この章の出題は「この療法はどの系統か」「この技法は誰か」の2軸にほぼ集約される。個々の療法を覚える前に、次の4分類を先に押さえる。
| 系統 | ねらい | 属する療法・技法 |
|---|---|---|
| 洞察療法(力動的) | 無意識の葛藤を意識化し洞察を得る | 精神分析療法、分析心理学、現存在分析 |
| 訓練療法(行動・態度を訓練) | 学習理論や段階的な課題で行動を変容させる | 行動療法(系統的脱感作・シェイピング・トークンエコノミー・曝露反応妨害法・バイオフィードバック)、認知行動療法、森田療法、自律訓練法 |
| 表現療法(芸術療法) | 非言語的表現で情緒を解放する | 絵画療法、箱庭療法、音楽療法 |
| 支持的・非指示的療法 | 受容と共感で心理的安定と自己成長を支える | 来談者中心療法、支持的精神療法 |
「訓練療法はどれか」の正答は森田療法(催眠療法・絵画療法・精神分析療法・来談者中心療法はいずれも訓練療法でない)。逆に「訓練療法でないのはどれか」を森田療法・シェイピング・認知行動療法・系統的脱感作法と並べて問われたら、正答は来談者中心療法。森田療法が訓練療法側に入るのが最大の引っかけ。
| 指示的(治療者が指示・助言・課題を出す) | 非指示的(指示や助言を与えない) |
|---|---|
| 行動療法、認知行動療法、バイオフィードバック療法、森田療法、SST | 来談者中心療法、精神分析療法、芸術療法 |
「治療者が指示や助言を与え、非適応的な行動をコントロールする療法はどれか」の正答はバイオフィードバック療法。芸術療法・森田療法・精神分析療法・来談者中心療法が並ぶ設問では、生体反応の自己制御という点で明確に区別できる。
設問に「無意識」「葛藤」「洞察」のいずれかが出たら精神分析療法で確定。催眠療法・行動療法・芸術療法・自律訓練法はいずれも無意識の葛藤の洞察を目的としない。
精神分析は行動療法の技法ではない。行動療法は学習理論に基づく技法群(系統的脱感作法・曝露反応妨害法・トークンエコノミー法・バイオフィードバック法など)で、力動的精神療法である精神分析は別系統。「行動療法の技法でないのはどれか」の正答になる。
| 技法 | 内容 | キーワード |
|---|---|---|
| 系統的脱感作法 | 弛緩を保ちながら弱い刺激から段階的に慣らす(逆制止) | 不安階層表/Wolpe |
| 曝露反応妨害法 | 不安刺激に曝露し、強迫行為を行わせない | 強迫症 |
| シェイピング | 目標行動に近い反応を段階的に強化して形成する | 行動形成 |
| トークンエコノミー法 | 望ましい行動に代用貨幣(トークン)を与えて強化 | オペラント条件づけ/Skinner |
| バイオフィードバック法 | 心拍・筋緊張・皮膚温など通常意識できない生体反応を計測値として本人に示し、自己制御を学習させる | 生体情報を本人に返す |
| モデリング法 | 他者の行動を観察・模倣して新しい行動を学習する | 観察学習 |
| SST(社会生活技能訓練) | 模擬場面のロールプレイで対人技能を訓練する | Liberman |
道具から一発で決まるものを覚える。不安階層表=系統的脱感作法/代用貨幣=トークンエコノミー法/生体反応の可視化=バイオフィードバック法。家族療法・行動活性化技法・内観療法・森田療法は不安階層表を作らない。
認知療法の誤答肢は毎回同じ4つ。
×「記憶や注意などの認知機能を改善する」→ 改善するのは考え方(認知)の偏りであって認知機能訓練ではない。
×「幼少期のこころの問題を主な対象とする」→ それは精神分析。認知療法は「今ここ」。
×「自動思考は無意識であるため同定しない」→ 自動思考を意識化して同定するのが治療の出発点。
×「悲観的な思考を楽観的な思考に置き換える」→ 楽観に置き換えるのではなく、根拠を検証して現実的な考えへ修正する。
| 技法 | 内容・道具 |
|---|---|
| 認知再構成法 | 思考記録表(コラム表)に状況・気分・自動思考・適応的思考を書き出し、現実に沿った考え方へ修正する |
| 行動活性化技法 | 活動量を増やして気分を改善する。うつ病に用いる |
| 問題解決技法 | 問題の明確化→解決案の列挙→実行→評価の手順で対処する |
| リハーサル(行動実験・役割演技) | 実場面で試す前に模擬場面で練習し、対処行動を習得する |
| ホームワーク(宿題) | 面接で学んだ思考記録・リラクセーション・行動実験を日常生活で練習する |
コラム表・ホームワーク・模擬場面のリハーサルはいずれも認知行動療法。内観療法・森田療法・箱庭療法・支持的精神療法・現存在分析・精神分析療法はどれも用いないので、この3語が出たら即CBTを選ぶ。
| 名称 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 極端な一般化(過度の一般化) | 少数の事実から全てが同じ結果になると結論づける | 1〜2回の失敗で「自分はいつも失敗する」 |
| 全か無か思考(二分法的思考) | 全てに白黒をつけて割り切ろうとする | 完璧でなければ無価値 |
| 選択的注目(心のフィルター)・結論の飛躍 | 着目していることだけから短絡的に結論づける | 悪い面だけを拾う |
| すべき思考 | 「こうするべきだ」と行動を制限して自分を責める | 義務感で自分を縛る |
| 感情的決めつけ(情緒的理由づけ) | そのときの感情に基づいて現実を判断する | 「不安だから危険だ」 |
| レッテル貼り/自己関連づけ | 一事で人物を断定する/無関係な出来事を自分のせいにする | 「私はダメ人間だ」 |
「いつも」「絶対」「みんな」といった語が例文に出たら極端な一般化。名称と内容のマッチングでしか問われないので、上表は対応関係ごと覚える。
| 療法・技法 | 要点 | 提唱者・分類 |
|---|---|---|
| 自律訓練法 | 「手足が重い・温かい」などの公式を心の中で反復し、自己暗示によって催眠様のリラックス状態を作る | Schultz/訓練療法 |
| 漸進的筋弛緩法 | 筋を意図的に緊張させてから弛緩させる。暗示ではなく筋活動を用いる | Jacobson |
| マインドフルネス | 「今ここ」に評価を加えず注意を向ける瞑想ベースの技法 | — |
| 催眠療法 | 被暗示状態を利用して症状の軽減を図る(他者による暗示) | 訓練療法でない |
| 森田療法 | 神経症(とらわれ)に対し不安を「あるがまま」に受け入れさせ、絶対臥褥期→作業期と段階的に行動課題を課す | 森田正馬/訓練療法 |
| 内観療法 | 「してもらったこと・して返したこと・迷惑をかけたこと」の3項目を内省する | 日本由来 |
| 現存在分析 | 実存哲学に基づき人間存在の理解を重視。宿題技法は用いない | 洞察系 |
| 箱庭療法 | 砂箱に小物を配置して無意識を表現させる投影法 | 表現療法 |
「自己暗示で催眠状態を作る」=自律訓練法。コラム法(認知療法)・自由連想法(精神分析)・漸進的筋弛緩法(筋活動)・マインドフルネス(注意)と並べられるので、暗示か/筋か/注意かで切り分ける。
| 人物 | 業績 | 人物 | 業績 |
|---|---|---|---|
| Beck | 認知療法 | Bowlby | 愛着理論(アタッチメント理論) |
| Ellis | 論理情動療法 | Freud | 精神分析・自由連想 |
| Jung | 分析心理学・夢分析 | Liberman | 社会生活技能訓練(SST) |
| Rogers | 来談者中心療法 | Wolpe | 系統的脱感作 |
| Schultz | 自律訓練法 | Jacobson | 漸進的筋弛緩法 |
| Skinner | オペラント条件づけ(行動療法) | 森田正馬 | 森田療法 |
| Eysenck | 性格の特性論・MPI | Sullivan | 対人関係論 |
| Selye | 汎適応症候群 | Lazarus | 認知的評価・コーピング |
| Kübler-Ross | 死の受容の5段階 | Fink | 危機モデル |
組合せ問題は選択肢どうしを入れ替えた引っかけで作られる。頻出の入れ替えペアは Beck↔Bowlby(認知療法と愛着理論)、Liberman↔Wolpe(SSTと系統的脱感作)、Rogers↔Schultz(来談者中心療法と自律訓練法)、Skinner↔Beck(行動療法と認知療法)。「Beck=集団療法」「Rogers=自律訓練法」「Skinner=認知療法」はいずれも誤り。
「適応障害は薬物療法が治療の中心になる」は誤り。中心は環境調整と心理療法であり、薬物は補助的・対症的にとどまる。
「服薬自己管理の練習」はそれ自体は誤りではないが、リワークで最も適切にはならない。復職支援の中心目標は職場適応と対人技能=働く場面で再発しない力をつけることで、服薬管理は治療継続の一般的な生活技能にとどまる。「最も適切なのはどれか」型は、その場面に固有の目標を選ぶ——どの疾患・どの時期にも当てはまる一般論の肢は落とす。
×「認知の歪みは修正しない」×「キャリア再構成の検討は行わない」×「配置換えをしないことを前提に職場と連絡調整する」はすべて誤り。「〜しない」「〜を前提とする」と可能性を先に閉じる選択肢は誤りになりやすいのがこの分野の定石。
中途障害を負った人が障害を受け入れるまでの心理過程は、上田敏らにより5段階で説明される。順序そのものが出題されるので、並びで暗記する。
| 順 | 段階 | 心理状態 | 関わり方 |
|---|---|---|---|
| 1 | ショック期 | 受傷直後で実感が乏しい。無感動・現実感の喪失。かえって危機感が薄い | 無理に働きかけず、安全を確保して見守る |
| 2 | 否認期 | 障害の存在を認めず「治る」と否定する。心を守る防衛機制でもある | 否定を頭ごなしに正さない |
| 3 | 混乱期 | 怒り・抑うつ・悲嘆で感情が激しく揺れる。怒りは家族や医療者にも向く。訓練拒否が起こりやすい | 傾聴と共感。抑うつには積極的指導をしない |
| 4 | 解決への努力期 | 価値観の転換が始まり、前向きに対処を模索する | 具体的な目標設定を支援する |
| 5 | 受容期 | 障害を含めた新たな価値観を確立する | 社会参加・役割の再獲得を支える |
ショック→否認→混乱→努力→受容。出題は「2番目は?」「3番目は?」の形が定番で、2番目=否認期/3番目=混乱期。上田敏は受容を「価値の転換」(できないことより、できることに価値を見いだす)と定義した。
混同注意の類似モデル。Finkの危機モデル=衝撃→防御的退行→承認→適応(4段階)。Kübler-Rossの死の受容=否認→怒り→取引→抑うつ→受容(5段階だが「取引」が入る)。
「抑うつ状態の患者には積極的な指導を行う」は誤り。抑うつ期の積極的指導はかえって負担になる。共感的に寄り添い、傾聴しながらエネルギーの回復を待つのが正しい。共通原則は「段階に合わせ、本人のペースを尊重する」。
| 形式 | 定義 | 具体例 |
|---|---|---|
| 開いた質問(オープン) | はい・いいえや選択では答えられず、自由に語れる | 「今日の具合はいかがですか」「膝の痛みについて詳しく教えてください」 |
| 閉じた質問(クローズド) | はい・いいえや一語で答える | 「痛みはありますか」「お名前を教えてください」 |
| 多項目の質問(マルチプル) | 複数の選択肢から選ばせる | 「痛むのは膝内側ですか、外側ですか、それとも前ですか」 |
| 中立的質問(ニュートラル) | 患者を誘導しない問い方 | — |
| 焦点型質問(フォーカスト) | 特定の話題に絞り込む | — |
組合せ問題は形式と例の対応がずれた選択肢を見抜く形で出る。「いかがですか」「教えてください」=開いた質問を軸に判定すればよい。面接は開いた質問で広く聞き、徐々に閉じた質問で焦点化するのが基本。
×「専門用語で説明する」×「治療のデメリットは伝えない」×「心理状態に関わらず患者の決定が優先される」×「正当な理由があっても同意を撤回できない」——4つとも定番の誤り選択肢。
リエゾン精神医学=身体科と連携し、身体疾患をもつ患者の心理的問題に介入する分野。基本は傾聴・共感・具体的説明・自尊心の尊重。
「抽象的な情報を与える」は不適切。抽象的・曖昧な説明はかえって不安を増大させるので、具体的でわかりやすい情報を提供する。
「運動を拒否しても説得して行う」は不適切。拒否を押し切る説得・強制は不安・混乱・BPSDの悪化を招く。いったん中断するか、別の誘導に切り替えるのが正しい。
×「眠れない日だけ飲むようにしてみましょう」(用法変更の指示は職域外)×「薬には副作用がつきものです。我慢してください」(訴えを退けている)×「依存性のある薬なので、直ちに中止して様子をみましょう」(自己判断の急な中止は危険)。