リハは「動かす」前に動かしてよいかを判定することまでが業務。実施前・実施中・実施後の3時点でバイタルサインを確認する。
試験の解き方=選択肢の数値を1つずつカットオフと照合し、逸脱している1つを選ぶ。正常範囲の値を並べて惑わせる出題が定型。
「リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン2006」による、開始前にすでに不適とする閾値。運動中の中止基準(7-3)とは別物なので混同しない。
| 項目 | 実施しない基準 | 許容される例 |
|---|---|---|
| 安静時脈拍 | 40/分以下または120/分以上 | 100/分・105/分は可 |
| 安静時収縮期血圧 | 70mmHg以下または200mmHg以上 | 140・160mmHgは可 |
| 安静時拡張期血圧 | 120mmHg以上 | 100mmHgは可 |
| 体温 | 38℃以上 | 37.0・37.5℃は可 |
| SpO₂ | 90%以下 | 92%・94%・96%は可 |
| 心電図・症状 | 心室頻拍などの著しい不整脈、安静時胸痛、労作性狭心症、循環動態が不安定な心筋梗塞直後、座位でのめまい・冷汗・嘔気、開始前からの動悸・息切れ | — |
境界値の暗記が勝負。脈拍130/分・体温38.6℃・収縮期60mmHg・心室頻拍は開始不可。一方で体温37.5℃・SpO₂ 92%・収縮期160mmHg・拡張期100mmHgは単独では実施しない理由にならない。
| 区分 | 基準 |
|---|---|
| 中止する | 脈拍が140/分を超える/運動中の血圧低下/頻呼吸(30回/分以上)/1分間に10個以上の期外収縮・頻脈性不整脈(心房細動、上室性・心室性頻拍)・徐脈の出現/中等度以上の呼吸困難・めまい・嘔気・狭心痛・強い疲労感/意識状態の悪化 |
| 中止だが優先度は最も低い (条件つき) | 収縮期血圧が40mmHg以上上昇または拡張期が20mmHg以上上昇 ―― 基準表には中止として載るが、症状を伴う候補(血圧低下+めまい、心拍の著明増加+動悸など)と競合する設問ではそちらが優先。ほかがすべて正常範囲で、この血圧上昇だけが唯一の逸脱なら中止の根拠になる |
| いったん休み回復を待って再開 | 脈拍が運動時の30%以上増加/脈拍が120/分を超える/1分間に10個以下の期外収縮/軽い動悸・息切れ |
| その他注意 | 血尿・喀痰増加・体重増加・倦怠感・空腹時・下肢浮腫の増加 |
血圧は安静時からの変化量と到達した絶対値の両方を見る。収縮期+40mmHg以上(拡張期+20mmHg以上)の上昇は、上の表のとおりアンダーソン・土肥の基準では中止に挙がっている。ただし中止の根拠としての優先度は最も低く、この1行だけを暗記して選ぶと外す。次の使い分けまでセットで覚える。
血圧を根拠に「中止」を選ぶ強い決め手は3つ=①収縮期180mmHg以上に達した/②運動中の血圧低下/③自覚症状を伴う(胸痛・めまい・強い息切れ・チアノーゼ・意識障害、動悸+頻脈)。
だから症状を伴わず収縮期180mmHg未満にとどまる血圧上昇(例:120→168mmHg、+48)は、+40mmHgを超えていても中止に選ばない。「中止すべきものを2つ選べ」のように症状つきの候補と競合する設問では、症状つきが優先する(血圧低下+めまい、心拍数の著明増加+動悸などが正答側)。
一方、ほかの選択肢がすべて正常範囲で、血圧の急上昇だけが唯一の逸脱である設問では、+40mmHg以上が中止の根拠になる。例=脳梗塞急性期のベッドアップで収縮期120→170mmHg(+50)。脈拍100/分・呼吸数18回/分は正常範囲で中止理由にならないので消去法でも血圧上昇が残るうえ、急性期の脳血管障害では血圧の急上昇そのものが再発・出血のリスクになる。
数値の壁:脈拍は開始前120/運動中140、収縮期は開始前200/運動中は+40(条件つき中止)と180(中止)の二段、期外収縮は1分間10個(10個以上=中止/10個以下=いったん休んで再開)、SpO₂は90%、体温38℃、呼吸数30回/分。呼吸数18・22・23回/分は正常〜許容で中止理由にならない。
数値が基準に届かなくても、循環不全・虚血・低血糖を示す自覚症状を伴えば中止する。逆に筋疲労のみは中止理由にならない。
| 症状 | 意味 | 対応 |
|---|---|---|
| めまい・ふらつき+血圧低下 | 循環不全 | 中止 |
| 動悸+頻脈 | 過負荷・不整脈 | 中止 |
| 胸痛・胸部不快感 | 心筋虚血 | 中止 |
| チアノーゼ・喘鳴を伴う呼吸困難 | 低酸素 | 中止 |
| 冷汗・手指振戦・空腹感 | 低血糖(糖尿病で最重要) | 中止し糖分補給 |
| 運動に伴う発汗・筋疲労 | 生理的反応 | 継続可 |
修正Borg 5〜6は単独では中止基準にならない。Borg高値だけで中止を選ばず、症状の合併とセットで判断する。
| 所見 | 危険度 | 対応 |
|---|---|---|
| 単発性(散発性)心室期外収縮 | 健常者にもみられる良性所見 | 中止不要 |
| 1分間に10個以下の期外収縮 | 散発〜少数 | いったん休み、回復を待って再開 |
| 1分間に10個以上の期外収縮 | 頻発(Lown分類2) | 中止 |
| 多形性・連発・R on T | 致死的不整脈へ移行しうる | 中止 |
| 心室頻拍 | 致死的 | 即時中止・運動禁忌 |
期外収縮は向きを逆に覚えない。土肥・アンダーソンの基準では1分間に10個以上=中止/10個以下=いったん休み、回復を待って再開。「多いほうが休憩」ではない。
ただし単発性(散発性)の心室期外収縮そのものは健常者にもみられる良性所見で、「運動療法を中止する状態はどれか(中止しないものはどれか)」を問う設問では中止側に選ばない。危険度が跳ね上がるのは頻発・多形性・連発・R on T・心室頻拍。
Lown分類は心室期外収縮の重症度分類(0=なし、1=散発、2=頻発、3=多形性、4=連発、5=R on T)。整った洞調律にはそもそも適用しない。
全身状態が安定していれば早期離床が原則。廃用症候群・誤嚥・深部静脈血栓症を予防する。
| 指標 | 離床してよい | 中止・延期 |
|---|---|---|
| 意識 | JCS 1桁、GCSが安定 | GCSの明らかな低下、JCS 3桁 |
| 鎮静(RASS) | −2〜+1(−1=呼びかけで10秒以上開眼) | −3以下の深い鎮静、+2以上の興奮 |
| 心拍数 | 50〜100/分が目安(80/分は良好)。105/分程度の軽度頻脈は他が安定していれば可 | 120/分以上 |
| 血圧 | 平均動脈圧65〜110mmHg(65以上が脳灌流の下限) | 収縮期200mmHg以上・220mmHg、著明な低血圧 |
| 呼吸 | SpO₂ 90%以上、FiO₂ 0.6未満 | SaO₂ 85%、呼吸数38〜40回/分、FiO₂ 0.7 |
| 体温 | 38℃未満 | 38.8℃ |
| 疼痛 | NRS 低値 | NRS 8(まず鎮痛) |
| 臓器障害 | SOFA scoreが安定 | SOFAが前日より大幅上昇 |
| 神経症候 | 増悪なし | 神経症状の増悪 |
離床可否を決めないもの=運動麻痺の重症度。重度片麻痺そのものは離床の中止理由にならない。筋緊張の出現やBrunnstrom法ステージⅡ→Ⅲの変化は回復過程の所見で、むしろ良好なサイン。
高用量の昇圧剤で血圧をやっと保っている、開胸・開腹術の直後で人工呼吸管理中——こういう時期は離床も能動的な全身運動も止める。それでも廃用は進むので、酸素需要を上げずに筋へ刺激を入れる手段を選ぶ。
| 介入 | 循環不安定期 | 理由 |
|---|---|---|
| 下肢筋への神経筋電気刺激(NMES) | 適 | 臥床のまま局所の筋収縮を起こせる。全身の酸素消費・心負荷をほとんど上げないのでICU-AW(ICU獲得性筋力低下)の予防に使える |
| 他動的関節可動域運動 | 適(愛護的に) | 拘縮予防。ただし股関節伸展など体幹・大関節を大きく動かす操作は、鼠径部からの昇圧剤ルートを屈曲・牽引する危険があり優先されない |
| 能動的座位練習 | 不適 | 起立性の血圧低下を招く。昇圧剤高用量は離床の中止基準そのもの |
| 呼吸筋トレーニング | 不適 | 人工呼吸管理中に負荷をかける段階ではない |
| 非上肢支持の持久性運動 | 不適 | 全身の酸素需要を上げる。循環不安定期には最も遠い選択肢 |
ICUの「最も適切な理学療法」は全身負荷の小さい順に選ぶ。NMES < 他動運動 < 座位 < 持久性運動。循環が不安定なら一番下=NMESを採る。
「収縮期140mmHgを超えたら実施しない」は誤り → 140mmHgは軽度高値にすぎず中止基準ではない。急性期の血圧は160mmHg程度なら許容される。
| 疾患 | 処方の要点 | 最優先のリスク |
|---|---|---|
| 心筋梗塞後・慢性心不全 | 強度=Borg 11〜13(最高酸素摂取量の40〜60%、AT相当)/頻度=週3〜5回/時間=1回20〜60分 | 拡張期120mmHgは運動不可。疲労が残るときは休む |
| 2型糖尿病 | 有酸素運動は週合計150分以上・1回20〜60分・週3〜5回(間隔を2日以上空けない)/レジスタンス運動は週2〜3回/実施は食後1〜2時間 | 低血糖(冷汗) |
| COPD・慢性呼吸不全 | 修正Borgと歩行距離で管理 | SpO₂が最優先指標。90%未満で中止(82%は高度低酸素) |
| 慢性腎不全・透析 | 血液透析日・透析中にも運動療法を行う。ステージ5(末期腎不全)は低〜中強度 | 過負荷。5〜6METsは不適 |
慢性心不全の在宅自己管理:短期間(数日で2〜3kg)の体重増加は体液貯留=うっ血の増悪サインで、栄養改善の指標ではない。下腿浮腫・呼吸困難の増悪とあわせて受診の目安。過度の安静は廃用を招くので不可。症状が安定していても服薬の自己中止は禁忌。NYHA分類Ⅰ〜Ⅳは身体活動による症状の程度で重症度を示す。
糖尿病で「有酸素運動は1回10分・週合計40分程度」は誤り → 正しくは週合計150分以上。運動量不足の数値に注意。
腎臓リハの原則:運動時は血流が活動筋へ再分配されるため腎血流はむしろ減少する。運動で糸球体濾過量は改善しない(目的は進行抑制と体力維持)。腎性浮腫は体液貯留が原因なので起立台での起立練習では改善しない。
| 項目 | 正しい実施法 |
|---|---|
| 評価指標 | 6分間の総歩行距離(m) |
| コース | 30m程度の直線を往復 |
| 検者の位置 | 後方から付き添う。横や斜め前方に並んで歩かない |
| 声かけ | 標準化された定型句で励まし、残り時間を伝える |
| 途中で立ち止まった | 休憩してよい。回復すれば再開させる(即中止にしない) |
| 回数 | 学習効果があるため2回行い良い方を採用 |
| 記録 | 自覚症状の変化(Borgによる呼吸困難・下肢疲労)、SpO₂、心拍数 |
| 中止基準 | 胸痛、耐えられない呼吸困難、著明なSpO₂低下、ふらつき、顔面蒼白 |
「被検者の横(斜め前方)に並んで歩く」は誤り → 検者がペースメーカーとなり距離が過大評価される。並走しない。
「残りの時間を伝えることはできない」も誤り → 伝えるのが標準手順。
目標心拍数=安静時心拍数+k×(最大心拍数−安静時心拍数)、最大心拍数=220−年齢。
例)70歳・安静時70/分・k=0.5 → 最大=220−70=150、予備心拍数=150−70=80、目標=70+0.5×80=110/分。
| 項目 | 基準 | 頻出の誤り |
|---|---|---|
| 吸引圧 | 20kPa(150mmHg)を超えない。成人100〜150mmHg、小児50〜100mmHg | 「20kPa以上に設定」「80mmHg程度」 |
| 1回の吸引時間 | 10〜15秒以内 | 「20秒以上」「30秒程度」 |
| 挿入の深さ | 先端が気管分岐部(カリナ)に当たらない手前 | 「分岐部の先まで挿入」 |
| 挿入時の操作 | 挿入時は吸引圧をかけない。引き抜きながら吸引する | 「圧をかけながら素早く挿入」 |
| カテーテル操作 | 静かに引き抜く | 「上下前後に動かす」「ピストン運動させる」 |
| 清潔 | 無菌的操作(下気道への直接アクセスのため) | — |
| モニタ | 実施中はSpO₂を確認し90%以上を維持、実施後は聴診で除去効果と換気を評価 | 「SpO₂ 80〜90%を維持」 |
| 実施者 | 一定の研修を受けた理学療法士も実施できる | 「理学療法士は行わない」 |
吸引の適応となる所見=粗い断続性副雑音(コースクラックル)・いびき様音、咳嗽、SpO₂低下、換気量低下。
ファインクラックル(捻髪音)は肺胞レベルの音で、気道内分泌物の指標ではない=吸引の根拠にならない。
主な合併症=低酸素・粘膜損傷・出血・迷走神経反射・感染。「時間は短く・圧は強すぎず・深すぎず」が原則。
| 順 | 行動 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 周囲・患者の安全確保 | 転倒時はまず二次損傷の防止。むやみに動かさない |
| 2 | 反応(意識)確認→バイタルサインの確認 | 意識・呼吸・循環を評価し重症度を判断 |
| 3 | 応援要請(119番通報とAED手配を同時に依頼) | — |
| 4 | 心肺蘇生・AED | 心停止を確認してから |
| 5 | 主治医への報告 → 診療録への記載 | 報告・記録は事後 |
選択肢に「患者の安全確保」があればそれが第1。無ければ「バイタルサインの確認」が第1になる。報告・記録・移動・心臓マッサージ・AED準備はいずれも評価の後。
| 論点 | 正しい対応 |
|---|---|
| 説明の仕方 | 患者が理解できる平易な言葉で、医療者側から能動的に説明する(要求を待たない) |
| 同意の記録 | 同意内容は文書で保存する |
| 撤回 | いつでも自由に撤回でき、正当な理由は不要。撤回による不利益もない |
| 判断能力 | 不十分な場合は代理判断など別の配慮が必要(無条件に本人決定が優先されるわけではない) |
| 研究の同意 | 実施前に取得するデータの内容とリスクを説明して同意を得る |
| 研究データの管理 | 匿名化しアクセス制限のある方法で保管(共用パソコンは不可)。倫理審査委員会の承認が前提 |
「〜のみ」「最優先」「〜しなければならない(他職種限定)」といった限定・断定の選択肢は誤りになりやすい。