部位を問わず、選択肢は次の3つの軸で切れる。
| 軸 | 原則 | ひっかけの例 |
|---|---|---|
| 固定部位か固定外か | 固定部位は安静を保ち、固定外の関節は術後早期(翌日)から動かす(拘縮・浮腫・DVT・廃用の予防) | 固定外の関節(足趾MP・手指・肩など)の運動を「外固定が外れたら」「術後2週から」と遅らせる記述は誤り |
| 荷重骨・関節面か | 踵骨・脛骨高原などは荷重を遅らせる。股関節骨折の内固定・人工骨頭や膝蓋骨の引き寄せ締結法は早期荷重が可能 | 「術直後から荷重」「術後2週から全荷重」 |
| 筋力増強の順序 | 等尺性(セッティング)→ 等張性 → 等速性。関節を動かす抵抗運動は固定性が得られてから | 「術後翌日から等張性の筋力増強」「等張性から開始」 |
「固定外の関節は早く、固定部位は遅く、筋力は等尺性から」。迷ったら固定外の関節の自動運動(膝・足関節・手指など)が正解の定番。
過度な安静も誤り。「全身の安静のためベッド上で行う」「骨癒合が得られるまで歩行しない」は廃用を招く。固定が得られていれば(必要なら装具下で)離床・歩行は早期から行う。
後方アプローチ(後方進入)の脱臼肢位=屈曲+内転+内旋。前方アプローチは伸展+外旋が危険肢位。
| 運動・動作(全荷重可能な時期) | 可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 背臥位・膝伸展位での股関節外転運動 | 適切 | 脱臼方向(内転)と逆。中殿筋の強化 |
| 腹臥位での股関節伸展運動(他動を含む) | 適切 | 伸展は後方脱臼を誘発しにくく、屈曲拘縮の予防にもなる |
| 座位で重錘を用いた大腿四頭筋の筋力増強 | 適切 | 膝の運動で脱臼肢位をとらない |
| 歩行器を用いた屋外歩行練習 | 適切 | 全荷重可能な時期の歩行練習 |
| 低い椅子から股関節内旋位での立ち上がり | 不適切 | 深い屈曲+内旋で後方脱臼の危険 |
後方アプローチ後の禁忌動作の代表例:低い椅子・しゃがみ込み・横座り・脚を組む・内股(内旋位)。「曲げて内に入れる動き」が危険と覚える。
| 勧める | 避ける |
|---|---|
| 玄関(上がり框)など段差の大きい所に手すり | 敷居の段差を残す(高さをそろえるだけでは不十分。解消・フラット化・スロープ化する) |
| 段差の解消、滑り止め、適切な照明 | じゅうたん・マットの端(めくれ・引っかかり) |
| かかとのある滑りにくい履物 | スリッパ(脱げやすく踏ん張りがきかない) |
| ベッドの継続 | 床に布団(深くしゃがむ立ち座りが必要) |
大腿骨近位部骨折は再骨折のリスクが高く、退院時は受傷の原因(敷居でのつまずきなど)を取り除く環境調整が二次予防の要になる。
| 骨折・術式 | 早期から行うこと | 避けること・遅らせること |
|---|---|---|
| 膝蓋骨骨折(引き寄せ締結法=tension band wiring:鋼線2本+締結ワイヤー) | 膝伸展位での早期荷重(骨癒合を待たない)。大腿四頭筋は等尺性(セッティング)から | 術直後から無条件に膝屈曲可動域練習を行うこと(屈曲角度は固定性に応じて医師の指示で段階的に広げる)。等張性の膝伸展運動から始めない |
| 脛骨高原骨折(プラトー骨折、人工骨+プレート) | 術後翌日から足関節の自動運動(循環促進・DVT予防・廃用予防)。CPMは早期から導入 | 極超短波(金属発熱)。膝伸展の等張性抵抗運動(関節面に剪断力)。早期の全荷重(関節面の陥没・転位。全荷重はおおむね8〜12週以降が目安) |
| 足関節周囲の骨折(内固定+外固定) | 固定外の膝関節の可動域練習を積極的に。足趾の運動は外固定中から | 術直後からの荷重(非荷重から段階的に)。金属がある部位への電磁波療法 |
| 踵骨骨折(鋼線固定) | 術後翌日から膝関節の可動域練習。足趾MP関節など固定外の関節も早期から | 早期の距腿関節(足関節)の可動域練習、早期の距踵関節の運動(等尺性でも早い)。早期の部分荷重(踵骨は荷重を直接受ける骨) |
「膝の手術なら術直後から無条件にROM」は成り立たない。膝蓋骨骨折では膝屈曲の角度を医師の指示で段階的に広げる。一方、脛骨高原骨折の内固定はCPMを早期から使う。CPMを「術後2週から」と遅らせる記述は誤り。
引き寄せ締結法(膝蓋骨骨折・肘頭骨折の代表的な固定法)は、伸展機構にかかる張力を骨折面の圧迫力に変える固定法。膝蓋骨骨折では膝伸展位での早期荷重・大腿四頭筋の等尺性収縮が可能。膝屈曲の可動域は固定性に応じて医師の指示で段階的に進める。
| 骨折 | 早期から行うこと | 避けること |
|---|---|---|
| 鎖骨骨幹部骨折(プレート・スクリューで観血的整復固定術) | 術後翌日から手指(・手関節)の自動運動で浮腫・拘縮予防。離床も早期から | 肩挙上の等張性・抵抗運動、他動での肩の可動域練習(術後早期は固定部に負担)、患部への物理療法、過度なベッド上安静 |
| 小児の上腕骨顆上骨折(経皮的鋼線固定=ピンニング、または徒手整復+外固定) | 肩・手指など固定外の関節は早期から動かす(肩の可動域運動・振子運動、手指の自動運動)。握力の強化は仮骨形成後に。肘は仮骨形成・骨癒合を確認してから自動運動で。温熱療法を自動運動の前処置に | 肘の他動的な屈曲伸展・強制的な伸張(骨化性筋炎・再転位)。固定期間中(術後早期)の筋力増強運動。急激な痛みを無視した運動(Volkmann拘縮) |
| 小児の橈骨遠位端骨折(若木骨折を含む)固定除去後 | 表在温熱(渦流浴・ホットパック・パラフィン浴・赤外線)+自動運動で可動域を戻す | 骨端線への超音波・極超短波 |
| 環椎骨折(Jefferson骨折) | 受傷直後から頸椎装具で確実に固定。体幹・四肢の廃用予防運動、装具下の離床・歩行は骨癒合前でも可 | 頸椎ROMを他動から開始(自動運動から慎重に)。装具なしの立位。頸椎周囲筋の等張性筋力増強は可動性が得られてから |
小児の肘関節外傷後は他動運動を行わない。理由は①骨化性筋炎のリスク ②小児は自動運動だけで可動域が回復しやすい ③痛みによる防御性収縮で無理な伸張は逆効果。成人の肘の外傷後も強制的な他動伸張は避ける。
小児顆上骨折で最も警戒する合併症はVolkmann拘縮(前腕コンパートメント症候群)。術後の急激な痛み・蒼白・脈拍消失・知覚異常・麻痺は緊急サインで、「痛みがあっても手指運動を続ける」は誤り。