安静・不活動が続くことで二次的に生じる心身機能低下の総称。原因が「使わないこと」にあるため、年齢や疾患を問わず起こる。
フレイルと廃用症候群は同義ではない。フレイル=加齢に伴う予備能低下(虚弱)という状態像、廃用=不活動を原因とする二次的障害。原因の有無で切り分ける。
| 系 | 低下・減少するもの | 増加・亢進するもの |
|---|---|---|
| 筋・骨 | 筋力・筋持久性・骨密度(廃用性骨萎縮) | 関節周囲の結合組織(増生・短縮=拘縮)・骨吸収 |
| 循環 | 循環血液量(血漿量)・心拍出量・静脈還流量・最大酸素摂取量 | 安静時心拍数・起立性低血圧・深部静脈血栓 |
| 呼吸 | 肺活量・1回換気量・予備呼気量・機能的残気量 | 沈下性肺炎・無気肺のリスク |
| 代謝・腎 | 耐糖能(インスリン抵抗性は上昇)・免疫能・クレアチニンクリアランス | 尿中カルシウム排泄・尿路結石 |
| 消化 | 胃腸管(腸管蠕動)運動 | 便秘 |
| 精神神経 | 記銘力・見当識・意欲 | 抑うつ・せん妄 |
| 皮膚 | — | 褥瘡 |
廃用はほぼすべてが低下する。増えるのは安静時心拍数・関節結合組織(拘縮)・尿中カルシウム・血栓リスクだけ、と覚えると「低下しないのはどれか」「増加するのはどれか」型を一撃で切れる。
不動では骨吸収が進むため高カルシウム血症側に傾き、尿中カルシウムも増える。低カルシウム血症は誤り。また自律神経過反射は脊髄損傷に特有、間質性肺疾患も廃用の病態ではない(廃用で起こるのは無気肺・沈下性肺炎)。
| 症状 | 正しい予防・対応 | 取り違えやすい手段(本来の目的) |
|---|---|---|
| 筋萎縮・筋力低下 | 等尺性運動・早期離床・レジスタンス運動・神経筋電気刺激〈NMES〉 | ベッド上ポジショニング(=拘縮・褥瘡予防) |
| 骨萎縮 | 荷重・立位・運動負荷 | 機能的電気刺激〈FES〉/弾性ストッキング(=DVT予防) |
| 関節拘縮 | 関節可動域運動・良肢位保持 | 下肢外転枕(=人工股関節置換術後の脱臼予防) |
| 起立性低血圧 | 段階的なヘッドアップ〈ギャッチアップ〉座位・斜面台〈ティルトテーブル〉立位・離床 | — |
| 深部静脈血栓 | 弾性ストッキング・足関節の自動運動・早期離床 | 斜面台立位(=起立性低血圧への馴化) |
| 褥瘡 | 定期的な体位変換による除圧・栄養改善 | — |
組合せ問題の決め手は器具の本来目的。骨は荷重刺激でしか維持できないので骨萎縮の予防に電気刺激は不適(=この組合せが誤り。正しくは荷重・運動)。
加齢に伴い心身の予備能が低下し、ストレスへの脆弱性が高まった状態。健常と要介護の中間で可逆的=運動・栄養・社会参加で改善しうる。
3項目以上でフレイル、1〜2項目でプレフレイル。
判定要件に含まれないもの=骨密度減少(=骨粗鬆症の指標)・柔軟性低下・肺活量低下、そして「歩行距離」の減少。基準は歩行速度であって距離ではない。
加齢に伴う骨格筋量の減少を中核とする病態。筋量低下が必須で、これに筋力低下または身体機能低下が加わって診断する(AWGS 2019)。
| 3本柱 | 指標と基準値 | 測定法 |
|---|---|---|
| 筋量低下(必須) | 四肢骨格筋指数(四肢筋量÷身長²)の低下 | DXA・BIA |
| 筋力低下 | 握力 男性28kg未満・女性18kg未満 | 握力計 |
| 身体機能低下 | 歩行速度 1.0m/秒未満、5回椅子立ち上がり12秒以上 | 歩行路・椅子 |
介護予防事業の図問題は「何を測っているか」で決まる。握力・下腿周囲径・BIA/DXAなど筋量を直接反映する測定=サルコペニア。大股2歩の歩幅を測る=ロコモ。
| 評価項目 | フレイル | サルコペニア |
|---|---|---|
| 握力低下 | ○ | ○(共通) |
| 歩行速度低下 | ○ | ○(共通) |
| 筋量低下 | × | ○(必須) |
| 体重減少・疲労感・身体活動量低下 | ○ | × |
共通するのは握力と歩行速度の2つ。体重減少・疲労感・活動量低下はフレイル固有。
運動器の障害により移動機能が低下した状態。運動器に限定した概念で、社会的脆弱性は含まない(含むのはフレイル)。
| 概念 | 焦点 | 必須の中核指標 | 代表的評価 |
|---|---|---|---|
| フレイル | 心身の虚弱(身体・精神・社会) | なし(5項目中3つ以上) | Fried基準・基本チェックリスト |
| サルコペニア | 骨格筋 | 筋量低下 | 握力・歩行速度・DXA/BIA |
| ロコモ | 運動器・移動機能 | なし | 立ち上がり・2ステップ・ロコモ25 |
紛れ込む別概念:ポストポリオ症候群=ポリオ罹患の数十年後に生じる筋力低下・疲労/メタボリックシンドローム=腹囲+血圧・血糖・脂質で診断(筋量は無関係)/コンパートメント症候群=急性の筋区画内圧上昇で、介護予防のスクリーニング対象ではない。
| 加齢で減るもの | 加齢で増えるもの |
|---|---|
| 速筋(TypeⅡ)線維・筋量・骨密度 | 炎症性サイトカイン(IL-6・TNF-α)=慢性の軽度炎症 |
| 成長ホルモン・性ホルモン | 体脂肪率 |
| 活性型ビタミンD(皮膚産生・腎活性化の低下) | 収縮期血圧 |
| α運動神経細胞(脊髄前角)・最大酸素摂取量・予備能 | 残気量・反応時間 |
加齢では速筋線維が選択的に萎縮し、α運動ニューロンの脱落と再支配が進む。ビタミンD・成長ホルモンはいずれも低下。「加齢で増える」のは炎症性サイトカインという方向を覚える。
| 種類 | 指標 |
|---|---|
| 身体計測 | 体重・体重減少率(6か月で5%以上/1か月で3%以上の減少は要注意)・BMI(高齢者は18.5未満で低栄養)・下腿周囲径(男31cm・女30cm未満で筋量低下)・上腕周囲長・上腕三頭筋皮下脂肪厚 |
| 血液生化学 | 血清アルブミン(3.5 g/dL以下で低栄養。半減期約20日で長期の指標)・トランスサイレチン(プレアルブミン)=短期の指標・総リンパ球数・総コレステロール・ヘモグロビン |
| 質問紙 | MNA-SF(簡易栄養状態評価表)・SGA(主観的包括的評価)・基本チェックリストの栄養項目 |
| 食事 | 食事摂取量・喫食率・エネルギー/蛋白摂取量 |
血小板数は栄養状態の指標ではない(止血・造血の指標)。栄養評価で使う血液項目はアルブミン・トランスサイレチン・総リンパ球数・総コレステロール。「栄養状態の評価指標でないものはどれか」型では血小板数・白血球数・血糖値あたりが答えになる。
褥瘡(皮膚の脆弱化と治癒遅延)・貧血(蛋白・鉄・ビタミンB12・葉酸不足)・サルコペニア/フレイル・大腿骨頸部骨折(骨脆弱化+転倒リスク増)・易感染・創傷治癒遅延。
低栄養との関連が少ないのは、むしろ過栄養・力学的負荷が主因の病態。変形性膝関節症(加齢・肥満・力学的負荷)と虚血性心疾患(冠動脈硬化)が例外として狙われる。
| 内的因子 | 外的因子 |
|---|---|
| 複数回の転倒既往(最も強い予測因子)・下肢筋力低下・バランス障害・視力障害・認知機能低下・多剤併用・起立性低血圧 | 段差・滑りやすい床・照明不足・不適切な履物・コード類 |
性別では女性のほうが転倒・骨折のリスクが高い。「男性」は転倒リスクとの関連が低い。
65歳以上の有病率は約15%(13〜18%程度)。認知症も約15%で合わせて約3割。MCIは認知症の前段階だが一部は正常に戻る可逆性があり、年間数%が認知症へ移行する。
| 疾患 | 決め手となる所見 |
|---|---|
| ナルコレプシー | 笑い・驚きなど情動を契機とする脱力発作(カタプレキシー)。+日中の過度の眠気・入眠時幻覚・睡眠麻痺。オレキシン神経の障害 |
| 睡眠時驚愕症 | 深睡眠期に叫び声をあげて覚醒。小児に多い |
| むずむず脚症候群 | 安静時の下肢の不快感と動かしたい衝動 |
| レム睡眠行動障害 | レム睡眠中に夢に伴う異常行動 |
| 睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中の無呼吸と日中の眠気。脱力発作は伴わない |