexには高次脳機能の項目がない。
入院関連能力低下〈HAD〉はADL低下の概念なのでBarthel IndexやFIMで評価し、MRC sum scoreでは測らない。

UPDRS(パーキンソン病)の4部構成

Part内容例
I精神・行動・気分(非運動症状)意欲低下・幻覚
II日常生活動作の経験(患者の自己報告)嚥下・寝返り・転倒・歩行中のすくみ
III運動能力検査(検者が診察して観察)固縮・安静時振戦・無動・姿勢反射障害
IV運動合併症ジスキネジア・wearing off
Part IIとPart IIIの切り分けが問われる。患者が生活の困りごととして申告するもの(嚥下・寝返り・転倒・すくみ)はPart II、検者が他動的に動かして取る所見(固縮)はPart III。