第7章|物理療法・義肢装具

理学療法学(評価・治療) 第7章

7-1 熱の伝わり方と深達度

温熱療法はまず「どうやって熱が伝わるか」で分類される。ここが単独で出題される。

伝達様式しくみ代表
伝導熱高温の物体が皮膚に直接触れて熱が移るホットパック・パラフィン浴・湯たんぽ
対流熱温められた流体が流動して体表に触れる気泡浴・渦流浴・サウナ
輻射(放射)熱電磁波が体表で吸収され熱になる赤外線
変換熱エネルギーが組織内で熱に変換される超音波・極超短波(マイクロ波)・短波

深達度は 超音波・極超短波(深部・数cm)> ホットパック・赤外線・パラフィン(表在)。「極超短波はホットパックより深達度が浅い」は

照射系の2法則(赤外線・紫外線・極超短波)

  • 逆二乗の法則=強度は距離の2乗に反比例。距離2倍で強度は1/4。
  • 余弦の法則=強度は入射角の余弦に比例。垂直入射が最大。
  • 両方を掛ける。距離2L・入射角30°なら (1/2)2×cos30°=0.25×0.866=0.2165=21.7%。距離を2乗し忘れると43.3%、余弦だけだと86.6%になる。

7-2 温熱療法 — 生理作用と各論

項目加温するとどうなるか
血流/血液の粘性血流は増加、血液粘性は低下(「粘性が増加」は誤り)
代謝率組織温1℃上昇で約13%(約1.13倍)増加。2〜3倍ではない
神経伝導速度組織温1℃上昇で約2 m/sec 増加。0.2 m/secは桁違い
結合組織伸張性が増す(拘縮へのストレッチ前に有効)
反射性血管拡張ある部位を加温すると離れた非加温部位の血管が拡張する現象。加温部位そのものの循環増加を指す語ではない
神経線維有髄のAδ線維のほうが無髄のC線維より温度変化の影響を受けやすい

温熱の各論 — 部位の形で選ぶ

手技選ばれる場面
パラフィン浴手指・足趾など複雑な凹凸。溶けた蝋が密着して均一に加温し保湿もできる。関節リウマチの手指変形での第一選択
ホットパック広く平らな部位。変形した手指の細部には密着しない
赤外線・遠赤外線平面的な照射。凹凸のある手指全体の均一加温には不向き
渦流浴・気泡浴温熱+水中での自動運動・浮力を同時に使える。骨端線への影響がなく小児のギプス除去後の拘縮・筋力低下に安全
極超短波深部加温。金属・水分・汗に熱が集中しやすい
交代浴亜急性期以降の循環改善。急性期に使うと出血・腫脹が悪化

温熱療法の禁忌=急性炎症・出血傾向・悪性腫瘍・感覚(知覚)障害部位・循環障害肢(閉塞性動脈硬化症など熱放散が悪く熱傷しやすい)・体内金属やペースメーカー(極超短波)・小児の骨端線(深部温熱)・多発性硬化症(Uhthoff現象)。

極超短波で「悪性新生物に治療効果がある」「金属プレート挿入部へ照射可能」「閉塞性動脈硬化症の患肢に効果的」はいずれも誤り=すべて禁忌側。正しいのは「汗・水分・金属への蓄熱で熱傷を起こしうる」。

水治療法 — 水位と浮力による免荷

水中では浮力が働くため下肢にかかる荷重が減る。水位が高い(深く浸かる)ほど免荷は大きく、免荷率はおおむね水に浸かった体積の割合に一致する。荷重制限のある術後早期や疼痛の強い例の歩行練習に使う。

水位一般的な免荷の目安
頸部(第7頸椎)約80〜90%免荷(荷重は体重の1〜2割)
剣状突起・胸部中央約60〜70%免荷
臍・上前腸骨棘約40〜50%免荷
大腿中部約30〜40%免荷
約10〜20%免荷

基準は割れていない。上の表がそのまま使える体重の約50%が免荷される水位=臍・上前腸骨棘(腰部)レベルと覚える。腋窩・胸部まで浸かれば60%以上、大腿・膝までなら40%以下で、どちらも50%にはならない。

図で水位を選ぶ問題の解き方

国試では立位の人体図が5枚並び「体重の約◯%が免荷されるのはどれか」と問われる。図の番号は深さ順に並んでいないので、次の手順で解く。

  • ① 5枚を頸部 → 胸部(乳頭・剣状突起)→ 臍・腰部 → 大腿 → 膝深さ順に並べ替える。水面が体のどの高さを横切っているかだけを見る。
  • ② 上の表を当てる。約50%なら臍・腰部レベルの図水面が臍(へそ)を横切り、下着の上端のすぐ上に来ている図を採る。
  • ③ 残りを消す。水面が首・胸にある図は60〜90%で深すぎ下着より下(大腿・膝)にある図は10〜40%で浅すぎる

迷ったときの目印は臍(へそ)1点でよい。水面が臍を横切る図=約50%免荷。加えて「水位が高いほど免荷が大きい/浅いほど荷重が増える」という関係は常に成り立つので、%の絶対値があいまいでも並べ替えだけで残りの肢は消せる。

7-3 超音波療法

パラメータ正しい設定と理由
周波数1MHz=深部(3〜5cm)/3MHz=浅部(1〜2cm)。周波数が高いほど浅い。腰部の筋・筋膜なら1MHz。10MHzは治療用に使わない
強度0.5〜2.5 W/cm2(温熱目的は1.0〜2.0程度)。3.0や10 W/cm2は過大で熱傷・組織損傷
照射時間率100%(連続)=温熱効果時間率を下げたパルス(20〜50%)=非温熱効果。急性〜亜急性には間欠照射。軟部組織の伸張性増大は温熱目的なので連続(100%)に近い高い照射率を使う=「10〜20%」では温熱がほとんど得られず不適
BNR(ビーム不均等率)低いほど均一で安全。高いとホットスポットができるので導子を速めに動かす。固定法で高BNR導子を使うのは危険
導子の大きさ有効照射面積(ERA)が小さい導子ほどビームは拡散する
治療面積1回に当てる範囲は有効照射面積(ERA)の2〜3倍以内。広げすぎるとエネルギー密度が下がり狙った効果が出ない
導子の移動速度1〜数cm/秒でゆっくり動かす(移動法)。止めたり速すぎたりすると定在波・ホットスポットや効果不足を招く
治療時間1部位あたり3〜5分程度が目安
接触空気は超音波をほとんど伝えない。カップリング剤を介して皮膚に密着させ移動法で当てる。5cmも10cmも離さない。水中法でも伝達され温熱効果は得られる
疼痛の訴え過剰な熱・強度のサイン。強度を下げる
  • 作用は温熱効果と非温熱効果の両方。機械的刺激で細胞膜の透過性は亢進し組織修復が進む(「抑制される」は誤り)。
  • 低出力超音波(LIPUS)=骨癒合促進。骨折・術後の骨癒合を早める目的では温熱・牽引・電気刺激・電磁波より優先度が高い。
  • 禁忌=成長期の骨端線(成長板)・眼・心臓・妊娠子宮・悪性腫瘍・ペースメーカー部位。

7-4 寒冷療法とRICE

冷やすと低下するもの冷やすと上昇するもの
組織温・代謝・組織の酸素需要量・神経伝導速度・筋紡錘の感受性・毛細血管透過性・筋緊張(痙縮)・浮腫疼痛(痛覚)閾値血液粘稠度滑液の粘性

「冷やすと下がる」がほぼ全部で、上がるのは疼痛閾値・血液粘稠度・滑液粘性の3つだけ。酸素需要量が減ることで低酸素による二次的損傷を抑えられる、が急性外傷で冷やす理屈。

「痛覚閾値の低下」「神経伝導速度の増加」「毛細血管透過性の亢進」「血液粘稠度の低下」「滑液粘性の低下」はすべて。また痙縮緩和は筋紡錘感受性・γ運動ニューロンの抑制を介するもので、「α運動ニューロン活動の抑制」を寒冷の主作用とはしない

急性外傷の初期対応

  • RICE=Rest(安静・固定)・Ice(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)。近年は適切な負荷を加えたPOLICEも提唱。
  • 受傷直後の肉ばなれ・捻挫・打撲は受傷日から固定・安静+アイシング。受傷後24〜48時間は温熱が禁忌で、ホットパック・パラフィン浴・極超短波・交代浴・入浴はいずれも出血と腫脹を助長する。
  • 冷却は1回15〜20分を間欠的に。「3日間ずっと氷水で冷やし続ける」は凍傷を招き誤り。
  • 急性期に積極的な可動域練習を行う、鎮痛薬で痛みを隠して翌日に競技復帰させる、も誤り。
  • 末梢循環障害+感覚鈍麻のある糖尿病足には寒冷療法は禁忌(血流をさらに減らし凍傷・壊死を招く)。

7-5 電気刺激・牽引・その他の物理療法

手技目的・使いどころ
TENS(経皮的電気神経刺激)疼痛緩和。幻肢痛にも有用で禁忌ではない。ただし蜂窩織炎など急性感染部位には用いない
NMES/EMS(神経筋電気刺激)麻痺筋に収縮を起こし廃用性筋萎縮を予防・筋再教育。末梢神経麻痺でMMT0〜1の筋(腓骨神経麻痺の前脛骨筋など)の第一選択
FES(機能的電気刺激)中枢性麻痺の機能再建(歩行補助など)。ギプス後の廃用性筋力低下の第一選択ではない
治療的電気刺激(拮抗筋へ)拮抗筋を刺激して相反抑制で痙縮を軽減。多発性硬化症の内反尖足のように温熱が使えない例で有用
体外衝撃波難治性の腱付着部症・石灰沈着。末梢神経麻痺の筋力低下には無効
紫外線皮膚疾患・殺菌。可動域制限や筋力低下には適さない
電磁波療法内固定材など体内金属があると不適
経頭蓋磁気刺激痙縮に対する標準治療としては確立していない

牽引療法

  • 直達牽引=骨に直接ピン・鋼線(Kirschner鋼線)を刺入して錘で牽引。大きな牽引力が得られ骨折整復・術前管理に用いる。図で「骨に刺さったピン+錘」が見えたらこれ。
  • 介達牽引=皮膚・軟部組織を介して牽引(絆創膏牽引・スピードトラック、頸椎のグリソン牽引など)。図では包帯・ベルト・絆創膏で巻いている。皮膚障害を避けるため牽引力は小さめ。
  • 腰椎牽引は慢性非特異的腰痛では推奨されない介入。

7-6 病態別 — 何を選び、何を避けるか

病態選ぶ避ける・誤り
受傷直後の肉ばなれ・捻挫アイシング+固定・安静交代浴・ホットパック・パラフィン浴・極超短波
関節リウマチの手指変形パラフィン浴ホットパック・遠赤外線(密着しない)・超音波(限局深部用)・極超短波(人工関節=金属)
小児のギプス除去後の拘縮・筋力低下渦流浴超音波・極超短波(骨端線に禁忌)・紫外線・FES
多発性硬化症の痙縮拮抗筋への電気刺激ホットパック・赤外線などの加温(Uhthoff現象で症状悪化)/MAS2の段階でアキレス腱延長術は過剰
腓骨神経麻痺で背屈MMT0電気刺激(NMES/EMS)温熱・赤外線・超音波・衝撃波(筋収縮を起こせない)
骨癒合の促進超音波(LIPUS)温熱・牽引・電気刺激・電磁波は優先度が下がる
内固定材が入った足関節術後固定されない膝関節のROM練習を積極的に/足指のROMは外固定中から可能な範囲で開始術直後からの荷重(段階的に)/金属があるので電磁波療法は不適/「内固定破損の可能性があるから骨癒合が得られるまで短下肢装具を使用する」は誤り=内固定材そのものが骨片を安定させる目的の材料で、装具の役割は二次的な保護にすぎない。使うかどうか・期間は個別の治療方針で決まり、一律に骨癒合まで装具を使うものではない
リンパ浮腫+蜂窩織炎の急性期安静と患部の冷却スキンケアは継続圧迫・用手的リンパドレナージ・圧迫下の運動(感染を拡散)/TENSも用いない
糖尿病足(感覚鈍麻+趾の暗赤色)前足部の免荷(除圧インソール・治療靴)とフットケア寒冷療法・速歩などの荷重負荷。ROM練習は控えなくてよい「歩行時に左足を右より前に出すよう指導する」は誤り出す足の左右を変えても前足部にかかる荷重は減らず、合理的根拠がない。減らしたいなら免荷そのものを行う
慢性非特異的腰痛運動療法・認知行動療法(ガイドラインで強く推奨)超音波・TENS・腰椎牽引・寒冷は強い推奨がない
肩手症候群(CRPSⅠ型)急性期疼痛を誘発しない範囲の肩関節周囲筋の再教育(軽い随意収縮の促通)が第一。あわせて挙上・圧迫による良肢位保持と浮腫管理積極的な他動伸張・CI療法/急性期のCodman体操も刺激過剰/「BFOによる良肢位の保持」も誤り=BFO(balanced forearm orthosis)は前腕を支持して食事など上肢動作を助ける動作補助具であり、肩手症候群急性期の治療手段ではない。良肢位保持は装置を付けることではなく肢位と浮腫の管理を指す
感覚障害による運動失調重錘負荷・弾性緊縛帯・姿勢鏡・歩行補助具(感覚代替電気刺激療法は失調の直接的治療にならない
がんの緩和ケア患者の意思とQOLに合わせて内容を変更「呼吸介助は禁忌」「リンパ浮腫にPTは行わない」「温熱は行わない」はいずれも誤り/「病名告知を前提として理学療法を行う」も誤り告知の有無は理学療法を実施する前提条件ではない。未告知でも本人の状況・心理面に配慮して行う
高度の肩鎖関節脱臼+競技継続希望手術(靱帯再建)超音波・ホットパック・ギプス固定・安静のみでは不十分

「〜は禁忌である」「〜は行わない」と一律に断定する選択肢は誤りになりやすい。緩和ケアの呼吸介助、リンパ浮腫への複合的理学療法、幻肢痛へのTENSはいずれも有用。

疾患リハの原則(物理療法・装具がからむもの)

  • 脳卒中片麻痺:装具は機能回復を阻害しない(早期の立位・歩行を可能にして促進する)。立位練習は装具の完成を待たず開始でき、歩行練習も座位保持獲得を待たない。トレッドミル歩行練習で歩行速度・持久力が向上。CPMは拘縮予防が目的で分離運動の促通ではない。
  • Duchenne型筋ジストロフィー ステージ6(車椅子移動でADLに介助):脊柱の可動域運動(側弯・拘束性換気障害の予防)と電動車椅子操作の練習。四つ這い・立ち上がり・AFOでの立位練習はすでに不可能。
  • Guillain-Barré症候群の人工呼吸器管理下:排痰(気道クリアランス)が最優先。急性期の筋力増強運動は禁忌に近い。
  • Perthes病:外転位でのcontainment(骨頭を臼蓋に包む)と免荷坐骨結節支持の免荷装具での歩行練習と対称的な座位バランス練習が適切。内転位保持・患側を下にした起き上がり・短下肢装具での立位は不適。

7-7 短下肢装具(AFO)と足継手

装具適応の目安
靴型装具・足底挿板足部変形の補正のみ。下垂足は制御できない
足関節軟性装具支持性・背屈保持力が弱く、明らかな下垂足の遊脚期クリアランス確保には不十分
プラスチックAFO(シューホーン型・継手なし)軽量で背屈を保持。弛緩性の下垂足・痙縮が軽い例。膝伸展が保たれていれば(MMT3以上)これで足りる
プラスチック支柱・継手付きAFO中等度以下の痙縮
金属支柱付きAFO(足継手付き)強い内反尖足・MAS2以上の痙縮・反張膝・高体重・立脚中期の膝折れ。剛性と内外側支持が要る例
PTB式短下肢装具膝蓋腱で体重を受け下腿〜足部を免荷する装具。下垂足の歩行改善が目的の例には使わない

膝折れ=即KAFOではない。足継手で底屈を制限すると立脚中期の下腿前傾が抑えられ、膝伸展モーメントが働いて膝折れを防げる。まずAFOで対応する。

足継手の機能

異常足継手の設定
下垂足・尖足(前脛骨筋の弛緩性麻痺、下腿三頭筋の痙縮)底屈制動(制限)+背屈補助。遊動では尖足を許してしまう
立脚時の膝折れ前方(背屈方向)制動。下腿の前方への倒れ込みを止める
反張膝(膝過伸展)背屈制動で下腿の後傾を抑える。遊動では制御できない
踵足(背屈位変形)背屈を制動し底屈を補助する方向
足関節捻挫/外反扁平足捻挫は内外反の制動、外反扁平足は足底挿板で内側縦アーチ支持。いずれも背屈補助の対象ではない
  • 用語の区別:遊動=自由に動く/制限=機械的にブロック/制動=抵抗をつけて制御/補助=バネなどで能動的に助ける
  • クレンザック継手=背屈遊動+底屈制限。ロッドで底屈を機械的に止め、背屈は自由。尖足変形の予防に使う。バネに入れ替えれば背屈補助にもできるが、継手そのものの機能を問われたら「背屈遊動・底屈制限」。
  • ダブルクレンザック継手=前後2つのチャンネル(バネ・ピン)をもち、背屈と底屈の制限角度を個別に調整できる
  • ストラップは矯正したい変形と反対側に付ける。内反(内反尖足)→外側ストラップ(Tストラップ)、外反足→内側ストラップ。片麻痺の内反尖足では外側Tストラップ付き金属支柱AFOが典型処方。

片麻痺の立脚相で反張膝+尖足があるとき、踵部の補高・AFO・膝軽度屈曲位での立位保持練習・前脛骨筋への治療的電気刺激はすべて適切。下腿三頭筋へのタッピングだけは不適切(底屈・尖足を促通して悪化させる)。

7-8 長下肢装具・膝装具・靴型装具・体幹装具

装具の高さは「どの関節が支持できないか」で決める。過剰な装具は歩行を阻害する。

  • 足関節だけ弱い(下垂足)→AFO。膝伸展MMT3以上で抗重力位を保持できるならKAFOは過剰。
  • 膝伸展筋だけ弱く足関節は正常(大腿四頭筋の切除・麻痺で膝折れ)→両側金属支柱付き膝装具。AFOでは膝の不安定性に対応できず、KAFOは過剰。
  • 膝+足関節→KAFO。体幹・股関節も→骨盤帯付きKAFO(HKAFO)。

下肢装具のチェックアウト(適合判定)

部位正しい基準
骨盤帯腸骨稜と大転子の中間(腸骨稜頂点ではない)
股継手股関節軸=大転子のやや前上方(大転子上端ではない)
外側支柱の上端大転子より約2.5cm下。大転子と同じ高さも6cm下も誤り
膝継手解剖学的膝軸=内転筋結節〜大腿骨内側顆上縁の高さ。膝関節裂隙中央でも顆部の2〜3cm下でもない
半月の配置膝継手から大腿下位半月までと、膝継手から下腿半月までの距離を等しくする(支持力が均等に分散する)
下腿半月腓骨頭(総腓骨神経)を圧迫しない位置に下げる。目安は膝裂隙から約4cm下=腓骨頭の2〜3cm下。腓骨頭上端や膝裂隙2cm下では高すぎる
足継手足関節運動軸=内果下端の高さ(内果下端は外果下端より高い)
  • 膝継手のリングロック(輪止め)=完全固定。オフセット式=軸を後方にずらして立脚を安定させるもので別物。
  • KAFOは大腿支柱・半月を外せばAFOへ変更可能。回復に応じて段階的に使える。

体幹・頸椎装具

装具目的・適応
Milwaukee装具頸部リング+骨盤帯+支柱のCTLSO。側弯症で頂椎がT6/T7より高位の胸椎カーブ
Boston装具腋窩を超えないアンダーアーム型の硬性TLSO。頂椎がT7以下の胸腰椎カーブ
Jewett装具胸腰椎の3点固定・屈曲制限(過伸展保持)。椎体圧迫骨折
Taylor型装具後方支柱で胸腰椎の屈曲を制限
SOMI装具胸骨・後頭・下顎で支持する頸椎装具
Halo装具頭蓋にピンで固定。頸椎不安定症の強固な固定

側弯症の装具療法はCobb角25〜40度・骨成熟未完成(Risser低値)・進行例が適応。10〜20度台は経過観察、40〜45度以上は手術。軟性の胸腰仙椎装具は矯正力不足で不適(3点支持の効く硬性装具が必要)。

靴型装具の補正

補正効果
メタタルザルバー(中足骨バー)骨頭のすぐ後方に支えを置き中足骨骨頭を免荷
ロッカーバー(船底型ソール)踏み返しの改善
トーマスヒール内側縦アーチの支持・回内防止
SACHヒール・クッションヒール接踵時の衝撃吸収
中足骨パッド横アーチの支持

7-9 麻痺レベルと装具の対応

脊髄損傷(完全麻痺)の残存レベル装具と歩行
Th1〜Th6体幹保持が困難。骨盤帯付きKAFO(HKAFO)でも治療的歩行にとどまる
Th10体幹はある程度安定するが下肢の随意性なし。実用的な屋外歩行は困難
Th12〜L2腹筋・背筋・腰方形筋が働き骨盤が安定。骨盤帯なしの両側KAFOで平行棒内・松葉杖歩行(大振り・小振り)が可能
L3〜L4大腿四頭筋が働き膝が安定。両側AFO+杖で実用的な屋外歩行が可能。AFOで歩ける最も上位=L4
L5・S1以下装具は最小限〜不要

この表は「脊髄損傷(後天性・完全麻痺)」の枠組みで読む表。二分脊椎は下のSharrard分類で読む。同じ「L1〜L2」でも、この表は骨盤帯なしKAFO、Sharrard Ⅱ群は骨盤帯付きKAFOと装具が逆に見えるので、まず設問がどちらの疾患かを確認してから表を当てる(逆になる理由はSharrard表の下)。

分岐点は膝伸展を担う大腿四頭筋(L3・L4)が働くかどうか。働けばAFO、働かなければKAFO。図で両側KAFO+平行棒ならTh12前後と読む。二分脊椎は下のSharrard分類で読み、最初の分岐は骨盤帯の有無

Sharrard分類(二分脊椎)残存髄節働く筋・装具と歩行
Ⅰ群胸髄(Th12以上)下肢は完全麻痺で腸腰筋も働かず、自分で下肢を振り出せない。装具を着けても立位保持・治療的歩行にとどまり、移動の主体は車椅子
Ⅱ群L1〜L2腸腰筋・縫工筋・大腿内転筋が働き股関節を自分で振り出せる。膝伸展は不可。骨盤帯付き両側KAFO+歩行器(PCW)で屋内歩行
Ⅲ群L3〜L4大腿四頭筋が働いて膝が安定するので骨盤帯が要らなくなる。両側KAFO+ロフストランド杖で実用歩行。L4まで残ると前脛骨筋も働き、AFOのみ/AFO+杖で自立歩行できる(AFOで自立歩行できる上限=L4)
Ⅳ群L5中殿筋・長趾伸筋などが働き実用歩行。靴型装具〜AFO程度でよく、杖の併用は必須でない
Ⅴ群S1以下下腿三頭筋が一部働く。装具はほぼ不要でほぼ正常歩行

この表は「二分脊椎」の枠組みで読む表で、上の脊髄損傷の表とは別物。同じ髄節表記なのに装具が逆に見えるのは、①脊髄損傷は後天性の完全麻痺で、Th12〜L2なら腹筋・背筋・腰方形筋が残って体幹と骨盤が安定する=骨盤帯が要らない/②二分脊椎は先天性で不全麻痺のため髄節表記どおりに筋が残るとは限らず、L1〜L2群では体幹・股関節周囲の支持性が不十分で骨盤帯(+股継手)による支持が要る、③さらに乳幼児期から骨格が成長途上のまま立位・歩行を練習するため、脊柱・骨盤の変形を抑える意味でも骨盤帯が付く、という違いによる。どちらの数値も、その枠組みの中では正しい

図から群を決める手順は「骨盤帯があるか」→「自分で振り出せているか」の2段。①腰に巻いた骨盤帯(+股継手)が付いていればⅠ群かⅡ群/付いていなければⅢ群以下。②その骨盤帯付きKAFOで歩行器(PCW)を使って歩けている=腸腰筋が働いて下肢を振り出せている=Ⅱ群Ⅰ群は腸腰筋も麻痺していて振り出しができないので、歩行器を持たせても交互歩行の図にはならない(立位保持装置か車椅子で描かれる)。③骨盤帯なしのKAFO+ロフストランド杖ならⅢ群、AFOなど軽い装具+杖ならⅣ群、装具なしならⅤ群。

足部変形は働く筋と麻痺する筋のアンバランスで決まる。L4残存では前脛骨筋(背屈・L4)が働き下腿三頭筋(底屈・S1〜2)が麻痺するので背屈優位=踵足変形。底屈優位なら尖足変形。

「第3腰髄=尖足変形」は誤り(L3では背屈筋も底屈筋も働かない)。「第12胸髄=KAFOで杖なし歩行」「第1腰髄=AFOで杖なし歩行」「第2腰髄=装具なしで松葉杖歩行」もすべて能力を過大評価した誤り。残存レベルが下位(仙髄寄り)ほど装具は軽くなる。

7-10 義肢・切断と、装具使用者の生活場面

切断レベル製作する義足
足部部分切断(リスフラン等)足根中足義足・靴型装具
足関節離断(サイム切断)サイム義足。踵部の脂肪組織を残すため断端末で全荷重が可能
下腿切断PTB式・TSB式・KBM式
大腿切断四辺形/坐骨収納型ソケット、吸着式(陰圧で懸垂し懸垂帯が不要)
下腿義足ソケット特徴
PTB式膝蓋腱を中心とした部分荷重。荷重部=膝蓋腱・脛骨前内側面・腓骨頭周囲・膝窩部(軟部組織が厚く圧に強い所)。除圧部=脛骨稜・脛骨粗面・脛骨顆部隆起・腓骨頭頂・断端末端
TSB式断端全表面で荷重シリコンライナー+ピン固定が目印。糖尿病・末梢循環障害例で選ばれやすい
KBM式膝蓋骨上を覆い側壁を高くして懸垂(カフ不要)
在来式差し込み式+断端袋、大腿コルセットで懸垂する旧来型

シリコンライナーの利点=密着によるピストン運動の減少・懸垂性向上(トリムラインを低くできる)・皮膚保護。欠点=発汗と蒸れ・接触皮膚炎・装着の手間・コスト。「装着の簡便性」「発汗促進」「皮膚への刺激」「トリムラインの上昇」はいずれも利点ではない。義足部品ではターンテーブル=体幹回旋補助、トルク吸収装置=ねじれの吸収。

義足の部品名 — 写真で何が見えたらその部品か

「写真の義足に使われている部品はどれか」型は、ソケット・膝継手・下腿部・足部が1枚に全部写っているのがふつう。だから「写っていない部位の語だから切る」という消去法は使えない。部品ごとに「写真で見えるはずの形」を1つずつ持っておき、実際に写っているものだけを残す

部品付く場所と働き写真での目印(無ければ切る)
吸着式ソケット大腿義足のソケット(懸垂方式)。ソケット内を陰圧にして断端を吸い付け保持するソケット前面の下部〜断端末に、丸いバルブ(排気弁)が1つ付くのが決め手。空気を抜いて陰圧をつくる部品なので必ず外から見える。あわせて懸垂帯・ベルト・肩吊りが一切ない
ターンテーブルソケットと膝継手のに入れる回旋軸。体幹の回旋・あぐらを可能にするソケット下端と膝継手の間に円筒形の回旋ユニットが1段挟まる。ソケットが膝継手へ直に連結されていれば無い
多節リンク膝膝継手の一種。複数のリンク(4節など)で瞬間回転中心が移動し、立脚期の安定と遊脚期のクリアランスを両立する膝継手を側面から見て前後2本のリンクが平行四辺形状に並ぶ軸が1本だけ(+手動ロックレバー)なら単軸膝で、多節リンク膝ではない
トルク吸収装置膝継手と足部の間(下腿部)に入れ、下腿のねじれ(回旋)を吸収する下腿の支柱(パイプ)の途中に太い筒状のユニットが割り込む。支柱がただの連結パイプ1本なら無い
ドリンガー足部足部の型式名。ソケットの懸垂方式でも膝継手でもないまず足部の写真を見る。下腿パイプにボルトで直結された継手も緩衝子もない一体成形の足部(SACH足)なら、特殊な足部機構は使われていないので切る

この型の正答は「4つを消す」より「1つを見つける」ほうが速い。大腿義足の写真でソケット前面下部の丸いバルブが見えたら、その時点で答えは吸着式ソケットバルブ=吸着式ソケットの動かぬ証拠で、他の懸垂方式(懸垂帯・シレジアバンド・シリコンライナー+ピン)にはバルブが付かない。

幻肢痛

  • ミラーセラピーが有用(視覚フィードバックで大脳皮質を再組織化)。
  • 患者に幻肢痛の部位をイラストで図示させるのは症状の可視化・評価に有用。
  • TENSは禁忌ではなく有用。義肢装着練習も増悪させず、むしろ軽減させる。
  • 神経障害性疼痛なので、薬はNSAIDsよりプレガバリンなどを優先する。

片麻痺の移乗・環境設定(健側が軸)

  • 車椅子は健側がベッド側になるよう約30〜45度に配置。ベッドと平行には置かない。
  • 殿部を座面の前方へ出し足底を接地させて重心を前方へ移す。下肢装具は装着したまま行う。
  • 介助は前方または麻痺側から。後方からでは立ち上がりと方向転換を支えられない。
  • 移乗先は同じ高さかやや低く。ベッドを車椅子より高くすると負担が増える。
  • 手すり・ベッド柵・ポータブルトイレは健側でつかめる側に置く。左片麻痺なら右側、右片麻痺なら左側。起き上がりも健側を下にして肘で押し起こす。

普通型電動車椅子

項目正しい姿
駆動輪後輪駆動が標準的(「前輪駆動が標準」は誤り)
手動への切替クラッチを切るなどして手押し(手動)に切り替える機構がある(「切り替える機構はない」は誤り)。介助者が押せる
操縦装置から手を離すと電磁ブレーキが作動して自動的に停止する。坂道でも止まる安全機構
操縦装置の操作部位上肢に限定されない。あご・頭部・足など上肢以外で操作する特殊な操縦装置がある
操縦装置でできること前進・後退・方向転換だけでなく速度も調整できる(「進む方向のみ操作できる」は誤り)

Duchenne型筋ジストロフィーのステージ6などで「電動車椅子操作の練習」を行う際の前提知識。後輪駆動・手動切替あり・手を離すと自動制動・上肢以外でも操作可・速度も操作可の5点を押さえれば全肢が切れる。

FIMの点数(歩行・食事)

  • 7点=完全自立/6点=修正自立(補助具使用・時間延長・安全配慮)/5点=監視・準備/4点=最小介助(本人が75%以上)。
  • 歩行には距離の基準がある。補助具の有無にかかわらず50m自立で6点、15m以上50m未満の自立は5点。短下肢装具と四脚杖で20m歩ける例は5点
  • 食事は普通のスプーン・フォークで介助なく食べられれば7点箸が使えないことは減点対象にならない(自助具を使えば6点)。

視覚障害者の介助

  • 平地は介助者の腕(肘の上)を把持させ、介助者が半歩〜一歩先を歩く。手を握らせるのではない。
  • バスや混雑した電車は介助者が先に乗る(座席・車内状況を確認するため)。
  • 階段を下りるときは介助者が一段先に下りる。上りは介助者が後ろから支える。
  • 手前に引いて開けるドアは視覚障害者を先に通し、介助者が後方から支える。