第6章|代謝性骨疾患・小児・腫瘍

整形外科学 第6章

6-1 骨粗鬆症の基本像

骨粗鬆症は骨量(骨密度)が減少して骨が脆くなる病態。骨の「質=石灰化」が障害される骨軟化症とは別物。

項目内容
頻度原発性(一次性)が90%以上、続発性は10%未満。原発性=閉経後・加齢(老人性)
性差女性が男性の2〜3倍。閉経後のエストロゲン低下で骨吸収が亢進
日本の患者数1,200万人(推定)
遺伝遺伝的要因が骨密度の60〜80%を規定。家族歴はリスク
骨の変化代謝回転の速い海綿骨(椎体など)から減少する
血液所見血清カルシウム・リン・ALPは正常
危険因子加齢・閉経・低体重・喫煙・多量飲酒・運動不足・Ca/ビタミンD不足

次はすべて誤り。「男性に多い」→女性/「低カルシウム血症を伴う」→血清Caは正常(低Ca血症は骨軟化症)/「遺伝は影響しない」→強く影響/「患者数100万人」→約1,200万人/「原発性より続発性が多い」→原発性が90%以上。

6-2 脆弱性骨折の好発部位

脆弱性骨折=立位程度の高さからの転倒など軽微な外力で生じる骨折。部位は近位・遠位の入れ替えで問われる。

4大好発部位補足
椎体(脊椎圧迫骨折)骨粗鬆症性骨折で最多。診断基準上の重要骨折
大腿骨近位部(頸部・転子部)次に多い。診断基準上の重要骨折
橈骨遠位端Colles骨折。手をついて転倒
上腕骨近位端肩から転倒

椎体または大腿骨近位部の脆弱性骨折があれば骨密度値に関わらず骨粗鬆症と診断できる。その他部位の脆弱性骨折なら骨密度がYAMの80%未満で診断。

上腕骨「遠位」部・橈骨「近位」部・大腿骨「遠位」部・尺骨・距骨はいずれも脆弱性骨折の好発部位ではない。

6-3 続発性骨粗鬆症とステロイド

分類原因
内分泌性副甲状腺機能亢進症(PTH過剰で骨吸収亢進)・甲状腺機能亢進症・糖尿病(骨質低下)
栄養性/消化器胃切除後(Ca・ビタミンD吸収低下)・吸収不良・ビタミンD/K欠乏
廃用性長期臥床・不動・無重力。荷重刺激の消失で骨吸収が亢進
薬剤性副腎皮質ステロイドの長期投与・抗てんかん薬・ヘパリン

ステロイド長期投与の副作用

  • 骨:骨形成抑制+骨吸収亢進+腸管Ca吸収低下でステロイド性骨粗鬆症。さらに大腿骨頭壊死(骨梗塞)
  • 上がる=血糖(ステロイド糖尿病)・血圧・体重(中心性肥満・満月様顔貌)・感染リスク
  • 下がる=骨密度・血清K(Na貯留・K排泄で低K血症
  • 他:消化性潰瘍・ステロイドミオパチー(近位筋の筋力低下)・精神症状

「低血圧」「低血糖」「体重減少」「高カリウム血症」「筋固縮」「腎不全」はいずれも誤り。筋への影響は固縮でなくミオパチー

6-4 カルシウム代謝とビタミン

腸管Ca吸収を上げる下げる
活性型ビタミンD(最強)・適度な蛋白質。エストロゲンは骨吸収を抑え保護的副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)過剰なリン(腸管内でCaと結合し不溶性塩に)・シュウ酸

ビタミン欠乏症の組合せ

ビタミン欠乏症状
A夜盲症・眼球乾燥
B1脚気・Wernicke脳症・末梢神経障害
B2・B6舌炎・口角炎・皮膚炎
B12・葉酸巨赤芽球性貧血・末梢神経障害
C壊血病(出血傾向・皮下出血)
D小児=くる病/成人=骨軟化症・骨粗鬆症
K出血傾向(凝固因子合成低下)・骨基質形成の障害

ビタミンAは「不足」ではなく「過剰摂取」が骨に有害(破骨細胞を活性化)。よってビタミンA欠乏症は骨粗鬆症の原因・危険因子ではない。骨に必要なのはD(Ca吸収)とK(骨基質)

骨粗鬆症くる病・骨軟化症
本態の減少(石灰化は正常)=石灰化の障害
血清Ca・P正常低下
ALP正常上昇
変形円背・脊柱後弯O脚・肋骨念珠

ワルファリンはビタミンKの作用を阻害して抗凝固作用を発揮するため、ビタミンKを多く含む納豆・クロレラ・青汁を摂ると作用が減弱する。カルシウム拮抗薬の作用を増強するのはグレープフルーツで別の相互作用。

6-5 骨形成不全症

  • 原因=Ⅰ型コラーゲン遺伝子の異常による遺伝性疾患(常染色体優性が主体)
  • 頻度=出生1〜2万人に1人程度の稀少疾患
  • 三徴=易骨折性・青色強膜・難聴。加えて歯牙形成不全・低身長
  • 骨折は小児期に頻発し、思春期以降は減少する傾向
  • 反復骨折で四肢の弯曲変形・椎体変形を生じ、二次的に側弯症を発症しやすい
  • 治療=ビスホスホネート(破骨細胞抑制)が中心

「強膜炎を合併」→炎症でなく強膜が薄く青く見える青色強膜/「視覚障害を合併」→視力障害は必発でない/「遺伝性でない」「変形は少ない」「思春期に骨折が多い」「1,000人に1〜2人」はすべて誤り/「ステロイドが有効」→ステロイドはむしろ骨を弱める

6-6 発育性股関節形成不全(DDH)

旧称は先天性股関節脱臼。乳児期に発見される脱臼・亜脱臼・臼蓋形成不全。

項目内容
背景女児・第1子・骨盤位・下肢を伸展させるおむつや抱き方
脱臼方向後上方(前方ではない)
所見開排制限・クリックサイン(Ortolani/Barlow)・大腿皮膚溝の左右非対称・脚長差(Allis徴候)
予後遺残亜脱臼・形成不全は二次性変形性股関節症の主因
  1. 乳児期(生後3〜6か月)の第一選択=リーメンビューゲル装具(Pavlikハーネス)。両肩から吊ったベルトで股関節を屈曲・外転位に保持し緩徐に整復する
  2. 整復困難例・高位脱臼=オーバーヘッド牽引・徒手整復
  3. 保存療法無効・年長児=観血的整復術・骨切り術

脱臼・開排制限があるのに経過観察のみは不適切。乳児への強固なギプス固定や過度の外転は大腿骨頭壊死を招く。「7歳以上で外転位保持免荷装具」はPerthes病の用語を当てはめた引っかけ。

6-7 乳児股関節の評価指標と徒手検査

  • 臼蓋角(acetabular angle・α角)=左右のY軟骨中心を結ぶ水平基準線(Hilgenreiner線)と臼蓋傾斜線がなす角。新生児で約30度、成長とともに減少し、大きいほど臼蓋形成不全=DDHを示唆
  • 他の指標=Perkins線(骨頭の外上方偏位)・Shenton線(脱臼で連続性が断たれる)・CE角(骨頭の被覆度。小さいほど形成不全)
検査対象所見
Ortolaniテスト乳児股関節(DDH)脱臼した骨頭が整復されるクリック
Barlowテスト乳児股関節(DDH)不安定な骨頭を脱臼させる
Allis(Galeazzi)徴候股関節脱臼・大腿短縮背臥位で両股・両膝を屈曲し足底をそろえると患側の膝が低い
Patrick(FABER)テスト股関節・仙腸関節屈曲・外転・外旋で疼痛
前方引き出し・Lachmanテスト前十字靱帯(ACL)脛骨の前方移動量が増大
N-テスト(pivot shift)前十字靱帯(ACL)屈伸+回旋で回旋不安定性を誘発
sag徴候後十字靱帯(PCL)脛骨が後方に落ち込む
McMurrayテスト半月板疼痛・クリック・引っかかり

背臥位・膝屈曲位で似た肢位になる2つを区別する。膝の高さの左右差=Allis徴候=股関節脱臼・大腿短縮脛骨の後方落ち込み=sag徴候=後十字靱帯損傷。膝蓋骨脱臼・半月板損傷では膝の高さの差は生じない。

6-8 Perthes病と大腿骨頭すべり症

DDH単純性股関節炎Perthes病大腿骨頭すべり症大腿骨頭壊死症
年齢乳児期幼児〜学童4〜8歳10〜15歳成人
特徴女児・開排制限一過性の滑膜炎男児(4〜5倍)・片側性肥満男児ステロイド・多量飲酒
画像骨頭の外上方偏位骨変化なし骨頭の扁平化・硬化・分節化骨端線で骨頭が後下方へすべる骨頭の圧潰
治療リーメンビューゲル安静(数日〜2週で自然軽快)外転装具でcontainment・免荷手術(in situ固定)免荷・人工関節
  • Perthes病の本態=大腿骨近位骨端部(骨頭)への血行障害による阻血性(無腐性)壊死外傷は誘因ではない
  • 症状=跛行・股関節痛(膝への放散痛で受診することもある)・外転・内旋制限
  • 発症年齢が高いほど予後不良。両側同時発症はまれ
  • 治療原則=骨頭を寛骨臼に包み込むcontainmentで球形の骨頭再形成を待つ

小児の特発性骨頭壊死は「大腿骨頭壊死症」と呼ばずPerthes病として扱う。大腿骨頭すべり症は成長期疾患で労働衛生環境とは無関係(職業性疾患=じん肺・振動障害〈レイノー現象・白ろう病〉・頸肩腕症候群・職業性腰痛・騒音性難聴)。

6-9 骨端症・無腐性壊死の年齢分布

疾患部位好発
Perthes病大腿骨頭4〜8歳男児
Osgood-Schlatter病脛骨粗面成長期のスポーツ少年
Sever病踵骨骨端成長期の小児
Köhler病足舟状骨幼児
Freiberg病第2中足骨骨頭思春期(女子に多い)
Sinding-Larsen-Johansson病膝蓋骨下極成長期の小児
Kienböck病月状骨成人男性(手を酷使する労働者)

骨端症・無腐性壊死はほぼすべて小児・成長期成人(男性)に好発するのはKienböck病だけと覚えると鑑別が一発で済む。

6-10 装具と疾患の組合せ

装具適応疾患
リーメンビューゲル(Pavlikハーネス)発育性股関節形成不全(乳児)。屈曲・外転位保持
股関節外転装具(外転位保持免荷装具)Perthes病。containment
Denis Browneスプリント・足部外転装具先天性内反足(ギプス矯正〈Ponseti法〉の後に使用)
交互歩行装具(RGO)対麻痺(二分脊椎・脊髄損傷)
S.W.A.S.H.装具脳性麻痺の股関節外転保持
底屈制限(背屈補助)付き短下肢装具Duchenne型筋ジストロフィーの尖足
Milwaukee装具側弯症
Jewett型装具胸腰椎圧迫骨折(3点固定で屈曲を制限)
SOMI装具・Halo・フィラデルフィアカラー頸椎(環軸椎など上位頸椎)の固定
Oppenheimer型装具橈骨神経麻痺(下垂手)の手関節背屈補助

組合せ問題は「正しい組合せ同士を入れ替える」形で出る。リーメンビューゲル=側弯症/Milwaukee=先天性股関節脱臼/Jewett=橈骨神経麻痺/Oppenheimer=胸椎圧迫骨折/Denis Browne=二分脊椎/S.W.A.S.H.=DDH/大腿骨頭すべり症=RGOはすべて誤り。すべり症の治療は装具でなく手術。

6-11 骨腫瘍・転移性骨腫瘍・多発性骨髄腫

原発性骨腫瘍は良性=骨軟骨腫が最多、悪性=骨肉腫(10代・膝周辺=大腿骨遠位/脛骨近位)が代表。

転移性骨腫瘍内容
好発部位脊椎・骨盤・肋骨・大腿骨近位など造血活動が活発な骨。頭蓋骨はまれ
造骨性(硬化性)前立腺癌が代表。骨密度が上がるため病的骨折は少ない
溶骨性乳癌・肺癌・腎癌。病的骨折・高Ca血症を起こしやすい
血液所見骨破壊に伴う高カルシウム血症(低Ca血症ではない)
疼痛管理第一選択は薬物療法(NSAIDs・オピオイド)温熱療法は相対的禁忌

多発性骨髄腫は形質細胞の腫瘍性増殖。四徴の語呂はCRAB

  • C=高カルシウム血症(骨吸収亢進)/R=腎障害(Bence Jones蛋白=軽鎖による骨髄腫腎)
  • A=貧血(正常造血の抑制)/B=骨病変(溶骨性・punched out像・病的骨折
  • 加えて易感染性(正常免疫グロブリンの減少)

多発性骨髄腫で生じるのは高カルシウム血症。溶骨が進む病態なので「低カルシウム血症」は特徴的でない、が定番の引っかけ。転移性骨腫瘍も同じく高Ca血症側。