| 症状 | 内容 | 理学療法での見え方 |
|---|---|---|
| 安静時振戦 | 静止しているときに出るふるえ。一側の手・足から始まり、のちに両側へ広がる | 初発症状として多い。運動療法で抑える対象ではなく、治療は薬物が中心 |
| 筋強剛(固縮・強剛) | 他動運動に対する抵抗。鉛管様・歯車様 | 屈筋優位で前傾前屈姿勢が進む。体幹の伸展・回旋の可動性が落ちる |
| 無動・寡動 | 動作の開始困難・緩慢・振幅の縮小 | 動作が小さく遅い。寝返り・起き上がり・腕振りが小さくなる |
| 姿勢反射障害 | 外乱に対する立ち直り・踏み直りが出にくい | 突進現象・方向転換時の転倒。出現するとHoehn & YahrステージⅢ |
Parkinson病の動作障害の本質は筋力低下ではなく、動作の小ささ(無動・寡動)と遅さ、筋強剛、姿勢反射障害である。だから運動療法の柱は高負荷の筋力増強ではなく「大きく・リズムをつけて・外的手がかりを使って」になる。
| 検査・徴候・尺度 | 何を見るか | 主な対象 |
|---|---|---|
| Hoehn & Yahr重症度分類 | 病期(Ⅰ〜Ⅴ) | Parkinson病(→1-2) |
| UPDRS | 精神・ADL・運動・治療合併症の総合評価 | Parkinson病(→1-3) |
| Westphal現象 | 筋強剛(固縮)に関連して他動運動時にみられる所見 | Parkinson病 |
| Schwab & England の尺度 | ADL自立度(0〜100%) | Parkinson病 |
| MAS(Modified Ashworth Scale) | 痙縮の程度 | 脳卒中・脊髄損傷など |
| SARA | 運動失調の重症度 | 脊髄小脳変性症など小脳性失調 |
| Beevor徴候 | 腹筋の上下不均衡による臍の偏位 | 脊髄損傷など |
| Finkelstein test | 母指を握って尺屈させたときの痛み | de Quervain病(狭窄性腱鞘炎) |
Parkinson病の筋緊張異常は固縮であって痙縮ではない。MASは痙縮の尺度なので「Parkinson病の評価」としては選ばない。SARAは失調、Beevorは腹筋麻痺、Finkelsteinは手関節の腱鞘炎、と対応疾患をセットで覚える。
| 立ち上がりで見える特徴 | 考える原因 |
|---|---|
| 両上肢で大腿を押す・体幹を過度に前傾して殿部離床・体幹前傾のまま早く膝を伸ばす・動揺なし | 両下肢(伸展)筋力低下の代償 |
| 動き出せない・全体に緩慢 | 無動 |
| 顕著な姿勢の動揺 | 運動失調 |
| 左右非対称・一側へ偏る | 片麻痺 |
| 最後に体幹を起こしきれない | 股関節伸展可動域制限 |
動作分析は「何で代償しているか」から原因を逆算する。「動揺なし」「左右差なし」「最後は体幹を伸展できた」などの否定情報を消去法に使う。
| Hoehn & Yahr | 状態 | 生活機能障害度 | 理学療法の主眼(目安) |
|---|---|---|---|
| ステージⅠ | 一側性。機能障害は軽微 | 1度 | 運動習慣の確立・柔軟性の維持 |
| ステージⅡ | 両側性。姿勢反射障害なし。日常生活・職業にやや不便 | 1度 | 前傾姿勢の予防・体幹ストレッチ・大きな動作の練習(→2-3) |
| ステージⅢ | 姿勢反射障害が出現。活動制限はあるが日常生活は介助なしで自立 | 2度 | バランス練習・外的手がかりによるすくみ足対策・転倒予防・環境整備(→2-1〜2-5) |
| ステージⅣ | 重篤な機能障害。起立・歩行はかろうじて可能だが日常生活に介助が必要 | 2度 | 移乗・ADL練習、介助方法の指導、環境整備 |
| ステージⅤ | 介助なしではベッドまたは車椅子の生活 | 3度 | 呼吸・嚥下・拘縮予防(→2-6) |
境目の判定軸は2本。Ⅱ→Ⅲ=姿勢反射障害の有無(突進・方向転換での転倒、後方への引き込みに踏み直れない)。Ⅲ→Ⅳ=日常生活に介助が要るか。ADL自立・家事や仕事を続けられていて、転倒・突進が出てきた症例はステージⅢ。
「転倒が出てきた」「下り坂で止まれない」をステージⅣと読む誤りが多い。Ⅳは日常生活に介助が必要な段階であり、自立している限りⅢ。逆に「片側のふるえのみ」はⅠ、「両側にふるえ・前かがみが出てきたが、転倒・突進など姿勢反射障害の記載が無い」はⅡ。Ⅲと判定するには姿勢反射障害の所見が要る。問題文にまだ何が起きていないかを読む。
難病医療費助成の対象:Hoehn & YahrステージⅢ以上かつ生活機能障害度2度以上。
UPDRS(Unified Parkinson's Disease Rating Scale、Version 3.0)は、Parkinson病を4つのパートで総合評価する尺度。抗Parkinson病薬や脳深部刺激療法の効果判定に標準的に用いられる。
| パート | 内容 | 評価の仕方 | 代表的な項目 |
|---|---|---|---|
| PartⅠ | 精神機能・行動・気分 | 問診 | 知的機能・抑うつなど |
| PartⅡ | 日常生活動作(ADL) | 問診(生活上の困りごと)。on時とoff時を分けて評価 | 着衣・食事・書字・嚥下・寝返り・転倒・歩行中のすくみ |
| PartⅢ | 運動能力検査 | 検者が実際に診察・観察する | 安静時振戦・固縮・指タップ・椅子からの立ち上がり・歩行・姿勢安定性など |
| PartⅣ | 治療の合併症 | 問診 | ジスキネジア・症状の日内変動など |
よくある誤り:①「3段階で評価」→5段階。②「点が高いほど活動性が高い」→高いほど重症。③「薬の効果判定に使いにくい」→効果判定の標準。④「ICFの構成要素に準じている」→準拠していない。⑤「疲労の項目がある」→従来版(Version 3.0)には無い(改訂版のMDS-UPDRSで追加)。⑥「安静時振戦をoff時に評価」→検者が診察する安静時振戦はPartⅢの項目で、PartⅢはon/offに分けない。on/offに分けて評価するのはPartⅡ(ADL)の問診項目。なおPartⅡにも本人が申告する「振戦」の項目があるので、「振戦はPartⅢだけ」とは覚えない。⑦「すくみはon時のみ」→すくみはPartⅡなのでon・off両方で、むしろoff時に強く出る。
仕分けの軸:検者が手で動かして・目で見て採点するもの=PartⅢ(固縮・安静時振戦・指タップ・立ち上がり)、本人に生活のようすを聞くもの=PartⅡ(嚥下・寝返り・転倒・すくみ・着衣、本人が申告する振戦)。
| 治療 | 位置づけ |
|---|---|
| L-dopa・ドパミン作動薬 | 治療の中心。振戦・固縮・無動を改善する |
| 脳深部刺激療法(DBS) | 進行期で薬の効果が不安定になった例。運動症状の改善と薬剤量の削減 |
| 経頭蓋磁気刺激法(TMS) | 補助的な治療として用いられる |
| リズム刺激(聴覚・視覚の外的手がかり) | すくみ足・小刻み歩行に有効な非薬物療法(→2-1) |
| ボツリヌス毒素療法 | 痙縮・局所ジストニア・眼瞼痙攣向け。Parkinson病の主症状の治療としては用いない |
立位で支持基底面を狭める課題・不安定な支持面の課題は、姿勢反射障害(ステージⅢ以上)のある患者では監視下で行う。自宅で1人で行わせない(→2-4)。