第6章|心理検査

臨床心理学 第6章

6-1 心理検査の全体地図

出題の大半は「検査名 → 何を測るか」の対応。まず8群に仕分ける。

測るもの代表的な検査
知能WAIS・WISC・WPPSI・田中ビネー・K-ABC・RCPM・Kohs立方体
発達DDST(デンバー)・新版K式・遠城寺式・津守式
認知症スクリーニングMMSE・HDS-R
記憶WMS-R・RBMT・RAVLT・三宅式・ベントン・Rey複雑図形
注意・処理速度TMT・PASAT・かなひろいテスト
遂行機能(前頭葉)WCST・BADS・FAB
人格・情緒質問紙法/投影法/作業検査法(6-4〜6-7)
精神症状BDI-Ⅱ・HAM-D・BPRS・PANSS

紛らわしい常連の所属先。CMI・STAI=人格・情緒MMSE=認知機能WAIS=知能WMS-R=記憶TMT=注意WCST=遂行機能

6-2 知能検査 — ビネー式とウェクスラー式

ビネー式

  • 世界初の知能検査。精神年齢(MA)を求め、比率IQ=MA÷CA×100
  • 日本版=田中ビネー・鈴木ビネー。全体を1つのIQで表す

ウェクスラー式

  • 偏差IQ(DIQ)。平均100・標準偏差15で、同年齢集団内の位置を示す
  • 下位検査から言語性・動作性(現行版は指標得点)のプロフィールが出る
検査対象年齢
WPPSI幼児
WISC児童(おおむね5〜16歳)
WAIS成人(16歳以上)

「ウェクスラー式は精神年齢からIQを求める」は誤り → 精神年齢・比率IQはビネー式、ウェクスラーは偏差IQ

「発達評価はどれか」でWPPSI・WISC・WAISが並ぶことがある。ウェクスラー3種はすべて知能検査で、発達評価ではない。

6-3 発達検査・その他の知能検査

検査位置づけ・測るもの
DDSTⅡ/JDDST-Rデンバー発達判定法。乳幼児の発達スクリーニング。個人-社会/微細運動-適応/言語/粗大運動の4領域
新版K式・遠城寺式・津守式発達検査(発達指数DQ)
K-ABCⅡ知能検査。認知処理過程と習得度をみる(2歳半〜18歳)
RCPM非言語性の推論・知的能力。言語を使わず失語例でも施行可。記憶課題を含まない
Kohs立方体組合せテスト積み木による非言語性知能・構成能力
CARS小児自閉症の重症度評価尺度
PEP-3自閉症児の発達・行動プロフィール(療育計画用)
ADHD-RS不注意・多動の症状評価尺度
ASQ自閉症スクリーニングの質問紙

「発達評価=DDST」「知能検査=ウェクスラー・ビネー・K-ABC」。CARS・PEP-3・ADHD-RSは障害特性の評価尺度で知能検査ではない

6-4 人格検査の3分類

方法代表的な検査特徴
質問紙法MMPI・YG性格検査・TEG・MPI・NEO-PI-R・MAS・CMI・STAI用意された項目に本人が回答。実施・採点が簡便だが意図的に歪めやすい
投影法ロールシャッハ・TAT・SCT・P-Fスタディ・バウムテスト・HTP曖昧な刺激への反応から深層をみる。解釈に熟練が必要
作業検査法内田クレペリン精神検査単純作業の量の推移(作業曲線)から性格・適性をみる

6-5 質問紙法の顔ぶれ

  • MMPI:ミネソタ多面人格目録。550項目に回答する多面的人格検査
  • YG性格検査:矢田部・ギルフォード。120項目
  • TEG:東大式エゴグラム。交流分析の自我状態をみる
  • MPI(モーズレイ):外向性・神経症傾向/NEO-PI-R:ビッグファイブ(5因子)/MAS:顕在性不安
  • CMI:心身の自覚症状から神経症傾向を判定
  • STAI:状態不安・特性不安を測る

「人格検査はどれか」でCMI・STAIが正答になる。この2つを認知系(MMSE・WAIS・WMS-R)と取り違えないこと。

6-6 投影法 — 「刺激の形」で即答する

検査刺激・やらせること
ロールシャッハ左右対称のインクのしみの図版10枚を順に提示し、何に見えるかを答えさせる
TAT曖昧な絵を見せて物語を作らせる(主題統覚検査)
SCT「私は___」など書きかけの文の続きを書かせる(文章完成法)
P-Fスタディ欲求不満場面のイラストの吹き出しにセリフを書き込ませ、攻撃の方向と型をみる
バウムテスト1本の木を描かせる
HTP家・木・人を描かせる

出題は形式の描写から検査名を当てさせる型。インクのしみ=ロールシャッハ/セリフ書き込み=P-Fスタディ/文の続き=SCT/木=バウム

6-7 作業検査法と「検査と測定内容」の組合せ

  • 内田クレペリン精神検査:一桁の連続加算を行わせ、作業曲線から性格・行動面の特徴と作業適性を評価する

組合せ問題で繰り返し出る誤りと正しい対応先。

  • SCT=認知機能 は誤り → SCTは性格・パーソナリティ
  • WCST=自我状態 は誤り → WCSTは遂行機能。自我状態はエゴグラム(TEG)
  • P-Fスタディ=介護負担度 は誤り → 介護負担はZarit介護負担尺度
  • ロールシャッハ=自己効力感 は誤り → 自己効力感はGSES、ロールシャッハはパーソナリティ全体

6-8 認知症スクリーニング — MMSEとHDS-R

項目MMSEHDS-R
見当識ありあり
3単語の記銘・遅延再生ありあり
計算あり(100から7を順に引く)あり(100−7、さらに−7)
図形模写(構成課題)あり(重なった五角形)なし
文章を書く・読む、3段階命令ありなし
数字の逆唱なしあり
野菜の名前を挙げる(語の流暢性)なしあり
実施形式口頭+筆記・描画すべて口頭
満点・カットオフ30点・23点以下で疑い30点・20点以下で疑い

書く・描く課題があればMMSE、野菜の名前と数字の逆唱ならHDS-R。「MMSEに含まれHDS-Rに含まれないもの=構成課題」が定番。

MMSEに語の流暢性課題はない。「語の流暢性課題を含む検査」の答えはHDS-R。

6-9 記憶の検査

検査内容
RBMTリバーミード行動記憶検査。買い物・約束・人の名前など日常生活に即した課題生態学的妥当性が最も高い
WMS-Rウェクスラー記憶検査。言語性・視覚性・注意集中・遅延再生を含む包括的な標準化検査
RAVLT無関連単語リストの学習と遅延再生をみる言語性記憶検査。刺激が人工的で生活関連性は低い
三宅式/ベントン対語記銘(言語性)/視覚記銘
Rey複雑図形検査視覚性記憶と構成能力。視空間認知の評価

「日常生活場面で必要な記憶の障害を検出する」=RBMT一択。MMSE・HDS-Rは全般スクリーニングで記憶特異的ではない。

遅延再生を含む=MMSE・HDS-R・RBMT・RAVLT・WMS-R。含まないRCPM(非言語性の推論であって記憶検査ではない)。

6-10 注意と遂行機能(前頭葉)の検査

検査測るもの
TMT数字・文字を順にたどって線で結ぶ。Part A=注意・処理速度/Part B=注意の切り替え(遂行機能)
PASAT連続加算課題。注意・情報処理速度・ワーキングメモリ
かなひろいテスト注意(配分・選択)
WCSTカード分類の規則を推測・転換させる。概念形成とセットの転換=遂行機能保続の検出に優れる
BADS生活場面に近い課題で遂行機能をみる
FAB前頭葉機能検査。概念化・語想起・抑制(Go/No-go)などを短時間で評価

脳挫傷後に他者への配慮を欠く・自己中心的・粗暴といった性格変化と脱抑制が出た症例では、優先度が最も高いのはFAB。MMSEは全般スクリーニングで前頭葉に特化しない。ASIAは脊髄損傷、SLTAは失語症、Rey複雑図形は視空間・構成の検査で、いずれも優先度は低い。

WAIS-Ⅲは全般的知能の検査で遂行機能検査ではない。図形模写は構成能力・視空間認知。遂行機能を問われたらWCST・BADS・TMT-B・語想起。

6-11 抑うつ・精神症状の尺度(自己評価か他者評価か)

形式尺度
自己記入式=質問紙法BDI-Ⅱ・SDS・CES-D
他者評価(検査者が面接・観察して評定)HAM-D〈HRS-D〉・MADRS・BPRS・PANSS

「自分で書く=質問紙法」「検査者が評定=他者評価」。BPRS・PANSSは統合失調症の症状評価で他者評価。HDS-Rは検査者が口頭で行う認知機能検査であって質問紙法ではない。

6-12 併せて問われる他領域の評価

SIAS(脳卒中の総合機能評価)

  • 含まれる:上肢・下肢運動機能、筋緊張、感覚(触覚・位置覚)、関節可動域、疼痛、体幹(腹筋・垂直性)、視空間認知、言語
  • 含まれない:意識障害(JCS・NIHSS)、嚥下機能、異常知覚、測定障害(協調運動)
  • 視空間認知の評価には線分二等分試験・図形模写を用いる

紛れ込みやすい他の評価

  • FAI=応用的なIADL(社会生活活動)/FMA=脳卒中片麻痺の運動・感覚機能
  • 嚥下の精密検査:VF(嚥下造影)=X線透視で嚥下反射が起きた瞬間の食塊の流れを動的に観察できる/VE(嚥下内視鏡)=咽頭を直視できるがその瞬間はホワイトアウトする
  • 嚥下スクリーニング:RSST(30秒の空嚥下回数・3回以上で正常)・MWST(冷水3mL)・食物テスト