呼吸理学療法の目標は「深くゆっくり」。1回換気量を増やして呼吸数を減らし、呼吸補助筋の過活動を抑えて呼吸仕事量を減らす。「呼吸数の増加」「呼吸補助筋の活用」は目的と逆。「吸気の緩徐化」も目的として誤り(閉塞性でゆっくり長くするのは呼気。口すぼめ呼吸で呼気を延長する)。ゆっくり深く吸うこと自体を否定しているのではない(→下のインセンティブスパイロメトリ)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | COPDなど閉塞性換気障害 |
| 機序 | 呼気時に口をすぼめて気道内圧を高く保つ(PEEP様効果)→ 末梢気道の虚脱(早期閉塞)を防ぐ → 呼出が改善 |
| 延長するのは | 呼気(吸気:呼気=1:2〜1:4。吸気は鼻から1〜2秒、呼気は4〜6秒が目安) |
| 効果 | エアトラッピング・動的過膨張の軽減=機能的残気量の減少、呼吸数の減少と1回換気量の増加、呼吸困難・呼吸仕事量の軽減 |
| やり方 | 頬は膨らませず、軽く口をすぼめてゆっくり吐く |
ひっかけは全部「向きが逆」。吸気を延長・呼吸数を増やす・機能的残気量(全肺気量)を増やす・呼吸仕事量を増やす・呼気時の気道内圧を下げるは、いずれも誤り。
肺胞換気量=(1回換気量-死腔量)×呼吸数。死腔量は約150 mLでほぼ一定。
| パターン(分時換気量6,000 mL/分で固定) | 1回換気量×呼吸数 | 肺胞換気量 |
|---|---|---|
| 浅く速い | 300 mL×20回 | (300−150)×20=3,000 mL/分 |
| 標準 | 500 mL×12回 | (500−150)×12=4,200 mL/分 |
| 深くゆっくり | 1,000 mL×6回 | (1,000−150)×6=5,100 mL/分 |
分時換気量を変えずに肺胞換気量を増やす方法=1回換気量を増やす・口すぼめ呼吸・横隔膜呼吸(いずれも深くゆっくりになる)。呼吸数を増やすと肺胞換気量は減る。呼気流速は計算式に入らない。
| 目的 | 手技 |
|---|---|
| 排痰(気道クリアランス) | 体位排痰法(体位ドレナージ)、スクイージング、ハッフィング(声門を開いたまま「ハッ、ハッ」と強制呼出し、分泌物を中枢へ移動させる。胸郭の伸張が目的ではない)、咳嗽介助 |
| 換気の改善 | 口すぼめ呼吸、横隔膜呼吸 |
| 肺容量の増大(無気肺の予防・改善) | インセンティブスパイロメトリ(視覚フィードバックでゆっくり深い吸気を長く持続させる)、深呼吸練習 |
| 胸郭の柔軟性 | 徒手的な胸郭可動域運動、ストレッチ、呼吸介助 |
大原則:痰のある区域を上にし、その区域の気管支が下(中枢側)を向く体位をとる。側臥位(またはそれを前後に傾けた体位)を使う区域(S2・S4/S5・S9など)では、右肺の病変なら左側臥位、左肺の病変なら右側臥位(左右が逆になる)。S1・S3・S6・S8・S10は下の表のとおり座位・背臥位・腹臥位を使う。
| 区域 | 体位 |
|---|---|
| 肺尖区(S1) | 座位(やや後傾〜前傾) |
| 後上葉区(S2・左はS1+2) | 患側を上にした側臥位から45°前方へ傾ける(例:左S1+2なら45°前方へ傾けた右側臥位) |
| 前上葉区(S3) | 背臥位 |
| 中葉・舌区(S4・S5) | 患側を上にした側臥位から45°後方へ傾ける |
| 上-下葉区(S6) | 腹臥位(腹部に枕・水平位) |
| 前肺底区(S8) | 背臥位・頭低位(骨盤を高く) |
| 外側肺底区(S9) | 患側を上にした側臥位・頭低位 |
| 後肺底区(S10) | 腹臥位・頭低位(骨盤の下に枕) |
覚え方:腹臥位=背側の区域(S6・S10)、背臥位=前側の区域(S3・S8)、真横の側臥位=外側の区域(S9)、座位=上葉の頂上(S1)。肺底区(S8〜S10)は頭低位を加える。側臥位から前へ傾ければ上側肺の後方、後ろへ傾ければ前方の区域。
肺区域の図は、まず背面図か前面図か、次に左右のラベルを確認する。背面図には下葉(S6・S9・S10)と上葉後方が大きく描かれる。図の左側が患者の左とは限らない。胸部エックス線で右下肺野の病変に対し側臥位の中から選ぶなら、患側(右)を上にする=左側臥位。ただし下葉でも背側のS6・S10は腹臥位、前方のS8は背臥位なので、区域まで分かるときは表で決める。
頭低位は頭蓋内圧亢進、食後、循環動態が不安定な場合には避ける。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 吸引圧 | 成人は20 kPa(150 mmHg)以下 |
| 1回の吸引時間 | 10〜15秒以内(挿入から抜去まで) |
| カテーテルの太さ | 外径は気管チューブ内径の1/2以下 |
| 挿入の深さ | 気管分岐部に当てない(分岐部の手前まで) |
| 挿入時 | 陰圧をかけずに挿入し、陰圧は引き抜くときにかける |
| 操作 | 無菌操作・滅菌カテーテル。気道内で上下前後に動かす(ピストン運動)のは粘膜を傷つけるので行わない |
| モニタ | SpO2は90%以上を保つ。吸引前後に酸素化。SpO2の著明な低下・不整脈・急な血圧変動・出血で中止 |
| 吸引の合併症(代表例) | 合併症ではないもの(ひっかけ) |
|---|---|
| 低酸素血症、不整脈・徐脈(迷走神経反射)、肺胞虚脱(無気肺)、気管支攣縮、気道粘膜の損傷・出血、感染 | 肺うっ血(左心不全などによる肺循環のうっ滞で、吸引で直接は生じない) |
吸引の適応は、水泡音(coarse crackles)など気道分泌物の貯留を示す所見・SpO2低下・換気量低下など。捻髪音(fine crackles)は痰の指標ではないので吸引の根拠にならない。咳を誘発しながら吸引するのも誤り。分泌物は先に体位排痰・スクイージング・加湿で中枢へ移動させておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| しくみ | マスクで気道に陽圧を送り、胸郭と肺を膨らませて換気を補助する → 胸郭の可動性が制限されていると効果が低下する(胸郭可動性の維持がPTの役割) |
| 主な適応 | COPDの増悪(Ⅱ型呼吸不全)、心原性肺水腫、神経筋疾患の慢性換気不全、睡眠時無呼吸など |
| 適さない例 | 重度の咽喉頭機能障害(気道確保できない・誤嚥)、自力で痰を出せない(咳嗽力がない)、意識障害で協力が得られない、顔面外傷など |
| 長所 | 気道にチューブを入れず声門をふさがないので会話・経口摂取ができる(会話できなくなるのは気管挿管・気管切開)、着脱が容易。気管挿管・気管切開を回避する目的で用いる(気管切開が禁忌だから代わりに行うものではない) |
NPPVの適応の骨格は「意識がある・自分で痰を出せる・マスクを着けられる」。
息切れを強める動作=①上肢挙上 ②前屈(腹部の圧迫) ③息こらえ(努責) ④反復動作。上肢を挙上すると肩甲帯を固定して働く呼吸補助筋が使えず、胸郭の動きも妨げられる。
ADLの中で最も息切れが出やすいのは、両上肢を頭上に挙げて保持する洗髪(洗濯物干し・高い所の物取り・かぶりシャツの着脱も同じ仲間)。食事・排尿・歯磨きは比較的軽い。
| 場面 | 正しい指導(代表例) | 誤り |
|---|---|---|
| 呼吸との同調 | 力を入れる動作・階段の昇段は呼気に合わせる。口すぼめ呼吸・腹式呼吸で、ゆっくり分割し休みながら | 吸気に合わせて動く、吸気に時間をかける |
| 上肢の作業 | 洗濯物は肩より低い位置に干す、両上肢挙上位を避ける、肘や腕を支える | 上肢挙上の反復 |
| 更衣 | 前開きのシャツ。前屈を減らすためリーチャー・ソックスエイド | かぶりシャツ |
| 作業姿勢 | 座位で行う(立位より酸素消費が少ない) | 前かがみで荷物を持ち上げる |
| 寝具・トイレ・椅子 | ベッド、洋式トイレ、高めのシャワーチェア、手すりの設置 | 布団、和式(しゃがみ込み)、低い椅子 |
| 入浴 | 半身浴(みぞおち以下)・ぬるめ・短時間 | 全身浴(静水圧で胸郭を圧迫) |
Ⅱ型呼吸不全では酸素の過剰投与でCO2ナルコーシスを起こしうる。息切れが強いときに自己判断で酸素流量を増やす指導は誤り(処方された流量を守る)。
| 機器 | 分類・特徴 |
|---|---|
| 鼻カニュラ・簡易酸素マスク | 低流量系。吸入酸素濃度は呼吸パターンで変動 |
| ベンチュリマスク・ネブライザー付き酸素吸入器 | 高流量系。設定した一定濃度を供給(吸入酸素濃度が呼吸パターンで変わりにくい)。ネブライザー付き酸素吸入器はネブライザーで加湿しながら供給する |
| 在宅酸素療法(HOT) | 据置型の酸素濃縮器が中心。外出時は携帯用ボンベ・液体酸素を併用 |
医療ガスボンベの色:酸素=黒、二酸化炭素(炭酸ガス)=緑。
ただし安静時から頻呼吸で、頸部の呼吸補助筋が過活動(吸気時に胸骨上切痕・鎖骨上窩が陥凹)している状態では、吸気筋はすでに疲労傾向。ここで負荷をかけた吸気筋トレーニングや上肢の筋力増強を行うと呼吸筋疲労・低酸素を招く。この段階で選ぶのは徒手的な胸郭可動域の拡大運動。
| 感染経路 | 代表的な病原体 | 対策 |
|---|---|---|
| 接触感染 | MRSA、ノロウイルス、腸管出血性大腸菌 | 手袋・ガウン(マスクはサージカルマスク) |
| 飛沫感染 | インフルエンザ、風疹、流行性耳下腺炎 | サージカルマスク |
| 空気感染 | 結核、麻疹、水痘 | N95マスク・陰圧個室・ドア閉鎖 |