橈骨・正中・尺骨の3神経それぞれに固有の変形・麻痺筋・感覚領域がある。この対応表がこの章の背骨。
| 障害神経 | 変形 | 麻痺する主な筋・動作 | 感覚障害 | 代表的な原因 |
|---|---|---|---|---|
| 橈骨神経 | 下垂手(drop hand) | 手関節背屈・MP伸展・母指外転が不能 | 手背橈側(母指と示指の間=タバコ窩) | 上腕骨骨幹部骨折、上腕外側の長時間圧迫 |
| 正中神経 | 猿手 | 母指球筋(短母指外転筋・短母指屈筋)萎縮、母指対立が不能 | 掌側の母指〜環指橈側 | 手根管症候群、上腕骨顆上骨折 |
| 尺骨神経 | 鷲手 | 骨間筋・虫様筋(環小指)・小指球筋・母指内転筋の麻痺 | 環指尺側〜小指 | 肘部管症候群、上腕骨内側上顆部の損傷 |
下垂手=橈骨/猿手=正中/鷲手=尺骨。神経名・変形・所見・装具の4点セットで固定する。
| 部位 | 損傷神経 | 所見 |
|---|---|---|
| 上腕骨外科頸 | 腋窩神経 | 三角筋麻痺・肩外側の感覚障害 |
| 上腕骨骨幹部(中下1/3後面の橈骨神経溝) | 橈骨神経 | 下垂手 |
| 上腕骨顆上(小児に多い) | 正中神経 | 猿手、Volkmann拘縮 |
| 肘内側(上腕骨内側上顆・肘部管) | 尺骨神経 | 鷲手 |
「骨幹部骨折では骨壊死が起こりやすい」は誤り→骨幹部で問題になるのは橈骨神経麻痺。骨壊死は近位部。/「顆上骨折は高齢者に多い」「近位部骨折は小児に多い」も逆。
Saturday night palsy=飲酒後にソファや車椅子のアームレストで上腕外側を長時間圧迫して起こる橈骨神経麻痺。高位型では長橈側手根伸筋より遠位(総指伸筋・固有示指伸筋・長母指伸筋)が麻痺して下垂手となる。
| 型 | 高位 | 起こり方 | 肢位・所見 | 予後 |
|---|---|---|---|---|
| 上位型(Erb麻痺・Erb-Duchenne型) | C5・C6 | 頭位分娩の肩甲難産で頸部が側屈・伸展され、上位の神経叢が牽引される | 肩内転・内旋、肘伸展、前腕回内、手関節屈曲=ウェイターのチップ肢位。Moro反射は患側で消失、把握反射は保たれる | 最も多く、予後良好(大半が数週〜数か月で自然回復) |
| 下位型(Klumpke麻痺) | C8・T1 | 上肢が頭上へ強く挙上・牽引される | 手内在筋の麻痺(鷲手)。T1の交感神経障害でHorner症候群を伴うことがある | 上位型より不良 |
| 絞扼部位 | 神経 | 主な症候 |
|---|---|---|
| 手根管 | 正中神経 | 猿手・母指球萎縮、母指〜環指橈側のしびれ、夜間痛 |
| Guyon管 | 尺骨神経 | 小指球・骨間筋の麻痺、小指側のしびれ |
| 肘部管(肘頭と内側上顆の間) | 尺骨神経 | 鷲手、小指球・骨間筋萎縮、Froment徴候 |
| Frohseアーケード(回外筋近位縁) | 後骨間神経(橈骨神経深枝) | 下垂指 |
| 足根管(内果の後方) | 脛骨神経 | 足底のしびれ・異常感覚 |
| 腓骨頭の後方 | 総腓骨神経 | 下垂足・鶏歩、足背の感覚障害 |
| 梨状筋(梨状筋下孔) | 坐骨神経 | 下腿後面・外側〜足部の症状 |
組合せ問題の定番の誤り。「手根管-下垂手」(下垂手は橈骨神経)/「足根管-足背の異常感覚」(足背は浅腓骨神経、足根管は足底)/「梨状筋-下腿内側の異常感覚」(下腿内側は伏在神経)/「肘部管-涙滴徴候」(涙滴徴候は前骨間神経)はすべて誤り。
| 神経 | 触知部位 |
|---|---|
| 腕神経叢 | 胸鎖乳突筋の後縁(斜角筋隙)。胸骨頭と鎖骨頭の間ではない |
| 正中神経 | 上腕では上腕動脈に沿い、烏口腕筋の内側を下行 |
| 尺骨神経 | 肘頭と上腕骨内側上顆の間(肘部管/ファニーボーン) |
| 脛骨神経 | 内果とアキレス腱の間(足根管) |
| 総腓骨神経 | 腓骨頭の後方〜外側 |
| 大腿神経 | Scarpa三角(大腿三角)。外側から神経・動脈・静脈(NAV)の順 |
タバコ窩(解剖学的嗅ぎタバコ入れ)の底にあるのは橈骨動脈と舟状骨で、神経の絞扼部ではない。後骨間神経の絞扼部はFrohseアーケード。
腕神経叢と鎖骨下動静脈が胸郭の出口を通る途中で圧迫・牽引されて、上肢のしびれ・脱力・冷感が出る。成因にかかわる骨は鎖骨と第1肋骨(+頸肋=第7頸椎の過剰肋骨)。
| 絞扼部位 | つくっているもの | 誘発テスト |
|---|---|---|
| 斜角筋三角 | 前斜角筋・中斜角筋と、底辺の第1肋骨 | Adson |
| 肋鎖間隙 | 鎖骨と第1肋骨の間(肋鎖症候群) | Eden |
| 小胸筋下 | 小胸筋と烏口突起 | Wright |
胸骨・上腕骨・第1胸椎は絞扼部をつくらない(上腕骨は絞扼部より末梢)。鎖骨骨折後の変形・仮骨が原因になることはある。
なで肩の若年女性、上肢を挙げて作業する人に多い。理学療法は肩甲帯挙上筋(僧帽筋上部・肩甲挙筋)の強化と姿勢の矯正、斜角筋・小胸筋のストレッチ、重い物を持たない指導。
| テスト・徴候 | 陽性となる病態 | 内容 |
|---|---|---|
| Tinel徴候 | 末梢神経の絞扼・損傷部(手根管=正中、肘部管=尺骨、足根管=脛骨) | 神経の走行部を叩打すると支配領域に放散するしびれ |
| Phalenテスト | 手根管症候群(正中神経) | 手関節掌屈位の保持でしびれを誘発 |
| Froment徴候 | 尺骨神経麻痺 | 紙をつまむと母指IPが屈曲。母指内転筋麻痺を長母指屈筋(正中神経)で代償 |
| 涙のしずく(tear drop)徴候 | 前骨間神経麻痺 | 母指と示指の輪がしずく状になる |
| drop armテスト | 腱板断裂(棘上筋) | 他動外転位から下ろせず腕が落下 |
| Thomsenテスト | 上腕骨外側上顆炎 | 手関節背屈への抵抗で外側上顆部に痛み |
| Finkelsteinテスト | de Quervain病 | 母指を握り込み尺屈させて誘発 |
| Adsonテスト | 胸郭出口症候群 | 頸部回旋・吸気で橈骨動脈拍動が減弱 |
「肘部管症候群でTinel徴候陰性」は誤り→肘部管部で叩打すると放散し陽性。/肘部管症候群で「Phalenテスト陽性」「示指のしびれ」「母指球筋の萎縮」「正中神経伝導速度の低下」を挙げるのはすべて手根管症候群(正中神経)の所見。/手根管症候群で「骨間筋萎縮」「小指のしびれ」「Guyon管のTinel陽性」「前腕回内時の疼痛(回内筋症候群)」を挙げるのも誤り。
末梢神経伝導検査が診断に有用なのは手根管症候群・肘部管症候群などの絞扼性ニューロパチーや多発神経炎・Guillain-Barré症候群。手根管症候群では手関節部で正中神経の伝導遅延・振幅低下を検出する。中枢疾患(Parkinson病・多系統萎縮症)、筋疾患(筋ジストロフィー→CK・筋電図・筋生検・遺伝子検査)、血管疾患(閉塞性動脈硬化症→ABI・血管造影)には用いない。
| 徴候 | 示すもの |
|---|---|
| Homans徴候 | 足関節の背屈で腓腹部に痛み=深部静脈血栓症(DVT)。神経障害の徴候ではない |
| Beevor徴候 | 上体を起こすと臍が頭側へ動く=Th10前後の髄節レベルの障害(下部腹直筋の麻痺) |
| Froment徴候/Phalenテスト/Tinel徴候 | 尺骨神経麻痺/手根管症候群(正中神経)/末梢神経の損傷・絞扼部 |
掌側橈側=正中/掌側尺側=尺骨/手背橈側=橈骨。上腕外側の圧迫で手背の母指・示指間がしびれれば橈骨神経麻痺。
| 麻痺 | 変形 | 装具 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 橈骨神経 | 下垂手 | コックアップ・スプリント、Thomas型懸垂装具、Oppenheimer型装具 | 手関節を背屈位に保持 |
| 橈骨神経(高位型) | 下垂手+下垂指 | 動的コックアップ(ばね・アウトリガー付き) | 背屈保持に加えMP関節と母指の伸展を動的に補助 |
| 正中神経 | 猿手 | 短対立装具(オポーネンス・スプリント)、Rancho型長対立装具 | 母指を対立位に保持しつまみを補助 |
| 尺骨神経 | 鷲手 | ナックルベンダー、虫様筋カフ | MP関節の過伸展を防ぎ屈曲方向へ補助 |
まぎらわしい装具の適応。手関節駆動式把持装具=頸髄損傷(C6)でテノデーシスを利用した把持の再建。BFO(balanced forearm orthosis)=上肢筋力低下(頸髄損傷・筋疾患)で前腕を支持し水平面の運動を補助。パンケーキ型装具・母指Z変形用スプリント=関節リウマチ。IP関節伸展補助装具=鷲手で問題となるMP過伸展には対応できない。
図で装具を選ぶ問題は、まず手の形から神経を決める(母指球が平坦=正中/MP過伸展+IP屈曲=尺骨/手関節が垂れる=橈骨)。次に矯正方向で装具を選ぶ(過伸展なら屈曲補助、垂れているなら伸展・背屈補助)。
| 切断部位 | 断端長の計測起点 |
|---|---|
| 上腕切断 | 肩峰 |
| 前腕切断 | 上腕骨外側上顆 |
| 大腿切断・膝関節離断 | 坐骨結節(膝離断は会陰部でも可) |
| 下腿切断 | 膝関節裂隙(膝蓋腱中央) |
「上腕=上腕骨大結節」「前腕=肘頭」「膝関節離断=大転子」「下腿=膝蓋骨上縁」はいずれも誤り。上肢は肩峰・外側上顆、下肢は坐骨結節・膝関節裂隙。
| 計測項目 | 起点→終点 |
|---|---|
| 上肢長 | 肩峰外側端→橈骨茎状突起 |
| 上腕長 | 肩峰外側端→上腕骨外側上顆の外側突出部 |
| 前腕長 | 上腕骨外側上顆→橈骨茎状突起 |
| 棘果長 | 上前腸骨棘の最突出部→内果 |
| 転子果長 | 大転子の最上端部→外果 |
語尾のすり替えに注意。肩峰は「最前端部」ではなく外側端、上前腸骨棘は「最上端部」ではなく最突出部。腓骨頭は四肢長の標準的な指標ではない。
| 切断 | 起こりやすいもの | 理由 |
|---|---|---|
| 大腿切断 | 股関節の屈曲・外転拘縮 | 内転筋の付着を失い、腸腰筋・中殿筋が残る。内転拘縮ではない |
| 下腿切断 | 膝関節の屈曲拘縮 | 座位・車椅子で膝を曲げたままになりやすい |
| Syme切断 | 拘縮よりも断端末荷重が可能なことが特徴 | 踵部の厚い皮膚で断端を覆う |
| Chopart関節離断・Lisfranc関節離断 | 尖足・内反変形 | 腓骨筋・前脛骨筋の停止を失い、アキレス腱(下腿三頭筋)・後脛骨筋が優位になる。外反ではない |
「幼児の切断では強く現れる」「いったん出現した幻肢は消失しない」「上肢より下肢で強い」はいずれも誤り。すべて逆。
| 小児切断でよくある誤りの選択肢 | 正しくは |
|---|---|
| 後天性切断は女児に多い | 活動性の高い男児に多い |
| 義手の装着開始は4歳ころ | 座位が安定する生後6か月〜1歳前後から導入 |
| 下腿切断では外反膝変形を生じやすい | 問題となるのは断端の過成長(骨棘形成・骨が皮膚を突き破る) |
| 幻肢は成人より多い | 身体図式が柔軟で成人より少ない |
| 骨肉腫による切断は増加傾向 | 化学療法・患肢温存術の進歩で減少傾向 |
| 最も多い原因 | 多い人 | |
|---|---|---|
| 上肢切断 | 外傷(機械への巻き込みなどの労働災害・交通事故) | 若年〜壮年の男性 |
| 下肢切断 | 末梢循環障害(糖尿病・閉塞性動脈硬化症) | 高齢者 |
上肢切断(前腕切断など)の原因として糖尿病・閉塞性動脈硬化症・閉塞性血栓血管炎(Buerger病)を選ばない。いずれも病変は下肢末梢が中心。腫瘍による切断は、患肢温存術が主流になり頻度は低い。
前腕切断の断端は長いほど前腕の回内・回外が残り、能動義手(前腕義手)で有利。
| 足部 | 特徴・適応 |
|---|---|
| SACH足 | 無軸で踵部にクッション。安定重視、低活動者向け |
| 単軸足 | 底背屈の1軸のみ。足底接地を早く得られる |
| SAFE足 | SACH足の改良型。内外側の動きに対応 |
| 多軸足(Greissinger足) | 内外反・回旋にも対応し不整地に強い |
| エネルギー蓄積型(フレックス足) | 板バネがたわんで弾性エネルギーを蓄え、蹴り出しで放出し推進力を得る。高活動・スポーツ用 |
| 下腿義足のソケット・懸垂 | 特徴と適応 |
|---|---|
| PTBソケット+カフベルト | 膝蓋腱支持の標準型。簡便だがピストン運動が生じやすい |
| くさび付き(顆上支持) | 旧来型の懸垂補助。高い懸垂性・衝撃吸収は望めない |
| 大腿コルセット付き | 膝の側方支持は強いが重く可動域を制限。膝の不安定性が強い例に限る |
| シリコンライナー付き | 断端全面に密着し懸垂性・衝撃吸収に優れる。高活動・スポーツ復帰に最適 |
断端が成熟し皮膚が良好で、膝に軽度の不安定性があってもスポーツ復帰が目標ならシリコンライナー付きソケットを選ぶ。大腿コルセットは重く運動に不向き。
歩行のエネルギー消費は切断が近位ほど大きい(下腿切断<大腿切断)。代謝指標は分母で区別する。エネルギー代謝率(RMR)=労作代謝量÷基礎代謝量(労作代謝量=作業時代謝量−安静時代謝量)。METs=作業時代謝量÷安静時代謝量。RMRは基礎代謝が基準、METsは安静時が基準。
| 相 | 動作 | 肘・肩にかかる力 |
|---|---|---|
| ①ワインドアップ | 踏み出し脚を上げる | ほぼ負荷なし |
| ②ストライド(前期コッキング) | 踏み出し脚を接地するまで | 肩が外転・外旋を始める |
| ③後期コッキング | 肩最大外旋位(肘は屈曲90°前後で後方に残る) | 肘に最大の外反ストレス=内側側副靱帯・回内屈筋群が最も引き伸ばされる。肩は前方不安定性・インピンジメント |
| ④アクセラレーション(加速) | 最大外旋位から急速に内旋しリリースへ | 外反ストレスが続き、外側は上腕骨小頭に圧迫力 |
| ⑤リリース〜⑥フォロースルー | ボールを放し減速する | 肩後方(棘下筋・小円筋)に牽引力。肘内側の張力は落ちる |
肘外反ストレステストで内側に疼痛=内側型投球障害肘。痛みが出る動作を図から選ぶ問題では、肩が最大外旋している(腕が後ろへ倒れている)コッキング後期〜加速期の図を選ぶ。振りかぶり・踏み出し・フォロースルーの図は外反ストレスが小さく該当しない。内側=牽引(靱帯・屈筋群)/外側=圧迫(小頭の離断性骨軟骨炎)/後方=衝突(肘頭)で部位と力の向きを対にする。
「学童期の野球選手の有病率は20〜30%」は誤り→有病率は数%程度。誤り選択肢は数値を誇張してくる。
| 損傷 | 強化する筋 | 理由 |
|---|---|---|
| 肩関節前方脱臼 | 肩甲下筋 | 前方の動的安定化(内旋筋) |
| 内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)損傷 | 大腿四頭筋(内側広筋) | 膝蓋骨を内側へ引き、外側への脱臼を防ぐ |
| 足関節前距腓靱帯損傷 | 長・短腓骨筋 | 内反を制動する。後脛骨筋は内反に働くので逆 |
| 肘の尺側(内側)側副靱帯損傷 | 屈筋・回内筋群(尺側手根屈筋・浅指屈筋など) | 外反ストレスを支える。尺側手根伸筋ではない |
| 肩鎖関節脱臼 | 僧帽筋・三角筋 | 鎖骨・肩甲骨を支える。上腕二頭筋ではない |